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追いかけて、追いついて。

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

仕事を誰かに継ぐ。これほど難しいことが、人生には待ち構えている。

ずっと黙々と歩いてきた人にとっては、振り返ってみればずいぶん遠くまで歩いて来たなあ、と思うだろう。そして、まだまだ歩きたい自分と、この景色を誰かに共有しておきたい自分に悩むのかもしれない。

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来年で30年を迎える奈良くるみの木。この場所をつくった石村由起子さんは、今こんなことを考えているんじゃないかと感じました。

まずは石村さんがいるところまで黙々と歩ける人、そしてそこから石村さんといっしょに歩き、そのままバトンを受け取る人を募集します。次に繋げたい、残したい仕事です。

京都駅を出発した近鉄特急は30分ほどで奈良に到着した。

歴史と人と街が折り重なって、ゆっくりとした時間が流れている。

くるみの木は石村由起子さんが29年前にはじめたお店だ。中にはカフェや雑貨屋などがあり、すっかりこの街に溶け込んでいる。タクシーの運転手さんで、知らない人はいないほど。全国からこのお店のために人が訪れるし、オープンしたらあっという間に席は埋まってしまう。

もうしばらくしたら閉店という夕方の店内で、石村さんに話を聞いた。

「今、私は元気に仕事ができています。でも、この先もこれまでと同じような30年を過ごせるかというと、どう考えてもそれはないと思っています。自分の体を考えればあと10年。もっと頑張りたいという気持ちはいつもあるけれど、目の前に現実はやって来ているという気持ちも芽生えています。」

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「店は毎日動いていて、考えるべきことは山ほどあります。そして店のこと以外にも様々な仕事の依頼をいただいているので、求めていただけるのならば力になりたいと…。でも、それは自分の体を酷使することにもなるのもよくわかっています。」

店をはじめた頃は、お客さんもなかなか来ない。カフェなんて言葉がまだ一般的ではなかった時代だから、喫茶店みたいな感じで「ママ」なんて呼ばれたり。困ったこともたくさんあった。

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「出口が見えない真っ暗なトンネルを歩いているような日々もありました。でも県外から何度も訪れて下さっているお客様がいたり、食べ終わったあとに美味しかったと喜んでくださる姿を見て、私がやっていることは間違っていなかった、と思い始めました。」

「いつもいつも店のことばかり考えて。しょうがないんでしょうね、自分の店だから。私のすべてだから。」

私のすべて。

そう言ってしまえるのはなぜなのだろう?それは石村さんは夢を見ているからなんだと思う。

若いころから、いつか店を開いたらこんなものを使いたい、と想像していたこと。自分の目と心が喜ぶものを集めてきたこと。そして、手にした人に喜んでもらって、幸せになってもらうこと。

はじめはとてもささやかなものだったかもしれない。植物を育てていくように、誰かを思いやる幸せは大きな木を育んで石村さんにも幸せを届けてくれたんだと思う。

だからこの「くるみの木」を育てていく人、そして石村さんの感性を求めてやってくる、いろいろな仕事の依頼にも一緒に力を発揮できる人が必要なんです。

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「店のことは、もちろんとても大切。信頼できるスタッフと、これからのくるみの木を一緒に作っていきたい。」

信頼できるって、どういう人ですか。

「お客様にもっと喜んでいただきたいと常に考えて行動できる。くるみの木らしさは何かをよく理解し、どうすべきか正しく判断して動くことができる。当たり前のことだけど…」

お店の目的を共有していて、そのためにすべきことがわかっている。

「この人に任せておけば安心、となるまでまず頑張ってほしい。信頼しているスタッフがいれば、その分私は外からの仕事の依頼にももっと目を向けられる。前に進むことができる。」

どんな依頼があるのですか?

「奈良をはじめ全国のいろんな地域から、まちづくり、空間づくりのプロデュースの依頼が増えています。また、それぞれの地方に残る素晴らしい伝統を今の暮らしに活かすアドバイスを求められたり。若い人材を育成したり、まちづくりの担い手を育てるような場所づくりも進行しています。そういった店の運営以外の仕事にも、会社としてスタッフと一緒に全力で取り組みたい。」

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石村さんの毎日は、今でも仕事を中心にまわっていく。

まずは朝早く秋篠の森へ。メールや書類に目を通し、スタッフとの打ち合わせを終えてくるみの木に移動。店内が見渡せる定位置に座って、新商品を試食したり進行中の企画の打ち合わせ、さらに仕事上の来客も多く、あっという間に店の開店時間を迎える。そしてお客様の様子やスタッフの動きなど、何も問題はないかと店内を見まわしてから次の仕事へ向かう。

こんなふうに夢中で働いて、ふと気がつけば次を考えなくてはいけない時期になってしまった。

「これからのくるみの木をしっかりと担ってくれる人に繋いでいきたい。きちんと次に繋ぐことができたら、今までの自分の経験を若い人たちの役に立てられるとも思うし、そうなれば嬉しい。」

