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それぞれのhana

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

“hana”は、ハワイの言葉で“仕事”という意味があるそうだ。なんだかいわゆる“仕事”のイメージよりずいぶん柔らかい印象になる。

当たり前だけれど、世界中に仕事がある。そしてみんな、それぞれの目的に向かって働いている。お金のため。家族のため。やりがいのため。

性別も年齢も、障がいがあってもなくても関係ない。誰だって、できるなら自分の仕事に誇りを持って働きたい。そんな働き方をして稼いだお金でものを買いたい。

千葉県木更津市に、そんな仕事を生み出しながら、自分自身もそんな風に働けるかもしれない仕事を見つけました。

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東京から木更津へは、「さざなみ9号」で1時間。電車のほかに東京や横浜から直行バスが出ているそうで、都心からのアクセスもいい。

少し閑散とした駅前を抜け、矢那川を越えて歩いていくと小学校が見えてくる。道路を挟んで向かいに、「地域作業所hana」がある。

毎日、精神や知的に障がいのある方が利用者として通い、英字新聞を使った「新聞エコバッグ」、マザー牧場のお土産として人気のお菓子「石けりコロロ」など、オリジナル商品の制作やブランド雑貨品の受注生産、それから畑での野菜づくりなど、さまざまな作業に取り組んでいる。

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設立から丸7年。「仕事に人を当てはめるのではなく、人の個性に合わせて仕事を創り出していきたい」という施設長の想いから、利用者の数が増えるとともに、仕事の数も増えていった。

ここに通う60名の利用者の方それぞれが、やりがいを持って心地よく働けるように考えたり、仕事がスムーズに進むようにサポートすることが、今回募集する「作業指導員」の仕事になる。

1階のフェアトレード商品やオリジナル商品を扱うショップで、施設長の筒井さんに話を伺う。

「『働く』ことを通して感じる喜びって、給料だけでは計ることができない価値も沢山あるじゃないですか。自分がつくったものがお客さまの手に渡って喜んでもらえたり、有名なお店で売られているんだと思ったりとか。僕らも、お金のためだけに働いているわけじゃない。利用者の方にとっても職員にとっても、みんなが自分の仕事に誇りを持ってもらえるような作業所にしたいと思っています。」

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お金だけが全てではないけれど、仕事に誇りを持ってもらうには、あまりにも福祉作業所等で働く利用者の方の工賃が低すぎるという社会問題もある。

福祉施設で作業に関わる障がいのある方の全国平均工賃は、1ヶ月13,000円程度なのだそうだ。

つくる商品の価値を高めれば、仕事の対価として正当な金額が支払えるようになる。

そのために筒井さんは、オリジナルのブランドづくりを意識して、百貨店や都内のセレクトショップに商品を扱ってもらえるようなラインナップや品質を目指しているそうだ。

今は、企業からの受注生産の割合が多いけれど、今後は自分たちで新しい事業を起こしていきたいとも考えている。近い将来、障がいのある方が携わることができる飲食店をつくる計画も進めているそうだ。

新しく入る人には、日々の作業を補助するほかに、そういう新しい取り組みも手伝ってもらいたい。

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「これからはじめる事業のことを考えると、飲食だったり商品開発だったり、雑貨屋さんに勤めていた経験のある方だったり、違う経歴を持っている人のほうがいいかもしれません。」

「福祉の経験は求めません。それは入ってから学べばいいと思います。同じ病名でも、同じ障がいでも、本当にひとりひとり違います。だから、ひとりひとりと向き合う気持ちがある人ならば、福祉の経験がなくても、どうしたらその人が上手く仕事ができる環境をつくれるのか考えていくことができると思います。」

筒井さん自身、この仕事をはじめるまで、障がいのある方と関わる機会なんて一切なかったそうだ。それに、木更津という地とも縁があったわけではなかった。

神奈川県の横浜で生まれ育ち、東京の大学に通っていたところ、地域活性化の専門の先生にプロジェクトに誘われたのが木更津との出会い。

木更津駅前の空きビルで、市民の起業を支援するサポートセンターを開くことになり、当時大学2年生だった筒井さんは、そこに常駐して運営管理をしていたそうだ。

そのなかに、福祉の相談もちらほらあった。初めて障がいのある方やご家族と話をするなかで、彼らが困っていることの1つが、『仕事がしたい』ということだった。

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「だったら今自分に何ができるのかなって。コンサルティング的に外部から支援するのではなく、自らもプレイヤーとして行動を起こすことで、お世話になった木更津の人たちに恩返しできるのかもしれないと思ったんです。」

大学卒業後に、完全に木更津へ拠点を移し、起業した。

「今は、24時間365日この仕事です。それくらいやらないと、やっぱり全然解決しない世界なんです。最初はもっとすぐに成果が出ると思っていたけれど、やってみたらそんなに甘いものではありませんでした。だから、少しでも利用者さんの工賃が上がるように、一緒に地道に努力を重ねていける人がきてくれたら嬉しいです。」

次に、職員の初芝(はつしば)さんに話を伺った。

初芝さんはhanaを立ち上げた時からの職員。結婚、出産を経て仕事に復帰し、今は現場リーダーとしてスタッフをまとめる立場にある。

もともと広島で生まれ育ち、京都の大学を出て、筒井さんが立ち上げた起業支援サポートセンターに就職。広島では平和活動に携わっていたそうで、そこで縁のあった方からこの仕事を紹介されたそうだ。

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「まさか今、自分が福祉の仕事をしているなんて、当時は思ってもみませんでした。」笑顔が太陽みたいに明るくて、本当に元気な方という印象。

