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日本には、古来から伝承されてきた優れた伝統工芸や技術がある。そして、それは大切に守り次の世代へ伝えていくべきもの。ただ、守るというのは白手袋をはめてそっと扱ったり、美術館に展示するようなことだけじゃない。

「中川政七商店」は、雑貨の企画・販売を通して、日本の伝統工芸を元気にするとともに、それを使う人々の生活が豊かになるような提案をしている会社。
もともと、江戸時代に奈良で栄えた「奈良晒(さらし)」の問屋として創業したのがはじまりで、2016年には創業300周年を迎えるそうだ。
ただ、「老舗」という言葉に腰を据えているわけじゃない。
より幅広い世代へ、そして今まで伝統工芸に興味がなかった人へも届けたいという想いから、既存の店舗のリニューアルや新しい場所へのオープンなどが、いま続々と行われているところ。これからも進化を続けていく。

どんな仕事をしているのか、異なるコンセプトを持つ4つの店舗を訪ねて話を聞いてきました。
朝10時。渋谷PARCOへオープンと同時に入り、地下1階へ降りる。本屋や雑貨屋の入るカルチャーをテーマにしたフロアのなかに、ひときわ賑やかな雰囲気と色彩のお店が。
ここは、中川政七商店が手がける「大日本市(だいにっぽんいち)」というお店。中川政七商店が職人さんやメーカーとともに立ち上げたオリジナルの19ブランドの商品をはじめ、全国の優れものが集まっている。
セレクトショップというというよりも、小さなお店が集まっている商店街のよう感じ。商品を並べる什器も、そのブランドごとに合わせたテーマになっている。
お店に入ると、グレーの外衣を羽織った店長の早川さんとスタッフの大原さんが迎えてくれた。

職人さんたちがお店に立てない代わりに、ここのスタッフが、お客さんにものについて伝えていく。
「ひとつひとつの商品について説明していくと、40分ほどはかかってしまうと思います。デザインだけ見てさっと買われていく方もいますが、じっくり買い物される方も多いんです。」と早川さん。
たとえば、「PAGOTA」というバッグの柄は、奈良時代に法隆寺や東大寺などに奉納された100万個の小さな木の小塔 “百万塔陀羅尼”がモチーフになっている。
そんなふうに、バッグの柄ひとつひとつにも、意味があり、想いが込められている。

伝統工芸が大好き、というよりも、人に喜んでもらうのが好きな人のほうが、この仕事に向いているのかもしれない。
早川さん自身も、どちらかというと後者のタイプだそうだ。
「最近、疲れている方が多いんです。時期というよりも、時代によるものだと思うのですが。『この店に来るとほっとする』なんて言っていただけると嬉しくて。お客様がそんな気持ちで過ごせるような環境づくりができたらいいな、と思っています。」

特にこのお店は、生活必需品を売っているわけではないから、みんな、何かもの以上の豊かさを求めて、お店にやってくるのかもしれない。
次は、また渋谷とは違う雰囲気の街に行ってみる。二子玉川の高島屋のなかにある「遊 中川(ゆう なかがわ)」へ。
「遊 中川」は、「日本の布ぬの」をコンセプトに、日本に古くから伝わる素材や技術を現代の感覚でデザインしているテキスタイルブランド。

「商品ががらりと変わり、店舗ももうすぐリニューアルします。ブランドが生まれ変わるんです。」
そう話してくれたのは、スタッフの藤本さん。笑顔がとても素敵な方だと聞いていたので、お会いできるのを楽しみにしていた。

ブランドの変化に、お客さんの反応はどうですか?
「前からの常連さんには、モダンになったね、と言っていただきます。あとは、若い方や男性のお客様が増えました。」
たしかに、より世代や性別を問わないデザインになっている気がする。

年に3度の展示会では、職人さんと実際に話すことができるそうだ。最初は寡黙な職人さんも、話すうちに熱く語りだす。
「ストーリーがあって裏がすごく広くて、伝統工芸は本当に楽しいです。」
楽しいことのほかに、大変なことも聞いてみた。
「日々、試行錯誤です。常に頭を動かしていますね。実は、やることが多いんです。発注とかお客様への発送とか。何ページもある納品書を、名前と商品が一致するように覚えていったり。」
あとは、お店のディスプレイも考える。2週間ごとに商品が入れ替わるので、新作を前に出して、常に店内に新鮮な空気を入れるように心がけている。同じ商品でも、置く場所によって全然売れ方が違うそうだ。

そう話すのは、東京駅地下直結の商業ビルKITTEのなかの「中川政七商店」で働いている尾崎さん。次は、尾崎さんを紹介します。

中川政七商店の取材で男性のスタッフにお会いするのは、これが初めて。
「店舗スタッフとして働いている男性は、僕を含めて全国で5人しかいないんです。寂しいので、増えてほしいですね。」

「ひとつは、女性が男性に贈るプレゼントの相談に、男性目線で乗ることができます。あとは、女性のお客様が多いので、男性のお客様にもお店に入っていただきやすくするにはどうしたらいいか、を考えるのも僕らの役目です。男性のお客様にも、もっと知っていただきたいと思います。」
尾崎さん自身も、商品を購入して使っているそうだ。
「初めて買ったのは、このハンカチです。麻でできているから乾きが早いんです。広げてぴっと伸ばして干せば、アイロンが要らないんですよ。3枚ほど買って、毎日使っています。」

アイロンが要らなかったり蒸れなかったり。もしかしたら、日本の伝統技術って、現代の男性にこそ必要なのかも?
これから先、男性にももっと知ってもらえる仕組みをつくるため、尾崎さんたち男性スタッフが活躍していくと思う。

KITTEを出て地下道を通り抜け5分ほどの場所にある、新丸ビルへ。

粋更について、そんな自分の言葉で説明してくれたのは、副店長の佐藤さん。
佐藤さんは、もともと別の日本の伝統工芸を扱うお店での勤務を経て、2年前に中川政七商店にやってきた。

仕事が認められれば、アルバイトから社員になることができる。「社内公募制度」といって、誰でも挙手して希望の職種に応募することができるしくみもある。
それから、会社が雑貨の販売だけではなく、コンサルティングなど幅広い事業をしているから、まだまだ何か起こりそうな予感がする。

そこにギャップを感じて戸惑う人もいるらしいけれど、佐藤さんは、会社が進んでいく方向に共感しているからワクワクできる。
一緒に働く仲間として、どんな人にきてほしいですか?
「素直で明るくて、くじけない方。前向きな人は、どんどん前に進んでいける環境だと思います。それから、人に喜んでもらうのが好きな人ですね。人対人の時間を、大切にできる人。」
たしかに。お会いしたスタッフのみなさんは、共通して穏やかだけれど力強いという印象を受けた。ゆったり働きたいというよりも、日々成長したい、という意気込みがある。
それから、「伝統を伝える」という大きなものを見る前に、まずは目の前のお客さんを大切にしている人が多いように感じた。

そんな一役を担いたい人は、ぜひ応募してください。
(2013/12/29 笠原ナナコ)