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やったらええんちゃう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

自分の仕事を考える。そのときにいつも個人的におすすめしているのが、まずは土日にできることからはじめるということ。

いきなり仕事を辞めてしまうのは、ちょっとリスクが高い。それに休みの日でもやってみたくなるくらいのものなら長続きする可能性も高い。

でも、これがベストなやり方だとは限らない。とくに何かをはじめようとするときは、エネルギーもかかるし、やってみないとわからないことも多い。一気に環境を変えることのほうが合っている人だっていると思う。

それなら神山塾に行くのもいいかもしれません。徳島市内から車で30分の里山に半年間住みながら、仕事について考えて、試すこともできる。森と谷と川、そして人にあふれた場所で、立ち止まって考えるのもいい。

神山にはもう10回以上は訪れていると思う。いつもならバスかレンタカーで向かうのだけれど、徳島駅から自転車に乗ってみた。市内を抜けるとあっという間に田園風景が広がり、すぐに山が迫ってきて川沿いの谷を進んでいく。印象的だったのは、鮎喰川の美しい流れ。川底の青い石が見えると、暑さもやわらいだ。

神山は温泉があるのと、お遍路さんが歩いているのと、すだちの産地として有名なくらいで、景色だけ見たらどこにでもあるようなところかもしれない。でもここ数年ほどは新しい変化も起きている。

世界中から移住者が集まり、美味しいパン屋さんもできた。アーティストインレジデンスにより毎年増えたアートはものすごい数になっているし、最近はIT企業などを中心にサテライトオフィスを構える動きも加速している。

その中心にいるのがNPO法人グリーンバレー。地域の人たちの協力も加わって、とても魅力的な場所になっている。

そのグリーンバレーが過去5回行ってきたのが、今回募集する神山塾です。

簡単に言ってしまえば、イベントプランナーや地域コーディネーターを目指す人が通う学校。求職者支援訓練という制度を活用したもので、失業した人や卒業しても未就労な人を対象に、就職に役立つ知識や技能を無料で習得させてくれる訓練制度のもと運営されている。生活するための給付金が支給されることもある。実は日本全国でも行われているもので、多くはビジネス研修やパソコン教室のようなものだけれど、この「神山塾」ではだいぶ様子が違う。

半年間、ほかの塾生と寝食をともにし、地域のイベント・催し・お祭りに様々な形で参加しつつ、自分たちでもイベントを実践していく。結果として、イベントプランナーとして生きていくことになるかもしれないし、まったく異なる分野に進んだとしても、この経験は活きるように思う。

神山塾を運営している祁答院(けどういん)さんに話を聞いてみた。過去5回神山塾を運営してきて感じることはどんなものなのだろう。

「半年間っていうのは長いようで、すごく短いんですよ。やっぱり限られた有限の時間、人生もそうだけど、神山で過ごすことで、自分の暮らしや働きなどのヒントになればと思っています。ただ来ることによって迷いが深まっている子もおるな、っていうのが正直な感想なんです。」

何か具体的な目標のある人のほうがいいのでしょうか?

「いやいや、立ち止まって考える時間であってもいいと思います。ここに来て何かせないかんというだけではなく、立ち止まる時間として選んでもいいわけだから。」

「そもそも自分が何かせないかんとわかっておれば就職してしまえばいい。それをどうしていいかわからないという話だったら、立ち止まってしまえばいい。ただ、同じ立ち止まるなら次に進むために立ち止まるというか。半年間を次に進むための期間としてもらえれば。」

何かが保証された場所ではない。卒業生たちだって、ここで何かをつかんだ人もいるし、もしかしたらスタート地点に戻ってしまった人もいるかもしれない。でも「スタート地点に戻る」ということだって次に進んだことになるし、ずっと動き続けていた人が「堂々と立ち止まる」こともいい。

せっかく神山塾に参加するのだから、焦らず自分のペースで関わったらいいと思う。どんな形であってもいいけれども、参加するなら機会を活かさないのはもったいない。

そのためにはポイントなのが、神山塾に参加するとともに地域にとことんとけ込んでみること。

「あくまでも神山塾はひとつのきっかけに過ぎないです。塾の時間外にも大きな発見があると思います。たとえば茶畑を整理したり、地域のお手伝いをしたり。現場に出ることで気づくこともある。」

都市に住んでいると、すべてが現実のことなのか実感できないことがある。自分の食べているものは誰がつくったものなのかよくわからない。街を歩いていても、なんだか外にいるという実感はなく、ずっと室内にいたままのようにも感じる。

でも神山であれば、野菜をつくった人も、調理した人も、顔が見える。暮らしのすぐ横に、関わっている人の顔が見える。外を歩けば空気がおいしいし、季節の移り変わりを感じることもできる。

