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コウカシタ起業のススメ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

こんなサービスがあったらいいな、つくってみたいな、と頭の中でイメージを膨らませているけれど、何からはじめたらいいか分からないという人も多いんじゃないかと思う。

人のこと、場所のこと、お金のこと。起業したいと思うとき、考えなければいけないことが山ほどある。

そんなとき、起業の先輩がそばにいたら、分からないことを教えてもらえるかもしれない。隣に同じように起業を考えている人がいれば、情報交換ができるかもしれない。

もし、そういう場所を求めている人がいたら、ぜひ知ってほしい、起業を考える人のための半年間のプログラムがあります。

koukashita30 東京都市部と郊外をつなぐ大動脈、JR中央線。そのちょうど真ん中あたりに位置する東小金井駅の高架下に、来年4月、起業家の事業成長をサポートする施設ができます。

歩いてスグの場所にはスタジオジブリの本社。そんな自然豊かな郊外の町にオープンします。

今回はその施設で金銭的なサポートを受けながら、半年間という期間のなかで自分の起業を考えていく、「起業家の卵」を募集します。

詳しいプログラムの内容を伺うために、JR中央線の東小金井駅を降りてすぐの商店街のなかにある、「コウカシタ準備室」へと足を運んだ。

koukashita31 ここは、施設ができるまでの仮の拠点となるそう。目の前にはサッカーゴールのあるグランドが広がっている。その後ろの空は、遠くまで景色が抜けていて、とても広いように感じる。こんな空は、都心の方ではなかなか見られないように思う。

小金井市は、いわゆる郊外の町。公園や緑が多く住みやすく、オフィスビルの立ち並ぶ新宿駅までは電車で約20分とアクセスも良いことから、結婚、出産のタイミングで移り住む方も多い。

こうして商店街を少し歩いてみても、夕飯の準備のため買い物に来たお母さんや、孫と手をつないで歩いてゆくおじいさんなどを見かけ、家族の暮らしが中心にある町なのだな、ということを感じる。

SONY DSC 「郊外って、『暮らしの現場』だと思うんです。たくさんの人が生活しているからこそ、たくさんの暮らしの課題がある。もしも、起業というかたちで暮らしの課題の解決をしたいと考えている人がいたら、ここは、それを実現する最高の場所なんじゃないかと思います。」

そう話してくれたのは、株式会社タウンキッチンの代表である北池さん。

ご出身は大阪で、話す言葉には関西弁のイントネーションがある。とても軽快なテンポでお話されるのだけれど、言葉は慎重に選びながら、今回の募集について丁寧に伝えてくれたのが印象的だった。

SONY DSC もともと大手コンサルティングファームで働いていた北池さんは、その後外食ベンチャーを経て2009年にタウンキッチンを立ち上げた。

タウンキッチンは、地域のお母さんの手作りのお惣菜を味わえるカフェや、地元住民によるフリーペーパーの発行、対話型ワークショップの企画運営など、東京西部の多摩地域を中心に、様々な恊働プロジェクトのコーディネートを手がけている会社。

今回、小金井市から委託を受け、新しくできることになる高架下の施設のコンセプトづくりから運営までを担っていくことになったそうだ。

起業のお手伝いをする、と北池さんは言うけれど、そこでは実際どんなサポートが受けられるのだろう?

「こちらから月10万円をお支払いするので、最低限の収入を得ながら半年間、起業の準備に没頭することができます。それから、このコウカシタ準備室をオフィスとして自由にご利用いただくことができます。あとは、ネットワークですね。」

ネットワーク?

「例えば、何かテスト商品を販売したいという方がいたら、僕らが地元のアンテナショップを紹介できるかもしれない。フリーペーパーで商品の告知をお手伝いできるかもしれない。」

「他にも、空き店舗を探している、子育てママからニーズ等のお話を聞きたい、ホームページをつくりたいのでデザイナーを探しているなどなど、起業準備を進める上で立ちはだかる様々な困りことを解決するためのネットワークがあるんです。」

それから、最大200万円まで補助される創業補助金の申請も、金融機関と連携してサポートしているそうだ。

「起業するにはやっぱりお金が必要です。今は補助金や助成金など、色々な支援があるので、そういった情報を知っている人が近くにいるか、困ったことを助けてくれる相談相手が身近にいるかが、すごく大事だと思います。」

koukashita33 ひとりで考えていたら、考えても考えてもキリがない。そういう人に対して、自らも起業して事業を立ち上げた北池さんだからこそできるアドバイスやサポートがある。

「例えば、信用金庫、JR、行政、商店会などとの関係も、そう簡単にできるものではないと思います。そういう意味では、我々が築いてきたリソースというか、ソーシャルキャピタルをお裾分けするって感覚かもしれません。何かこんなことがしたいなというアイデアがある人に対して、それを形にするお手伝いができればと思っています。」

この施設に集まる起業家として、どんな人に来てほしいですか?