感情をぶつけ合うよりも、きちんと議論をしてお互いの妥協点を見つけたいタイプ、と自身のことを話してくれた。

仕事に全力だし、それがゆるやかにプライベートともつながっている感じ。たまに旦那さんやお子さんを職場に連れてくることもあるそうだ。

福祉とか福祉じゃないとか、障がいとか障がいじゃないとか、そういう垣根を飛び越えて、「人としてどうあるべきか」という話ができる人なんだろうな、という気がした。

話を聞いたあと、施設を見学させてもらう。まずは、1階にあるお菓子をつくる厨房へ。

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ここでは、「石けりコロロ」というスペイン菓子のポルボローネをモチーフにしたお菓子をつくっている。

これはパティシエ×福祉施設×作家のコラボレーションで商品を産み出す「テミルプロジェクト」の一環としてはじまったもの。

菓子工房アントレのトップパティシエ髙木康裕シェフが考案したレシピをもとにhanaが製造し、それを絵本作家の村上康成さんが手がけたパッケージに包んで販売している。

同じ千葉県のマザー牧場で採れた牛乳を使っていて、マザー牧場のおみやげとしても大人気なのだそうだ。

材料をデジタルスケールで決められた重さきっかりに計り、それをコロコロと手作業で丸めていく。この正確な作業によって、ほろっとした独特の食感が生まれる。

次に2階に上がり、もう1つのオリジナル商品である、不要になった英字新聞を活用した新聞エコバッグの制作過程を見せてもらう。

バッグの底の部分になるマチをつくっている方がいた。角を合わせて、きちっきちっと正確に折っていく。折り紙が苦手なわたしからすると、かなり高度な作業に見える。

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そうしてできたバッグは、丈夫でお洒落ということでよくメディアでも取り上げられている。「笑っていいとも」で紹介されたときは、問い合わせが殺到して大変だったそうだ。

ほかにもいくつかの受注作業があり、シールを貼ったり、パッキングしたり、カットしたり、テーブルに分かれてさまざまな作業が行われていた。利用者の方の作業にノルマはなく、ご本人が1日のうちにできるぶんだけ取り組むそうだ。

「毎日、ひたすらポルボローネを丸めたり、ひたすら紙を折ったり、検品したりと、本当に地味な作業が多い仕事です。そのなかで、例えば10個しかできなかったらそれを明日は11個にするためにどういう支援や工夫をすればいいのか。彼らが地域のなかで幸せに生活できるだけのお金を渡すことができるように、一緒に考えてくれる人に来てほしいと思います。」

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もう1人紹介したい人がいます。ここに勤めて4年になる三瓶(さんぺい)さん。

三瓶さんはもともと、大学卒業後東京で働き、その後地元の千葉へ帰ってきた。職業訓練を受けていたところ、実習でhanaに来ることになり、その縁で働きはじめた。

役割は、「工場でいえば工場長みたいな感じ」だそうだ。お客さんからの仕事の依頼に対してみんなの力でどう応えられるかを日々考えている。

これは初芝さんから聞いた話だけれど、最初三瓶さんは、「やり方教えて下さい」という感じで、自分から考えようとしなかったのだそうだ。だから、「聞くんじゃなくて、その方法をつくり出すのが私達の役割でしょ!」と叱咤されることもあった。

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その後だんだんと、三瓶さんの働き方が変わってきたそうだ。自分に担えるところはどこだろう?と積極的に探すようになってきた。

「例えば、新聞エコバッグ1つつくるのに、作業を20個に分割して、20人でつくるんですよ。厚紙や持ち手となる紐を切ったり、新聞を貼り合わせたり、バッグの形に折ったり、シールを貼ったり、穴を開けたり。ひとりひとりの持つ力とそれぞれの作業を照らし合わせて、どうしたらよりよい制作ができるか考える必要があります。」

みんなにとって良いように。精一杯考えても、ときには苦情がくることもある。

とくに精神疾患の方は、自分の気持ちを整理するのが苦手。そのぶんストレスが溜まってしまい、感情が爆発してしまうことがある。そういうときは、家族や相談支援事業所と連携をとりながら、少しずつその人を知っていくしかない。

「最初はいっぱいいっぱいでした。僕の場合は、最初は何も分からず、周りに助けてもらったんです。職員にも利用者さんにも。助けてもらって、自分も助けられるようになった。それまで、自分の仕事以外にはまったく関心がないというタイプだったと思います。でも今は、ギブ&テイクというか、だんだん、人と一緒に仕事をしていく醍醐味に気付いてきたように思います。」

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「支援」というよりも、職員も利用者も同じ目標を持って、一緒に仕事をつくる、という感覚が、ここにはあるのだと思う。

だから、職員ひとりひとり考えることが求められるし、障がいや福祉についての色眼鏡なしで、「その人」にちゃんと向き合える人がいい。

そんな人なら、ここで人の“hana”をつくることができると思うし、自分の“hana”も見つけられると思います。

最後に、筒井さんが言っていた言葉で印象的だったものを紹介します。

「ここで働く人の共通項があるとすれば、謙虚さと誠実さ、かもしれません。何が正しいかなんて人それぞれだし、自分の正しさを振りかざすことで相手を傷つけることもあると思うんです。相手を変えようとするのではなくて、自分が変わるという意識を持ってほしいな、と思っています。どうしたら相手に自分を受け入れてもらえるのかを考える。それが、みんなが気持ち良く働ける環境をつくり出すために、大切な考え方だと思います。」(2013/7/2 ナナコup)