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あなたの使命、わたしの役目

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

地域にねざして生活をしたいと考える人は増えてきているように感じる。日本仕事百貨でもそういった仕事を紹介することが多い。

近くの人とつながることで、その人を大切にしようと思うことができるだろう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA けれどわたしたちの日常は、日本だけではなく世界中とつながっていることも忘れてはいけないと思う。

紛争や貧困、環境問題をはじめ、世界にはたくさんの課題がある。遠い場所のできごとのように感じるけれど、生活がつながっているのだから「わたしには関係ないこと」ではないと思う。

身近な地域の課題を考えている人たちがいるように、世界の「どこか」について考えている人たちがいます。そのことを気づかせてくれたのは、関西NGO協議会の奥谷さんでした。

関西NGO協議会は、関西に拠点を置く国際協力NGOとともに活動をしています。加盟するNGO同士の関係を活かし、1つのNGOではできないことを、ネットワークの力で「できること」にする。そして、それがゆくゆくは世界の課題解決につながっていけばいいと考えています。

ここで、新たな1歩を踏み出すための仲間を募集します。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 大阪・梅田駅から歩いて5分ほど、茶屋町の一角に、関西NGO協議会のオフィスがある。

中に入ると、事務局長の奥谷さんが「まだ片付いてなくて」と笑顔で出迎えてくれた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ここではどんなことをしているんですか?

「加盟しているNGOを中心にしたネットワークを構築しています。連携を促進することで、個々のNGOの力を高めていくんです。」

ネットワークの構築?具体的に教えてください。

「NGO同士が情報交換をしたり、コミュニケーションする場をつくっています。ほかにも企業や個人から『NGOを通して支援をしたいんだけれど』と相談をうけたり、大学から『国際協力に関する講義をしてほしい』と声をかけていただいたりしています。」

途上国で活動している国際協力NGOを、さまざまな団体や組織や人とつなげる役割を担っているんですね。

「あとは国際協力やNGOの活動を伝える講座も開催しています。それからアドボカシー、政策提言をするためにNGO側として外務省やJICAと対話するための場づくりをすることもあります。」

ほかにも国際協力に関する相談を受ける窓口になったり、関西のNGOスタッフだけでなく、途上国のNGOスタッフを日本に招いて研修事業を行ったりと、仕事の範囲は広い。

多くの団体や組織と関わりながら仕事をしているから、国際協力に関する情報が集まってくる。事務所の中だけではなく、廊下にもたくさんのパンフレットがあふれていた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA さまざまなことをしているけれど、目指すものはなんだろう。

「加盟しているNGOのみなさんが困ったときや必要なときに、頼ってもらえる存在になりたいですね。」

NGOからすると心強いですね。

「登山にたとえると先頭を歩くのではなくて、最後尾を歩いて後ろからみんなを見守りながら登っていく役目なんです。関西のNGOの底上げ、レベルアップをすること。それぞれのNGOが活動しやすくなれば、課題の解決も進んでいきます。」

NGOの使命はそれぞれに取り組んでいる課題を解決すること。使命をはたすために走り続ける人たちを、さまざまなつながりを使って支えるのが関西NGO協議会の役目。

政策提言の場ではこんな活動をする。

「課題を解決するためには、外務省やJICAに意見を述べなければならないことがあります。けれど1つのNGOが意見を言ってもなかなか届かない。そこでわたしたちがコーディネートして、NGOがまとまって発言するための土台をつくっていくんです。」

意見や想いを届ける方法を、一緒に考えるんですね。

「そう。とは言っても、賛成も反対もいろいろな意見があるんです。そこで絶対に守りたいのは、自由に発言できる場。やっぱり言えなくなるって怖いですよね。」

言えなくなる?

「周りから意見が出てきたり、圧力がかかったりして、発言や活動をちゅうちょしてしまうようなこともあるんです。」

そうなると、NGOとして進む方向がずれてしまう。結果として、活動地域で暮らす人たちに支援が届けられなくなってしまうかもしれない。

「関西で活動するNGOを『言われなくてもする。言われてもしない』という言葉で表現された方がいらっしゃいます。必要だと思うことは自ら行うけれど、自分たちの考えに反することは、言われたことでもやらない。NGOは行政などの補完や下請けをするのではなく、自分たちで動いていくんだ、ということを表していると思います。」

NGOの立ち位置を守ることは、関西NGO協議会の大切な仕事だ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ところで、どうして奥谷さんはここで働きはじめたのだろう。

「元々はメーカーで、広報や販売促進などの仕事をしていました。学生の頃から女性の識字教育に関心があって、休日に地元の国際交流協会で日本語を教えるボランティアをしていました。教えるというより、話し相手に近かったかも。」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「そうした活動を続けるうちに、共感できるところで働きたいと思うようになって、転職しました。」

転職先は岡山にある、緊急医療支援や社会開発事業を行うNGO。ここで実際にインドネシアやフィリピンなど、支援が必要なところへ出張もしたが、前職の経験を活かして、おもに広報やファンドレイズといったバックアップする業務を担当した。

