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umieをめぐる冒険

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「瀬戸内国際芸術祭2013」で活気づく高松市。島への玄関となる港に面して、デザイン事務所D.N.A.(ドリームネットワークアクティビティ)が運営するカフェがあります。正社員のデザイナー(経験者)を、追加募集です!

「日本で一番、好きなカフェ」。僕が5年前に「umie(ウミエ)」を初めて訪ねたのは、あるクリエイターのブログにそう書いてあったからだ。外観はサビだらけになったトタン張りの倉庫。最初はこわごわ階段を上がったっけ。

小さな扉を開けた瞬間に目に飛び込んでくるのは、ほどよく時を経たテーブル、椅子、ソファ。古いデザイン誌や写真集、小説、絵本、雑貨類のすべてが整理されすぎないで、調和した空間だ。

1人でも、2人でも、グループでもずっと居たくなる。いつ来ても「帰ってきた」という感じ。その日もカップル、親子連れ、高齢者の団体、いろんな人たちでにぎわっていた。開店の直後から、店長としてumieを任されてきたのは、松下友美さん。

「オープンして12年というのは、学生だった子が、就職で県外に出て、高松に帰ってきて、お母さんになって、自分の子どもを連れてくる、それくらいの年月。県外に引っ越した方が出張ついでに立ち寄ってくれたり、旅行者が数年ぶりに訪ねてくれたりするのも、うれしいものですね。」

「お店も、お客さんも、私たちも、みんな歳をとっちゃった」と笑う。街には新しいカフェも増えた。

利用者のニーズに合わせ、夜12時まで営業。たしかに、こんな店に夜ふらっと来れたらいいよな。

ゆったりとした時間をすごした後、umieを運営するデザイン事務所「D.N.A.」がある、はす向かいのビルへ。

ここには、umieの離れのようなギャラリー&イベントスペース「デザインラボラトリー 蒼(あお)」がある。D.N.A.の仕事内容をプレゼンするほか、落ち着いたカフェも併設。クライアントとミーティングする場所でもある。

社長の柳沢さん(愛称はヤナさん)は長野生まれ、10歳で高松に来た。学生時代はファッションの街、神戸でデザインを学ぶ。だが、人生で最初の挫折を就職先の大阪で味わった。

「誰もやり方を教えてくれなかった。朝までかかっても広告がまとめきれず、1年ほどで高松へ帰りました。」

地元の小さな代理店でデザイン業に携わるものの、当時はなかなか仕事になじめなかったという。

「そのなかで好きだったのは新聞広告。スミ1色でゴマカシがきかないところは、今でも好きです。図書館で新聞の縮刷版をコピーして、ひそかにカッコいい広告を学んだね。」

その後、東京帰りの先輩デザイナーと共同で事務所を開業。それから16年、デザイナーとして充実した日々をすごす。

「80年代は景気も良くなって、一番いいときやったね。瀬戸大橋の開通なんかもあって、仕事の数が多かった。東京に出ようとは考えなかったです。目の前の仕事で精いっぱいだったし、多少は『うれしげ』なところもあったから。」

うれしげ?

「そう。カッコつけてるとか、生意気な感じという方言です。とにかく新しいデザインを、とトンガっていたと思うよ。使う色もイナカの色じゃなかったもの、スミをちょっとだけ足したり。」

40代になって個人事務所を立ち上げた。バブル後も順調だったが、地方には遅れて景気の影響がくる。それが、2000年。

「代理店の人も、企業で販促をやってた人も、自分の会社の従業員も、パタッとみんないなくなった。人生でこんなことが起こるなんて、まさかと。」

悪いことは連続する。

「アシスタントだった子が亡くなったんです。2年近く、落ち込んですごしました。そのころ旅に出て、京都の街を歩いていたら、町家を改装した美容室やギャラリーができていて。錆びた鉄板を看板にしていたり、新鮮だった。全然そうした良さに気づかなかったのが、急に目に入ってきた。」

柳沢さんの中で、なにかが変わったのだろう。2001年、北浜地区の開発計画(北浜アリー)にあわせ、海沿いの倉庫と運命の出会いを果たす。umieのはじまりだ。

人々を引きよせ、つなぐ力がumieにはある。入社8年目の川井知子さんも場の力によばれた一人だった。名刺の肩書きはプランナー。

「デザインの手前段階のプランニングとコピー、クライアントとのコミュニケーションなどを担当しています。お客さんとつくる人をつなぐ役割です。」

高松の隣りにある坂出の出身。大学卒業後、神戸のデザイン事務所で8年働いた。川井さんが25歳のときにumieができた。

「高松にいいところができたから、と友達が連れてきてくれて。帰省のたびに寄りました。デザイン会社の運営と聞いて、てっきり若いチームがやっていると思ったんですよ。当時は D.N.A.のオフィスが隣りの部屋にあって、素敵な職場だなぁ、と。」

30歳で香川へ戻り、高松のウェブ制作会社に就職。ある日、仕事の依頼をしようとD.N.A.の門を気軽に叩く。

「そうしたら、スゴくキャリアのある柳沢さんが、どうもどうも、と出てきて(笑)」

こんな仕事上の出会いを経て、1年後にD.N.A.へ転職。きっとデザインへの感覚が合ったのだろう。2人はどんなデザインが好きですか?

