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スーパーを編集する

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「おいしさっていうのは幸せだと思うんです。その幸せをみんなに提案することをやってみたいと思える人がいいなって思うんですよね。」

このスーパーには、そういった日々の食を大切にしているひとたちが集まっている。

今回は、この「福島屋」というスーパーマーケットの、MPSという商品仕入れなどの担当と、ベーカリーコーナーでパンをつくる人などの募集です。

新宿から中央線にのって東京の西へ1時間。窓からみえる景色が、だんだんのどかになってきた。

羽村駅でおりて、ゆるやかな坂をのぼりながら歩いていくと「福島屋」というスーパーマーケットがみえてくる。道路をはさんだ向こう側には、グループ会社のお花屋さん、レストラン、ケーキ屋さんが並んでいる。どの建物も、街の風景によく馴染んでいる印象がある。

逆にいえば、どこにでもあるような顔をしたスーパーマーケット。中に入っても普通だけれども、よく棚を見てみると見慣れない商品があふれていることに気づく。しかもプライベートブランドが多い。

もともとは八百屋さんのようなお店だったけれど、現在の代表の福島さんの代になり、いい商品を集めたり、商品がなければ自分たちでプライベートブランドとしてつくっていくことで、今の姿になっていったそうだ。

「福島屋」というだけあって、福島さんが経営の方針を決めているように思われがちだけど、現在は若手の社員さんたちが、それぞれ意見を出しながら福島屋をひっぱっていっている。

ただ、「こだわり」を売りにしているお店も多いけど福島屋はちょっと違う。「おいしい」ことをとことん大切にしているんだと思う。

値段が高いからいいもの、というわけではなくて、おいしいから提供したい。そのおいしさも、使われている素材から、つくり手のこだわりまで、たくさん吟味された上でのこと。そんな仕事を当たり前に続けていたら、あるようでなかなかない、そんなスーパーマーケットになったんだと思う。

お店づくりの中心にいるのが、MPSという人たち。聞いたことのない言葉だけれど、MPSとは「ミセス・プロズ・スマイルズ」の頭文字をとったもので、商品の仕入だったり、商品企画、それに講座や教室などの運営企画もしている。今は主婦の方、9名が中心となって活動をしているらしい。

まずは今回募集するMPSのリーダーである樋口さんにお話を聞いてみる。

樋口さんは、8年前からMPSとして働いていて、最近は商品の仕入れ以外にも、商品企画を手掛けることがあるそうだ。

日々、どんな仕事をしているんですか。

「まず、それぞれの人が自分のカテゴリーをもつんです。例えばコーヒーとかはちみつなどの。そしてそのカテゴリーの棚をつくっていきます。私が最近担当したのがデザートの棚なんですけど、プリンやヨーグルトを仕入れて、棚をつくりました。」

「あとは、新しい商品を知ったら、販売するのかしないのかを調べて検討して、売りたいなと思うと、どうやって販売していくのか考えます。その商品のためのPOPをつくるときに、自分がその商品のことを一番知っているわけですから原稿も書きます。だから商品を知ったり、パソコンで調べたり、売り場をみたりすることで一日が過ぎていきます。」

商品と棚を編集してお店をつくっていく。これがMPSの仕事といえるのかもしれない。

スーパーは、なにを売るのかは本部の人たちがデータをもとにきめて、現場の人はその指示に沿って商品を並べていくような、マニュアルで区切られているイメージがあったけど、どうしてMPSの人は自由に売り場づくりができるのだろう。

話を聞いていると、「福島屋」独特のお店づくりが見えてくる。

すると隣にいた常務の篠崎さんが話しはじめた。

「たとえば商品にオーガニックと書いてあっても、それが当たり前の業界と、まったく無縁の業界であれば、オーガニックの定義が異なるわけです。」

「だから原材料からしっかり調べることになるんです。」

経験なども必要でしょうけど、とことん一つひとつの商品と向き合う必要がありそうですね。

「そうですね。だからコーヒーの棚を担当するならコーヒーが好きな人がいいんですよね。そうすればコーヒーの安全性をとことん調べるじゃないですか。ワインも同じ、ワインについて探求したい人がいいんです。」

なんだかその食材といったら、その人!みたいな感じですかね。

「スペシャリティーなんだけど、野菜も買うし、肉も買うし、魚も買う。けど、わたしはコーヒーが一番好きっていう人がいいですね。研究者であると同時に生活者の視点が必要なので。コーヒーだけに没頭するっていうより、普段ちゃんとした食生活をしている方がいい。たとえば日々、料理をつくってるような。」

「結果的には主婦が多いけど、主婦じゃなくてもいいなって思いますよ、ちゃんと料理をつくっていれば。」

たしかに、希少性だとかマニアックな商品を仕入れる「カリスマバイヤー」というよりも、日々を生活する人の視点が大切なんだな。日常で感じられるおいしさこそ、福島屋が提供しているもの。だからこそ、多くの人が訪れるお店になっているんだと思う。

