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「正しいことやりましょう、正々堂々やりましょう、ということなんです。それでいただいたお金をどのように使っていくか。これが会社のあり方だと思います。」そう話すのは株式会社銘建の代表である青木さん。銘建は山口県で住宅をつくっている会社だ。できる限り地元の建材を用いて、住む人のライフスタイルに寄り添ってデザインした住宅をつくっている。今回は営業の募集です。

曽祖父は瀬戸内海で塩田業をしていた家だった。塩田が廃止されると祖父は製材業をはじめる。当時も国内の材木は高値で取引されていたが、相場次第で業績も大きく左右されたそうだ。そこで先代は大工さんに仕事をたくさん供給できれば、建材も売れるようになるのでは、と考えて住宅会社をはじめる。
その後、青木さんが父から会社を継いだ。
「どこの馬の骨か分からんようなヤツになるより、田舎のプレスリーになったらどうだ?というのが、父の口説き文句だったんですよ。それまでは銀行に勤めていて、東京の原宿や横浜に住んでいたんです。だから帰ってきたときは愕然としましたね。すぐに辞めたくなった(笑)。」

ちょうど住宅業界もまた、着工件数が減っていく時代だった。80年代後半には全国で年間170万戸以上着工されていたのが、今では80万戸ほどに。青木さんが会社を継いだときには、創業以来初の赤字だった。
「地域の住宅会社って、ダサい・どこにあるか分からない・イマイチ不安、っていうイメージがあるようで、これが選ばれない3大要素らしいんですよ。そういったことを改善しないといけなかった。」
すべてが困難な状況の中でスタートした。
まず服装は、みんなスーツにした。けれどお客さんがカジュアルな格好なので、スーツも堅苦しい。世の中のトレンドもあって、もう少しカジュアルになった。社員のためにスタイリストに相談したこともあったそうだ。
そのほかにも会社の社屋、社員、会社のロゴ、それにホームページまで、すべてイメージが一緒になるように変化させていった。
そして、「造る家」についても変えていくことになる。
「それまで社内では効率的に建てることが良いとされていたんですよ。坪単価を抑えて。住む人も面積で価値を判断すると考えていた。」
坪単価だけで考えるような家づくり。
「そうですね。効率を良くしたり、材料費を安くしたり。でもそれでは、ダメなんじゃないか。たとえば1階と2階の面積を同じにすれば、建築コストを安くすることはできる。でもそれではデザインに制約ができてしまう。」
そのほかにも窓枠を無垢材でつくったりした。はじめは結露やカビなどが懸念されるので反対された。ところが実際にはじめてみるとクレームなどはなかった。反対していた職人さんたちも、「やっぱり無垢材はいいね」という意見に変わった。
「本当にいい家を造ろうと思った。そうしたら売り上げはよくなっていったんです。」

これは日本仕事百貨に掲載している会社の多くに共通する姿勢かもしれない。ターゲットをしぼって、そこに最適な商品を投入する、というようなものよりも、自分たちがいかに良いと思うコトやモノを提供できるか。マーケットインよりもプロダクトアウト。元気のない世の中にあって、そんな姿勢で経営している会社は着実に支持されているように思う。
一方でその正反対なのが、旧来の住宅会社なのかもしれない。その多くの寿命は30年くらい。
「僕が帰ってきたときに、山口県に本社のある住宅会社トップ10みたいなもののうち、いま残ってるのが3つか4つくらいですからね。」
ほんの10年前なのに。ほとんどが数字を落としたり、つぶれてしまったそうだ。家に何か不具合があっても住宅会社はない。なんだか売り逃げしているようなものだ。
「よく最近僕が使うのは、『先義後利』と言って、先に義が来て、あとに利が来る。正しいことやりましょう、ということ。ちゃんとみんなに伝わる会社は残ると思うんですよ。住宅業界でも、いまだかつて、ローコスト住宅と言われるものが、長らく生き残ったことはないんですよね。基本的には、急成長と没落の繰り返し。そしてまた、その残党組がワーッとはじめる。」

でも家は単なる「商品」ではない。人の拠り所であり、環境そのもの。
「単純に『モノではない』と思ってるんですよね。家って『環境』なんでしょうね。とくに設計はそうです。そんなにすごいことをしているのに、住宅“屋”とか不動産“屋”って言われるんですよね。それは当時のモラルがどれだけ低かったか。そういうことではないかと。だから、企業も人が付いてこなくて、多くの住宅会社が没落していく…。」
しっかりした家を建てた時代から、工業製品化してしまった中で失われたものをもう一度取り戻す。そうすれば社会やコミュニティもよくなっていく。同じようなスタンスの住宅会社が増えていけばいい、とも考えている。そしたら、デザイン性や人間性で勝負できると信じている。
そのために一人ひとりのスタッフには、自立が求められている。

これは社内の人間関係もそうだし、施主に対しても同じ。対等なパートナーであるべきだし、そうあることで良い家造りができる。
「プロなんだからお客さまの言いなりにばかりなってはいけないのですよ。」
施主が知らない、より良い「選択肢」を提案できるかもしれない。単にゴマをすって、相手の言うなりにモノをつくるのではなくて、じっくり対等に話をしながら一緒につくっていく。
「そのためには、裏付けとなる経験や知識、それにデザインの力が必要になるんです。」
こんなエピソードがある。あるとき他の住宅会社で家づくりをしている方が訪れた。どうやら他の会社の方が「銘建の家も見たら参考になりますよ」と言ってくれたらしい。ところが結局、銘建で家を建てることになった。訪れた瞬間に「この家が良い!」と思ったそうだ。

そのためには理念だけじゃなくて実践することが求められる。入社していきなりできることではないのだろうけど、本当に自分も納得したものをつくりたい、という思いがあれば、自然に知識や経験は身についていくと思う。
具体的な仕事はどのようなものになるのだろう。
営業は、一言で言えばスケジュールをつくる仕事。アポなしで訪問営業をするのではなくて、展示場やオフィスまで来て頂いたお客様の話をじっくり聴くことからはじまる。
人と人との信頼関係を大切にしながら、家族構成や土地・お金の話などを一つ一つうかがっていく。一定の専門的な知識は必要になるけど、銘建はスタッフみんなでお客様の事を考える。みんなの協力を得て、お客様の家造りを進めていく。
もしかしたら住宅の営業というと男性のイメージが強いけれども、銘建のような家造りであれば関係ないと思う。
インテリアコーディネーターは、基本設計されたもののディテールをさらに仕上げていく。内装材や造作などを決めてデザインしていく。
デザインするときも、まずデザインありきではなくて「生活リズム」を聞いていくそうだ。

たとえばバイクが趣味のお客さんには、バイクの手入れができる倉庫をつくる。サーフボードを玄関の横に置けるようにする。子ども部屋は極力小さくして、共有スペースに勉強できる場所をつくることでコミュニケーションできるようにする。
そのほかにも言葉だけでは伝わらないような思いを積み重ねてデザインしていく。
実際に働いているスタッフにも話を伺った。
もともといた不動産会社が嫌になって、青木さんに共感して入社した方や、たまたま時間ができたから訪れたUターンIターンセミナーで銘建に出会った方もいた。

人と人の付き合いで成り立っている会社なんだと思う。
青木さんにはひとつ夢があるそうだ。それは山奥に土地買って、そこにモデルハウスを建てて、畑などもつくること。カフェもつくって、家づくりをまだ考えていない人も気軽に訪れることができるようにする。この場所もまた、人と人が関わる舞台になると思う。
