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デザインのベースキャンプ

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

東京・代官山の駅を降りて5分ほど歩くも事務所がわからず、取材先のコパン・デザインソースに電話をかけてみる。するとベランダから「おーい。ここ、ここ!」そう言って代表の石鍋さんが手を振ってくれました。

1階にコーヒー屋さんのある、やや古い造りのビル。入り口のドアを開けると、リノベーションされた暖色の事務所が現れた。

棚にはファッション誌がぎっしり。立派なキッチンでは誰かが昼ご飯を調理中のよう。玄関には、通勤に使われているらしい自転車が置かれている。

なんだか家のような、居心地のよい雰囲気の事務所です。

今回募集する有限会社コパン・デザインソースは、ファッションを中心とした広告物を制作しています。グラフィックデザインはもちろんのこと、商品企画から印刷入稿までを通して行う会社です。

この日は代表の石鍋さん、そしてディレクター・デザイナーのみなさんと座談会を開きました。

思ったことがある人はパッと意見を言う。みんなよく笑うし、代表とスタッフの距離がとても近い。そして何より、お互いの仕事に対する信頼感がある。

社名にある“コパン”は友達のこと。その言葉通りのいい関係が伝わってきました。

はじめに、石鍋さんがコパンのデザインの特徴を話してくれた。

「おもな仕事はアパレルの通販カタログ制作です。紙媒体での売り場づくりを、“売り場設計”にはじまりモデルオーディション、撮影ディレクションそして原稿入稿まで。すべてをお客さんと一緒に進めていきます。コパンでは、その一連の流れをデザインと呼んでいます。」

“売り場設計”とは紙面を実店舗になぞらえて、売れる店舗づくりのためのレイアウトを意味している。

一口にグラフィックデザイン事務所と言っても、制作への関わり方は様々ある。

プランニングとデザインがわかれている会社もあれば、編集プロダクションが企画から素材まで用意して、あとの組み立てだけ担当する会社も少なくない。

一方、コパンは制作物のコンセプトづくりから関わることで、より深くより広い意味でのデザインを行える。

制作過程における両者の違いは、働く人のあり方はもちろんのこと、制作物というアウトプットにも影響してくるものだと思う。

スタッフも、トータルデザインに魅力を感じて働きはじめた人が少なくないようだ。

その一人である白石さん。もともと求人情報誌などのディレクションを手がけてきた。

「私は、仕事を自分でハンドリングしていきたい気持ちが強いんです。もちろん以前の仕事にも、任される部分はあったんですけど、どうしても『この素材でこういうデザイン業務だけやってね』という歯車的な要素が強いなと感じていて。すごくもどかしかったんです。仕事って、もっと自分ごとに出来るんじゃない?と思い、コパンにやってきました。」

実際に働いてみてどうですか?

「最初はわからないことだらけ失敗だらけで大変でした(笑)。でも紙面1枚の隅から隅まで、すべてを自分で考えるなかで得るものは大きかったです。たとえば一着の洋服を売るときにも、必要なカットが色々あります。夏物で通気性のいい素材であれば、そのことが伝わる写真を入れるとか。きちんと商品を理解した上でカット数やコピーまで考えて、はじめて一つの紙面が出来上がります。」

はじめから終わりまで関わる仕事を通して、どんなことが身につくのだろう。

「デザインに対する捉え方が変わったと思います。以前は、表面的なカッコよさやかわいさを求めがちだったかな。今は、より根本的な『お客さんはどんなことを誰に伝えたいのか』『そのことはどうすれば伝わるのか』と考えることを含めてのデザインなんだと思います。」

そうした関わり方をするコパンだからこそ、お客さんから直接に依頼を受けることが多いそうだ。

お客さんとはどのように関わるのだろう?

30歳前後の女性向け雑誌を制作している竹中さんに聞いてみる。

「相談を受けるところからはじまる仕事が多いです。『どんなものを売ったらいいかな?』と聞かれて商品セレクトから提案することもあります。あるいは、商品は決まっているけれど売り方がわからないので『どんな風に売ったらいい?』ということもあります。」

「たとえば私が担当している雑誌はもともとターゲットが20代前半でした。けれど売上げが思うように伸びないという相談を受けて、『テイストをより大人っぽく、30歳前後を対象にしてみてはどうですか?』と提案して今の形になったんです。」

さらには、紙媒体とのリンクを高めるため、オンラインショップ制作の相談も受けているところだそう。今後はWEBデザインの会社も立ち上げることで、相乗効果を狙っていくという。

ここで、「制作に対する反応もきちんと返ってくる仕事なんです」と仕事百貨に連絡をくださった中川さん。

「僕がいいなと思うのは、直接お客さんの反応が見られることですね。撮影や打ち合わせ時に、面と向かって顔を合わせる機会がすごく多いんですよ。プレゼンの最中に『なるほどな』とうなづきながらメモをとる姿を見たり、『この間の雑誌すごくよかった』という言葉をもらったり。一緒にものづくりをしている結束感が生まれることがあって、そのときは自分たちは間違ってなかったんだなと思います。」

