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いざなうデザイン

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どうやって仕事が生まれるのか。どうやって出世していくのか。不思議な業界がある。

その一つがデザイン業界。

myrealvision02 なぜなら足し算のように答えが決まっているものではなく、抽象的な仕事だから。

相手の求めるものを形にする、ということが大切なのだろうけど、その仕事はまずどこからやってくるのだろう?そして次の仕事はどのようにつながっていくのか?

いつも不思議に思っていました。たくさんパーティーに参加して名前を売る?雑誌に名前を売り込む?名刺を交換する?

でもそんな不思議が少しはっきりしたのが今回の取材でした。

「営業が下手」というデザイン事務所である株式会社マイリアルビジョンでは、WEBディレクターとWEBデザイナーを募集しています。

マイリアルビジョンの代表である奔保(ほんぼ)さんと出会ったのも、これまた不思議な縁だった。

はじめて出会ったときのことはよくおぼえていない。よく行くバーで隣同士になって、いつしか話すようになった。

あるとき「ケンタくんはどんな仕事をしているの?」と聞かれたので「日本仕事百貨という求人広告サイトをやっているんですよ」と答えた。

それからもう何回ご一緒したのだろう。奔保さんがグラフィックなどのデザインを仕事にしていること、家族は今は京都に住んでいて単身赴任しながら中目黒で働いていることなどをゆっくりと知っていった。

あるとき「求人したい」という相談を受けて、じっくり打合せをしたのちに取材することになったのだ。

事務所は中目黒駅からほど近い住宅街の中にある。前にはこれまたBARの常連さんが営んでいるシンガポール料理屋さんがあり、裏側には雑貨屋さん、並びには最近ポップコーン屋さんができた。

myrealvision03 静かな路地でありながら、なんだかワクワクするような一角だ。

事務所は一軒家。玄関をあがってすぐのところにある打合せスペースで話を伺った。

まずは奔保さんにどうして今の仕事をはじめたのか聞いてみる。

「起業したのはかなり早いんですよ。フリーランスとして働き始めたのが24歳のとき。先輩の会社の立ち上げを手伝ったりしながら、基本はフリーランスで。そのあとチームをつくって、クリエイティブをベースとした事業をつくりたいと思って、2004年に今の会社をつくりました。」

様々なデザインの仕事をしている奔保さん。でもはじめは高専で化学を専攻していたそうだ。

「そもそも自分は何が好きなの?何なら飽きずにやれるの?って考えて。クラスメイトがつくった技術を束ねて面白いものをつくるのもいいかな、それもどうかなって思っていて。」

myrealvision30 そんなときに相談したのが、学校に教えに来ていた富山大学の教授だった。桑沢デザイン研究所の存在を教えてもらう。上京をして昼間に働きながら、夜は桑沢でデザインの勉強をはじめる。

ところが上京するとバブルがはじけてしまった。「1人に5社来る時代から、1社に5人が集まる時代」になった。

在学中の終わりに、大御所のデザイン事務所でアルバイトして就職も誘われたけど、海外のデザイナーをプロデュースする会社に入った。ところがバブル崩壊の影響も拡大して、会社には仕事がなくなってしまった。

「残ってくれって言ってもらったんだけどね。こういうのもタイミングだと思ってプロデュースの仕事を離れて、いずれ行こうと思っていた制作のほうにいきました。」

「そのとき下北沢によく行ってたバーがあった。そしたらそこのオーナーが六本木のアクシスのプロデューサーだった。『今度、会社辞めるんでどこか紹介してください』って話をしたら、『じゃあうち来ない?』って言われて。ちょうどアクシス辞めて仲間とデザイン事務所をするって言うから入ったんだ。」

myrealvision01 そこでは本当にいろいろな経験ができた。とてもハードな毎日だったそうだけれど。

「当時は終電ギリギリには帰ろうって話をしてたのが、そのうち1回はうちに帰るようにしようぜってなって。俺はバイクを持ってたから明け方に帰ってシャワー浴びて会社に戻ったり。そのあと1年してからフリーになった。」

はじめから仕事はあったんですか?

「たまたまだけど、こういうのやってみない?手伝ってみない?って声がかかる。」

なぜ依頼が来るんでしょう?

「たまたまがあるんだよね。たとえば友達に『俺、辞めたからさ』って言ったら、じゃあうちの装丁手伝わない?とか。勤めてた会社に引き継ぎのため整理してたときにたまたま電話を代わりに出たら先輩から自分あてに仕事の相談で。『でも俺、辞めたんですよ』って言ったら、声かけられたり。そこから色々なご縁が切れずに来たって感じかな。」

myrealvision05 なるほど。でもなんで縁がきれなかったんでしょうね。

「一回付き合うと割と長かったりするね。担当の方が会社を辞めると、その会社との付き合いはなくなることもあるんだけれど、そこにいた人が独立や転職すると、また声がかかるんだよね。」

会社ではなく人とつながってるんですね。

「そうだね。」

「発注者の求めていることは最低限理解して、ほんとに解決できることは何か、どこに答えがあるのか、必死で考えるね。当たり前といえば当たり前なんだけど。依頼や相談があった際に、無理難題でも断らず、何とかできる方法を考えて、対応することによって信頼を得られたし、自分自身の成長にもつながってきたように思う。」

