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イトシロではじめよう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

岐阜県・石徹白(いとしろ)地区。人口270人、標高700mの小さな集落。

石徹白を訪れたとき、貴重な日本の原風景と、未来の日本の姿をみたような気がしました。

D7A_2605 まちの中心から離れた峠の向こうにあるため、昔は、冬になり雪が積もると交通が遮断され、『陸の孤島』となる場所だった。

だからこそ、地域の自治の舵取りを自分たちでおこなってきた。『自分たちの暮らしは自分たちでつくる』それを当たり前のように積み重ねてきた地域。

そしてその遺伝子は受け継がれ、現在においても新しい活動がたくさんはじまっています。

たとえば小水力発電。地域のエネルギーをすべてまかなう計画が進んでいる。そして寒暖の差の激しい気候を活かした自然農法での野菜の栽培。その食材をつかって石徹白の食をとどけるカフェ。

D7A_2522 そして、石徹白の可能性に魅せられた移住者たちが、石徹白に集まってきている。

いま、移住者が住民を、住民が移住者を巻き込みながら、さまざまな活動が連鎖しあい、大きな流れになろうとしている。

そんな流れの中で、必要な役割がみえてきた。

それが今回募集する、石徹白の農産物と石徹白の外とをつないでいく、地域のハブとなる加工所の経営を担う人。

石徹白でつくられた農産物を加工して商品をつくり、外に広めていきながら加工所を運営していく。幅広い力量が求められるけれど、チャレンジしようと覚悟を決めた人が本気で取り組めば、地域の素材を活かしながら仕事をつくっていけるはず。

09 田舎暮らしをしたいというよりは、石徹白という恵まれた環境を面白いと思えるかどうか。子育てもしやすい環境なので、家族連れにもおすすめしたい環境です。

石徹白を訪れたのは3月上旬。

東京から新幹線に乗り、岐阜駅まで。そこからは高速バスに乗り換え、終点、郡上白鳥駅まで。そこから石徹白地区までは車で30分ほど。

駅前まで、地域のリーダー的存在の石徹白秀也(ひでなり)さんが迎えにきてくれた。

はじめはちょっと怖いのかと思ったけど、話してみると愛嬌があって、頼れる兄さんという雰囲気。

車に乗り込み、曲がりくねった山道をのぼりきると、視界が開け、真っ白な山々が一望できる。そこからスキー場を横目に山を少し下ると、石徹白地区に到着する。

雪が高く積もっていたけれど、『今年は少ない』とのこと。この雪が溶けて大地が顔を出すのは4月中旬までかかるそう。

秀也さんは、2007年に発足した、石徹白地区地域づくり協議会のメンバー。

「この5年ほどで、地域づくり活動に火がついてきて。地域が存続していくために、なにをしていくか。集落で話し合いながら取り組んできました。その活動の中で、4世帯が移住してきてくれた。みんなここで仕事つくろうとしている人がはいってきています。こうした動きを活発にしていきたい。」

D7A_2545 ただ単に移住者にきてもらうだけではなく、ここで仕事をつくることのできる移住者の定住を中心に進めてきた。

というのも、仕事をもつことは、ここで暮らすために一番必要なことだから。そして地域のことを長期的にみても大切なこと。

「石徹白にはさまざまな資源があります。自然の恩恵を受けて、独特の文化が育った地域です。歴史的に見ても面白い。それと、寒暖の差が激しい場所だから、農産物も本当に生き生きと美味しく育つ。そこを僕たちも魅力だと思っているし、そこに可能性を感じてくれた人が、移住してきてくれています。」

「自然エネルギーも、自然栽培もはじまっている。どこかを頼るのではなく、自分たちで暮らしをつくっていくこと。日本の未来にとっても必要なことだと思うんだよね。」

この石徹白にも過疎化と人口減少の波がやってきている。だからこそ、移住者も含め地区全体で新しいコミュニティーづくりが進められている。

毎月おこなわれる地域の寄り合いでは、石徹白でどんなことをやっていくか、地元の人が思ったことを声にだせる環境がある。

この日の夜、ちょうどこの寄り合いがあり参加させてもらった。

年間の行事をどうするか、先日のキャンドルナイトのイベントの反省など、さまざまな議題が飛び交う。その中で移住者の方から『もっと石徹白の外から親子で参加できるイベントがしたい!』という意見がでた。

12 それに続いて山菜採りや、星座観察などのアイディアがでる。それに呼応して、地元の人から聞いたことのない山菜や野草の名前、どの山でどういうきのこが採れるかなど、自然と生きてきた彼らにしかわからない意見がポンポンとでてくる。

きっと仕事をする上でも、彼らは先生であり、よき先輩になるんだと思う。

「この地域をなんとかしたいという思いもある。けれど、こうやって人とかかわりながら地域をつくっていく。石徹白には、自分の力で生活を切り開いてきた人たちが集まっているので、面白い人が多いんです。そこに加わって0から仕事をつくることは豊かなこと。仕事を生み出すことは簡単なことではないですよ。だけど、それを面白いと思えると、一緒に楽しめると思う。」

真面目な話も、少し脱線もしながら、顔を合わせて話をしていく。子連れの家族が帰りはじめ、この日は解散。

次の日は、今回募集する人の拠点となる加工所で、実際に移住してきた方に話を聞いた。

18年前に愛知県から郡上市に移住し、10年前に石徹白へ移住してきた稲倉さん。肥料や堆肥などを使わず、自然栽培でおいしく安心・安全な野菜を育てる『農園サユールイトシロ』を経営している。

