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中川政七商店(なかがわまさしちしょうてん)は、もうすぐ300周年を迎えようとしている老舗の和雑貨屋さん。もともと、江戸時代に奈良で栄えた「奈良晒(さらし)」の問屋として創業した伝統あるお店で、今では麻製品を中心に生活雑貨を販売している。
品質の良さは300年前から変わらないけれど、その「伝え方」は時代に合わせて変化していく。それが、中川政七商店の考え方。だからこそ、3世紀も愛されてきたのだと思う。
13代目の社長である中川淳さんは、正しく商品を伝えるためには、直接お客さんと会話ができる直営店が必要だと考えた。「遊 中川(ゆう なかがわ)」「粋更kisara(きさら)」「中川政七商店」など、異なるコンセプトのブランドを増やしていったのも、商品を届けるべき人に届けるため。
北は北海道から南は九州まで、全国に店舗が広がってきています。そのお店に立ち、商品を伝える販売スタッフの募集です。
東京から新幹線で京都を経由して、電車でJR奈良駅へ。まずは、そこから歩いて15分ほどのところにある本社を訪ねた。
採用のことをまとめている林さんにお話を伺う。
「伝統工芸というものが守られすぎて、高尚になって誰も使えなくなってしまった、という現状があるんですね。それを、普段の生活のなかで使えるような身近な存在していきたい、というのがわたしたちの考えなんです。離れてしまっているところに、もう一度橋をかけたい。だから、お客さんとコミュニケーションがしっかりとれて、明るく笑顔の素敵な人に来てほしいと思います。」
口が上手いだとか、売り上げを達成できるとか、そういうことではなく、伝えていきたい、という気持ちがあるかどうか。その気持ちがあれば、商品がどんなものか、どんな用途に使われるのか、しっかり伝えていけると思う。
中川政七商店に共感し、伝えていきたいと思ってくれる人に来てほしい。林さんはそう考えている。
話をきいてみると、林さんも、もともとは店舗の販売スタッフだったそうだ。新聞の折り込みチラシをみて応募し、いくつかの店舗で接客を任されてきた。
「店舗で働いて2年ほど経ったとき、社長から『本社で働かないか』と声をかけられたんです。こんなチャンスはもうないだろうし、お茶汲みでもいいからやりたい!と思いました。」
そこから、本社での仕事がはじまった。
会議の議事録をとったり売り上げ分析をしたり、という社長の秘書的な業務からはじまり、営業や採用担当、店舗の統括など、その都度求められる仕事をしていって、今に至る。本社に来てから、もうすぐ6年になるそうだ。
アルバイトから社員になるのは、めずらしいことなんですか?
「珍しくないですよ。アルバイトから社員になった人は本社にも店舗にも沢山います。今の店長とスーパーバイザーも、全員アルバイトから社員になっています。」
それに、「社内公募制度」というものもある。新店舗の店長、ブランドマネージャー、それからデザイナーやコンサルティング案件のアシスタントを増員する場合は、社内に公募がかかる。そこで手を挙げると、面接に進むことができるという仕組み。
日々仕事をしていても、販売スタッフの経験や視点が他の仕事にも生かせる!と思う場面は多いそうだ。
「実は、今そこで作業しているのも店舗スタッフなんですよ。」と林さん。
「店舗の商品が本社へ戻ってきたので、開封して検品しているんです。商品のことを知っているから、他のスタッフがやるよりも絶対に効率がいいですよね。みんな立ったまま作業しているのも、さすが販売で鍛えられているだけありますよね。」
商品のことを知っている以外にも、販売スタッフならではの強みがある。それは、常にお客さんの声を一番近くで聞いていること。
例えば、お客さんの「こんなのあったらいいのに」という声から、新製品のアイデアが生まれることもある。そんなときは、本社に提案してもいい。実際に、林さんやアルバイトの方の企画が通ったこともあるそうだ。
「販売スタッフは、お客さまと一番近いところにいる最前線の仕事なんですよね。本社勤務だと気づかないこともいっぱい知っているんです。そういうリアルな視点を、伝えてほしいと思います。」
会社とお客さんを結ぶ役割だから、会社にとって重要な存在だと思う。
「そうなんですよ!商品を考え、作り出している人ももちろんすごいけれど、それを伝えて実際に売っているのは、販売スタッフなんです。もっと、大切な役割だということを知ってほしいと思っています。」
林さんは今、販売スタッフの地位を底上げしていけるような教育のしくみをつくっているところ。
「一筋縄ではいかないことだとは分かっているのですが、うちの会社からやっていきたいと思います。社内でノウハウをつくってうまくいけば、モノを売る部分で他社のお手伝いもできるようになるでは…と。会社のビジョンである『日本の伝統工芸を元気にする!』につながる大切なステップだと思っています。」
販売職の可能性を探して広げていこうとしている会社だから、ここまで、という線を引かなければ、色々なことができる。
先のことを想像しながら販売の仕事をしたい人には、おすすめできる仕事だと思う。
実際に今、店舗で働いているスタッフたちにも、話を聞いてみたいと思った。
今年の4月にリニューアル・オープンした「遊 中川(ゆう なかがわ)」本店が奈良町のなかにあるのだけれど、そこから電車で移動できる範囲で、いくつかお店を回ってみることにする。
電車に乗って大阪まで。まずは、地下鉄天王寺駅から歩いて5分の場所にある「遊 中川」あべのand店(6月にあべのハルカス近鉄本店に移転オープン予定)へと伺った。
「遊 中川」は、日本の文化や風習を今の暮らしに合わせたデザインにして販売しているお店。
色使いや形は、落ち着いているというよりも、かわいらしく親しみやすい。名前の通り、ちょっと遊び心があるところが特徴だと思う。
お店の前にかかるのれんも、とてもカラフルで目立っている。
お客さんに番茶の試飲を出したり、会話を交わしたり、レジを打ったり、商品を整えたり。わたしがここへやってきてからずっと、お店のなかをいったりきたりして忙しそうな長谷川さんを呼びとめて、質問してみる。
一日中立ちっぱなしで、大変じゃないですか?
