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人づくりから未来をつくる

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日本海に浮かぶ、島根県の隠岐諸島。ここに、海士町(あまちょう)という島がある。

よくメディアで取り上げられているから、名前を知っている人も多いと思う。

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この島は、場づくりでもものづくりでもなく「人づくり」を通してまちづくりをしている地域として、全国から視察がくるほど注目されている。

島唯一の高校「隠岐島前高校」には、地域の未来をつくる人材を育てる専門コースがあり、地域資源を活かしたプロジェクト型の授業が行われている。

小規模校だからこそ。人口流出や財政難といった問題を抱えた島だからこそ。「島全体を学校にする」という発想で、課題を魅力に変えた。

今では、「島留学」というかたちで全国や海外から入学希望者がやってくる。

今回は、そんな島で学ぶ学生たちを、「学校」と、新しくできる「塾」と「ハウス」の3つの拠点から、育て、伸ばしていく人を募集します。

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海士町には、日本のちょっと先をゆく未来の姿があると思う。

もし、教育や「人づくり」から社会をつくっていくことに興味がある人がいたら、ぜひ続きを読んでみてほしい。

七類港から船に乗り3時間で海士町に到着した。フェリーターミナルのキンニャモンニャセンターで、今回の取材をコーディネートしてくれた岩本さんと待ち合わせ。

事前に電話やメールでやりとりしていたとおり、気さくな雰囲気の岩本さん。

すれ違う人に次々と声をかけられ、とても顔が広いようなので、てっきり島の人かと思ってしまったけれど、実は東京のご出身。

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大学卒業後はソニーに勤めた。

ただ、もともと教育学部で学び教員を志していたこと、学生時代にアフガニスタンに学校をつくった体験などから、ライフワークとして全国の大学や学校をまわって「出前授業」をしていたそうだ。

「人ってちょっとした気づきで変わる。人が変わると行動も変化して周りも変わる。人の成長を通して社会をより良く変えていくことが、僕のミッションだと思っています。」

そんな岩本さんが初めて島前高校へ来たのは、今から7年前。講師として招かれたのがきっかけだった。

当時の島前高校は、年々生徒数が減少し、廃校の危機にあった。

この地域から高校が無くなれば、進学を目指す子どもとその家族も島から出ていく。高校の問題は、地域の問題にも直結していた。

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「人口減少、少子高齢化、財政難。そんな話を聞いて僕が思ったのは、これって日本の重要課題の最前線なんじゃないかな、と。今後、日本が直面していくことになる課題と、どう付き合って持続可能な社会をつくっていくか。ここが、その未来を切り開く場所になるかもしれないと思って。」

海士町からのオファーに応える形で、島へやってきた。

最初は3年のつもりだったけど、それがいつの間にか8年目。お子さんも生まれ、家族とともにこの島で暮らしている。

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岩本さんが先生や地域の人たちと7年かけてつくってきたのは、島全体を学校にし、日本や世界のこれからの地域をつくっていく”グローカル”な人材を育てていく仕組み。

それは、学校だけではなく、公立の「塾」と島外からの学生を受け入れる寮「ハウス」との三位一体で、互いに連携をとりながら進められている。

学校が水戸黄門だとしたら、「塾とハウスは、助さん格さんみたいな感じかな」と岩本さん。

学校とハウスの関係はなんとなく想像できるのだけど、学校と塾ってあまり仲が良くないイメージがあったりする。

そもそも、公立の塾自体めずらしい。地域の寺子屋のような感じなのだろうか?

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まずは塾の話を聞くために、「隠岐國学習センター」へ伺った。

「ここは、学校と情報共有や連携をしながら、生徒ひとりひとりの学力や素質に合わせた教育をするために誕生した町営の塾です。塾…のような、塾でない場所ですね。学力を上げるのは、目的ではなく手段なんです。」

そう話すのは、センター長の豊田さん。

豊田さんは、リクルートに勤めた後、人材育成のウィル・シードを経て海士町へやってきた。

「地域」や「夢」というキーワードも出てきたけれど、ひとりひとりの学力や素質に合わせた教育ってどんなものなのだろう。

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「教科を教える授業のほかに、『夢ゼミ』という大学のゼミ形式の授業をしているのが、この塾の大きな特徴だと思います。毎週、生徒がひとりひとり、将来の夢や興味があることを発表して、それについてグループでディスカッションするんです。」

ジャーナリストの津田大介さん、「葉っぱビジネス」で知られる横石知二さんなど、なかなか直接会う機会のないような方が視察にやってきて、生徒と直接話してくれることもある。

色々な人に話を聞いてもらい自分の夢を具体的にしていくことで、その実現のために今の勉強が必要なんだなと、生徒たちは自然と腑に落ちる。

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「決まったカリキュラムよりも、その都度生徒たちにとってベストだと思えることを優先していける。学習センターならではのフレキシブルさを持って、生徒をサポートできるのは面白いですよ。ここから、地域や社会の未来と自分の未来を重ねて、それを実現していけるような人材を育てていきたいと思っています。」

そんな豊田さんのもとで働いている指導スタッフのひとり、的場さんにも話を聞いてみる。

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的場さんは兵庫県出身。新卒でベネッセに勤めたのち、1年半前からここで働きはじめた。

「3年前に、友人の誘いで興味を持ち、海士町に遊びにきたんです。10分だけ、ここを見学させてもらいました。そのときに、自分が通っていた都会の進学塾とは違う、ありのままでいられるような温かさを感じて。もし転職して働くならここだな、と思いました。」

当時、的場さんは社会科のテストをつくる教材編集の仕事をしていた。

学校の先生とはやりとりするけれど、肝心の生徒とは距離が遠い。自分が商品に込めた想いは生徒に届いているのだろうか。それが気になって仕方がなかった。

教員免許を持っていないから先生にはなれないけど、もっと生徒の傍らに寄り添える仕事がしたい。随分悩んだ末、会社を辞めて海士町へやってきた。

実際に働いてみて、どうですか?

