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ものを大切にする仕事

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「ものを大切にしていく心を伝えていきたい。」

karf(カーフ)という家具屋さんの島田さんの言葉です。

取材が終わってから、これってどういう思いなんだろう、と考えた。世の中にある「もの」の多くは誰かの仕事の結果でもある。それを大切にしたい、というわけです。

karf02 karfではつくばに新しくつくろうとしているカフェと家具屋のスタッフを募集しています。

島田さんたちの言葉からは、働く思いがじんわり伝わってきました。ぜひ読んでみてください。

目黒駅を降りて権之助坂をくだっていく。大鳥神社を過ぎるとkarfはもう目の前。2000年からこの場所にいるからなのか、軽やかなようでいてどっしりとした安心感がある。家具屋さんが並ぶ目黒通りでも、気持ちのいい空間。

karf01 3階の奥に事務所がある。その手前にあるテーブルで、代表の島田さんに話を聞くことにした。

今からはとても想像できないけれども、もともと国鉄で働きはじめたのちに、だんだんと今の仕事に近づいていった方のようだ。その歴史は「ものを大切にしたい」という思いを突き詰めていった過程なんだと思う。

「いわゆる準公務員を辞めて、雑貨を扱う問屋さんの営業に採用していただいて。それが雑貨業界に入ったきっかけです。本当に好きな仕事ってなに?っていういわゆる『自分探し』をしたときに、ものが好きだったので。」

karf01 「ところが雑貨業界って非常にサイクルが早い。キャラクターが新鮮なうちはすごい売れるけど、新しく売れるものができると、商品そのものの価値すら認めてもらえなくて。返品するから新しいものを入れてくれ、と言われてしまう。もう少しじっくり向き合えることはないかな、と考えていたんです。」

そんなときに営業の途中で偶然に出会ったバック屋さんがあった。小さなアトリエで行われるものづくりに、理想の形がイメージできた。

さらにバッグよりも息が長く、消費されないもの、ということで家具に行き着いた。まずはお客さんと家具工房をつなぐ仕事をはじめることになった。

「家具のオーダーメイドですよね。今から25年くらい前、1980年代後半。」

仕事をしていくうちに変化はありましたか?

「オーダーメイドですから、言われたものを作るという作業。たとえば写真をもってきてもらって、それに基づいてつくる。ぼくの意思はあんまり反映されないし、『こんなの本当につくるの?』なんて思うこともあった。自分でつくらなくても売っていそうなものもあったし、結婚のお祝いだからって、自分の名前をいれてほしいなんてことも。」

オリジナルをつくることの大切さを実感して、10坪ほどのショールームを借りて、家具を数点並べることをはじめる。設計事務所にも営業していたけど、バブルは崩壊して設計事務所の仕事は減っていった。

「自分でお客さんを直接つかまえなくてはいけないな、と思いました。それだと10坪は小さいんですね。せっかく雑誌に出ても『これだけですか?』ということになってしまう。」

印刷工場跡を借りて、店を大きくすることにした。これが今のスタイルの原型となる。

「このときが20年前ですね。今じゃリノベーションって言葉があるんですけど、知り合いの設計士に相談しても『ちゃんと内装を直そうと思ったらとんでもないお金がかかるから、カーテンでも吊っちゃえば?』みたいなことを言われたんです。けど全く自分のイメージと違ったので、当時いたメンバーと仕事が終わったら直して。合計700万円くらいで3階建ての建物の外壁の塗装と窓枠変えて。全てやりました。」

そこには6年いた。そのあと今の場所に移転して、ずっと仕事をしている。

karf04 すぐに消費されてしまうものよりも、暮らしに寄り添うものを追い求めてきた歴史のように思った。

これからはどうしていきたいのか聞いてみる。

「基本的な理念としては、ものを大切にするということを伝えたいんです。」

ものを大切にする。

「自分たちのおやじの世代は、柱に使う木材のことも、冬に障子を貼り替えることも当たり前のようにやってきた。でもそれが一切なくなってしまった。何かどこかで伝わらなくなってしまったように思います。」

karf05 「ぼくらはビンテージの家具も売っていますけど、修復した家具は『道具』として使ってもらいたい。流行とかではなくてね。だから過去に売ったものを買い戻して、また修復して売ったりもしますし。ものを長く使ってもらいたい。傷だらけで愛着の湧いたものと接していくのが、人を大事に思うとか、関係性を大切にすることにつながると思っている。」

ものを大切にすることが、人を大事に思うこと。

それって、もっと言えば誰かの仕事を尊重するということだと思う。さらに自分の仕事も誰かに大切にされるものでありたい、という思いがあるんじゃないか。島田さんの話を聞いていると、そう感じた。

