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“リノベまちづくり” を編む

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

古民家をカフェにしたり、雑居ビルをクリエイターの集うベースキャンプにしたり。すでにある物件を転用する「リノベーション」の求人は、仕事百貨において増えたように感じます。また「お客さんの層がより広がりつつある」という声も耳にします。

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数字で見ても、空き家率は全国で13%(2008年度「住宅・土地統計調査」)。今後人口が減るなかで、さらに上昇すると予想されています。

リノベーションを手短かに紹介すると「建物の歩みを大切にしつつ、そこに新たないぶきを吹き込む」ということでしょうか。

時間が積み重ねられることは、豊かなまちにつながると思います。

リノベーションは、一つの文化として定着しつつあって、家を取り巻く環境は、大きな転換期にあるのかもしれません。

今回の舞台は北九州から。リノベーションを通して、これからのまちづくりを展開しようという試みがはじまっています。

一般社団法人まちづくりリノベーションセンターの立上げメンバーを募集します。

新幹線の小倉駅から5分ほど。魚町(うおまち)商店街に見えてくるのが遊休ビルを転用したメルカート三番街。ここに代表の徳田光弘さんを訪ねました。

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徳田さんは、現在九州工業大学で准教授をしながら、まちづくりリノベーションセンターの代表理事を務めています。

生まれは福岡市内。大学、大学院と建築を専攻。

卒業後は2003年から鹿児島大学に勤務します。

「学生時代から相談を受けることが多かったので、教えることに向いているなと。一方で、研究は何しよう?と考えていました。」

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研究テーマとの出会いは、2006年ロスのリトルトーキョー。衝撃的な出会いだったなぁ、と話す。

「歩いていたらゴミ箱を見つけて、ちょっと漁ってみたくなったんですよ(笑)。すると日本の新聞が出てきて、一面に“鹿児島県北部豪雨災害”の記事が。慌てて鹿児島に戻りました。」

すぐに現場を訪ねて圧倒されたと言う。

「こわいぐらいに静まり返ってるんですよ。豪雨災害の研究をしよう、とりあえず毎日通おうと。通っていくと、だんだんとトンカチの音が聞こえてきました。カンカンカンカン… 復興の音でした。」

「色々な人へヒアリングも行うなかで、数字では伝わらない復興のダイナミズムを感じました。どうにか形にできないか、と考えるようになって。もとある状態に戻るのが“復旧”です。“復興”は災害を経て、別の次元に移行する過程のようだ、と見えてきました。」

鹿児島のまちなみにもこんな意識を持つようになる。

「空き家が目立ちはじめて、人口もじょじょに減少している。まちでも災害の現場と同じことが起きているのでは?」

どういうことだろう。もう少しくわしく聞かせてください。

「災害が起きると住民は離散します。空き家が増え、人口減少が一気に起きるんですね。土地の価値も限りなく0に近くなり、再び戻ろうという気持ちも持ちにくい。でも災害が起きなくても、何もしなければいずれ人がいなくなる地域もあります。つまり、災害はすでに進行しつつあった問題を一気に顕在化させただけなんです。タイムスパンが違うだけで、まちにも同じ構造がある、と思いました。」

ちょうどその頃に一つの転機が訪れる。

鹿児島でリノベーションのシンポジウムを開催する話があり、事務局長の誘いを受けた。

シンポジウムは2010年の6月に開催。そこに集ったのは、ブルースタジオの大島さん、OPEN Aの馬場正尊さんに山崎亮さん… 徳田さんがまちに対して抱いていた課題意識に、取り組む人たちだった。

「具体的なビジョンよりも先に、この人たちだ、この人たちを北九州に呼びたい、と思いました。」

そして大学を現在の九州工大に移した後、2011年3月19日にリノベーションシンポジウム北九州が実現する。

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その流れで2011年の8月にはじまったのが、リノベーションスクールだ。

設立の経緯について徳田さんはこう話す。

「いま、建築や不動産は新築至上主義からストック活用市場へと移行していく、非常に大きな転換期にあると思います。一方、大学教育では新築のいわゆるFine Architectを教える要素がいまだに強い。これからの社会が求める人材とズレが生じている状況です。」

「まちでリノベーション事業を行うには、建築に限らず、幅広い視野が必要です。いまある建物をどう活かすか、事業として成り立たせるには、資金計画をどう組むか。まちの人との生のやりとりも、とても大事です。事業を実践したい人が、生きた知識を学べる場が必要だと思いました。」

現在スクールは半年に一度、4日間の集中講座で行われている。第6回目を3月に控えているところ。

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参加者たちの舞台は、北九州にある実際の遊休物件。ユニットを組み、リノベーションの計画を練り、オーナーに向けたプレゼンテーションを行う。

最大の特徴を徳田さんはこう説明する。

「机上のプレゼンに終わらず、提案を実現すること。一つひとつ実績を積み重ねることが大事なんですよ。スクールの価値としても、まちづくり事業としてエリアの価値を高めていく意味でも。」

