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「東京のまちはいつも違う顔を見せてくれて、飽きないんですよ。エリアによってまったく別の顔があること、朝と夕方で表情を変えることは、この仕事についてから知ったんです。」1999年に劇場公開された「メッセンジャー」という映画を知っていますか?
この映画のモデルとなった会社が東京・西麻布にあります。
メッセンジャーは急ぎで配達の必要な荷物を、自転車やスクーターに乗って集荷して届ける人のこと。
僕自身クロスバイクで通勤しているのですが、混み合った道路をメッセンジャーがさっそうと駆けていく姿は見ていて、いつもかっこいいなぁと思います。
東京のまちでは、ごく日常的に目にするようになったメッセンジャー。
今回は自転車とバイクの両方で募集をします。
僕は一人でひたすら走るイメージを持っていました。けれど、実は営業がとても大事だったり、チームで働く実感があったり。外から見ていては気づけなかった、たくさんの要素のある仕事でした。
株式会社ティーサーブが誕生したのはいまから20年前のこと。当時、メッセンジャーという仕事はほとんど知られていなかったそう。
会社をはじめた副代表の田中さんに話をうかがった。
「私と、代表の池谷はそれぞれ大学を中退して。外資系企業でアルバイトをしていたんです。そこで、急ぎの書類を届けるメッセンジャーの存在を知りました。」
「東京にいると、電車よりも自転車の方が楽で早かったりするんですね。これは企業のニーズもあって、仕事にしていけるんじゃないかと。先に池谷が会社を辞めてメッセンジャーをはじめたんです。私も、サラリーマンをずっと続けるのは性に合わないなと思っていたこともあって。池谷と会社を立ち上げました。」
はじめは2人が自らメッセンジャーとして、ポケベルに連絡が入っては、集荷・配達に走る毎日。
そんなある日、ニューヨークではメッセンジャーという仕事が普及していることを新聞で知り、池谷さんと田中さんは現地を訪ねることにした。
英語もほとんど喋れず、身振り手振りでのやりとりだったけれど、メッセンジャーの仕事を目の当たりにしたことは、日本で仕事をしていく上で自信につながった。
ちょうどその頃から外資系企業を中心に少しずつ依頼が増え、人を雇いはじめる。
そして現在では、180人ものメッセンジャーが働くようになった。
そもそも田中さんが自転車に興味を持つようになったのは、高校生時代にスポーツタイプの自転車がはやったこと。
「欲しくて欲しくて。あこがれがあったんですね。それで自然と仕事に結びついた面もありますよね。だから、いまで言うところの起業家意識はまったくありませんでした。」
それからニューヨークで印象的だったことが、もう一つあるという。
「交通手段における自転車の位置づけの違いでした。アメリカでは車と自転車が道路をシェアしていて、自転車にも市民権があったんです。一方日本では、道路を走るのか歩道を走るのかもアイマイ。言ってみれば、地位が低かったんですよ。そんなこともあり、事業として成功させて大儲けしようというよりも、自転車というものをもっと広めたいと思った。それがはじまりです。」
ほんの20年前には自転車の通行ができないレインボーブリッジが誕生した。
今でこそ、自転車が道路を走るのは当たり前のことになりつつある。
そこには、メッセンジャーや自転車好きの人たちの地道な取組みの積み重ねがあるようだ。
ここで、メッセンジャーがどのように仕事をしているのかを見せてもらう。
訪ねたのは、ディスパッチャールーム。
「20人のメッセンジャーがチームとなって、1つのエリアを回っていきます。彼らをまとめるのが、ディスパッチャーです。ティーサーブとしては常に10ぐらいのチームが動いているんですね。」
ディスパッチャーは、お客さんからオーダーを受けると、最適なデリバリーのできるメッセンジャーに無線で連絡をとる。そして集荷・配達の指示を出していく。いわば司令塔のような存在だ。
驚いたのは、田中さん自ら、ユニフォームに着替えてディスパッチャーをしていたこと。
「メッセンジャーの気持ちはいつでも共有してやっているつもりですよ。いま西麻布を走っているメッセンジャーを呼び戻してみましょうか。」
そう言って田中さんはモニターを見ながら指示を飛ばす。
10分ほどすると戻ってきたのが、メッセンジャーのJPさん。
早速話を聞いてみる。
名前はみんなそれぞれ決めているんですか?
