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本気を設計する

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「百聞は一見にしかず」という言葉があるように。

色々な組織の若手の方に話を聞く中で「実践を通した学びが大きい」ことに気づかされます。

もちろん座学から得られる学びもあります。

けれど、実際に行動して、人と関わるとハプニングも起きる。そうして得たものは、自分の人生に大きな影響を与えていくと思います。

NPO法人JAE(ジャイー)は、長期実践型インターンシップや体験型キャリア教育プログラムを手がけている組織です。

1 ここで企業と大学をつなげ、本気になれる場を増やしていく人を募集します。

大阪駅から歩いて10分ほど。ビルをエレベーターで上がると、岡山・西粟倉の木に包まれたオフィスが現れた。

迎えてくれたのは、代表の坂野(ばんの)さん。

2 早速話を聞いていきます。

「2001年にはじまったJAEは、一昨年に代表と事務局長が交代しました。いまは30代のメンバーを中心に、第2創業期にあたります。」

坂野さんの原点は、就活を控えた大学3年の経験にあるという。

「部活部活の毎日でした。ふと『このままでいいのかな?』と議員インターンシップに参加したんです。そこではじめて仕事のこと、社会のこと、そして自分自身を考える機会が生まれました。」

その後、一度は就職活動をしてみた。

「どんな仕事があるのか。どんな会社があるのか。そして自分は何がしたいのか、わからなかった。振り返ると、学校教育の中で仕事を考える機会がなかったんですよね。社会と教育の間の大きなギャップを感じて。どうにか埋めたいと思ったんです。」

そこで立上げ直後のJAEと出会う。

当時はインターンシップやキャリア教育を実践している団体も少なかった。地道に活動を続け、文科省や経産省とも仕事をするように。

そうして現在のJAEが形づくられてきた。

3 2004年にはじまり、JAEの核になっている事業が、大学と連携した企業の商品開発や課題に取り組むPBL(プロジェクト型学習)にインターンシップだ。

どのようなものだろう?

坂野さんはこんな例を挙げた。

大学において経営学の教授が、実社会でマーケティングを実践できるフィールドワークを考える。そこで、協力企業を探すこととなった。

そうした取組みは以前からあった。けれど、企業が社会貢献の一環として協力するのでは、「両者にメリットが生まれません。」と坂野さん。

「大学と企業が関わる機会が得られるのはいいことです。ただ、大学の授業やゼミなどのためにテーマをつくり、調査してまとめて、発表会を開くだけでは学生も熱意を持ちにくい。企業も『いいんじゃない、よく頑張ったね。』とその場で終わってしまうんです。」

「実際の職場では『こんなニーズはないでしょう』『自己満足じゃないの?』といった生のやりとりがありますよね。バーチャルではなく、実践が大事だと思うんです。大人が本気で向き合うと学生は変わります。内に秘めたものが引き出されたり、気づかされるんです。」

553361_407572412653703_2017242153_n その背景には、社会と教育を巡る課題がある。

「人材育成に割く余裕がなくなるなか、企業は即戦力を求めるようになりました。けれど、新卒の段階ではうまく馴染めない人も少なくない。結果、早期に退職。自分の道を模索しながら、非正規雇用が続き経験が十分に積めなかったり、無職ということもあります。」

「学生が自分の目指したい姿を描き、どんなステップを踏んでいくのか。そもそも働くってどういうことか。実社会と教育をつなぐパイプが求められています。」

そんな実社会と教育をつなぐのがコーディネーター。

1549529_577860742291535_94586692_n 求められているのは、企業や大学といった関係者双方にメリットを生み出せるように、両者の本気を引き出していくこと。

どのように進めていくのだろうか。

まず企業との関わりについて。

「はじめは経営者の方も漠然と『学生の視点で、なにか面白いアイディアを出してくれたらいいな』と言われることが多い。そこで会社がどうなりたいか。解決したい課題は何か。掘り下げて、明確にしてもらうんです。」

その答えは経営者の方が持っているもの。コーディネーターは寄り添い、引き出していく。

そして、そこにどうしたら大学との連携がマッチするのか。一緒に目標を設定していく。

連携の意義が明確になることで、企業の姿勢は変わってくる。その熱は学生にも伝わるようだ。

一方、大学とはどのように関わるのだろう。

窓口となるのは、キャリアセンターや教授。

「就職率に限らず、より実践的に学生の意欲をかき立てるフィールドで学ばせたい人が多いですね。」と坂野さん。

1606850_577864182291191_274553818_n 変化するのは、学生だけではないという。

「学生が成長する姿を見て、大学側も『こんなにうちの学生はやれるのか!』って驚くんです。本気になるのは学生に企業だけではないんですよ。大学も変わっていくわけです。」

その先にJAEが目指すものはある。

「言ってみれば、大学との連携は一つのきっかけです。若者がチャレンジする場をつくるには、応援する大人たちも本気にならざるをえないでしょう。そうして共にチャレンジする場をつくっていきたいんです。」

