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ないならつくればいい

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ぼくには地元がない。親が転勤族だったから、1、2年おきに引っ越しを繰り返していて、いろいろな場所に移り住んできた。

だからどこが地元なのかよくわからない。東京生まれだけど、三重や宮崎にいたこともある。実家に帰ってもまわりに同級生が住んでいるわけではない。

littletokyobar01 こんな環境だったから、自分の居場所というものにすごいこだわりがある。

どこかに帰れる場所がほしいと考えて、子どものころは秘密基地づくりに精を出したし、大学に入ってからは建築家を目指していた。でも「デザイン」だけで解決できることは限られる。それならば今度は「お金」を勉強しようと考えた。そのためには建築家に発注する立場になればいいのでは。でも場づくりに大切なことは「お金」でもなかった。大切な手段だけれどもそれだけじゃない。

どこに行けばいいのか。

根なし草が辿り着いたのが、近所にあるBARだった。モヤモヤしていたぼくはいつのまにか毎日のように通っていた。別にお酒が強いわけではないから、酔っぱらうことが目的じゃない。でもここに来るとなぜだか気持ちがやわらいで落ち着いた。

あるときなぜ通っているのか考えてみた。食事やお酒もおいしいし、内装も居心地がいい。けれども答えは「人」だった。つまり僕は、そこに集まる人たちに会いに行っていたのだ。

littletokyobar02 中目黒の商店街の1番奥、5番街に位置するスロージャムというBARには、夜な夜な素敵な人たちが集まってくる。

オーナーのヨッシーさん、バーテンダーのベッキー、一緒にジムに行く仲間たち、隣のお寿司屋さんの大将さん、たまに子犬を連れてくる飲食店オーナー、いつも夜遅く帰ってくるソムリエ、区役所で働いているサッカー好きの優等生。

子どもが店内を走り回っているときもあるし、サッカーの試合になると立ち見もでるほど。お祭りのときに店頭でオーナーのヨッシーさんがつくる焼きそばは名物になっていて、みんな楽しみにしている。

様々な人が交差し、出会い、それぞれに何かを持ってきて、何かを持って帰るような場所。

一時期、ぼくは自分の居場所を地方につくろうと考えていた。桃源郷のように美しい自然、人と人のゆっくりとした関係性。自分探しをするように、ここじゃないどこかを探していたのかもしれない。

でも結局、自分はどこに行っても変わらない。自分は自分。誰かとの関わりの中に自分の役割は生まれて、それがつながっていく。「デザイン」でも「お金」だけで解決できるものでもない。じっくりと時間をかけていけば、生態系のような居心地のいい関係が生まれていく。

新しいプロジェクト「リトルトーキョー」はまさにそんな場にしたいです。

一言で言えば、「もう一つの肩書きがもてる街」をつくろうと思っています。

いくつかの物件と空き地を借りて街をつくり、自由にやりたい仕事をやってみる。

littletokyobar04 たとえば、昼間は営業の仕事をしている人が居心地のいい場をつくるバーテンダーになるかもしれない。人事部で働く方が人を見る目を活かして結婚相談所をはじめてもいい。話すのが好きな人だったら、テレビ局を開設してトークショーの司会をしてもいいし、落語家だってできるかもしれない。いつか音楽をやりたかったという夢をあきらめないで、バンドを組んでライブをやってもいい。俳優になりたければ劇団を立ち上げてもいいし、脚本家だって必要だ。映画祭をプロデュースしてもいいし、とびっきりの野菜を仕入れて週末だけ八百屋をはじめてもいい。選挙に当選すれば市長にだってなれる。

現実社会では、生きていくために仕事をしなければいけない。でも余った時間は何をやってもいいはず。だから自分のやりたい仕事をやってみる。あとから転職することもあるかもしれない。落語家のあとに、映画監督になる人もいるかもしれない。現実世界で弁護士をしている人が、裁判官になることもあるかもしれない。とにかくやりたいことをやればいい。

もし立ち上げ資金が必要な仕事をしたいと思ったら、税金という名の年会費がリトルトーキョーの予算になるので、予算案を議会に提出したらいい。新聞社を立ち上げたいなら、必要な費用を算出してどうして必要なのかみんなに説明する。市民で議論し、可決されれば、晴れて新聞社を立ち上げることができる。

