求人 NEW

風土を伝える人

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

全国区になりつつある新潟県・越後妻有の大地の芸術祭。開催地域の一つである十日町の駅から車で30分ほど進む。

向かう先は柏崎市高柳町にある門出(かどいで)集落。僕がこの集落を訪れるのは6年ぶりのこと。

学生時代に、新潟の友人から「地域づくりに積極的に取り組んでいる村がある」と誘われてやってきたのが門出だった。

集落に着くと、見覚えのある景色が広がってきました。

今回は門出集落で地域おこし協力隊を募集します。

新潟は、2000年代に2度の大きな震災を受けたこともあり、地域活性に力を入れている県とされる。そのなかでも、門出は30年近く前から古民家を改装した民宿づくりなどに取り組んできた、地域でも一目置かれる集落だ。

高柳町は戦後、稲作を中心としてきた。高度成長期には会社勤めをしながらの兼業農家が一般的となった。

次第に市街地へ移住する人も増えるなかで、2004年には中越地震が起きる。

これを期に柏崎市街への移住はさらに加速、過疎高齢化も進行した。現在の人口は約300人。その半数が65歳以上だ。

うかがったのは5月はじめ。田んぼはしろかきがされ、集落内には鯉のぼりが飾られていた。

かやぶきの古民家を改装した民宿「門出かやぶきの里 いいもち」に入る。

時間はちょうど正午。テーブルにいっぱいのごちそうと、集落のみなさんが迎えてくれた。この日集まった人たちは30年近くにわたり、地域づくりに取り組んできた仲間たち。

昼食をいただきながらの座談会がはじまる。

はじめに農業を営んでいる鈴木さんが、門出集落の目指しているところを話してくれた。

Uターンをした鈴木さんは耕作放棄地を引き受け、再生させる農業を営んでいる。

「中山間地の農業は厳しい状況にはあります。ただの人参1本として売るよりも、こういう生活をしている人たちが、こうやってつくっている人参なんだと、物語を届けていきたいんです。すでにそうした農業を営んでいる人もいますが、集落全体で見るとまだまだ。小さな経済につながり、そこから地域の人がよりいきいきとした状態になっていけたらと思うんです。」

「門出は20年以上前から地域おこしに積極的に取り組んできた地域。ただ我々はみんな今ある仕事で手一杯。いなかと聞いてイメージする共同作業をやってはじめて一人前というよりは、来る人が不自由にならんくらいには俺たちが支える。そのかわり我々のできないことを補ってほしくって。」

門出和紙の小林さんが続く。

小林さんは、門出で唯一の紙工房を営む。

ここ門出はかつて、紙づくりが盛んだった地域。

春から秋にかけては米をつくる。冬場には地域で育てたこうぞを原料に、紙すきを行う。そうした生業が行われてきた。

小林さんは40年間の紙づくりを通して、生き方や地域のあり方についても考えている人という印象。

「僕らが行っている紙づくりは、自分ありきではなく、自然ありきなんです。」

この地域では毎年、井戸水が雪解けの4月になると濁るそう。そこできれいな水を使うのではなく、濁った水での紙づくりを考えていく。

「今の時代において求められている紙は?門出でつくる意味はなんだろう?そう考えてきました。」

仙人のような風貌もあって最初は気圧されたけれど、小林さんの話は紙に限らず、生活や仕事に通じるものがある。

「自然に自分が合わせて生活する暮らし方を実践、提案する場所になっていけばと思うんです。それは“百姓”の生き方なんですよね。自然という相手ありきだから、自分の我を押し通そうとしてもなかなか成り立ちません。」

「仕事も同じだと思っています。自分のやりたいことから考えがちだけれど、色々な人と話すことで、何をやらなくてはいけないかが見えてくる。やらなくてはいけないことの方が、やりたいことにつながってくると思う。」

これからやってくる人はどんな風に関わるのだろう。

「地元の人たちには、生きる知恵がすごいあるんですよ。そのことを伝えていってほしい。お互いを活かし合いながらやっていけたらと思います。」

「向かう先は決めているけれど、道のりは一緒の目線でわかち合いながら考えていきたい。与えられた仕事をこなしていくよりも、一緒に百姓仕事をしながら考えていく方が面白いし、いいものができるでしょう。」

魅力を伝えることは土地を知ることからはじまる。

「うちでつくっているのは風土の紙です。風土とは、そこに住んでいる人たちが醸し出すもの。自分がこういう紙をつくりたいというよりも、周り近所のじいさんばあさんたちと付き合うなかで、どういう紙をつくるべきか見えてきました。」

これからやってくる人もまずは地域の人について、山菜採りをしたり、畑仕事をしたり、ときには紙すきの仕事をしてみたり。

そうして地域の人と一緒に、手を動かしていくなかで、風土を知っていく。

門出にはどんな人がいて、どんな資源があるんだろう?

かやぶきの里をあとにして集落を回ってみる。

はじめに、話をうかがった鈴木さんの農場を訪ねる。

農場では若手の育成にも力を入れており、研修生の受け入れも積極的に行っている。

独立を目指して、鈴木さんのもとで農業を学ぶ山崎さんに話を聞いた。

出身は柏崎の市街地。新潟で建築の仕事をしたのちに門出へやってきた。

「いなかにこだわっているわけでもないんです。柏崎のよいところは、山があって海もあることかな。自然に近いところで生活がしたいと思ったんです。」

「そう考えると、門出に楽しそうなものがあると思ったんですよ。まだ自分でも言葉にしきれていないんですが、風景や住んでいる人でしょうか。」

それは、小林さんのいうところの風土なのかもしれない。

知らない土地へ移る不安はなかったんですか?