「たしかに、椅子に座れるのはお昼休みくらいかもしれないですね。でも、ずっと動いているので、同じ場所にずっと立っているよりもしんどくないんです。小さな雑貨が多いので、物を運ぶ作業などもそこまで大変ではないですし。」
なによりも接客が楽しいそうだ。
「前の仕事も雑貨の販売だったのですが、がーっと一日が終わる感じで、ゆっくりお客さまと一対一で話すことがあまりなかったんです。でも、ここではそういう機会が多いんですね。『濃い接客』ができるのが楽しいです。」
長谷川さんに会いに、「ちょっと寄ったの」と来てくれるお客さんもいる。ご近所に愛されるお店になっているんだな、と感じた。
ふたたび電車に乗って、次はJR大阪駅へ。地下通路直結の「ハービスPLAZA ENT」に入る。この百貨店のなかにあるのが、「粋更kisara(きさら)」。
「粋更kisara」は、自分のために、大切な人のために贈る「美しい暮らし」を提案しているブランド。
生活雑貨のお店だけれど、カジュアル過ぎず少し上品な雰囲気。
「隣がブライダルのお店なので、引き出物を選びにくるお客さまも多いんです。贈り物は、『折形』という白い和紙に包んでお渡ししています。」
そう話してくれたのは、店長の平野さん。
平野さんは、もともとグラフィックデザインの仕事をしていたそうだ。仕事を辞めて、アルバイトとしてここで1年働いたあと社員になり、その後店長になった。
「前の仕事は、人とあまり話さない仕事だったんですよね。ほとんどがデスクワークでした。でも、そのときは違和感を感じてなかったんです。ここへ来て初めて、前は違ったんだ!と気付きました。」
「仕事に行きたくない日って普通あるじゃないですか。今までは結構あったのですが、ここへ来てからないんですよね。行くのがけっこう楽しみなんですよ、毎日。初めての方もいれば、いつも来てくださる方もいる。色々な方がお店に来てくださるので、毎日が違うんです。毎日発見ですね。」
「わたし、ここにきて変えてもらった人です。親にも言われました。目や表情や雰囲気が全然違うって。」と平野さん。
中川政七商店の、どんなところが好きですか?
「あまり、合わないと感じる人が社内にいないんです。みんなで集まって食事したり、関東に出張に行ったりもするのですが、いい人が多いなと感じます。みんな、なにかと気にかけてくれるんですよね。お店に買物に来てくれる方もいます。」
あまり合わない人がいないのは、みんなが中川政七商店に惹かれて集まってきたという、共通のものを持っているからかもしれない。
「類は友を呼ぶ、じゃないですけど。多分みんな、商品から透ける会社の想いに共感しているんだと思います。」
最後は、京都の四条駅からすぐの場所にある、「中川政七商店」LAQUE四条烏丸店へ。
平日の夜は、仕事や学校帰りのお客さんで賑わっていた。
「中川政七商店」は、生活に根ざした機能的で美しい「暮らしの道具」を提案するブランド。はさみや鍋、メガネなど、こだわりのメーカーがつくった道具が並んでいる。
レジでは、スタッフの方たちがなにやら作業をしていた。
何をしているんですか?
「商品の羽箒なのですが、柄を包む金色のテープが目立ちすぎてしまうので、糸に巻き直しているんです。」
頼まれたわけでもないのだけれど、気になったのでやっているんです。そう店長の石井さんが教えてくれた。
本当に小さなことだし、もしかしたら誰も気付かないかもしれないけれど、些細なことでも気になったことは改良していく。
商品に対してもお客さんに対しても、ひとつひとつ手入れをしながら働いているのが素敵だと思った。同じお給料のなかで、いくらでも手を抜こうと思えば抜けると思うのだけれど。
きっと、中川政七商店が、販売スタッフのことを大切に思っているから、販売スタッフも、中川政七商店を大切にしたくなるのだろうな。本社と3つのお店を回ってみて、いい関係があるように感じた。
多分、東京のお店でも、名古屋のお店でも、どこにでも共通するものがあると思う。まずは近くにあるお店を覗いて、確かめてみてもいいかもしれない。
「類は友を呼ぶ」と平野さんも言っていたので、中川政七商店の考え方に共感できれば、きっとここで、大切に働いていけると思います。
(2013/6/5 up ナナコ)