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テレビの向こう側

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ひとり暮らしをはじめてからよくテレビを見るようになったのだけれど、テレビはやっぱり面白いと思う。

映画を観るのとも、本を読むのとも、インターネットとも違う。感動しなきゃ、何か吸収しなきゃ、という心構えなしに、ただリラックスして楽しめるのがテレビだと思う。

今回は、そんなテレビの向こう側で働く人の募集です。映像制作会社「オフィスユニ」で働くアシスタントディレクターを募集します。

uni30 アシスタントディレクターは、いわゆるADと呼ばれる仕事。家に帰れなかったり怒鳴られたりするイメージもあるかもしれません。

だけど、実際に話を聞いてみると、それは一面的なイメージだったことが分かりました。

テレビの向こう側って、見ているだけではなかなか想像できない場所。そこにどんな仕事があるのか、ぜひ読んでみてください。

オフィスユニは、地下鉄日比谷線の神谷町駅のそば、東京タワーの麓にある。駅を降り坂を登っていくと、大きなマンションが見えてきた。

ちょうどクリスマスの飾り付けをしていた管理人さんがおっしゃるには、この建物は東京オリンピックの年にできたのだそうだ。

SONY DSC 今ではなかなか見ないレトロなデザインのボタンがついているエレベーターをのぼり、呼び鈴を押すと、ユニのスタッフのみなさんが迎えてくれた。

まず紹介したいのは、代表の琢未(たくみ)さん。

琢未さんは、お父さんが30年以上前に立ち上げたこの会社を引き継いだ。物心がつく頃にはこの仕事がそばにあり、日常の一部のようなものだった。

琢未さんにとっては身近な世界。けれど、多くの人にとっては、映像制作というのは未知の世界だと思う。

SONY DSC 琢未さんが、こんなことを聞いてきた。

「映像ってなんだと思いますか?」

うーん。あらためて聞かれると難しい。そこに行けない人にその景色を見せること、でしょうか。

「うん。映像って、ひとつの場だと思うんです。今、わたしたちが話しているこの場所は3Dですよね。映像は2Dですが、そこに何かが映ったり、そこで誰かが話すことによって、それがひとつの場になるんです。それをつくれるのが、映像の魅力だと思います。」

映像をつくることは、場をつくることでもある。どのようにしてつくっていくのだろう。

「普通の人は、知らないことのほうが多いですよね。そして、知らないことって持ってるイメージで判断してしまいがちです。例えば、テレビで、ADは大変というイメージがやたらに強調されて、ネタにされていますよね。かけ離れているとは思わないけれど、そんな職場ばかりではないのに、と思います。」

uni31 ユニが主に制作している番組は、東京都の地域を取り上げた報道番組と、これからオンエアされる番組を宣伝する「番宣」番組。

例えば、毎週ゴールデン番組を持っていたりしたら、家に帰れないこともあるかもしれない。けれど、ユニでは、担当する番組の性質上、そういうことはあまりないそうだ。

同じADでも、どんな番組をつくる会社に勤め、どんな上司の下で働くかによって、労働環境は全然違うらしい。

「うちの会社は、けっこう自由だと思います。ADだからといって上にものを言えないわけではないし、カメラや編集ソフトなどの機材は、業務以外の時間に自由に使ってもらっていいし。」

琢未さんと話しているうちに、だんだん先入観が溶けてきた。

実際、ADってどんな仕事をするんだろう?

ADの深代さんに話を聞いてみる。

深代さんは、わたしと同じ24歳。1年前に地元の群馬から上京し、ユニで働いている。

SONY DSC もともとテレビっ子だったそうだけれど、実際にテレビの世界で働いてみると、見るとつくるとでは全然違ったそうだ。

「普段、何気なく見ていたけれど、実際つくってみると、ひとつの番組に、こんなにも時間と労力と、人の力がかかっているんだなって思いました。」

実際には、制作現場でどんな仕事をしているんですか?

「難しいですね。これ、という決まった仕事がないんです。撮影や編集に必要な環境の手配を全てする。守備範囲が広いというか、マルチプレーヤーですね。」

例えば、企画から撮影、編集、そしてオンエアまでの一連のスケジュールをつくり、管理すること。

企画に応じて、取材できそうなネタを探したり、台本を依頼したり、キャスティングを考えたり、ロケハンをすること。

uni32 そして、いよいよロケとなると、現場までの最適なルートを調べるところから、全体の進行管理をすること。撮ってきたものを編集する段階で、テロップ(テレビの字幕)をつくること。小さいロケだと、自分でカメラを回すこともある。

「一日の流れが早いです。あれもやんなきゃ、これもやんなきゃといううちに、夜になる。でも、今はいっぱいいっぱいだから大変なだけかな、と思っています。」

とにかく怒られたくないのが一番で、やだやだと思いながら仕事をしていた時期もあった。でも、それがだんだん変わってきたそうだ。

「やだやだと思うよりも、先を読んで自分から次どうしますか?と先回りして動いているときのほうが、現場の流れが良くなっているな、と感じたんです。」

自分がどれだけ先を読めたかによって、撮影がスムーズに進んだり、よりいい映像ができたりする。それは目に見えないことかもしれないけれど、確実に番組をつくっている一部なのだと気づいた。