「最初は広い家に一人で、川のせせらぎが聞こえてきて… 心細いこともありましたよ。でも、次第に同年代の知り合いも増えて。バカ話のできる仲間がいると全然違いますね。」

Iターン者に共通するのが、同世代の友達ができないこと。

けれど、新潟県内では地域おこし協力隊などの形で入ってきたIターン者向けの勉強会、そして県内全体での交流会といった場もあると聞いた。

一人だと煮詰まってしまうことだってあると思う。そのときに横のつながりが見えれば、お互いにいい循環を生み出せるように思う。

門出集落を拠点に活動をしつつ、将来的には近隣の地域と有機的につながっていくことも考えられる。

「この場所は、いいですね。受け入れる文化があるのかな。かやぶきの里も、門出和紙もあるから人がやってくるのがウェルカム、というかもう普通のことで(笑)。人と関わっていくことで生きていく地域だと思います。」

次に訪れたのは創作活動施設と呼ばれている建物。

集落の人たちが今一番必要と感じているのが、気軽に人が集える場。飲みながら、集落のこれからを話し合っていけたらと考えている。

以前は集落内にも飲み屋があった。

ミーティングでまとまらない話は、場をうつして結論を出す。あるいは日ごろ何の気なしに店で集まった面々が話し合う。そんな光景があった。

今も集会場はあるものの、声かけして集まった話合いはどこかぎこちない。

飲み屋がなくなってから、ムラは活力を失ってきたという。

「建物はあるので、ぜひ“場”をつくってもらえたら。」

そう話すのは自治会長の村田卯一さん。

「村と外を、そして地域のつなぎ役にもなってほしい。今の地域づくりは自分たちの代が中心。仕事が忙しくなかなか関われていない若い世代も交えて、これからの門出を話し合うきっかけが生まれたら。地域づくりはそこからはじまると思っているんだ。」

最後に小林さんの紙工房をうかがった。

敷地内にあるテラスで話をうかがう。風が心地よい。川では魚つりをしている人が見える。

工房では、横瀬さん、小館さん。そして小林さんの息子にあたる抄吾(しょうご)さんに話を聞いた。

抄吾さんは、社会人5年目。農文協に勤め、営業として全国の農村を走り回った。実は5月で退職、門出に戻ることを決めている。

一度離れることで、門出はどんな集落に見えたのだろう。

「全国でも、地域を中心になって動かしているのは60代の人でした。そこに若手がどうつながっていくかがポイントなのかと思います。門出が面白いのは外から人が集まってくること。外の人が、地域に住む人となじみながらやっている集落なんです。そういう土地柄はなかなかないと思います。」

たとえばかやぶきの里にやってくるのはほとんどがリピーター。やってくる人たちはお客さまというよりは、家族という言葉がしっくり来るのかもしれない。

宿で1日のんびり過ごす人もいれば、集落のなかを歩き回って顔見知りの家を訪ねる人もいる。

いなかに帰ってきたような、落ち着きを感じる人が多いという。

横瀬さんと小館さんはそれぞれ茨城、北海道からやってきた。

共通する移住のきっかけは、「やりたいことがここにある」ということだった。

横瀬さんに話を聞いてみる。

「学校ではデザインを専攻していました。働くにあたって考えたのは、消費されるデザインには携わりたくないということ。それから、商品パッケージをつくることに留まらず、人と人の関わりや循環を生み出せる。もう少し広い意味でのデザインがしたいと思ったんです。」

現在は本や紙の見本帳づくりといった仕事をしながら、地域の人と人をつなぐデザインにも取り組んでいる。

「生活していて、色々といただくことが多いんです。『これおいしいよ』って隣のおばあちゃんから野菜をもらったり、冬場は家の前を鈴木さんが重機で雪かきしてくれたり。」

「自分はそれに対して返したいという気持ちがあって。鈴木さんに『ちょっと新聞つくってくれねえか?』と引っ張られたのがきっかけで、デザインしました。」

交流型ツアーを行う“じょんのびツーリズムの会”の新聞、じょんのびツーリズムしんぶんはすでに第4号まで発行されている。

4月に北海道からやってきた小館さんは、こう話してくれた。

「来たばかりですけど、ふとしたときに声をかけてもらうことがあって。そういう関わりがすごくうれしいんです。少しずつ門出がいとおしくなっています。もっともっと知りたいです。」

これからやってくる人も、仕事というよりは門出に暮らすイメージなんだろうな。生活のなかに地域おこしはあるのだと思う。

「生活の場だからこそ感じられることが、色々あるんじゃないかな。これから来る人も、門出を好きになってくれたら。伝えたい、よくしていきたいという気持ちは自然と生まれてくると思うんです。」

地域づくりの担い手が高齢になりつつあったり、農業についても今後さらに耕作放棄地が増えてくる可能性もある。

課題は色々あるけれど、まずはこの土地の人たちと話すことからはじまると思う。好きになれたら、きっと充実した門出での生活が待っていると思います。(2013/5/22 はじめup)