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まちをデザインする

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「タウンマネジメント」という言葉を聞いたことがありますか?

直訳すると、まちの管理。はじめはドライで固い印象を受けました。

けれど有限会社クオルの話を聞くと、住民との対話に基づき運営までを手がける、地道で丁寧なまちとの関わり方が見えてきました。

クオルでは、タウンマネジメントに携わる人を募集します。

1 天気のよい朝、表参道のカフェ“タウンデザインカフェ神宮前”を訪ねた。

ここは、クオルが運営するカフェ。「カフェから広がるまちづくり」をコンセプトに、実験の場としてはじまった。

さっそく、代表の栗原さんに話をうかがう。

栗原さんは、もともと建物が好きで建築家になりたいという思いから建築学科に進んだ。

バブル崩壊後にあって、建設を受注するよりも、まちづくりの企画構想から携わりたいと思い、不動産会社の森ビルに就職をする。

いずれは独立をしたいと思っていた栗原さん。

転機となるのが、お台場ヴィーナスフォートや六本木ヒルズの立上げから運営までを手がけるなかで出会った、タウンマネジメントだった。

「それまでは、一商業施設として捉えられていたエリアを、一つのまちとしてとらえて管理・運営していく手法です。」

「たとえば六本木ヒルズを一つのまちと見立てます。映画イベントに六本木アートナイト。イベントや話題発信を通して、まちのブランドをつくります。そして、人が集まることでまちをにぎやかに楽しく、活性化させるんです。」

2 そうした取組みは、不動産会社としても利益につながった。

六本木ヒルズに行きたい、住みたい、働きたいという人が増えることで商業施設の売上げや資産価値、家賃が上昇していくからだ。

栗原さんはイベントやプロモーションの企画運営を行ってきた。なかでも先駆けとして青色LEDをもちいた、けやき坂イルミネーションは、冬の風物詩となっている。

タウンマネジメントが、これからの日本のまちづくりに役立つ。その可能性を感じた栗原さんは、2005年にクオルを立ち上げた。

「タウンマネジメントによる地域のブランド化、ひいては地域のファンを増やすことで、まちのにぎわいをつくっていきたいと思いました。」

現在進行中のプロジェクトが1,230戸、約3,000人が住む大型マンション“Brillia City 横浜磯子”だ。

ここでイベントディレクターとして働く人を募集する。

3 もともとは横浜プリンスホテルの跡地。旧皇族の邸宅であり、歴史建造物の貴賓館が並ぶ由緒ある土地だ。敷地内にスーパーやクリニックといった施設も入る。

この敷地を一つのまちとして、タウンマネジメントを取り入れて、新しい地域コミュニティをつくりあげていく。

栗原さんは日本の地域コミュニティの現状についてこう話す。

「日本全国で空き家問題、高齢者の孤独死といった問題が起きていますよね。これまで行政主導で展開してきた町内会というコミュニティは、もう破たんしているんですよ。」

はじまりは明確にはわからないものの、町内会は人口が増加している大正頃から存在したもの。

時代も、地域のあり方も変化しているなかで、支えるシステムは以前のまま。

「仕組みを変えた方がいいと思っているんです。一つのモデルとしてタウンマネジメントを進めています。」

a 従来の町内会とはどう違うのだろう。

「まず体制としては、町内会は住民の相互扶助に基づき、ボランティアで行われてきました。一方タウンマネジメントは、住民がお金を払い、専門の人を立てるんですよ。」

コミュニティの生まれ方も違うものになる。

これまでの花見や納涼祭といった集まりには、どこか義務的な側面もあったという。

機能している時代はよかったけれど、現在では親世代は集まるけれど若い人は参加しない、といった世代間の隔たりも見られるようになった。

今回磯子で考えているのは、興味関心をキーワードにしたコミュニティづくり。

たとえばワインセミナーを開いたり、農園をやってみたり、さらには、義務である防災訓練を楽しめるイベントとして開催することを考えている。

5 「町内会では同じ地区に住んでいるから仲良くしましょう、でした。磯子では興味関心をきっかけに、世代を問わず交流ができると思います。そうしてサークルが生まれ、広がることがまち全体のコミュニティ形成につながると考えているんです。」

将来的には、磯子での取組みが一つのモデルとなり、他の地域で活かされることも考えられる。

マンションは今年の8月には一部の入居がはじまり、来年の2月には商業施設もふくめてオープンする。

クオルでは、タウンマネジメント事務局として3名ほどが現地に駐在して活動する予定だ。

その一人、内原さんにも話を聞いてみる。

6 都市計画のコンサルタントを経て、クオルで働きはじめて3年目になる。現在はタウンマネジメントに携わっている。

「前職では行政に対して10年後の市のあり方、商店街の活性化といった計画書をつくっていました。どうしても机上で終わってしまっているもどかしさがあって。住民と同じ目線で、直接話したいと思ったんです。」

内原さんは学生時代に学んできたワークショップを、現在はタウンマネジメントの現場で用いている。

「住民をはじめ、まちに関わる人が活発に交流しているのがよいまちだと思います。みんなで対話してつくりあげるワークショップを通して、住民同士のコミュニケーションが盛んになってほしいです。」

これから働く人は、まずは内原さんをサポートするところからはじまる。

このまちにはどんな人たちが住むのだろう?

