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あんじゃねな社会を

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「『あんじゃね』な社会をつくるために、人を育てるということをしています。社会を人づくりで変えていきたいんです。」

『あんじゃね』とは、長野県南部の方言で、「安心だよ、心配ないよ」という意味を持つ言葉。

greenwood 今回は、長野県・泰阜村に28年続く、NPO法人グリーンウッド自然体験センターで働く人を募集します。

グリーンウッドの主な活動は、1年間親元を離れ、泰阜村の小中学校に通う『暮らしの学校だいだらぼっち』という山村留学や、夏と冬に、集まった子どもたちでプログラムをつくるところからはじめる、『山賊キャンプ』など様々だ。教育の対象は子どもだけではない、幼児やその保護者、また、大学生の受け入れやなど、幅広い対象に向けた活動をおこなっている。

話を聞きに、グリーンウッドのある泰阜村へ向かった。

まずは東京からバスで長野県・飯田駅へ。そこから飯田線に乗り込み、夏には子どもたちが川遊びをするという、天竜川の流れに沿って1時間ほど電車に揺られる。だんだんと窓から見える景色が緑一色になっていく。

長野県の南部の山間に位置している泰阜村。信号もコンビニもない信州の秘境と呼ばれる、人口1,800人ほどの村。

IMG_1165 到着すると、事務局長の齋藤さんが迎えてくれた。そこから車で10分。子どもたちが暮らす、母屋に到着した。

荷物をおろして見回すと、子どもたちが食事をつくる台所やダイニング、広間、それぞれの部屋が並んでいる。木でつくられた、広々とした大きな家。わたしに気付いた小学生の男の子が「こんにちは」という挨拶とともに、お茶を運んできてくれた。

IMG_0970 ありがとうと言って受け取ると、齋藤さんがこう話はじめてくれた。

「ここは自然学校と思われることがありますが、そう考えると少し違います。自然学校だと、大人がなにかプログラムをつくって子どもに体験させる、というところが多いと思います。ですが、この『暮らしの学校だいだらぼっち』や、『山賊キャンプ』には、そういった大人が用意したプログラムはありません。集まった子どもたちで、なにをして過ごすのか、話しあうところからはじまるんです。」

IMG_0976 実際に、ここに暮らす子どもたちは、掃除、洗濯はもちろんのこと、朝・夜それぞれ20人分をこえるご飯づくりや、お風呂も自分たちで薪をつかって焚いている。その薪も自分たちで山に取りにいき、分担を決めて薪割りをしている。

「とにかく自分たちの手の届く範囲でやれることはすべてやっています。ここでの生活に関して、今日は何をするかということも自分たちで決めていきます。例えば、田んぼをやっているので、稲刈りがこの日だとか、そろそろお風呂の薪が足りないよねってなったら山にいく日を決めたり。その中で休みの日があれば、山にサイクリングに行こうとか、川にいこうとか、いろんな計画を話あって決めていっています。」

だいだらぼっちで働くスタッフは、現在5名。先生としてではなく、相談員として、子どもたちの生活をサポートしている。この他にもキャンプの企画や総務など、グリーンウッドの活動を支えるために、15名のスタッフが働いている。

グリーンウッドの活動はどのようにしてはじまったのだろう。

「我々の活動は、キャンプからはじまりました。けれど、キャンプは、3泊4日ほどで終わってしまいますよね。もっと時間があれば、自分たちの食べ物や、暮らす家など、何でもつくれるのではないかと考えました。そこから、1年間泰阜村の学校に通いながら自分たちで生活する、『暮らしの学校だいだらぼっち』がはじまりました。」

IMG_1084 だいだらぼっちには、山賊キャンプに参加して、「もっといろんなことにチャレンジしながら生活してみたい!」と思った小学3年生から中学3年生までの子どもたちが、20人前後集まって生活をしている。

「子どもたちは、自らここに暮らすことを決めて来ているんです。なので、ここに来る前に本当にやる気があるのか、一人一人面接をしているんですよ。」

あんじゃねな社会をつくるための教育って、どういうものなんだろう。

「例えば、ここでは自分たちで使う器は自分たちでつくります。器づくりは、皿を焼くために山に入って薪を切ったり、上薬をつくるために、風呂焚きで出た灰を集めるところからはじまるんです。」

「普通にお店で買った方が、楽なんです。けれど、山や自然と関わることで、人間が自然の中で、こういう知恵を見つけて生きてきたことであるとか、そういうことが器をつくるだけでも必然的に学べてしまうんですね。」

IMG_0990 用意された中で、形だけつくるのではない。ものの成り立ちを肌で感じながら生み出していく。それに、薪の木を切るために地域の人と関わったり、器を釜で焼くときには、5日間、夜通し火を見守る。他人と協力しないとできないことだ。

「最近は、社会に関わる第一歩が踏み出せない子どもが多いと思うんです。社会の中で、一番小さなものは家族ですよね。その中で、自分が関わっていることを実感している子は少ないと思うんです。ご飯も作ってもらえて、習い事も用意されていて、自分がいないと家族が困るということはあまりない。」

