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自然が残る沖縄北部で地域おこし支援員の募集です。最近、増えているんですよね、こういう仕事。ぼくが思うのは、単にハコモノをつくったり、プロデューサーみたいな人が打ち上げ花火のようにプロジェクトを立ち上げても、もう難しいと思っているからなんだと思います。
アイデアやコンセプトよりも、地域に根ざして、継続して関わり、つなげていくような『人』が大切なことがだんだんとわかってきている。
今回も、名護市久志地域にどっぷりと入りながら、商品開発や地域資源を活かしたツーリズムなどの地域づくりをしていく人の募集です。

那覇空港でレンタカーを借りて、高速道路を北上する。1時間ほどで名護市に入り、そこからもう少し走らせると太平洋側に面した東海岸の久志地域にある「わんさか大浦パーク」に到着した。
名護市街から近いけれど、今まであまり訪れる機会がなかった地域。観光だと、どうしても西海岸の美ら海水族館や瀬底島、古宇利島、それかもっと北部のほうに行ってしまう。
とはいえ、久志地域も白い砂浜とエメラルドグリーンの海はあるし、河口にはマングローブの林もある。沖縄独特の共同売店もあって、やんばるの地域文化が感じられる場所もある。

まずは深田さんが今回の募集の経緯について説明してくれた。
「1年前から地域の人が主役になって地域づくりできるようにサポートしてきました。するといろいろなアイデアが出てきたんですね。けれども10もの集落があるので、ひとりでは難しい。名護市としても、もっときめ細やかにサポートできる体制が必要だと考えていました。」

大学生になると「やんばる」と呼ばれる沖縄本島の北部地域の研究をすることになり、久しぶりに訪れることになる。すると人口が減っていろいろな問題が生まれていることを知る。
「素敵な地域なのにもったいない。いつか戻ってきて、地域の人たちと関わりながら何かできたら、と思ったんです。それから東京で3年働いて、ルーツに出会って、沖縄で働くことになったんです。でもこの久志地域に関わりたいと、ずっと思っていました。」

そんなときに名護市役所の企画調整課の方や区長など地域の方と出会う機会があった。
「みなさん夢を持たれていたんですね。地域をこうしていきたい、という話を聞いて、すごいと思ったんです。あらためてこの地域で働きたいと思いました。」
はじめはほかの案件が手一杯だったのでお断りしていたのだけれども、区長からどうしても来て欲しいという勧誘は続いた。ほかの仕事が落ち着いたこともあり、ちょうど1年前にオファーを受けて名護に来ることになった。
「地域の人が主役になって地域づくりをしていけるようなサポートを心がけています。自分以外に地域おこしを実践する方を3人募集して、役割分担しながら一緒に働いていければと思っています。」
具体的にはどんな仕事になるんですか?
「たとえば6次産業化などの商品開発や地域の自然や暮らし、行事などを活かしたツーリズム活動などを通して、若い人の仕事をつくっていきたいです。」

地域に想いはあふれている。ただ、ポテンシャルはあるのに活かしきれていない。地域資源の持つ価値に気づいていない人も多い。
それを形にする人が求められている。
支援員になる人は、まずはどういう地域なのか知るところからはじまると思う。食文化なのかもしれないし、まだ知られていない観光資源があるかもしれない。課題ありきで、それを解決していくこともあるだろう。
仕事の範囲はとても広い。
働く上で大切なのは、すでにあるものを引き出したり、見出すという姿勢だと思う。新しくつくるとか、外のものを押し付けるというよりも、発見していくこと。
そのためには草の根のように地域と溶け込む「Grass roots cooperation」の姿勢がスタートになる。
深田さんも地域に住みながら、プライベートでもお祭りなどに参加することで短い期間で信頼を得ることができたそうだ。
それはなぜなのだろう?
すると二見区の区長でもある宜寿次さんが話してくれた。
「深田さんに1番最初に感じたことは、若いんだけど、すごい人の話を聞くんですね。で、話をしながら目がキラキラしているんですよ。普通だったら、興味がなければ全然話を聞かないじゃないですか。」

とはいえ、沖縄って独特の文化がある。その文化は良さであるとともに、外からは入りにくいような印象もある気がする。深田さんだって、もともとは地縁がある。本当に地域に溶け込むことはできるのだろうか。
すると深田さん。
「関わって感じたのは、地域づくりの下地ができているなあと思いました。」
下地?
「いろいろな地域に関わってきて、なかなか物事が進みにくいなあって感じることが多いんですね。でもこの地域は、すごく前向きです。風通しもいい。学生とか、若い人たちなど外から人を連れてきても歓迎してくれます。」

そういう中で、深田さんは自分の意見を言うだけではなく、まずはじっくり話を聞いて、みんなの思いを汲み取ろうとしている。そして求められれば、的確なことを話すことができるんだと思う。
ほかにも大変なことがないか、深田さんに聞いてみる。
「仕事はハードだと思いますよ。ゆったりした田舎暮らしみたいなのは、あんまり期待しないほうがいい。仕事は山ほどあるし、休日もイベントがあります。仕事は仕事、プライベートはプライベートっていう考えの人は多分難しい。仕事も暮らしも全てがつながっているような人がいいと思います。」
たとえばお祭りのときには人手を必要としている。深田さんもそういう手伝いには進んで参加するし、琉球舞踏の練習にも参加してお祭りで踊ることもあったそうだ。

「あと仕事も具体的に決められているわけじゃないんです。誰かに言われて動くというよりも、地域の方に話を聞いたりして情報を集めて、自分で考えて組み立ててやっていける人がいいです。」
たしかに決められたことをやるとか、言われたことだけしていればいいわけではなさそうだ。
「とても主体性が求められる仕事です。」
それでも深田さんは、なぜそんなに積極的に地域に関わるのだろう。ワーカホリックというわけでもなさそうだ。何が深田さんを突き動かしているのだろう。
すると少し考えて、深田さんは次のように話してくれた。
「こういう自然に囲まれた環境にいるだけで、すごい幸せなんですね。村のコミュニティもコンパクトで顔と顔がよく見える。僕にとって、これ以上恵まれた場所はないって思うんです。ここで豊かな暮らしができたら、これ以上楽しいことはないなあと思っています。」

深田さんにとって、地域の人たちや自然に囲まれていることが、なんとなくゆりかごの中にいるように居心地のいいものなんだと思う。
人や自然とつながっていることが、深田さんにとって生きていることを実感することなのかもしれない。
つながりが深田さんの喜びになり、つながりを育むことが仕事になる。それはすっきりとして矛盾がないように思える。
地域振興会の宜寿次さんが、こんな話をしているのが印象的だった。
「久志地域の10の集落で、3月にフラワーフェスティバルを初めて開催しました。それは10の集落が力を合わせて連携していくのが最大の目的だったんです。」
この地域には米軍施設の移設を計画されている。それに賛成するか反対するかで、地域は二分されてしまった。もともと基地問題と関係なかったわんさか大浦パークの整備も、その運営費に米軍再編交付金を充てるという話もあったそうだ。ところが交付金は不交付となり、地域全体で力を合わせて運営していくことになる。

若い人たちにももっと来て欲しい。そのために仕事もつくっていきたい。先輩たちの知恵を活かしながら、子どもからお年寄りまで幸せに暮らせる地域をつくることが求められていること。
久志地域には、大きな可能性があると思います。今まで注目されていなかったからこそ、残っている風景やつながりもある。
その一部になりながら、地域に根ざして生きていくことは幸せなことのように思います。沖縄に縁がない人も、縁ができるいい機会。もし気になる人はぜひ一度訪れてみてください。(2013/5/25up ケンタ)