その後、生活の基盤を地元である大阪に戻したいと考えたときに出会ったのが、関西NGO協議会。

「国際協力に関心を持つ人って途上国で、プロジェクトの現場で働きたいとか、国際機関や大手のNGOで働きたいとか、そういうキャリアを目指すことが多いんです。でもわたしは、応援する、支えていく役割が向いているなと。」

前職などの経験を通して、ご自身の役割が見つかっていったんですね。

「それでネットワーク組織が1番いいと思ってね。途上国に、現地に行かないことを物足りなく思うんじゃなくて。ここでやるべきことが、たくさんあるんです。」

knc15 実はいま、関西NGO協議会の常勤スタッフは奥谷さんと新人スタッフの2人。何人か仲間がいたが、ここでの経験を活かして途上国のプロジェクトに参加したり、介護など家族の事情で卒業していった。幅広い業務をサポートメンバーに支えてもらいながらこなしている状態。

そこで、新しく仲間を募集したいと考えている。
どんな人にきて欲しいですか?

「海外の方とコミュニケーションをとる業務に積極的に取り組んでくれるパートナーが来てくれたら、うれしいですね。」

任せたいことがあるんですね。

「はい。その1つが研修事業です。来年度はスーダン、アフガニスタン、コロンビア、ボスニアヘルツェゴビナなどから研修生が来日する予定です。」

この事業は途上国でそれぞれの課題に取り組んでいるNGOスタッフを対象に、プロジェクトのマネジメント、ファシリテーションの方法を実践的に学ぶことができるように構成されているそうだ。

knc10 「およそ1ヵ月半の間、講義やディスカッション、フィールドワークを行います。今年度は東北の被災地や釜ヶ崎を訪れ、地域コミュニティの課題などを学びました。わたしたちは手続きや調整だけでなく、講師をサポートして議論を活発にしていく役割も担います。」

「海外の優秀なNGOスタッフとじっくり議論して、信頼できる関係を築くことはいい経験になるし、やりがいのある仕事だと思います。」

関西のNGOスタッフ、海外からやってくる人、国際協力が専門ではない企業や個人から、外務省の職員や大学の教授まで、多くの人と関わることになる。その中で、自分を通じてできたつながりからなにかが始まったときに、ニヤっとしてしまうような人がいい。

「わたしたちに求められているのは、ネットワークの充実です。これからは積極的に海外にも広げていきたいと思っています。海外の市民社会やNGOと直接つながるとか。もっといろいろなことを仕掛けていきたいんです。そのためには、英語を使って活動範囲を広げていける人が必要です。」

まだまだできていないことがたくさんある。奥谷さんたちと、ゼロからつくっていく仕事が多くなると思う。

knc17 その後に話をうかがったのは、関西NGO協議会で代表理事を務める清家(せいけ)さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 清家さんは、加盟しているNGOの常任理事でもある。関西NGO協議会の活動を、客観的に見てときに相談役となってくれる存在だ。

加盟しているNGOから求められている役割はなんでしょうか。

「NGO同士が情報交換する機会がないんです。それぞれの関係をちゃんと構築できれば、お互いにメリットがでてくる。その関係づくりをしてもらいたいですね。」

なるほど。

「ほかにも、関西NGO協議会が核になってできることもあると思うんですよ。たとえば身近にできる国際協力を仕掛けていけないかなと思っています。街を巻き込んでNGOの活動を紹介したり、気軽に寄付ができる仕組みをつくっていくとか。」

地域の中でネットワークをはりめぐらせているからこそ、できることかもしれませんね。

「途上国で国際協力をして、日本に戻ってから地域おこしを仕事にする人も多いんです。どちらもやることや考え方が似ている。そもそもの想いは同じだから、自然なことかもしれませんね。」

この日は関西NGO協議会が企画・運営をしている講座があるというので、奥谷さんについて行った。国際協力を実践している人たちを招いて定期的に開催していて、協賛をする企業・会場を提供する大学と連携しながら進めているそうだ。

knc16 今回は、フェアトレード商品を開発したプロジェクトの話。大学生が途上国のつくり手と一緒に商品をつくり、その後は、賛同した企業が正規の値段で販売をしている。

こんな風に、途上国で活動をしてきた人から直接話を聞くことで、より身近に感じることができる。なにより、わたしたちの生活が世界とつながっていることに気がつくきっかけを、講座という場を通してつくっているんだと思う。

会場では、受講者ひとりひとりの名前を呼びながら話しかける奥谷さんの姿が印象的だった。

次回は話しかけた相手が、誰かに「きっかけ」をつくる話をしてくれるかもしれない。こうやって、人のつながりが続いていくんだろうな。

knc20 「単刀直入に、回りくどい言い方はせずに。直接聞きますね、いつも。」

取材の途中で、奥谷さんがそんなことを話していた。人当たりはやわらかいけれど、仕事には厳しい人だということが伝わってきた。

できることがあるかもしれない、と思ったら奥谷さんと話をしてみてください。ここで必要とされている役目があります。

(2013/12/15 中嶋希実)