過程においては、日々さまざまなトライ&エラーが繰り返されている。

はじめに見えてきた課題は、プレゼンを行った企画が実現されないことだった。なぜか。不安を抱えるオーナーとテナントの間に入り、サポートする存在が欠けていた。そこで、北九州家守舎を発足。

日本仕事百貨でも求人したことがあるのでご存知の方もいるかもしれない。この求人を通して採用された方がすでに働いている。

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この2年間で半径300mほどの魚町エリアに11件の実現案件が生まれた。

リノベーションを行うことで、建物が、まちがよみがえっていく。歩いてみると、同時多発的にまちが変革しつつあることが実感できる。

そしていま、リノベーションを通じたまちづくりは次の段階に移りつつあると言う。

ここからは、センターの理事である、らいおん建築事務所代表の嶋田洋平さんも話に加わる。

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「北九州はかなり色んな地域から吸収させてもらいました。そしていま、実を結びつつあるわけです。次は別の地域にバトンタッチする段階に差しかかっています。日本中の地域が、自分たちの力で持続的に豊かになっていけばと思います。」

そこで生まれたのが、今回募集を行うリノベーションまちづくりセンターだ。

現在は徳田さんがほぼ一人で運営を行っている。今回は、専任のスタッフとして2名を募集したいと考えている。

今後、センターが担っていく役割は大きく2つ。

一つはリノベーションスクールの事業展開。3年を目途に事業として固めることを目指している。

具体的には、日本の他地域へのエリア拡充。すでに静岡県の熱海市をはじめ4カ所の実施が決まっている。他に引き合いも増えつつある。そのためにスクールの仕組みを確立したい。

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また、スクールのコンテンツも深めていきたい。

「現在の短期集中講座に加えて、より深い学びが求められています。長期のスクールも考えられるでしょう。一ヶ月のものや、通年で日常的に学ぶ場も必要でしょう。」

「実際にどんな学びが必要で、どんなプログラムを組み立てていくのか。形式も、ウェブでのオンライン講義も出てくるかもしれません。目指していく形から、一緒に考えつくりあげていきたいんです。」

そしてもう一つの役割が、学際コミュニティの立上げ。

「産学連携、という言葉があります。リノベーションスクールは“産”で活躍する実務者を育てていきます。北九州では、産の実績が出てきました。今後は得られたノウハウを集約する“学”が求められているんですね。産と学、さらには官(行政)がコラボしてまちづくりを切り開いていきたいんです。」

「実務者たちが蓄積してきた知識をデータベースとして集約し体系化します。そこからモデルを生み出し、全国に普及していきたいんです。」

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また、“産”の現場で実務者が行き当たった問題を解決する。そうした役割も期待されている。

現場ではさまざまなことが起きるから、サポートする領域も幅広くなる。

「リノベーションに適した家屋かどうかを診断するホームインスペクション。マンションをゲストハウスへ用途変更する際の法規。土地評価額、路線価の推移といった定量なデータも必要です。加えて今後は、リノベーションの環境負荷という視点も重要になると思います。」

これから働く人は、まずは実務者に研究者を集め、知識を集約していく。そして得られた情報を編集して配信を行う。

論文集のような形をとることもあれば、インタビューを行いWEBコンテンツとして配信するかもしれない。

ちなみにセンターの事業モデルは次のように考えている。

「スクールは事業化を進め、企画運営により収益を生み出していきます。学際コミュニティは、実務者と研究者をつなぐことで収益をあげていく。たとえば会費制ということが考えられますよね。」

今回働く人に大切なことはなんだろう?

「一番は人が集い、つなげる場をつくること。ベースにあるのは人なんです。まちづくりは、地元メンバーがやる気になって動かないと、うまくいきません。“テクニックでこなす”よりも“盛り上げてうながす”役割なんですね。だから、人やまちが好き、笑顔、色々知りたい。キャラクターが大事だと思います。」

「加えて編集する力です。建築、不動産、まちづくり。仕事上の経験はなくても、ベースとしてある程度の知識は必要。たとえば学際コミュニティをつくるとき、建築に構造という分野があることは知っていてほしい。他にもWEBが多少わかる人が来てくれたらとか。色々ありますが、あとは応募した人と決めたいです。」

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スタートアップなので、走りながら考えていく日々になるでしょう。はじめは大変かもしれないけれど、次第に慣れると思います。むしろ前例のない仕事。物怖じせずに飛び込んでみれば、楽しさも感じられると思います。

最後に聞いてみる。徳田さんはこの事業を通して、どこを目指しているんでしょう。

「まちに元気になってほしいです。」

「みんながニコニコしながらまちを使い遊び倒していく感じかな。魚町の商店街に子どもたちが溢れかえって、遊びまわっている。ずっとそのイメージを持っているんですよ。だって、その方が楽しいじゃないですか。」

もし、まちがこうなればいいのに、と思っていたり。いま住んでいる自分のまちに違和感があったなら。リノベーションからまちづくりを考えてみてはどうでしょうか。

北九州では、日々新たないぶきが感じられます。動くなら今かもしれません。

(2014/1/16 大越はじめ)