「そうですね。ニックネームを決めていて。その方が覚えやすいし、面白いですしね。」
JPさんはもともと神宮前でアパレル関係の仕事をしていたという。ときおり、外を走るメッセンジャーの姿を目にしては「自分もいつかやってみたい」と思っていたそう。
そうしてメッセンジャーの仕事についたのは、8ヶ月前のこと。
「毎日何が起きるかわからなくて。どんどんのめり込んでいくんですよ。前はすごい時間をかけていたのが、ある日ふと『こっちから行ったら早いんじゃない?』とか『こんなまちもあったんだ』とか。いつも発見があるんです。」
「それから、チームでやってる感じはありますよね。走るのは一人ですけど、まちなかでバッタリ仲間と会うと嬉しいですよ。お互い笑顔で『どう?』って感じで。あとは、ディスパッチャーとのやりとりが大きいかな。」
ディスパッチャーの南陽さんにも話を聞いてみる。
「ひたすら走っているだけだと、孤独に感じることもあると思うんです。そんなときに無線を通じて、冗談を言ったり誕生日の人を祝ったりするんです。道路状況をシェアすることもありますよ。ディスパッチャーの仕事は、メッセンジャーがよいサービスを届けられるための状況をつくることなんですね。」
ディスパッチャーはみんな、メッセンジャーからはじめている。自身の経験もふまえ、メッセンジャーの大変な面についても話してくれた。
「天候に左右される仕事でもあります。たとえば強い雨の日なんかは、大変です。むしろ席を離れて、雨に打たれていた方がよっぽど気が楽だっていうぐらい。だからこそメッセンジャーが仕事を終えて帰ってくると、本当に安心します。」
「いいデリバリーができたときはお互いに気持ちいいし、大変なときも一緒に共有しようとする。無線を通して、すごくこう、チームでやっている感じがありますね。」
実際のスタッフ同士のやりとりを見ていても、若い人たちが中心となり、和気あいあいと仕事をしている印象を受けた。
南陽さんは一緒に働くメンバーについてこう話してくれた。
「ほんとうにいろいろなやつがいるんですよ。コーヒー好きで自家焙煎している人、画家や、将来は舞台役者になりたい人… 年齢も学生から40歳近くまで。約200人いるので、仕事に限らずいい仲間もできるかと思います。」
週末には一緒にツーリングに出る仲良しメンバーもいれば、一人で黙々とデリバリーを極めていく人もいるという。
ところで、メッセンジャーには向き・不向きってあるのでしょうか。
「よく、自転車好きであればOKと思われがちなんですが、意外とそうでもなかったりするんですよ。自転車部でバリバリ練習してきた人と、営業やデリバリーといった社会人経験があってママチャリしか乗ったことのない人。どちらが向いていると思います?」
「メッセンジャーの仕事って走ること、プラス営業なんです。脚力はあるけれど、トラブル対応に戸惑うこともあります。体力はまだまだだけれど、地図を読むのに慣れていたり、お客さんの要望を汲み取ることが上手な人もいるんですね。」
自分で考えて営業することと体力の両方が求められるんだな。学ぶことはいろいろあると思う。
そして現在はサービスのエリアが広がるにつれて、バイクでのメッセンジャーも展開している。
「基本は、自転車と同じです。チームを組んで、みんなでデリバリーをしていきます。バイクが好きな人は、ぜひスクーターメッセンジャーになってもらえたらと思います。」
「どちらも、お客さんに『ティーサーブのメッセンジャーはいつも気持ちがいいね』と言ってもらえるように心がけていますね。」
「メッセンジャーは限られた時間のなかで、新しいサービスの紹介や、ニーズに合わせたよりよいプランの提案を行います。そこで、服装や態度の良し悪しがお客さんに与える印象はすごく大きいと感じているんです。」
気持ちのよいデリバリーのためには、教育にも力を入れている。
入社して最初の1週間は、オリエンテーションを行う。
そこではティーサーブのサービス内容を知る座学にはじまり、安全な走り方や故障時の対応といった実技までを教わる。
また研修後にデリバリーをはじめてからは、先輩メッセンジャーについて接客を学ぶ機会も設けている。
最後に田中さんは、これから働く人に伝えたいことがあるという。
「実は少し前までメッセンジャー業界は、価格競争が繰り広げられていたんです。デフレのなかで、価格ありきで会社を選ぶ風潮もありました。ただ、ティーサーブはなんとかサービスの質を維持してきました。」
「いまは少しずつですけれど、お客さんの意識も安かろう悪かろうではなくて。大事な書類を早く、確実かつ安全に届けてほしいという方向に戻りつつあります。メッセンジャーってやっぱり、人ありきの仕事なんです。今後は、もっとよいサービスを届けていきたい。だからこそ、いい人と出会いたいです。」
いろいろな入り口があると思います。
社会に出る前に、責任のある仕事をこなす。チームで働くことを実感する。色々な仲間と出会う。そこで得るものは多いでしょう。
また、社会人経験があり、体を動かす仕事がしたい人にとっても、自分の経験や力は活かされてくると思います。
メッセンジャーを経て、ディスパッチャーや本社での仕事に就くこともあるそうです。
まずは、メッセンジャーからはじめてみてはどうでしょう。(2013/8/8 大越はじめup)