「いわゆる郊外型マンションはファミリー層中心ですが、磯子に関しては意外に高齢者も多いんですよ。近隣の団地や一戸建てから引っ越されるんですね。色々な世代がいる、ほんとうのまちになりそうです。」

「イベントも、子どもからお年寄りまで、幅広く受け入れられるものを考えていきます。」

b すでにモデルルームでは、プレイベントとしてさまざまな企画が行われているそうだ。

たとえば鳥の巣箱をつくるワークショップでは、子どもたちがつくったものを実際に敷地内の木に設置する予定だ。

他にも盆栽、アイシング、プリザーブドフラワー。さまざまな企画を行ったという。

それから一つの目玉にしたいと考えているのがマルシェだ。

8 地元のパン屋さんにケーキ屋さん。それから、三浦半島の野菜や海産物。そうした地元の旬が集まるマルシェを目指している。

現在はモデルルームでプレイベントとして開催されている。

マンションオープン後には、屋外で定期的に行う予定だ。

これから一緒に働くイベントディレクターは、屋外のイベントから、少人数のワークショップまで企画から準備、運営まで任されていく。

どんな人と働きたいだろう。

「今回はオープンまで半年しかないんですね。もちろん私たちも色々教えていきますが、コミュニティイベントの立上げや、企画運営の経験が必要です。地域交流やまちづくりを仕事にしたくて、色々模索している人と働きたいですね。」

さらに、今回はタウンディレクターも募集する。

「タウンディレクターは、企画から設計そして運用まで関わっていきます。どこかのスペシャリストである必要はなくて、全体を理解してディレクションすることが大事です。」

具体的にいえば、図面を起こせる技能は必要ないけれど、場のイメージを共有するためにラフ図を描いて、クライアントに伝えることが求められる。

「でも、最初からすべてできる人はいないじゃないですか。だからまずはコンサルや建築設計、不動産系。いずれかの基礎がある人だと理解が早いですね。」

9 関わる範囲は、川上から川下まで、覚えることは多い。

けれど、タウンデザインの素地となる経験があれば、働きながら学んでいくことはできるという。

そのときに大切なことを聞いた。

「現場で、失敗も成功もたくさん経験することです。私自身いっぱい失敗をしてきましたが、そのなかで学んだことがいまに活きています。」

「はじめてのことばかりだと思います。わからなくても逃げずに、しっかりと受け止めること。そしてどう解決するかを努力して考えることで、自分の幅は広がっていきます。」

これから働く人は現場に入りつつ、栗原さんとともに企画の仕事もしていくことになる。

そして将来的には、自分でプロジェクトを担当できるようになっていく。

10 タウンディレクターはどのように仕事をしているのだろう。

内原さんは、担当した神田淡路町の再開発プロジェクト“ワテラス”について話してくれた。

かつては学生街としてにぎわったこのエリア。大学の郊外移転にともない、まちのにぎわいも失われていった。

現在は、町会の平均年齢も高く、小学校が統合されるなど、少子高齢化の進むまちだ。

また、神田祭りは日本三大祭りの一つにも数えられるけれど、実態としては神輿の担ぎ手がおらず、全国から人を集めざるをえない状況にある。

再開発においては、住民や学生、就労者といったまちに関わる人たちが交流できる新しいコミュニティづくりが求められた。

11 そこで地域住民が考えた「学生を活用した地域づくり」というコンセプトを、“学生マンション”という形で実現化させた。

「地域の活動に参加する代わりに、ワテラス内のマンションに相場よりも安価で住めるというものです。祭りの準備や運営の手伝い、それからゴミ拾い、あるいはフリーペーパーを制作したり。学生の活力をまちに取り入れてにぎわいをつくろうと考えました。」

Exif_JPEG_PICTURE このプロジェクトは今年の4月に立ち上がった。

一見はなやかに思うけれど、実際には住民とじっくり対話して関係を築くことで、はじめて計画を実行できるという。

タウンマネジメントという言葉にはスマートな印象を感じていたけれど、実際には地道な準備が大切な仕事だと思う。

「表現方法はクリエイティブでも、仕事は8割が調整です。住民からそのまちの特徴を引き出していく。クライアントが求めることを実現していく。過程においては、なによりも相手との対話が大切です。」

最後に、栗原さんがこう話してくれた。

「磯子はタウンマネジメント導入の提案にはじまり、4年間携わってきて、ようやくいま形になろうとしています。そして、今後もタウンマネジメントとしてずーっと。まちに関わり続けていきます。それがクオルの地域と関わる姿勢だと思います。」(2013/6/26 大越はじめup)