また、読者からの反応もある。最後までレイアウトに悩んだページに対して「すごくかわいくてよかった」というアンケートが返ってきたり、売上げという形で反響があったり。そうした声を活かして、次の制作につなげていけるのがコパンのデザインといえる。

デザインにおいてどんなことを心がけているんだろうか。

新卒で入社して8年目の小林さんはこう話してくれた。

「気づかいがすごい大事だと思うんです。お客さんに対してはもちろん、スタッフに対しても細かなところまで考えたり。そういうすべての気づかいがデザインにつながっていくと思うんです。」

忙しそうなスタッフの代わりにお茶を入れたり、たまには職場に花を生けてみるとか。周りの人がいい気持ちになってくれるかな。そうした社内でのささいな心配りは、お客さんとの関わりにも生きてくるという。

「お客さんは何を求めているのか、そのことはどうすれば読者に伝わるのか。お客さん自身も気づかない、自分では言葉に表せないことを、私たちは察して表現していくんです。」

どんな人と一緒に働きたいだろう?その点で共通していたのは次のことだ。

「お客さんと一緒に企画を考えるところからはじめるので、自分の意見が求められる仕事なんですね。たとえば『ほんとうはこうした方がいいんじゃないかな』という疑問を持ちながら今仕事している人には、むしろ意見をどんどん言える場だと思います。」

もし、今は言われた通りにこなすデザインをしていたら。企画段階から関わるコパンの仕事を通して、デザインの概念はより大きなものへと変わると思う。

代表の石鍋さんはこうも話してくれた。

「うちのスタッフは、『私がお客さんだったら、この売り場を見たときにどう思うかな』と考えて売り場設計をするから、企画段階で絵やコピーをそれなりにイメージしているんですよ。それを共有したうえで、コピーライターさんやカメラマンに依頼をかけます。一方で、自分のアイデアを持たずに発注するのは仕事として全然浅いし、上がってくる提案も弱い。うちではそういうお客さんとの関わり方はしないんです。」

深い考えに基づいたデザインをするからこそ、次の仕事にもつながるという。

あとは、どうしたら相手が喜んでくれるか。お互いに気持ちよい関係でいられるか。そうした気づかいができるといいと思う。

取材中、石鍋さんが席を立つときにさりげなく新しいお茶を用意してくださったことが印象的だった。

役職に関係なく、お互いがお互いを思いやる環境があるよう。

そう考えていくと、“気づく”ことがコパンで働くうえで一番大切なことかもしれない。

最初から紙面構成、撮影ディレクションまでできる人はそうそういないと思うし、経験を重ねるなかで磨かれていくもの。

むしろ気づけることで、周りの人もいい気持ちで仕事ができて、色々と教えてくれることもある。そんないい循環が生まれるように思う。

ここで石鍋さんは、今後コパンが目指す姿を話してくれた。

「これからデザインをより広い領域で役立てたいと思っていて。コパンをベースキャンプに、その周りにいっぱい会社をつくる予定でいるんです。」

どんな広がり方をしていくのでしょう。

「今、定期的に色んな商工会議所を回ってるんですよ。経営者の話を聞いていると、3代目にもなると祖父や父の意見と合わない。だけどこのままだと社員を解雇しなきゃならない。色々な悩みを抱えている会社がいっぱいあって。そうした地方企業が元気になるよう、ブランディングから関わっていこうと考えています。」

石鍋さんは大手百貨店でバイヤーを務めたのちに独立してコパンをはじめた人。今後はそのバックグラウンドを活かして、流通まで含めたデザインを考えているようだ。

今回の募集も、そうした事業展開を見据えてのこと。一緒に働く人も、まずはコパンというベースキャンプで経験を重ね、将来的にはより広いデザインに携わる可能性がある。

「企画提案から関わる僕らの仕事は、特定の分野でのみ通用するものではなくて。届けたい商品を自分たちがきちんと伝える。そのための技術です。だから色々なことに活かすことができるんです。」

そんなコパンに、インターンから入社した薫子(かおるこ)さんにも話を聞いてみる。

学校ではグラフィックデザインを専攻していた。現在入社1年目だ。

「もともとファッションカタログの仕事に興味があって、お客さんと直取引をしていることも魅力で働きはじめました。それから、私は将来的に地域の商品のディレクションに関わりたいという思いもあって。その部分にも共感しました。」

現在はアシスタントデザイナーとして、雑誌を切り抜いてのクリップ集めや撮影のラフづくりなどをしているという。

最後に薫子さんはこう話してくれた。

「実は面接で事務所に入った瞬間、ここで働きたいな、石鍋さんが信頼できてよさそうだなと思ったんです。だから今は働くことが楽しくて。」

はじめから終わりまで関わることには大変さも伴うけれど、今まで知らなかった世界が見えてくるはず。そうしたら、きっとたくさんの得るものがあると思います。

(2014/3/3 大越はじめ)