そういった経験が現実の仕事につながっていくと面白い。転職する人もいるだろうし、勤務先で新しいプロジェクトを任されることになるかもしれない。もし起業するときには、リトルトーキョーでの経験が活かせるだろうし、普通にクラウドファンディングするよりも説得力を持たせることができるだろうからお金も集まるはず。

littletokyobar03 さらにリトルトーキョーでは、毎日のようにイベントを行い、自分の仕事を磨いていけるようなスクールもあるし、ギャラリーやショップもできる。そういう場所でリトルトーキョーの仕事で得た仮想通貨を使えるようになったら面白いとも考えている。

オープニングパーティーのときがピークになるものはやりたくなかった。消費されてしまうような場所ではなく、醸成させていくような、時間をかければかけるほど味わい深くなるような場所をつくりたい。

だからこそ、リトルトーキョーは顔の見える場所にしたいです。そして、そのために最も大切な役割を担うことになるのは、やっぱりBARだと思います。

そうそう、長くなりましたが、今回募集するのは、ここで働く人です。昼間はコーヒースタンドとして営業していて、夜はBARになる。

まずはどんなお店にするのか一緒に考えるところからはじめたいです。

littletokyobar06 たとえば、ぼくはこんな毎日になるのかな、と思っている。

出勤すると、まずは掃除。きれいにすると気持ちも引き締まって穏やかになる。コーヒーの香りがリトルトーキョーに広がっていく。オープンすると常連さんがやってきた。だんだん一人ひとりの好みもわかるようになってきた。しばらく顔を見せない人がいると、どうしているのかな、と思う。ときには転職して勤務先が遠くなった人も営業ついでにやってくる。そうすると話は尽きない。最近の話から思い出話まで盛り上がる。

いくつかの波が終わると、もう夕方になっている。バーテンダーがやってきたら交代だ。今日はもう少し居たかったので、カウンターに座ってバーテンダーと話をする。仕事の話もするけれども、たいていは共通の知り合いの話。あの人は結婚することになっただとか、相手はここで知り合った人だとか。

littketokyo07 そうこうしていると、昼間コーヒーを買ってくれたお客さんもやってくる。カウンター越しに話をするのと、同じ側に座って話をするのは、違うようで同じような。

夜が更けていくとイベントに参加した人や仕事を終えた人がどんどん集まってくる。はじめて訪れた人も気軽に入れるだろうし、黙々と一人で飲むことだってできる。みんなが相手を尊重して、人と人の関わりを大切にしながら、自由にやっている。楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

多くの人にとって、虎ノ門は朝出勤して、夜になったら帰る場所。働くためだけの場所。でも都市の中にスキマみたいなものができたら、平日に通うだけの場所じゃなくなる。新しい出会いもあるだろうし、もう一つの地元ができるようになると思います。もし転勤して東京を離れることがあっても、また帰ってこれるだろうし。

littletokyobar08 ぼくはこういう場ができたらいいなあ、と思います。みなさんも想像してください。どういう毎日になるのか、どういうものを提供するのか。自由に考えてください。それを形にしていきたいです。

お店で働くとともに、隣にあるイベントスペースの企画や運営もしてもらいたいなと思っています。とはいえ、まずはお店の仕事をじっくりするところから。一緒に考えながらつくっていきましょう。

あとは日替わりで食事をつくってくれる人も募集したいです。普段はケータリングやワゴンなどで販売している人に、ランチや夜に食事を提供してもらいたいです。役割分担としては、コーヒースタンドスタッフやバーテンダーが飲み物をつくる、それとは別に食事をつくる人を募集したい。

飲み物を提供するときには、スタッフをフォローしてほしいけれども、食事の売上はすべてもっていってもらっていい。とくに家賃や水光熱費を請求することもしません。健康的でおいしい食事を提供してもらえればうれしいです。

もしここで食事を提供した人が自分のお店を出すことになったら、スタッフや常連を誘ってかけつけたい。そういう関わりがじわりじわりと広がっていけばいいなあ、と思います。

リトルトーキョーはずっと続けていきたいプロジェクトです。ぼくはそんな光景を眺めながらBARの片隅にいられればうれしいし、たまにバーテンダーにもなりたいです。

そして、ぼくにとっても、みんなにとっても、ふらりと帰れるような場所にしたい。東京に地元をつくりたいんです。

これはぼくの個人的な願いですが、リトルトーキョーに参加する人にとっても、それぞれの何かを実現できる場所になったらいいな、と思っています。

littletokyobar05 ないならつくればいい。やりたいならやればいい。そんな風にいい予感がしてくるのがリトルトーキョーです。一緒につくりましょうよ。(2013/6/24 ナカムラケンタup)