SONY DSC 「大変と同時に、得ることも多い仕事です。放送が終わって一区切りつくと、達成感がすごいんですよね。制作しているときは、充実している。濃い。そう、濃いんですよね。色々なことがあって、ぎゅっとした期間だな、と感じます。」

そんな話をしていたら、深代さんの先輩AD、木戸さんが通りかかった。せっかくなので、ここから一緒に話を聞かせていただく。

いつも撮影する側だから写真を撮られるのは苦手だそうだけれど、カメラを向けると笑ってくれた。

SONY DSC 木戸さんがユニに入社したのは、ちょうど4年前の冬のこと。

「クリスマスの日に、知らない番号から電話がかかってきたんです。誰だろう?と思って出たら、『採用です』って。あとで、何でクリスマスだったんですか?って聞いたら、これも演出だよって言われました(笑)」

働いてみて、どうですか?

「ガムテープって、普段あまり触らないじゃないですか。」

ガムテープ?

「そう。僕たちの仕事だと、いつもガムテープが手元にあるんですよ。くるくるっと丸めて裏に張って平面のものを持ち上げたりとか、なにかと便利なんです。絶対に使うわけではないけれど、無いと不安になるというか。」

ガムテープの他にも、あらゆるものを身につけておく。それが、いざというときに役に立つ。

「テレビに出てくるADの格好とか見て、大げさだろうって思っていたのですが、実際に自分も鏡を見たらそうなっていました(笑)」

uni33 他に、なにか驚いたことはありましたか?

「みなさんが想像している以上に、芸能人の方はみんな優しいです。気を遣ってくれる方が多いです。」

「あとは、テロップをつくるとき、今まで自分が勘違いして覚えていた言葉を見つけたりして。例えば、『アボガド』じゃなくて『アボカド』とか。『四ツ谷三丁目駅』だと思っていたけど『四谷三丁目駅』だったりとか。

ほかにも、取材という名目で普段は入れないような場所に入れたり、ナレーションの方は普段の声とナレーションの声が全然違ったり、などなど。

uni34 なにげなく観ているテレビの裏側には、色々な発見があった。

木戸さんと深代さんの話は止まらない。取材のあとも、『四谷三丁目駅』の話でしばらく盛り上がっていた。

「2人と話していて感じたかもしれませんが、この仕事は、色々なことを楽しめる人のほうが続けられると思います。ひとり遊びが得意な子供っているじゃないですか。色々興味を持って、『なんでだろう?』とか『へー!』って思える人。そういう人なら楽しめると思います。」

そう話してくれたのは、ディレクターの佐々木さん。最後に、佐々木さんを紹介します。

佐々木さんは、もともと秋田でアパレルの仕事をしていて、22歳でユニに勤めはじめ、今年で7年目になる。

SONY DSC 「3年でディレクターになる!」と宣言して、実際に25歳でディレクターになった。

ディレクターは、番組制作における監督のような存在。そこまでいかずに辞めてしまう人や、なかなかなれない人もいる。

どうして佐々木さんはディレクターになれたのだろう?

「自分がディレクターだったらこうするな、という視点を常に持っていました。ADからディレクターになるって、何でもチャンスなんです。突然ディレクターが来れなくなったときに、ラッキー!チャンス!と思えるかどうかですよね。」

実際ディレクターになってみると、時間にも心にも余裕が出てきた。もっと仕事が俯瞰できるようになってきたそうだ。

uni35 「レポーターのいいところを伸ばしてあげたい、とか、楽しい現場にしたいとか。番組で一緒になった新人のレポーターの子が、今悩んでいるみたいで、今度飲みに行こうと話しているんです。そんなふうに、自分の経験したことを求められてアウトプットすることが増えてきて。」

「この仕事をしていると、かっこいい大人に沢山会うんです。脚本家の方だったり、タレントさんだったり。そういう人から、また一緒にやろうねっていわれると、嬉しいですよね。自分の身につけてきた武器でやりたいことをやって、家族を養っていきたいな、と思っています。」

uni36 佐々木さんのように、虎視眈々とチャンスを狙っていけば、ADからディレクターになれるかもしれない。ゆくゆくは自分のつくりたい映像だってつくっていける。

「楽しい番組は楽しい現場から生まれる」と佐々木さん。確かに、何でも楽しむことができる人の方が、人を楽しませる番組をつくれるのだろうな。

最後に、ADの木戸さんがこんなことを言っていました。

「4年間働いていて、『まだこの時間?』って思ったことはないです。一回もです。いつも『あ〜、もうこんな時間か!』ってなります。みなさんが思っている以上に、ここは楽しい世界です。口で言うよりも、実際に目で見てもらったほうがいいと思います。」

やってみたいけど辛そう。もし、そこだけがひっかかりなのだとしたら、それはもったいないと思います。テレビの向こう側を、ぜひ一度見てみてください。

(2013/12/21 笠原ナナコ)