そういうことは座学だけで学ぶことは難しいと思う。どんどん外にでていくことで、目の前にあることを自分のこととして感じやすくなる。

以前、神山塾の募集をしたときに、グリーンバレーの代表である大南さんは次のように話していた。

「若い人って、最初から大きく出過ぎるんよ。いきなり社会を変えようみたいなところから入るから、何が問題なのか捉えられずに、もう気持ちだけが空回りして終わっとるところが多いんよな。そうではなくて、目の前にあることを解決することによって、それが広がって、結局社会が変わっていくとか、大きくなっていくんよな。その一番小さなモデルをそれぞれがもたんかったらいかんと思うよな。」

目の前にあるものに確かな手ごたえがなければ、雲をつかむようなものだから、しっかりと向き合うことは難しい。でも神山で接するものの多くは確かなものだと感じられる。そういったものに向き合っていけば、都市や地域など住んでいる場所に関係なく、目の前のことを解決すること=仕事、というようにできるかもしれない。

次に神山塾3期生に話を聞いてみた。

神先さんはもともと山形県の県の仕事を手伝っていた方。地域の伝統料理や食の交流などを担当し、次はレストランで働こうと考えていた。

「就職もいいと考えていたんです。そんなときに仕事百貨を見ました。勉強もできるし、地域の方々と関わるのも苦ではない。話を聞くのは好き。生活支援の制度もあって、好きなことができる環境が整っていると思って入ることにしました。」

実際に神山に訪れてからはどうでしたか。

「思っていた以上でした。たとえば塾外の時間に、自分のやりたいことがなかったら厳しいと聞いていたけれど、ぼくはやりたいことがはっきりしてたから楽しめた。目の前のことを一つひとつ解決していくことで、大きくできるってことも実感できたし。」

6期生に伝えたいことはありますか。

「ここは現実離れしている。好きな事ができる。楽しく仕事ができる。でもそれは半年で終わるし、現実をちゃんと意識しながらここで生活して、次を考えてやっていける方が充実できると思います。だから最初から目的意識をもっている人のほうがいい。」

「やっぱりいろんな支援を受けながらやっていることだし、地域の人も優しいし、意思が弱くて甘えてしまうと現実に戻れないかな。ただただ目的もなくやる気もなく来たら、もっと弱くなる気がします。」

何か具体的に決まっていないけれど、覚悟があるような人はいいのかもしれない。そういう人にとって、神山の良さとはどういうものなんだろう。

「地域の人の受け入れる度量が広いです。新しい人が来ても、そんなに抵抗がない。それが神山っぽいと思うし、前回の仕事百貨の募集にもあるように、『やったらええんちゃう』って応援してくれる。」

「自分のなかでは神山は良い流れがあるなって。人のつながりとかタイミングの話もそうですけど、神山にいたからうまく流れていく。」

もう一人紹介したいのが高橋さん。

彼女は自分がやりたい!と思った仕事を、ずっと選んできた方。美容師、古着屋さん、パン屋さん、飲食店。あるとき出会ったのが仕事百貨だった。

「プライベートも含めて、スパッとリセットしたいという思いもあって、神山塾に入ろうと思いました。」

もともと出身はどちらなんですか?

「北海道です。」

徳島にも四国にも縁がなかったんですね。

「そうですね。大阪よりもこちら側に来たことがなかったんです。」

不安はありませんでしたか。

「ありましたよ。部屋も引き払っていかなきゃいけないし、知らない人しかいないところに行かなきゃいけない。でもそれより今の生活から抜け出したいっていうのが大きくて。だからすぐにハローワークへ行って。そしたら厳しいこと言われて追い返されて。」

神山塾は、まずはハローワークで申し込みするところからはじまりますからね。なぜ追い返されたんですか?

「ちゃんと調べてから来てくださいって(笑)。あとはどんな人が来るのか不安でした。クリエイティブな人が多いんじゃないかとか。自分は普通の人間だから大丈夫かなって思った。最初の自己紹介したときも、みんな特徴のある人ばかりだったし。でも、今考えてみると、みんな普通の人で。」

普通の人だった。

「すごいところはそれぞれにあるけど、みんなと対等に付き合える。歳も全然違うけど感じさせないくらい。だから普通の人が来ても大丈夫ですよ。」

ほかの人も自分次第でいい時間になる、というような意見が多かった。神山塾に入れば自動的にうまくいく保証のようなものはないけれど、いい機会ではある。「行きたい」という思いがあれば「来たらええんちゃう」。

買い物にも不便だし、塾生同士で共同生活をしないといけないし、カラオケ大会に参加することもある(笑)。それでも立ち止まって考えるにも、何か自分の思いを試してみようとするにも、いい環境だと思います。

もし興味がある方は、東京などでも面談の機会がありますので、まずは話を聞いてみるだけでもいいと思います。(2013/11/25 ナカムラケンタup)