この場所は残したい。まだやりたいこともある。だから、これからのくるみの木を一緒に支えてくれる人を待っている。

くるみの木での仕事、実際にどんなものなのか聞いてみる。

「カフェの場合、まずトイレの掃除。掃除機をかける、床を拭く、椅子を下ろす、お花に水をあげる。掃除は基本中の基本です。」

「開店してからは、どの部門も本当に時間があっという間に過ぎます。お食事をされる方、お買い物をされる方、贈り物を選びにきた方、作家さんの作品に会いに来た方、大切な人との時間を楽しむために来た方・・・ひとりひとりのお客様に丁寧に接します。閉店後は、片付けと明日の仕込みや準備、仕入れや在庫の管理、次のイベントの企画の打ち合わせ・・・限られた時間の中でやるべきことはたくさん。」

「せっかく一緒に働くのだから、スタッフとは喜びを分かち合いたいと思っています。そして、いろいろな困難も一緒に乗り越えていって欲しいと思います。頑張って乗り越えた結果は自ずと自分自身に返ってくるものですから。それは親が子供に抱く思いと同じようなものかもしれません。」

会社というよりも家族ですね。

「家族のようなものですね。年に1回みんなで旅行に行くのが恒例の行事。バスの中でミーティングをして、会話を楽しんだり、時には歌ったり、本当に楽しい旅行です。職場とは一日の大半を過ごす場所。そのスタッフたちと家族のような気持ちになれることは、とても幸せなことだと思います。」

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どんな「家族」がいるのか。一緒に働いている人たちにも話を聞いてみることにした。

中村さんは旦那さんの仕事の都合で関西に引っ越したのがきっかけになって、くるみの木で働くことになった方。もともと住宅設備メーカーで働いたのちに、インテリアデザイン事務所に勤めていた。

「お世話になっている方から、奈良に住むならくるみの木で働いたほうがいい、と言われて。もともとくるみの木は雑誌や書籍で知っていました。」

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「まずは奈良に根ざしたお店だという点が良いな、と思って。自分はまだ奈良のことを知らないから。あとは”もの”の近くにいたかった。面接を受ける前に石村の本を読んで熱意や情熱にすごく共感、感動した部分もあって。」

まずは雑貨店で働くことに。はじめたときの印象を聞いてみる。

「雑貨店の場合、花の水を取り替えて、店内を掃き清めて、窓ガラスを拭いて、送られてきた荷物をチェックして。入荷した商品を整理して振り分けて、FAXが来ていたら確認して、ディスプレイを整えて、印刷して。すべて同時進行でやる。まずそのスピードに慣れていくこと、こなしていくことで精いっぱいでした。」

その後はホームページの運営担当になり、現在はオリジナル商品や展示会などの企画をすることになった。

「石村オーナーが30年一人で作り上げてきたものに、私達スタッフがどう太刀打ちしていけばいいのか、常に課題です。チェックしてもらわないと進まないことはあるけど、それではオーナーの身動きが取れなくなる。」

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「そこがオーナーの悩みでもあり、私達スタッフにも超えられない部分でもあり。葛藤はあります。もっとオーナーの感性に近づいて、感覚や思いに私たちが追いかけて追いついて、やり続けないと。」

「でもそれはおもてなしの心の一つなんです。お客様に喜んでほしいという、すごく純粋なオーナーの思い。」

「オーナーの信用を得るために、みな必死で仕事を覚え、感覚を磨き、その期待に応えようとする。その努力のプロセスが、きっと自分のためにもなるはずだから。」

他にも紹介したい人がいます。

一人は秋篠の森のレストランで接客を担当している中嶋さん。

秋篠の森はくるみの木から車で20分ほどのところにあって、レストラン、ギャラリー、そしてゲストハウスがある。お客さんがひっきりなしに訪れるランチタイムの合間に話を聞いてみました。

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中嶋さんは、入社して8年。秋篠の森だけでなく、くるみの木のカフェでも長い経験があります。

どんな思いで働いていますか?

「仕事を通して人として成長していければいいなと思っています。新しいことを覚えて出来るようになったら、更にまた新しいことに挑戦できる。そうやって繰り返すうちに、自ずと判断して動けるようになってくる。ここでは、学びたいと思えばいくらでも学べる事があります。そうして、お客様が喜んで下さる顔を見ると本当に嬉しいし、やりがいを感じます。」

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もう一人は、くるみの木のカフェで店長を務める宇田さん。ジャム作りやオリジナルレシピの開発にも意欲的に取り組む。

「自分の力をどんな形で発揮できるのか、日々模索しています。お客様に心からくつろいだひと時を過ごしていただけるように…。自分たちにとっては毎日の仕事ですが、お客様にとっては、わざわざ足を運んで下さった特別な時間なので。」

スタッフの皆さん、そして石村さんも、自分の仕事に責任を感じて、中途半端なことができない人たちだと思う。

それは大変なことだけれど、裏を返せばとことん仕事をする環境があるということ。

そして、チャンスだと思うんです。くるみの木で働く機会があるなんて。

男女問わず、この奈良という地で、石村由起子さんに追いつく覚悟がある人はいませんか。

きっと素晴らしい風景が広がっていると思います。
(2013/10/29 up ナカムラケンタ)