ご飯をつくるためには、火や包丁を使うことになる、それを教えることが面倒だったり、手間になるから、親がやってしまう。それは家族という社会の中で子どもが関わる機会を奪ってしまうということ。

「一番小さい社会に関われてないのに、もっと大きいコミュニティーで生きていくのは、難しいと思います。だからこそ、ここではご飯をつくったり、お風呂を炊いたり、自分がいるから暮らしが成り立っている。だいだらぼっちのみならず、他の活動でもそれを感じられることを大切にしています。」

IMG_1008 もちろん最初からご飯がつくれたり、薪割りができるわけではない。ここで暮らしながら、少しずつ覚えていく。ここでの学びは、きっと点数で測ることができないんだろうな。グリーンウッドと関わった子どもたちは、どういう人に育ってほしいのだろうか。

「自分の人生を、自分の手で選び取っていける人になってほしいですね。それと、社会で生きていくときには、相手のことを尊重する気持ちがなければ、やっていけないと思っています。なので、他の人たちの気持ちも尊重して、お互い支え合える人になってもらいたいです。」

次に、ここで働いている、矢加部さんと、小倉さんにもお話を伺った。

矢加部さんは、今年大学を卒業し、ここで働きはじめた。夏と冬におこなわれる山賊キャンプの企画や、地域の子どもたちに向けた自然学校などを担当している。どういう経緯でグリーンウッドにやってきたのだろう。

「僕は、自然の中で遊んだり、キャンプすることが好きで、ずっとやってきました。なので、卒業論文を書くときに、自然体験を題材にしました。その論文で悩んでいるときに、ゼミの先生から一冊の本を渡されたんです。その本がここの代表の辻が書いた本だったんです。」

IMG_1047 それをきっかけに、キャンプのボランティアの募集を見つける。そして4年生の夏にボランティアとして夏のキャンプに参加した。

「目の前で子どもが変わっていく姿をみました。それがすごいなと思って。それと、ここにいるスタッフに出会って、こんな人になりたいって思ったんです。」

だいだらぼっちで子どもたちと暮らしているという小倉さんにもお話を伺った。グリーンウッドで働いているスタッフの方は、ほぼ全員が県外から集まっている。

小倉さんは、北海道出身で、10代のころから地域のボランティア活動や、NPOの活動に参加してきたそうだ。自分のものは自分でつくりながら暮らしていきたいという思いと、教育にたずさわりたいという思いから、ここで働きはじめる。広報や財務などを経験し、現在3年目。

IMG_1049 ここで働いてみて大変だったことはなにかありますか?

「忙しいことですかね(笑)。ここでは、仕事と暮らしが本当に密着しています。子どもたちと過ごす部署もあれば、そうでないところもあります。今は子どもと過ごしているので、子どもが寝たあとにパソコンに向かうこともあります。」

「けれど、その事務仕事がどこにつながるかわかるので楽しいんです。保護者の方への連絡や、キャンプに参加する子どものアレルギーの有無の確認など、一つひとつが、実際に事業につながっているのが見える。それが事業の質につながって、ゆくゆくは子ども、保護者、教育につながるところまでわかるんです。そう思えば、ひとつの作業を、しっかりやろうって思えます。」

IMG_1220 ここでは、子どもと大人関係なく、一人の対等な人間として暮らしている。理念の部分はしっかり共有され、みんながそれを目指している。けれど、教育方針などに特に決まりはない。子どもたちへの対応や、事業の進め方ですれ違うことはないのだろうか。

「そこまで大きくずれることはありません。ですが、あまりにも違うと思えば、その都度話し合いますね。」

「そこで、言わないという選択をとることは、無責任な関わりを大人が認めてしまうことになります。そうすると、だいだらぼっちの子どもたちにもそれを認めることになりますよね。結果として、意見が違ったとしても、そこに踏み込んでいこうという姿勢をみせることが、ここにいる大人の役割だと思っています。」

大人同士であっても、子ども相手であっても、伝えることを諦めない姿勢をみせる。ここの子どもたちはできるんですか?と訪ねると、「できません。」と答えてくれた。それでも「10、20年経って、そういう大人の姿をみたことが残っていればいいですね。」と笑いながら話す。

ここで働く人は、どんな人が向いているのだろうか。事務局長の齋藤さんが答えてくれた。

「なにか、これをやってきましたって言えることがあるといいですね。これが今の自分をつくっていますとか。ただ、完璧な人間を求めているわけではないので、だめところがあっても、前向きだったり、素直に謝れる人とか、そういう人がいいです。」

一人間として、大人も子どもも関係なく暮らしを送っている。子どもが好き、というだけでは勤まらないし、もちろん人を受け入れられないと難しいんだと思う。

IMG_1281 まずはここで研修職員として。2年目以降は正職員として続けていくこともできるそうだ。グリーンウッドが家賃を負担してくれるので、住むところにお金はほとんどかからない。ご飯もお風呂もだいだらぼっちのものをつかうことができる。

教育は、すぐに結果はでないこと。10年後に結果がでることを信じて、この地で生きながら働ける人に、ぜひ来てほしいと思います。

(2014/1/5 吉尾萌実)