現在、加工所の主な運営をしているのが、稲倉さんとこのあと話を聞いた黒木さん。これから入る人も、業務に慣れるまでは一緒に働くことになる。

加工所の運営者をどうして募集することになったのだろう。

「ここは、4年ほど前までほとんど使われていなかったんです。維持するための管理費もかかるし、一度は加工所を廃止するという話もでました。でも、石徹白で作られている農産物を加工して、商品化できたら、地域に新たな産業ができる。そこに可能性を感じています。」

08 まず自分のやっている農業から、加工所の可能性を考えた。地域づくり協議会とも話合い、農作業の合間を縫って、加工所内で商品開発がはじまった。

「正直なところ、僕たちの本業は農家なので、農作業や収穫が忙しくなる時期は、加工所の仕事ができません。だけど、美味しい農産物はあるし、設備も整っている。商品開発の芽も出てきています。本気で取り組もうという人が入ってくれば、必ずものになると思うんです。」

加工所内には大きな乾燥機などがある。それをつかって石徹白のとうもろこしや、野菜、フルーツなどの加工、商品開発がおこなわれている。

「この野菜チップス。ノンオイルで、そのまま蒸して、調味料などつけずに乾燥させたもの。素材の風味がそのまま活きていて美味しいんです。石徹白の野菜の美味しさを活かすことができる。まだ商品開発をはじめたばかりですが、メインの商品として売り出していきたいと思っています。」

わたしも試しに頂いたのだけど、野菜の風味がそのまま活かされていて本当においしかった。ドライとうもろこしにかんしては、甘さがぎゅっ!と凝縮されていて驚いた。「つぶもろこし」という名前で、ネット販売もはじまっている。

04 「野菜などは、旬の時期にゆでて冷凍しておけば、年間を通して加工ができる。そうすると通年で仕事ができるようになります。」

今のままでも十分に美味しかったけれど、製造工程で詰めないといけないことはまだあるそうだ。商品の品数もゆくゆくは増やしていきたい。売り出し方もデザイン、どこに売っていくのか、考えることはたくさんある。

そのために、石徹白の素材に可能性を感じて、この地で挑戦しようという人に来てもらいたい。

2 「この加工所の役割は、農家が片手間でやれることと、大規模な食品工場との間にあると思っています。石徹白のものを、地域、お金、雇用、このバランスのとりながら “石徹白らしい”商品を生み出す加工所にすることにあると思います。僕らはサポートしていくけれど農業をやりながらできることには限界があります。そのためにここの加工所に特化して、衛生管理や品質の向上などもやってほしいです。」

まずは、野菜チップスの商品開発や、とうもろこしの販売を通して加工所を自立させていくことから。

今はまだ、石徹白の外の原料をつかった加工の仕事も請け負っている。けれど、ゆくゆくは、すべて石徹白の原料をつかって食品を加工し、石徹白の商品発信の拠点となるように。

そしてもう1人紹介したいのが、黒木さん。IBMに勤務したのち、3年前に移住し、有機栽培でフルーツほおずきをメインに『えがおの畑』を運営している。

05 「僕は3年目にしてようやく、想定する収穫量や品質のほおずきを採ることができました。その前の2年はなかなか思うように実がつかなくて。今年から販路を拡大して、さらに広げていけるかなと思っています。」

「新たな仕事を軌道にのせるのは、簡単ではありませんが、自分で納得のいくまで考え抜き、さまざまな農法や経営の仕方を、築きあげてきました。この地域は話題性もたくさんある。加工所のエネルギーも小水力発電のエネルギーをつかっているし、いろんな特徴をうまく商品にも組み合わせられると思います。」

ここで仕事をはじめてみて、大変なことはありませんでしたか?

「お金はここにいるとあまり使わないし、食費もそんなにかかりません。仕事は大変だけど、それをやるためにここに来たわけだから、大変とも違うのかな。」

加工所の経営をになう人は、どういう人がいいのでしょうか。

「これで食べていけるようにしたいんだ、というように、自分で仕事をつくることに楽しさを見出せる人がいいと思います。そういう情熱がある人がいいですね。」

稲倉さんは、こんなことを話してくれた。

「小学校の運動会など、ほぼ100%保護者が出席するんです。行事も多いので、地域の中に入り込む姿勢も大切になってくると思います。」

地区の中で、毎月なにかしらのイベントがある。若い人が少ないからこそ、より地域の行事などには必要とされるそう。

「地元の人と密にコミュニケーションがとれるので、大事な場所です。かと思いきや、この地域の特徴として、田舎田舎していないところがあるんです。外から来た人を仲間として受け入れてくれる。けれど、過度に干渉されるということもありません。移住者としてはやりやすいと思います。」

1 石徹白で働くことは、暮らし、人、自然、全てがつながっているのだと思いました。

4月12日(土)・13日(日)には、現地見学会も行います。それ以外の日でも、地域づくり協議会のメンバーが対応してくれるので、ぜひ一度、訪れてみてください。

かつて『陸の孤島』の呼ばれたこの場所は『自然と人の宝庫』であり、無限の可能性がつまっていました。あとは、ここでやるかやらないかだと思います。

(2014/03/25 吉尾萌実)