そして、つくばという東京から離れた場所にお店をつくることになった。

「僕自身も地方の出身者だからなのか、それとも年齢のせいなのか・・・?今後の展開を考えたときにローカルなエリアに活動範囲を広げてみたいと数年前から思い始めていたんです。ず~っと東京でやってきましたから、違う環境で自分たちがどの程度認めてもらえるものか試してみたくなったのと、小さくても企業ですから成長してきたスタッフに次の活躍の場を与えると言う意味もこめて出店を決意しました。今回はカフェを併設した新しいブラックボードへの挑戦ですので、スタッフは今からワクワクしています。」

karf06 目黒のお店も都内にしては大きいと思うけれども、つくばはもっと広々とした敷地にある。もともとファミリーレストランだった場所をリノベーションして、雑貨とビンテージ家具の販売、そしてカフェをつくろうとしている。建物は100坪の大きさで、駐車場も広い。だからこそ、理想を実現しやすい環境にある。

「ビンテージ家具って、向こうで買ったものをコンテナに入れて、船で運んでくるじゃないですか。それで、東京に着いたら車に乗せて倉庫に持っていく。必ずビンテージの家具屋さんって、倉庫をもっているんですよ。ここのお店の一番のメリットは倉庫とショップが兼ねられるところですね。将来的にはそこにワークショップもつくりたいと思っている。」

「最後のひと手間をどこまで自分たちでできるか。横浜にもワークショップをもっているけれども、すべて目の届くところでやりたいんですよね。トレンドというものも頭には入っているけど、トレンドじゃない形にしたいんです。」

こんな場所で働くのはどういう人がいいのだろう。島田さんは次のように答えてくれた。

「商人道ってあると思うんです。それは基本的に外しちゃいけない。お店がきれいになっていないとか、植木に手入れが入っていないとか。当たり前のことに対してはうるさいんですよ。」

まずは基本があるわけですね。

「そうです。やはり我々はお客様商売ですから、コミュニケーション力と素直で明るいことが第一ですね!それから、家具を運んだり、カフェで働くのは体力もいりますけれども、繊細な感覚が必要です。おしゃれ好きでセンシティブな方がいいですね。」

karf07 カフェはどんな人がいいでしょう?

「食べることって大事なことだと思う。家具・インテリアということだけではなく、広義で捉えて生活者と寄り添っていくようなことをすべきじゃないのかな。地方に行くと大きな商業施設と外食チェーンばかりじゃないですか。ちゃんとこだわりをもっても事業として成立させることはできると思うんです。」

「カフェはこの1店舗で終わらないですよ。だからまず価値観が共有できて、僕以上にカフェに対してチャレンジ精神と情熱を持って取り組んでくれるような人に出会いたいですね。そして将来は飲食部門の中心になってほしい。」

次に目黒のお店で働いている砂子田さんにも話を聞いてみた。もともとまったく異なる業界にいたという意味では、島田さんと同じ経歴の持ち主だ。

「営業のサラリーマンをやっていたんです。お店に飛び込んだりして。人と接するのが好きなんですよね。でもお店をまわっているうちに、自分がお店にいる立場になりたいなと思うようになった。」

karf08 インテリアが好きだったこともあって、家具屋さんの求人を探すことにした。入った会社では、はじめこそインテリアの仕事だったけれども、途中からアパレル部門になってしまった。

「やっぱりインテリアの販売がしたいなあという思いを忘れられず、またいろんなところを探したんです。」

そうしてkarfに出会った。第1印象はどうだったのだろう?

「おしゃれなお店だなと思いましたよ。今は入ってから4年目ですが、前に自分は大企業というところにいたので、そういう意味では材料の仕入れの話だったりとか、実情の厳しさだったりとか、すべての過程を見る機会が多い会社だと思います。そうして自然に商品に愛着がわくのでしょうし。」

仕事の大変なところはどんなところですか?

「楽しいことでもあるんですけど、自然のものを使っているから、見た目は同じでも木目がちがったり、予想もしなかった割れがでちゃったり、それをお客さまに理解してもらうことが大切です。対生き物だな、って思います。前向きにこだわって仕事をすればとても楽しいですよ。」

karf09 「あとうれしいのは、このソファがあってよかったよ、とか、テーブルが1個入ったことで生活が変わったとか、早く家に帰りたくなったとか。こういう言葉をもらうときですね。いい意味で大きく生活を変えることができるのがこの仕事だと思います。」

最後にあらためて島田さん。

「マネーゲームみたいにうまくやってスイスイっていうような暮らしをしているのがかっこいいっていう時代が少し前にあったけど、それはなくなりました。何やっても大変だけど、同じ苦労でも好きなことをやっていたほうがいいかなと。」

「もういっぺんライフスタイルを見つめ直したいです。初めて来てくれた人が『こんな空間見たことないなー』って思ったり、海外の空気を味わえたり、コーヒーを淹れているのを見て『コーヒーってこんなカッコイイの?』って思うことが職業観にもつながってくるし。これからは住宅もやりたいですね。残していけるような建物を建てたいです。」

karf10 島田さんはより長い目で見たい、と考えているようです。じっくりものを大切にできるようにするために、karfにとっても大きな転換点だと思います。

自分の仕事を大切にしたい方、いいタイミングです。そうそう、今働いているスタッフのみなさんも、勤続年数長い人が多かったですよ。人も大切にする会社のように感じました。(2013/9/21 ナカムラケンタup)