「いかにもマックでつくった、というのは嫌ですね。どうしたらそうじゃなくできるか、いつも考えます」(川井さん)

「僕たちのフィルターを通しても、クライアントの大事にしているものが同じ温度、質感で伝わることを目指してます。カッコイイものではなく、『なんかいいよね』という感覚の最高になりたい。大事にするのは、その人、その商品の “らしさ” 。umieや蒼も、僕ららしさの表現です」(柳沢さん)

パッケージ、ウェブ、イベント、ポスター、インテリア、プロダクト、ブランディング。ホームページの作例(http://www.umie.info/dna/)でこれまでの仕事を確認できる。

マスキングテープ「mt」のデザインワークもそう。採用されるスタッフもこの仕事に携わることになる。

「製品以外の販促ツールやPOP、ムービーのデザイン、ホームページの更新やイベントの企画などを、地元の代理店さんと一緒にお手伝いしています。倉敷の『カモ井加工紙』さんは工業用テープが主力のクライアント。mtには雑貨的な世界観を、と依頼をいただいたんです」(川井さん)

その仕事も5年目。毎年パリで催されるデザインフェア「メゾン・エ・オブジェ」で配布されるツールも作成している。「これが高松でつくられてるのか、と言われたい」というパンフも力作だ。

「海外の方に色やトーンがどう伝わるか想像しながらつくります。ボーダレスな感覚がある人、センスが嗅覚としてある人に来てほしいです。古くも新しくもなく、洋でも和でもない、素敵なもの。僕らはそれをつくりたいから」と柳沢さん。

コーディングもこなすウェブデザイナーも募集する。「1人がいろんな役割をになえるのが理想」と川井さん。リニューアルした「mt」のホームページはこちら(http://www.masking-tape.jp/

同じく募集するコピーライターはどんな人がいいですか?

「こういうものがつくりたい、というコンセプトワークから、営業、進行、予算管理もカバーする人。実際に仕事のディレクションができる人ですね。」

「そう、高松ではどの業種でも1人3役くらいこなしてるよ。多くの情報を一瞬で嗅ぎ分けられるのがデザイナー。迷って手が進まない人はダメだと思う」と柳沢さん。

ワークショップやイベントも自分たちで開催するので、土曜も仕事がある。内側にこもるタイプは向かないし、仕事とプライベートをしっかり線引きしたい人にもオススメできない職場だ。

「小さな商いのクライアントも多いです。お客さんが目の前にいてやり取りする感じだから、都会より厳しく、手もかかるかもしれません。そのぶん、やりがいや体感、温度を感じられるはず。都会では歯車の1つだけど夢を持っている人、キャリアより才能のある若々しい人がいいです。40歳でも構わないけれど、伸びしろがある人でないと。異業種からは難しいと思います。」

そのため、応募に際してはポートフォリオの提出が必須になる。

ちなみに「蒼」の1つ下の階にあるD.N.A.のオフィスはこんな感じ。オシャレな空間ではないから、かえって安心する。この力の抜き方も、なんだかいい。窓から見える海もいいな。


移住者か地元出身かは無関係。ただ「田舎でセミリタイア」のような意識の人はお断り。のんびりした土地柄の高松にあって仕事はハードそうだが、経験とセンスを生かしたい人には、活躍の機会がある。社員として雇うのはどうしてですか?

「umieは建物の老朽化もあっていつまでも現在のかたちであるわけじゃない。最終的には、カフェ、ギャラリー、デザイン事務所が集まった1つの場所をつくりたいですね。今は多くの人の記憶に残ることを目指して、1年1年しっかりやる原点へ戻ろうとしています。そのためのバイト感覚でない人材がほしいんです。」

柳沢さんは「僕は、現場からあと2年でフェイドアウトするつもり」と言う。「自分でもやりたいことがあるんですよ。umieの歩みを記録した本をつくるとか。」

川井さんが続ける。「この後、柳沢さんがいなくなるわけじゃないけど、頼らないようになる準備をしだした感じかな。」

ここで生まれているのは、空間やデザインだけではなく、体験や “らしさ” 。そんな心地よさを自然につくり出せる人なら、ぜひ応募してください。

川井さんの最後の言葉が、umieを支えるメンバーの魅力すべてを伝えているように思う。

「umieはね、D.N.A.との出会いのきっかけになった場所なんで、私にとっては刺激をもらう場所。ホームというのもあるけど、すごくさりげないのに、いろいろ気づかせてくれる。毎日を素敵に楽しく、大切に暮らそうって思える場所なんです。」

福利厚生として、社員はカフェを半額で利用可能ですよ。(2013/4/9 カンキup)