話はこれから一緒に働きたい人へとつながっていく。

「まず、人が育つことに関心があるといいですね。技術は働きながらでも身につけられます。それから、僕らはプレイヤーよりはプロデューサー。場をとことん設計して、あとは見守る立場なんですね。」

「ここが一番大切だと思うんですが、コーディネートの先に見ているものを共有していきたい。事業を通して色んな人を巻き込み、本気になる人を増やしていく。それが結果として大学や地域を変えていく仕事です。社会が変わるプロセスをつくるとも言える。楽ではないけれど、楽しいと思います。」

現にJAEの過去10年間の取組みは、いま形になりつつある。

「よければ現場も見てください。」とこの日は、プログラムを見学する。

同行したのは、事務局長の山本さん。

6 事務局長の重要な仕事は、JAEの活動を事業として成り立たせることにある。

「社会に価値のあることを提供しつつ、僕らの仕事としても成り立たせる。いくら社会によいことも、持続できなければ偽善だと思うんですよ。」

その言葉には背景がある。

2011年にJAEへ入った山本さんは、前職で塾を経営、28歳で事業をたたむこととなった。

「いま思えば『勉強で限界に挑戦することを通して、自分の可能性に気づいてほしい。』という思いが先行して、経営意識が弱かったんです。」

だからこそ、企業からお金をいただく場合は、それに見合うだけのメリットを設計することが求められる。

「どこまでもニーズ把握をして、自分たちが成し遂げられる目標を設定する。仕事のキモでもあります。」

この日、訪れたのは京都の花園大学。

企業が抱える現実の課題に、大学生が取り組むプログラムだ。

滋賀県の株式会社清原は、創業46年。冠婚葬祭や寺社仏閣の祭事等に用いられるふくさを純国産にこだわり製造している。国内トップシェアを誇る。

今後の事業展開に向け、大学との連携を行うこととなった。

「ふくさには『思いをつつむ』ということがあります。将来の成長を考える上で、冠婚葬祭に限らず発想してほしいです。独自性、情報収集力、実現可能性、将来性、地域貢献性を基準に評価していきます。よい案があればぜひ商品化したいです。」

はじめにそう話したのは、デザイナーの岸本さん。

7 学生はチームを組み、3ヶ月間に渡り商品開発に取り組んできた。最終日のこの日はプレゼンテーションとなる。

6つのチームからは、ふくさの布を用いたボード、ペットボトルケースにPCケースなど、試作品とともに説明がなされる。

8 印象的だったのは学生の企画力、そしてプレゼンのレベルの高さ。

商品のネーミング、色、一つひとつに「どうしてそうしたのか」という裏づけがなされている。

岸本さんの問いも「ターゲットは?」「100均でも同じような商品はありますが、どう差別化を図るんですか?」と本気度が伝わってくる。

JAEの山本さんは会場全体を見渡しつつ、学生のプレゼンを見守る。

そして司会も務めていく。

「どんなことを学びましたか?」と学生に聞くと、

「マーケティングのためヒアリングをする際、どうしたら人に伝わるのか、繰り返しの中で学ばせてもらいました。」

また、緊張した学生が言葉詰まりそうになると「失敗してもいいから明るく伝えてみて。」とアドバイス。

そうして講義は終了。

会場を後にして、山本さんに今回のプロジェクト設計を聞いてみる。

「企業さんには、実際の商品開発をさせてほしいと提案しました。企業と学生両方の本気度を上げようと思ったんです。それから今回は、企業の目的として、デザイナーの岸本さんの人材育成が挙がりました。実は、社員研修のプロジェクトなんですね。」

社員研修ですか?

「会社を担う人材として岸本さんを育てたいという社長の思いがありました。デザイナーとして、オーダーを形にする力は高い。今後はお客さんのニーズを把握して、売れる商品を考えていく力をつけてほしいと考えたんです。」

9 プロジェクトにおいて、岸本さんは学生との窓口を担った。

学生たちの商品開発は、まずは会社を知ることから。

そこで岸本さんの仕事は、会社概要から製品の特徴、原価に製造技術までを伝える準備にはじまった。

また3ヶ月間はこんなやりとりが続いた。

「講義後は、遅くまで残って学生と打ち合わせを行っていましたね。日々メールに電話で、商品開発の相談にも乗っていたと聞きました。」

商品化を視野に入れたプロジェクトだからこそ、岸本さんにも熱が入る。

一方の学生たちも成長を見せていった。

「質問の仕方一つにも変化があります。はじめは脈絡なく話していたのが、岸本さんの忙しい様子を察して『要点を絞って聞かないとダメだ』となってきて。」

「それが実践を通して関わる意味であり、僕らの価値なんです。」

そこでの気づきは、両者にとって次のステップへとつながっていく。

最後に山本さん。

「人ってみんな可能性があると思います。あとはそれを自覚できるか。僕らは事業を通して、そのきっかけとなる場をつくっていきたい。その先に、誰もがチャレンジできる社会があると思います。」

(2014/1/30 大越はじめ)