「考えることが、以前と比べて深くなりました。生徒をどう育てるか、地域をどうしていくか。地域の未来に、その子たちがどう生きていくか。コストや時間だけでは割り切らず、何を大切に残すべきかを、想像していく仕事だと思います。」

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ここで働いていると、生徒が変化するところも、その変化を家族や周りの人たちがどう受け止めているのかも、すべて見える。

仕事の成果が見えると、じゃあ次はこうしよう、というやる気にもつながる。

「教育は自分と子供の一対一では完結しないもの。行政、地域社会、周りの大人たちがどう在るかが、子供の成長にも大きく影響するんだなって。ここで働いてみて、それが改めて実感できました。」

今は、社会とつながった教育とは何かを、日々学んでいるそうだ。

教育だけにとどまらず、それを取り巻く地域社会の未来まで体感できる職場というのは、なかなかないと思う。

「教科を教えるので、高校レベルの教科の知識は必要です。でも、経験や知識よりも、ぼくらが目指しているビジョンに共感してくれる人が一番ですね。ここで新しい教育のカタチを生み出していきたいと思う人に、来てほしいです。」

豊田さんがそんなことを言っていた。

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生徒数も増え、民家を借りてつくった今の拠点もだんだん手狭になってきた。

来年には、オンデザインパートナーズの設計で、場所を移して新しい建物に生まれ変わる。

ここでどんなことができるのか一緒に考えていける人が来てくれたら嬉しい。

もうひとつ、海士町に新しくできることになる建物を紹介します。「島前交流研修センター」、通称「ハウス」と呼ばれる場所です。

ここは、「島留学」で島外からやってきた学生が暮らす寄宿舎になる。そして、生徒と地域の交流の場にもなっていく場所。

40人が暮らし、80人が集まることができる規模になるそうだ。

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その新しい環境をこれからつくっていくのが、「ハウスマスター」と呼ばれる役割になる。

「ハウスマスター」というのは、いわゆる寮の炊事や掃除などをする管理人ではなく、一緒に暮らしながら生徒を育む存在。

「先生とも親とも違う、ななめの関係ですね。サザエさんでいうと、ウキエさん。キテレツ大百科でいうと、勉三さんですかね。近所のお兄ちゃんのような存在だと思います。」

そう話してくれたのは、地域おこし協力隊として海士町へやってきて、ハウスのコンセプトを考える手伝いをしている中根さん。

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中根さんは今、試験的に学生5名と共同生活を送りながら、「ハウスマスター」の役割について考えている。

新しい寮をつくっていくのが1代目のハウスマスターだとしたら、中根さんは0代目なのだと思う。

どんな人にきてほしいか、聞いてみた。

「高校生って微妙なお年頃。今までの暮らしで培ってきた価値観や判断基準があるから、反発されたり言い合いになることもあるかもしれません。ひとりひとりに向き合って、ときには相手の想いに寄り添い、ときには本気でぶつかっていける人がいいと思います。」

答えは自分の中にあり、それを気づかせてくれるのは周りの人。

正しさや答えを押し付けるのではなく、生徒たちの想いを引き出したり、自分で気付き行動できるような環境をつくっていけるような人なのだと思う。

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「昨日まで悩んでいた子が、自分の夢が見つかった!やった!って変わる瞬間を見ると、ものすごく感動するんです。夢に向かって進んでいく姿を、後ろからも横からも、色々な角度から見ることができる。この関係性は、ハウスマスターならではの面白さなんじゃないかと思います。」

とくに全国から集まる島留学の学生は、自らここで学ぶことを選んだ子たち。個性や学ぶ意欲のある学生が多い。

新しいハウスでは、自ら積極的にイベントやワークショップなどを企画する子も現れるかもしれない。そんな子たちが手を挙げやすい環境をつくっていくのも、ハウスマスターの仕事だと思う。

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高校生を相手に働くということは、新芽の成長を間近で見るようなものかもしれない。

時間はかかるし忍耐は要るけれど、思いがけないときに目を見張るような変化がある。

そんな瞬間に立ち会いながら、その子たちがこれからつくっていく未来まで想像していけるのが、この仕事の醍醐味だと思う。

いきなりの島暮らしが不安だという方は、いちど訪ねて島の空気を感じたり、スタッフの方たちと話してみてほしい。

Iターンでやってきた移住の先輩がたくさんいるので、きっと親身になって色々教えてくれると思います。

(2014/2/21 笠原ナナコ)

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