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かっこいいウェブサイト、おしゃれなイベント、ワクワクする広告。そういうものが溢れている時代だと思う。ただ、そのぶん1のものを10に見せるようなこともできてしまうのかもしれない。情報の受け手にも、考えて選びとる力が求められている。
そんな時代の「PR」を考えていくのが、今回募集する仕事です。
「PR」って「宣伝」とほとんど同じ意味で使われることが多いように思う。わたしも取材に行くまではそう思っていた。
でも、実は「PR」という言葉は「Public Relations」の略で、「組織と社会とのよい関係づくり」という意味があるそうだ。
企業、行政、学校、NPOなどの組織が、人々との間に継続的な「関係」を築いていくためのもの。
そんな「PR」の原点に立ち返って、さまざまな「Public Relations」をつくっているのが「バウム」という会社です。
社名の「バウム」は、日本語の「場生む」に由来する。
ときどき、空間プロデュースの会社と間違えられることもあるそうだけれど、バウムの生む「場」というのは、いわゆる空間だけのことじゃない。
コミュニケーションが生まれるひとときだったり、何かが起こりそうな可能性そのもの。一行の文章もまちづくりも、バウムにとっては「場」になる。
今回募集するのは、そんなバウムで働くPRディレクターとPRプランナーです。
東京メトロ「三越前」駅を降り、首都高の高架下の江戸橋の下を抜けると、Y字路の真ん中に、インドカレー屋の看板が目立つ4階建てのビルが見えてくる。
カレー屋さんの上が、バウムのオフィス。透明の扉を空けると、代表の宇田川さんが迎えてくれた。
まるでカフェの一角のようなキッチンで、コーヒーを淹れてくれる。
ちょうど去年の今ごろ引っ越したというこのオフィスは、スタッフのみんなと一緒にDIYでつくったそうだ。
色々なものがあって賑やかだけれど、決してごちゃごちゃしていなくて居心地がいい。
そんな空間のなかで、宇田川さんに話を伺う。
「僕たちは、クリエイティブディレクション、PR、ウェブ、編集、ワークショップなど、色々なことをしているように見えるかもしれないけれど、全てコミュニケーションの手段なんです。いつも考えているのが、『Public Relations』をどのようにつくり、育てることができるか、ということ。」
宇田川さんが言うには、「Relations」つまり「関係」というのは、体験の積み重ねによってできていくもの。
「僕とナナコさんも、もう10回くらい会っていますよね。1回だったらよく知らない人だけれど、何回か会ううちに、なんとなくお互いが分かってくる。企業と世の中も、そんな感じだと思っているんです。」
企業が世の中に出す、製品、CMやニュース、ウェブサイト。それらはすべてひとつひとつ、受け取った人の「体験」になっていく。そして、その体験の積み重ねによって、企業とその人の「関係」ができていく。
宇田川さんたちの仕事は、その「関係」をつくること。
たとえば、2009年に開校した丸の内朝大学は、ロゴもネーミングもどんなことをやるのかも決まっていないところからつくっていった。
丸の内朝大学は、出勤前の朝の1時間を使って学びや体験が得られるというコンセプトの市民大学。
旗のロゴマークには、「応援」「集団」「旅」といった意味があり、早起きした特別な時間に出会う人々と、そこに生まれる場を想像しながらつくられている。
ロゴにはじまり、そんな風にひとつひとつが「関係」をつくっていく要素になっている。
最近は、丸の内朝大学のように、「こういうことしてください」ではなく「一緒につくりましょう」という依頼も増えてきた。
たんに人を集めるのではなく、「社会にとってどういう在り方でいるべきか?」という長期的なソーシャル・ミッションだったり、本質を一緒に考えていくような。
宇田川さんが、こんな話をしてくれた。
「僕がこの仕事をはじめたきっかけというのは、イギリスのNGOオックスファムの”Make poverty history”というキャンペーンに出会ったことなんです。貧困を過去のものにしよう、という簡潔なメッセージとともに、斬新なCMを流したり、有名人や街じゅうの人がホワイトバンドを身につけて意思表示をして話題になりました。すごくスタイリッシュなキャンペーンだったんです。」
家族の影響で、幼い頃から自然にエネルギーや食のこと、社会課題に触れてきたという宇田川さん。
解決したい社会課題に対してPRという手段でアプローチする、という手法に衝撃を受けた。
それは、今のバウムの仕事のやり方にもつながっている。
クライアントやパートナーには、グローバル企業、大手企業からベンチャー、小さなNPOまでさまざまだけれど、どれも共通しているのは、社会を持続可能な方向にシフトする取り組みをしているということ。
「PRって、社会に受け入れられるかどうかが大切。社会ととても密接に関わってるんです。社会の空気を読んで、その先の空気をつくっていくというか。使い古された表現ですが、まさにそれで。だから、こうなったらいいなっていう空気をいつも心に置いとく必要があります。」
「僕らの場合は、よりサステナブルでよりたのしい社会を描いてる。だからそれに逆行するようなプロジェクトだったら空気が読みづらいし、つくれません。」
世の中も変わってきているように思う。人が「いいな」と思うもの、選ぶものが変わってきている。
たとえば、すごく美味しそうだけど、環境に負荷がかかりそうだから、少し高いけどこっちにしよう、とか。短期的利益よりも長期的利益を求める視点。
それは大きな流れではないかもしれないけれど、確実にそういう人は増えているんだろうな。
そうした世の中の流れも、きっとバウムのやっていることと近づいてきているんだと思う。
宇田川さんに聞いてみた。一緒に働く人として、どんな人に来てほしいですか?
