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舞台裏の主役

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紙、ガラス、陶器、アルミ、革、布、羽、パソコン。ときには誰もプリントできると思っていなかったものにもプリントする。そんな新しいものづくりをしている会社があります。

東京・恵比寿に、33年つづく「光伸プランニング」

独自のプリント技術をつかって、巨大な屋外広告やショップのウィンドウディスプレイを制作したり、さまざまな素材にプリントをしてミュージアムショップのグッズなどを制作しています。

今回は、そんな新しいものづくりをする人の募集です。

1 恵比寿駅からゆるやかな通りを5分ほど歩くと、光伸プランニングが見えてくる。到着すると、代表の原さんが迎えてくれました。

光伸プランニングはもともと原さんのお父様がつくった会社。原さんは、昨年代表を引き継いだ。引き継ぐ以前に自分で立ち上げた会社もあり、現在はその2社を連携させて、屋外広告のように大きなものから、グッズのような小さなものまで、プリントを通して多面的に事業を展開している。

2 「屋外広告をつくったり、グッズをつくったり、かけ離れたことをしているように見えるかもしれません。けれどお客さんがもっている想いだったり、つくりたいものを、どういう風にしたら形にできて、上手くプリントして届けられるか、というところで共通しているんですよ。」

プリントや印刷というと、本やカタログのように、同じデータを何千部も印刷する、というイメージがあった。

「僕も前職は大手の印刷会社の営業だったので、そのイメージはあります。会社の規模としては必然なんでしょうけど、以前は、読まれるか読まれないかわからないチラシだったりカタログを何万部と刷っていました。けれど、実際に読まれてるのが10%以下だということを知ったときに、『あれ?』って思ってしまったんですね。」

苦労して印刷をしても、実際にどう届いているのかわからない。そして分業がしっかりされていたので、つくったものがどう相手に届いているのか、最後まで見届けることができなかった。

3 「そのときどきに、空間や店舗にあわせた1点ものをつくったり、ミュージアムグッズのようにその場のためのものをつくるほうが僕は好きなんだと思うようになっていきました。」

お客さんとより近い関係で、最後まで関わって仕事をしたいという思いから、光伸プランニングで働くようになった。

「同じものをつくるということがほとんどないので、そういった意味ではやることも多いですし、知識も必要になってきます。ときにはプリントするだけじゃなくて、一緒に話し合って、制作方法を考えたり、こういう方法だったらできますよ、という提案をすることもあります。」

今回募集するのは「D-print」という事業の担当者。いろいろなものに、少量からプリントすることを得意としている。あるイベントがきっかけになって生まれたそうだ。どういう経緯ではじまったのか聞いてみる。
「2005年に銀座のギャラリーでチャリティーイベントがおこなわれたんです。270名のアーティストの方が参加して、それぞれジーンズの柄のデザインを考えて。それを、一本一本プリントしました。前面だけのデザインもあれば、後ろ面までデザインがあるものもあって、かなり大変でしたね。そしてそのジーンズを受注で販売もしました。それまでは屋外広告やディスプレイのプリントがメインだったのですが、そのときはジーンズに囲まれながら仕事をしていました。(笑)。けれど、これをきっかけに、作家の方々が『こんなものにも印刷できる?』と面白がってくれて。自分の作品もつくってみたいということで、お話をいただくようになったんです。」

4 そのジーンズが実際に売れていく姿をみて、事業としての可能性も感じる。このイベントをきっかけに美術館でのグッズ制作の依頼などもくるようになった。

「僕たちは大量にものをつくるより、少量でいろんな種類のものをつくることを得意としています。なので、何パターンかのデザインを少しの量からつくれて、少なくなったら追加で注文できるスタイルが、美術館さんと、とても相性がいいんです。」

つぎに、D-printで製造スケジュールを考えたり、スタッフのまとめ役をしている飯塚さんにもお話を聞いた。口調がとても柔らかく、困ったらなんでも相談できそうな雰囲気の方。前職では、カメラの仕事をしていたそう。
5 どんな風に日々働いているんでしょうか。

「どんなデザインなのか、どんな素材に印刷するのか相談をいただくところからはじまります。プリントしてつくりたいものを考えているけれども、それができるのかわからなかったりするんですね。」

「このお相撲のバッグでいうと、素材は相撲協会さんにいただいて、うちのスタッフがレイアウトや文字の提案をしたりしました。秋場所から販売されるんですよ。」

6 ポーチや鞄などの布製品から、ガラスや革、コルク、陶器など、印刷する素材はたくさんある。一体どうやってプリントをしているんだろう。

「印刷する素材は様々なんですけど、使っている印刷機は同じものなんです。でも、印刷するまでの下準備は素材によって違ってきます。印刷機自体は最先端のものなんですけど、下準備の部分はすごくアナログですね。」

アナログ?

