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「これから、見たい世界を一緒に見ましょう。自分たちが見たいと思っている景色や世界に一緒に行きましょう。そのあと独立しても、一緒に仕事をしていけるような関係になりたいです。」建築をやってきたけれど実はインテリアにも興味がある。インテリアで培ってきたことを建築にも活かしたい。そんなことを考えている人はいませんか?
自分でやりたいデザインに集中できる環境をつくって、いいつながりのクライアントさんと仕事をしていきたいと思っている人は、いませんか?
これから自分の好きな仕事をしていくためには、独立するという選択肢もあると思う。
だけどもうひとつ、共感できる人たちと一緒に仕事をするという道もある。
そこには、ひとりでは見られない世界が待っているかもしれない。届かない高さまで飛べるかもしれない。
今回は、建物やインテリアから手のひらサイズのおもちゃのプロダクトまでデザインする空間デザイン会社「PUDDLE(パドル)」と一緒に働く、という働き方の提案です。
PUDDLEのモットーは、「空間にまつわるものを全部つくる」こと。
たとえばひとつの空間をつくるとき、スイッチケースや音楽のアンプなどの細かいものまで、そこにあるものすべてをデザインする。そして、その空間でこれからどんなことが起こるかまで考えていく。
人が長い時間そこにいたくなるような場所ってどんな空間だろう?ということを、ずっと想像し続けている会社です。
そんなPUDDLEで働く、建築デザイナーと学生インターンを募集します。
代々木公園駅からまっすぐのびる山手通りを、東京大学のある方へ向かって歩いていく。
大通りを一歩入ると、住宅街のなかに、お洒落な一軒家のようなスタジオのような建物が見えてくる。
階段を登り中に入るとさらに右手に階段があり、その上には明るいワンフロアの部屋が広がっている。「HOUSE」と呼ばれるこの場所が、PUDDLEの拠点。
この日はとくべつ晴れていたわけではなかったはずだけど、外はものすごくいい天気なんじゃないかと思わせるような空間。窓からの光なのか、白い壁の色なのか、不思議。
そんな部屋のなかで、ニコニコとわたしたちを迎えてくれたのは、PUDDLEの代表であり建築・デザイナーの加藤匡毅(まさき)さんと、コミュニケーションデザイナーの奈香(なか)さん。
おふたりは、夫婦で会社を経営している。
もともと建築学科を出て、建築事務所や家具デザインのIDÉEで働いていた匡毅さん。そして、もともと三菱地所に勤め、丸の内朝大学の立ち上げや場づくりに携わってきたという奈香さん。
匡毅さんが空間をデザインし、そこに生まれていくコミュニティを奈香さんが実際につくる。
デザインを納品して終わりではなく、そのあとそこでどんなことが起こっていくかまで関わっていけるというのが、PUDDLEの強み。
「長い時間人が滞在するようなコミュニティの場所を、どう長く使い、どう楽しんでいくか、というのを考えるのが、僕たちの得意分野だと思うんです。」
匡毅さんは、建築学科を出たあと、サークルの先輩の紹介で隈研吾さんの建築事務所で働きはじめた。
大きなプロジェクトにも関わるようになり、5年10年後を見据えた長期スパンの仕事のやりがいも知っていったけれど、それとは別に、だんだんインテリアやプロダクトなど「両手で触れられるような大きさのデザイン」にも興味が出てきた。
その後、IDÉEに転職。そこは、家具のデザイナーや雑誌の編集者、フードコーディネーター、花屋さんなど、さまざまなプロフェッショナルが集まっている環境だった。
そこでは、「全員でひとつのものをつくり、お客様にライフスタイルを提供する」というのを体験した。
独立してからも、DIYで面白い場所に人が集まる空間をデザインしてきた。
建物の中よりもベランダの方が広い物件を借りてそこを事務所にしたり、地下の駐車場だった場所をアトリエにしたり。みんなが来すぎて、自分たちが仕事をする場所がなくなってしまったこともあったほど。
匡毅さんは、当時のことを本当に楽しそうに話す。話を聞いていると、何度かその場にいる人たちの情景が絵で浮かんでくるような瞬間があった。
きっと、デザインやものづくりも大好きなんだろうけど、その空間に人がいて動いていることそのものが、嬉しくなってしまうタイプの人なんだと思う。
どんどん話が膨らむ匡毅さんをなだめながら、奈香さんがコーヒーを運んできてくれた。
匡毅さんがつくっていく空間に、実際どういうコミュニティが生まれていくかを考えるのが、奈香さんの役割。
「やっぱり、建築家やデザイナーは、美しいものをつくるということに焦点が当たることが多い。でも、いくら美しくても、使ってみて快適じゃなかったら、そこはいい空間だとはいえないと思うんです。」