会議室を離れて樋口さんに店内を案内してもらう。

せっかくなのでコーヒー棚を案内してもらった。

「少し高いんですけど、昨日から販売がはじまったものがあって。ドリップパックなんですけど、すごくおいしいんです。」

並んだものと、並ばなかったものの差ってどこにあるんだろう。樋口さんはこんな風に答えてくれた。

「そうですね。まず美味しいことも大切ですし、やっぱりつくってらっしゃる方の思いもあります。最近は有機のコーヒーに取り組んでいますよ。」

店内をみまわしていくと、香ばしい小麦の焼けたにおいとともにベーカリーコーナーが現れる。今回は、本店の羽村の店舗と、薪釜があるレストランなどでパンをつくる人も募集する。

ベーカリーや総菜を中心とした商品の開発をしている田中さんにも話を聞いた。田中さんは二十歳のときから福島屋で働いている。福島屋では2番目に古株らしいのだけど、それを感じさせない柔らかい雰囲気のある方だ。

そんな田中さんにベーカリーの仕事についてうかがう。

「だいたい6時から7時ころからはじまる仕事。パンの場合は生地をつくって醗酵させて焼く、ということが基本的な作業の流れです。だから醗酵させるのに時間が必要なので、どうしても朝は早くなってしまうんです。」

「ここの店でいうと6種類くらいの生地をつくっていますね。そしてそれぞれに最適な生地をつかってパンを焼きます。午前と午後で商品を出していきますので、朝はこのパンとあのパンをつくって、また時間を追うごとにまた同じことを10時くらいからやって、というようにしていくと、15時くらいには製造は終わります。だいたい一日の仕事はそんな感じですね。」

福島屋に並んでいる商品は素材から考えられているのがわかるけど、パンづくりではどんなことを大切にしているんだろう。

「まず、素材の選び方というのはやっぱり違うと思います。価格を押さえるために使う材料を変えるところもあるんですけど、うちはそうじゃなくて、ある一定のレベルの材料を使っています。つくりたいものをつくった結果として、値段を考えていくわけです。だから値段ありきじゃないんですね。値段を安くするためにバターをマーガリンに変えたりとか、そういうことはまずしないっていうのが一番大きな違いかなって思います。」

福島屋のレストランには薪釜がある。電気釜と違って、経験も必要になってくるし手間もかかることが多い。しかも薪釜では天然酵母でパンづくりをしている。釜の温度を調節したり、なんだか専門的で難しそうだ。

「ベーカリーって専門的だから、やってみたい人がいても、自分にできるか心配になる部門なんですよね。やってることそのものは単純ですし、興味さえあればほんと誰でもできるようになるんで、そんなに特殊な技術をもった人しかできないってことではないんです。普通の人たちが年数を重ねてやったら結果的にできるようになるものなんですよ。まず1、2ヶ月もやれば仕事になってくるので、興味がある人はどんどんやってみてもらいたいなって思いますね。」

意外な答えに少し驚いた。パンってよく食べるものだけど、家で生地からつくることはあまりない。やっぱりハードルが高いイメージだったから。

材料選びや商品開発はどうしているのだろう。

「現場からの声というのもありますし、トップダウンも当然あります。この農家さんの小麦粉よさそうだから使ってみろ、とか。」

「今うちで、トップで商品づくりしてる人が78歳なんですよ。おじいちゃん。昭和9年生まれです。今日も働いていますけど、ベーカリー部門の立ち上げ時からたってもらっている人なんですよ。今でも研究熱心で、すごいですよ。僕がこんなものやあんなものをつくってって、一方的にお願いするもんだから、自分のわかんないことがあると休みの日に図書館へいって調べてきたり。そういう風にパンをつくりたい、パンが好きっていうような人がいいですかね。78歳のおじいちゃんに負けないくらいの気持ちをもってほしいです。」

やっぱり、ベーカリーコーナーも変わらずに当たり前のおいしさにこだわっている。誰でもできるとはいっても、かなりのやる気は必要になってくると思う。スーパーのパン屋さんというよりは、福島屋の思想と素材を共有した、独立しているけど寄りそっている、そんなベーカリーコーナーな気がした。

MPSにしてもベーカリーであっても、自分がする仕事はひとつじゃない。仕入れも担当できたり、問屋さんときちんと話ができたり、お客さんと話をしたり、いろんな仕事がある。だからいわれたことはもちろんだけど、自分から考えて動ける人がいいんだろうな。

まずは福島屋の考えをしっかりと知るところから。それにもちろん前提として「食」に対して興味があること。そして、調べること、探求すること、熱中できる人。

おいしさという幸せを届けるために、商品と棚を編集して、お店をつくっていく。福島屋の考えと素材を大切にしながら、素材と向き合ってパンをつくる。毎日のおいしさをとことん考えて追求する。

忘れがちであたりまえのことをずっと続けられる環境がここにはあります。(2013/5/7 up モエミ)
※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。