「ここは暮らしの現場ですから、『暮らし』に関する事業テーマを持っている方に来ていただけると嬉しいですね。例えば、子育て中のママがゆっくりできる場所をつくりたいとか、野菜に親しみを感じてもらえるような農業体験施設をつくりたいとか。」

そのための手段は問わないそうだ。商品づくりでも学びの場づくりでもいい。サラリーマンからの転身でもいいし、フリーランスのデザイナーやライターをしていた人が、クライアントワークだけではなく自主事業をしたいというのもOK。

koukashita34 暮らしの問題って、人が多く暮らしている「郊外」にこそ、チャンスが転がっている。だから、起業するための環境が整っているこの場所で起業準備を行い成功事例をつくっていく、という道もひとつあると思う。

何か実現したいことや解決したいことがあって、それをまずはここで試してみたいという気持ちの人に、来てほしい。

それともうひとつ。

「半年間しっかり起業準備に専念したい!という人にご参加いただきたいと考えています。起業するというのは、やはりそれなりの覚悟が必要。逆に言うと、覚悟がある人なら、起業や経営のノウハウを持っていなかったり、具体的なプランがなくても大丈夫です。一緒に夢を形にしていきましょう。」

とはいえ、会社を辞めるという決断は勇気がいるものだと思う。北池さん自身、会社を辞めてタウンキッチンを立ち上げられたけれど、辞めるときどんなことを感じていましたか?

「僕は、事業の目処たっていないまま会社を辞めました。会社に勤めていると、脳みそが全部そっちにいってしまうので、自分の道を考えようと思ってもなかなかできないですよね。でも、辞めてしまうと、明日から何もしなくてもいい。だから、ものすごく考えるんですよね。脳のスイッチが入るというか。」

何も決まっていないうちに会社を辞めるなんて、と思っている人もいると思う。だけど、やっていきたいことの意思が明確にあるならば、動き出してしまってもいいのかもしれない。

北池さんに話を聞いたあと、まさに今、起業しようと考えている人にも話を聞いてみた。

森さんは、今年2月に新卒で入ったベンチャー企業を退職し、今はタウンキッチンの仕事を手伝いながら、残りの時間を自分の起業準備にあてている。

SONY DSC 年齢を聞けば、わたしと同じ24歳だった。会社を辞めるというのは大きな決断だったと思うけれど、こうして新しい一歩を踏み出しているのはすごいな、と思う。

「わたしも、まだまだ自分にはそんな力はないと思っていたし、起業するのはもう少し先のことだと思っていました。でも、『今自分がやらなくてどうするんだ!」と思うような出来事が起こって。22年間同居していた祖母がアルツハイマー型認知症を発症したんです。みるみる悪化していく祖母の姿と介護を通してぎくしゃくしていく家族を目の前に、悲しくて悔しくて。」

そうした衝撃的なできごとが自分の家族に起こったときに、このまま何もしないでいたら、大切な人を守れず自分や自分の家族のような気持ちになる人が増えてしまう。今目の前にどうにかしたいと思う課題があるのに、いつまでも足踏みをしていていいのかな、と思った。だから、会社を辞めるという決断ができた。

今は、具体的にどのような事業をするのか考えているところ。

「体は元気なのに、時間を持て余している高齢者の方が多くいらっしゃいます。いわゆる、閉じこもり高齢者やその予備軍の方。そういう方に、役割を求められるとか、お互いに支え合うということを通して、生き甲斐を持った誇れるセカンドライフを届けたいと考えています。」

koukashita35 今後は、コウカシタ準備室で起業家の卵として準備をすすめていくと決めているそうだ。

「私がメインで関わるのは高齢者の方々。地域との繋がりが生まれやすい場所から始めたいと思っていました。そうすると、都心よりも郊外や下町の方が私の事業には適しており、そういった意味でも、この地から始めることに意味を感じています。それに、最初のコストをどれだけ抑えられるかというのは大事なことだし、自分と同じような立場の人が集まるというのは心強いので、楽しみです。」

たしかに、やろうとしていることは違うかもしれないけれど、同じ空間のなかでお互いに事業をはじめるというのは、とても意味があることだと思う。

「わたしも、ひとりで考えていたときは、自分に足りないところが全然分からなかったんです。それが、ここに来て人に話を聞いてもらうようになってから、まだ到達できていない部分とか、力が足りないところを客観的に見ていたけるようになって。だんだん、自分のやりたいことがブラッシュアップできてきたんです。人にみてもらう機会って大事なんだな、と思いました。」

SONY DSC 「せっかくなら、お互い負けないぞという気持ちを持ちながらも、ときには相談したり励まし合ったりしながら一緒に上がっていけたらいいですね。だから、自分の描いていることを実現するんだ!という強い覚悟がある人に来ていただけたらいいな、と思います。」

もしもこの記事を読んで、遠くに感じていた起業が近づいたという人は、ぜひここで起業するという道を考えてみてください。きっとここからさまざまなネットワークがうまれ、新しいストーリーがはじまっていくと思います。

(2013/11/8 up 笠原ナナコ)