「なんらかの形でPRの仕事を経験してきた人です。でも、よりかっこいいサイトを、より面白いコピーを、ではなく、長期的に世の中を変えていくようなことをPRの考え方でやってみたいな、という人が来てくれたら嬉しいです。」
あとは、もうひとつ。
「説得力のある人です。説得力のある自分の意見を持っている人って、実はすごく少ない。誰かが言ったことをコピーするのではなく、それをちゃんと思索して自分で考える力を持っている人だといいな。社会の空気をつくるには、まずはその人自身が魅力的な空気を持っている必要があります。目の前の人を動かせる、説得力のある仲間を待ってます。」
スタッフの吉本さんは、まさにそんな人なのかな。まっすぐな瞳が印象的な吉本さんにも、話を聞いてみる。
みんなに「よっしー」と呼ばれている吉本さんは、2年前に仕事百貨を介して入社した。
もともと編集の仕事をしていた経験を生かしながら、今はPRディレクターとしてPR案件も担当している。
”対社会”の視点を持って、広く見渡すタイプの宇田川さんに対して、吉本さんは、わりと目の前の人が気になるタイプなのだそう。
宇田川さん曰く、そういう吉本さんの姿勢は「素晴らしい」。だって、クライアントさんの課題は社会の課題でもあるから、その「人」に向き合っていくのは大事なこと。
とくにバウムの場合は、とにかく多くの人に知ってもらえばいい、というのではなく、届けるべき人に届けるような案件がほとんどだから、クライアントさんによって、PRのつくり方は全然違ってくる。
たとえば、プレスリリースを出すにも、この取り組みを伝えるにはどのメディアに向けて伝えるのが最適なのか、考える。この情報を知った人がどういう行動に出るだろうか?というところまで想像しながら。
既存の考え方にとらわれずに仕事をしたいクライアントさんが多いぶん、アイデアも求められる。自由に考えてやっていくことが、常に求められる環境。
「自由というのは大変ですね。でも大変と嫌は別なんです。」と吉本さん。
こんなことできるんじゃないかな、と好きなように提案してみる。すると、クライアントさんも宇田川さんも、意外と「やろうよ!」と言ってくれる。
提案が通れば、もうすぐに自分を責任者としたプロジェクトのはじまりだ。
「これくらいでいいんじゃないかーって気持ちで仕事をしたい人は、たぶん辛いと思います。クライアントさんを好きになればなるほど、もっと、もっといいものにって。作業としては大変になってしまうこともありますが。」
バウムに依頼をくれる会社は、社会課題に対して同じような方向を見ているから、お互い好き同士のいい関係で仕事ができることが多い。
ただ、同時にいくつもの案件が進んでいくから、恋愛で言うと10股くらいかけるような状態かも。吉本さんはきっと、ぜんぶ本気の恋だから大変なんだろうな。
「こんな仕事できるんだなぁって。色々な角度から仕事がやってくるんです。つまらないとか嫌だと思うことはなくて、クライアントさんから『こんなことで困ってるんです』と連絡が来て会いに行くのは、とても楽しくてワクワクする。困っている人に失礼かもしれないけど。困っていることを解決するためにこんなことしたらいいんじゃないかって、考えるのは楽しいですね。」
ひとつのクライアントさんの案件のなかにも、色々と考えることがある。
たとえば丸の内朝大学でいうと、年間のPR方針を考えるところから、取材の調整や立ち会い、冊子の原稿確認、クラスの企画や運営まで。
あと、「在り方をつくる」ということ。
丸の内の良さって何だろう?そこにある朝大学ってどんなものだろう?だんだん、考えが「まちづくり」にまで及んでいく。
この仕事は、仕事の幅が決まってないと嫌な人とか、決められたレールの上を走りたい人という人には、向かないと思う。
今までやってきたことを踏まえて、挑戦したいという人がいいかもしれない。
吉本さんは、どう思いますか?
「あっけらかんとした人がいいかもしれません。あれこれ挑戦するんだから、失敗だってある。ダメージを受けても、立ち直れるポジティブさもあるような人に向いてます。それから、大手よりも個人の責任が大きいんですね。社外の人とチームでやる仕事が多いのですが、そのなかに1人で入って、バウムとしての判断に責任を持てるような人に、来てほしいと思います。」
小さい会社だからこそ、自分の考えていることが会社に響きやすいのだと思う。
PRの先にある課題を見ながら、それを解決するための取り組みを加速させていく。それがダイレクトにできる環境が、ここにはあると思います。
最後に宇田川さんからもう一言!
「英語力は必須ではありませんが、英語が使える方にはとてもたのしめる環境です。ソーシャルなプロジェクトはどんどん国境を越えます。ロンドンやオレゴン州ポートランドとのプロジェクトも、草の根からはじまりました。アジアの国の人とワークショップをすることも。海外出張も多いですし、やりがいはとってもあるはずです。」
きっと、バウムだからこそできる案件も、これからどんどん増えていく。
そこに加わって、これからの時代の「PR」をつくっていきたい人は、ぜひ応募してください。
(2014/2/19 笠原ナナコ)