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企画を仕事にしたい人は、世の中に多いと思う。でもどうしたらいいか分かりにくい。企業で働き続けていたら、いつかなれると思っていても、実は外の人がやっていることに気づいたりする。マジックファクトリーはそんな「外の人」。
リサーチして分析してプランニングする企画屋さん。不動産などの仕事が多くて、いろいろなプロジェクトを陰で支え、シナリオを考えている。
日本橋からすぐのところにある雑居ビル。その4階にマジックファクトリーの事務所がある。真ん中には打ち合わせのためのテーブルがあって、夜な夜な広告代理店の方たちが集まって打ち合わせをしているそうだ。

まずは代表の磯貝さんに、どんな仕事なのか聞いてみる。
「僕の仕事はコンセプトをつくること。どういうコンセプトでプロジェクトをやるか、とか。作戦をつくって、あとは世に出す段まで。お客さんにストーリーを全部つくっているんです。もし売れなかったら、どういう軌道修正をするかも、あらかじめ考えておく。」

とくに面白かったのが、リサーチしたものからプランニングしていくところ。最後の最後は、ひらめきや直感に近かったりする。
「マーケティングで言えば、調査分析して、プランニングするというプロセスがあるんですけども、意外と僕のように個人でやっているような人たちが少ない。なぜかというと、リサーチして分析して『こういう結果ですよ』というところまで行くんだけど、こういう結果『だけど』こうするっていうところが、なかなかできる人が意外と少ない。自分の経験でね。」

磯貝さんは、もともと理系出身だった。でも大学を卒業するときに自分の将来を考える。
「理系出身だと、すごーく優秀な人がですね、わりと自由な研究ができて。普通以下だと、工場の管理とかですね、そういう仕事だっていうことが、なぜか卒業するときに分かってしまって(笑)。そうじゃない仕事に飛びつこうと思って、広告系の代理店に入ったんです。」
はじめはリサーチを担当して、プランニングの仕事に変化していく。だんだんと業界でも知られてきたので、自分でもできるのでは、と思って独立する。
実際にどういうプロジェクトを担当されているのか。
「最近だと東京の湾岸の仕事が多いですね。湾岸ってすごい人気が『あった』んですよ。眺望が良くて海があって、建てれば売れた。ところが震災後、価値観が全部変わってしまった。『海=解放感』が『海=津波』だし、『公園=緑豊か』ではなくて、放射能うんぬんだとか。」
「価値観が変わったなかで、どういう切り口にするか。もっと言えば、どういう商品をつくれば良いのか考える。いままでの価値観じゃないものを提案しないと勝てない。」
車も買うよりシェアだったりする。価値観が変わってきているけれど、それでも世の中に必要とされている何かがある。それを読み解いて提案していく。
話が来たときには、もうどうやってもダメな案件、みたいなことはないのですか?
「ありますよ。僕らの世界でいうと、いちばん卑怯なやり方としては、値下げをしなさいっていう。でもそれは最悪の事態。いちばんやりたくない。もうひとつは、値下げをするくらいだったら、イメージ下げないために何か付加価値をつけてやる。色んなオマケをつけるとか。」

その気にさせて買わせちゃう、というよりも、ホントに買いたい人が買えるようにするにはどうしたらいいか考える。見えない需要を顕在化させる。
お客さんを集めるために講演会をやってほしい、と言われたとしても、根本的に解決できるようなことを提案したいそうだ。
たとえばこんな話がある。港区と文京区では、コンパクトで高いマンションが売れるそうだ。どうして売れるのかと言えば、固定客がいるから。それはお医者さんと高齢者の方。
「なぜだか分かりますか?東京のなかでいちばん総合病院が多い地域なんですよ。今は開業医には厳しい時代。だから総合病院に勤めたいんですよ。ところが就職の条件に、30分以内に車で通えるところに住んでないと就職できない。そのために買っている人がほとんど。高齢者も同じ。65歳以上で病気っていうのは、生きるか死ぬか。だから近所の町医者なんかじゃ治らないからね。」
これはほんの一例だけれども、数字を見ていても分からないことがある。数字にはどういう意味があるのか考えれば、自ずとどういう建物をつくればいいのか分かる。
人の気分というものは変化していく。それを探偵のように推理して形にしていく。前例を踏まえるだけではうまくいかない。

企画であって、単なるアイデア出しじゃない。それはヨットを操船するようなものかもしれない。船が現在置かれている情報、たとえば風向きなどから、次の瞬間にどちらに進むことは誰でも分かるかもしれない。今はこういうものが流行っているというように。
ただ、それは点の情報でしかない。
ゴールに向かってどのようなコースを取るのか。雲や潮の流れを見ながら、シナリオを描くように考えることは、誰にでもできることじゃない。
磯貝さんは、はじめから企画することが得意だったのだろうか。
「いや、やっぱりはじめはできないですよ。色々バカだ、言われました。これをやることによって、どういう仕組みの落とし込みになるのかまで考えてこいって、何度も何度もね。それにいつも同じものは通用しないし。考えることは結構苦しいことですよ。」

「古い人間から言うと、いま何でもネットで検索できちゃうじゃないですか。ところが、ネットで検索したものと、自分で体感したものって、全然説得性が違うんですよ。不動産でいうと、google earthで見ることはできるわけですよ。ところが、行くと見るのでは全然違う。現地に行く人のほうが伸びますよね。物怖じせずにどんどん行動してほしい。」
物怖じせずに、行動できる人。あとはどういう人がいいですか?
「言い方悪いんだけど遊び感覚っていうのかな。仕事とプライベートの境目なくやっているので。もちろん、入ってくる人は境目つけてもいいんだけど。べつにそういうことは気にしないでくれっていうか。あとはちゃんと給料を支払うのだけれど、みんなで一緒に稼ぐ、という気持ちがある人。」

なんとなく役者さんがにているかもしれない。芝居の開催中は、すっかりプライベートも役柄のような性格に変わってしまう、という話を聞くけれど、それくらい没頭する。
商品を買うであろう人はどんな人なのか想像して、想像して。イメージができたら、ひたすらその人ならどう考えるか、また想像を繰り返す。
単純にオン・オフで切り分けられるようなものじゃない。自分ごととして考えるのが好きじゃないと務まらない。
「あとはね、なんとなく物書くのが好きな人がいいんだよね。」
それはどういうことですか?
「創作が好きな人、というのかな。僕は営業するタイプじゃないし、買ってくださいと説得するよりも、買ってもらえるものをつくるところに力を注ぎたいタイプなんですよ。」
「すべて僕と同じ考えを持つ必要はないですよ。僕がいればいいわけだから。けど僕と違うモノの見方をする人が欲しい。そういった人たちが寄せ集まって、一緒にものつくっていくっていうのがいちばん面白い。チビ会社だけども裏側で世間をあっと言わせるようなことをやりたいんだよね。」
まずは採用された方は磯貝さんが経験したように、リサーチを担当することになる。
「まずリサーチができないと、なかなか“飛べない”んですよ。根っこがないと飛べない。はじめに型を作らないと。」

(2014/3/5 ナカムラケンタ)