「例えば、ポーチなんかでいうと、中が空洞なので、詰め物をして、印刷面を平らにしたり、印刷中にインクが飛ぶこともあるので、飛んだインクがつかないように、マスキングして準備したり。そういう地味な作業も多いですね。」

プリントが終わったら、ガラス製品だったら磨いたり、飛んでしまったインクがあったら削ったりして製品の仕上がりを確認する。その次に、製品を一つひとつ梱包し、そのままお店に並べられるように、ものによってはバーコードを貼付ける作業などもあるそうだ。

7 「僕はここで働きだしてから、つくる、考えるっていうことがどんどん好きになっていきました。アートや美術にはそこまで詳しくなかったのですが、スタッフの中には作家さんもいるので、自然とそういう話になることも多いですね。」

大変なことはどんなことですか?

「毎回同じものをつくるわけではないので、覚えることがたくさんあることです。細かい作業も多いです。どうやったらもっと効率よく、仕上がりがきれいにプリントできるか、みんなで考えながら作業しています。」

「でも同じものをつくり続けるというよりは、新しいものをつくる方が僕は楽しいですし、一つひとつ、どうしたらうまくつくれるか考えることが好きですね。それがうまくいったときが一番嬉しい瞬間なので。」

IMG_0534 お二人にお話を聞いていて感じたのは、依頼を受けて制作するだけではなくて、プリントを使ってできることを日々模索しているように感じた。

そう話すと、代表の原さんは迷いなくこう話してくれた。

「やっぱり楽しいんでしょうね。クリエイターではないので、デザインも自分たちでするわけではありません。けれど、お客さんがこういうものつくりたいんだとか、こういう風にしたいんだということを、どうすれば実現できるのか考えていきたい。同じものが何百個も何千個もなくて、ひとつだけのものだったり、その空間だけにしかできないものをつくる。条件や環境が一つひとつ違う中で、最適な方法を考えてご提案することが、すごく面白いんです。」

「これが自分の趣味だけだったら、広がりが生まれないかもしれません。けれどもぼくらはいろいろなものにプリントするという事業をしているわけです。自分たちが想像もできないようなものの相談を受けることもあります。それが形になって、人の手に伝わって、使われていく、あるいは記念として残っていく。それがとても魅力的ですね。」

そんな同じところにとどまらない思いが、『MONOPURI』という新しい事業にも広がり、展開していっている。

MONOPURI 「D-printの製品は、ものとしてはとても魅力的だと思うんです。けれど、鞄というものにプリントされている絵というのは、鞄のためにデザインされたものではないですよね。絵を変えてしまえばこれが北斎になろうがゴッホの絵になろうが、絵が好きだからお客さんは買ってくれるんです。鞄自体がほしくて買ってくれるのではなかったりするんですね。」
言ってしまえば、ものがガラスでも布でもなにに変わってもプリントは成立する。だからこそ、様々な種類のものをつくれるのがD-print。けれど、そのものでしか成立し得ないプリント、そのプリントでしか成立し得ないものをつくってみたいという思いがでてきた。
そして2年前から、『MONOPURI』というプロジェクト名で、モノをつくるプロダクトデザイナーとプリントするデザインを考えるグラフィックデザイナーがタッグを組んで、モノとプリントの組み合わせでしか成立し得ないものを生み出す実験がはじまった。

「もちろんお客さんのつくりたいものを支えるということが僕たちの得意分野です。けれど、世の中のトップランナーたちは常に新しいことを求めています。その方々とお仕事をして希望に応えていくことで、今まで想像もできないようなものが形になる。『こんなものもつくれるんだ!』ということを知ってもらえれば、『こういうものづくりもできるかも?』というように思ってもらえる。するともっと面白い試みができると思うんです。」

MONOPURIでつくったものがD-printの素材となって、D-printにもいい影響が広がってきているそうだ。
ここで働く人はどんな人が向いていますか?

「受け身で作業だけしていればいいという人より、ものづくりに対して興味関心が高い人がいいです。作業って捉えるとルーチンに思えるかもしれないけど、素材はまだまだたくさんあります。つっこみどころもたくさんあるんです。スタッフにはうちの技術とか印刷機械を好きに使っていろんなプリントを試していいよと言ってあるので、そういうことに興味関心がある人がいいですね。」

8 ここでしかできないプリントを楽しみ、実験しながら深めていける人にぜひきてほしいと思います。

今年の8月から、成城学園前にこれまでD-printでつくったきたものが一同に展示されているギャラリーがオープンしたそうです。週に数回、こちらのギャラリーで働くこともあるそうなので、興味のある方は一度訪れて、D-printでつくられてきたものを手に取ってみてはいかがでしょうか。(2013/09/09 吉尾萌実up