たとえば、単純な面積から、ここに並べる椅子は50脚だな、と考える。でも、何年後にその場所がどう発展していくのかという視点を持つと、そこに並べる椅子の数は、50脚が正解ではないのかもしれない。
「わたしは、場を運営してきた経験や、生活者としての目線を生かして、空間を考えていく仕事をしています。つくる人よりも、使う人がよりその場所を発展させていけるような場づくりがしたいんです。」
PUDDLEが手がけた案件のひとつに、昨年2月に香港にオープンしたコーヒーロースターのお店がある。
生豆のコーヒー豆をずらりと並べ、その場で焙煎して販売する。
そこには、外よりもゆったりした時間が流れていて、コーヒーが好きな人たちが集まり語らう。そんなコミュニティをつくっていきたい。
匡毅さんは、このお店をデザインするために、クライアントさんと一緒に1年間、世界をまわって色々なデザインと価値観を吸収し共有する旅をした。
それは、一般的な設計料という報酬だけではない、変わったかたちの仕事だった。
そんな1年を通して、そのクライアントさんとは、ビジネスを越えて、家族のような、なくてはならない関係になった。
そして、現在もその旅はつづいている。
これからも、新しい関係をつくれる仕事を増やしていけたらいいな、と匡毅さん。
香港をはじめ、シンガポールなど海外の案件も増えてきている。でも、べつにどこにいたって、PCと携帯電話があれば仕事ができる。
新しく一緒に働く人も、考え方さえ共感し合えるならば、週に5日、9時から17時まで出勤するようなスタイルじゃなくてもいいかもしれない。
1人でプロジェクトをまわしていく力のある人ならば、いちスタッフというよりも、パートナーのような関係をつくっていきたい。
匡毅さんと、奈香さんに聞いてみた。一緒に働く人として、どんな人に来てほしいですか?
「わたしたちは、建設からインテリア、プロダクトのデザインまでやっているので、建築とデザイン、両方をやりたいという人がいいですね。空間にまつわるものは全部つくりたい!という人。」と奈香さん。
匡毅さんが、こんな話をしてくれた。
「過去に、うちに来ていたインターン生で、一緒に働きたいなと思う子がいたんですよ。彼は留学生でしたが、デザインや建築が大好きで、すごく手先が細かくて。『ちょっと待っててー』と言っている間に、自分のスケッチブックにずーっとデザインを描いているんですよ。」
「なんか、描くことが呼吸みたいになっているんです。自分も同じくらいの歳の頃、そうだったんです。だからそういう子にビビビッときちゃって。」
そのインターン生は、年下だけど「ねぇねぇ加藤!」と呼び捨てで呼んでくるような子だったそうだ。
なんでもイエスという人よりも、ちょっと生意気でも「そう来たか!!」という刺激をくれる人と働きたい。
「僕はすべての世界を見ているわけではないし、まだやりたいことをやれていない部分もあるから、『これが正しい』っていつも言えるわけじゃない。そういう意味では自信もないし、これでいいのかなって何度でも書き直す。」
匡毅さんにも得意な案件もあれば、向いていないものもある。依頼に対してどちらの設計デザインがふさわしいか、コンペのように競うこともあるかもしれない。
「好きなものや、自分のやりたいこと。そういうものを持っている人だったらいいな。『ください』ではなく、『交換しましょう』。お互いに刺激を与えあえるような関係がいいですね。」
映画やファッション、音楽の好みも聞いてみたい。それぞれイヤホンで音楽を聞くのもいいけど、せっかくなら同じ空間にいるときは、音楽も共有できたらいい。
もしもかかっている曲が気にいらなければ、「これおすすめですよ」と自分の好きな音楽に変えてしまってもいいのかもしれない。なんとなくだけど、むしろ匡毅さんはそういうことを面白がりそうな気がする。
新しく働く人と、どんなことを一緒にやりたいか聞いてみた。
「この建物は僕がリノベーションさせて頂いたのですが、この部屋の上に、この部屋と同じ広さの屋上があるんです。そこで、小屋を建てたり、何か色々なことができないかなと考えています。僕らのなかでは、オフィスとともに働き方を考えている途中なので。整ってから入ってもらうのではなく、整えていく段階で入っていただきたいと思っています。一緒にオフィスをつくるところからはじめたいな。」
匡毅さんも奈香さんも、人とのつながりを大切に仕事をしてきた人。だから、ここで一緒に働くということは、そのつながりのなかに飛び込んでいくということでもあると思う。
気が合わなければ大変だけど、ふたりの考えに共感できる人なら、きっとふたりのお客さんや、一緒に仕事をしてきた外部のクリエイターの方たちとも気が合うはず。
そういう人なら、ここで色々なことがつながってくると思います。ひとりでは見られない世界が待っているかもしれない。
まずはぜひ、ふたりと直接会ってフィーリングを確かめてみてほしいです。
(2014/2/26 笠原ナナコ)