たとえば、こんなことがあったそうだ。

あるプロデューサーにデザインを依頼されたが、予算は0。なおかつ時間がない。

普通なら断るところだけれども、何とか協力したくてデザインした。

「できあがったものを喜んでくれたけれども、予算0は少々悔しい。だけどそれでデザイン賞を受賞することができた。そのプロデューサーは雑誌の編集長でもあり、彼の手掛ける雑誌等のデザインも任せてもらえるようになりました。」

相手が求めることを形にするのが最大の「営業」なのかもしれませんが、そもそも抽象的なものを形にするのは大変だと思います。

どうやって相手の意図を読み取るんですか?そのピントがずれていたら、どんなに頑張っても仕事の依頼は何度も来ないように思います。

「割とクライアントからの話を1聴いて10知るタイプなんだよね。深読みするっていうかな。たとえばロゴデザインの依頼だけれども、相手が達成したいものを考えたらネーミングから提案することもある。」

myrealvision06 「あと俺個人としてはデザイナー、アートディレクターではあるんだけど、経営者のブレーンみたいな感覚はある。翻訳者みたいなスタンスが多かったんだよね。あまり内側にいると見えてこないこともあるから、適切な距離を保ちつつ会社のことを冷静に見てみる。そうすると必要なことがはっきりしてくる。」

デザインというと、手を動かす職人のようなイメージもあるけれども、相手の思いをワークショップで明らかにするファシリテーターのような資質も求められているように思う。

それに単にデザインをするだけではなく、いろいろな経験や知識、コミュニケーションを総動員して、あらゆる領域を横断するように働くデザイナーも必要とされているように思う。

WEBディレクターとして働く長岡さんもそういう人だと思う。いろいろな経験をされてきた方。

まずはどうしてマイリアルビジョンで働いているのか聞いてみた。

「もともとはインテリアデザイナーになりたかったんです。デザインの勉強をしている時に働いていた会社が、グラフィック、アート、写真、ファッションなど、様々な種類のアーティストの紹介や、その作品を世の中に広めるような事業をする会社で。そこでは、ギャラリーやショップの運営、イベント企画やMDや広報等、色んな仕事をさせてもらいました。」

myrealvision07 「デザイナーになりたかったはずが、気付いたら、世の中の素敵なモノをいかにして多くの人に伝えられるか、という側に自分の意識や立ち位置が変わってました。そこで考えたのが、媒体の1つとしてのWEBの業界。この媒体をつかって何かできないか。そんな時に、縁があってウェブの仕事をゼロから出来る機会があって。」

そして出会ったのが、面白い物件を紹介するサイトだった。「情報やモノが欲しい人と発信したい人を結びつける面白さ」を知ることになる。

myrealvision09 「そしてまた転機が訪れたときにこの会社の求人を見て、社会貢献だったりデザインで世の中の流れをよくするっていう自分の考えにも合っていました。でもはじめは落ちたんですよ。」

あれ、そうなんですか?

「まだWEBディレクターとしての経験も十分でなかったりして。でもやっぱり中目黒という場所も合っていたし、大きなビルよりも一軒家で働く感じとか、未来が決まりきっていないこともよくて。そんなことを思っていたら、なぜかその後、連絡をいただきました。」

入ってみてどうでしたか?

「やっぱり小さい会社なので、自分の意見は通りやすいっていうのはもちろんあります。社内も狭いので距離感は近いですね。」

「あと忙しいのは当たり前なんですけど、遅くても終電には帰れます。ただ20代とは違うので体力的にキツイなと思うことはありますけど。でもギャップはありませんでしたよ。」

WEBディレクターは、相手の思いを共有して、どういうサイトをつくるのか設計図をつくり、予算やスケジュールを考えて進行を管理していく。さらにWEBデザイナーがデザインやコーディングをしたり、外部のデザイナーと連携して形にしていく。

どちらも大切なことは、クライアントや同僚たちと、しっかりコミュニケーションできるか、ということだと思う。アウトプットも大切だけれども、しっかりとインプットもする。

myrealvision11 どういう人がいいと思うか、奔保さんに聞いてみる。

「スキルや能力で採用しがちなんだけど、未熟でも共感できるのが重要かな。会社を利用して築いていくのも面白いかも。世の中をよくすること。これからの日本の生活満足度を高めていく、文化大国にしていく、社会貢献事業を応援していく。人間的に成長していきたい。そういった部分とか。」

「一緒に仕事するからには職能を発揮して成長してほしいんだけど、一日の中でも多くの時間、仕事してるんだから、やっぱりお金儲けのためだけよりも自分の人生に参加するような働き方であってほしい。」

myrealvision10 マイリアルビジョンの働き方も、一般的な「デザイン事務所」というものでは想像できないところがある。でも一緒に働いてみるといかにして仕事が生まれるのかよくわかると思います。

クライアントや社会に贈り物をする。すると求められる存在になるんだと思います。

(2014/02/11 ナカムラケンタ)