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新宿から特急で1時間半の山梨県山梨市。ここに、美味しさにこだわった有機栽培農法で桃・ぶどうなどを生産、加工、販売している「ピーチ専科ヤマシタ」があります。
5年前には、収穫したての桃がたっぷり入ったスイーツが味わえる、桃農家カフェ「ラ・ペスカ」をオープンしました。
「ラ・ペスカ」は、収穫期の6月〜9月の約4ヶ月だけ開店する期間限定のカフェ。
ここで、メニュー開発から接客まできりもりしていく人と、そのカフェの主役である「桃」を育てていく人を募集します。

オフィスをノックし中へ入ると、社長の山下さんが迎えてくれた。
山下さんは、実際にお会いしてみると「桃」から想像していたよりもワイルドな雰囲気。
漁師さんが「海の男」だとしたら、山下さんは「山の男」という感じかな。こんがりと日焼けしていて、笑うと眼差しがとても優しい。

そんな家系に生まれた山下さんは、農学部を出て、外で仕事の経験を積んだのち、農園を継いだ。
農園は、会社から車ですぐの、甲府盆地を見下ろす斜面にある。
まんべんなく太陽の恩恵を浴びることができる傾斜。化学肥料をできるだけ使わず、草を刈り土に還す「草生栽培」で丹念につくった強い土。
そんな環境で育つ山下さんの桃の木は、夏になると、驚くほど甘く大きな実をつける。

「贈答用だから、お客さんだって、特別な想いで頼んでくれる。宅配の指定日も、ただの日付じゃなくて、絶対にこの日にあの人に届けたい!という意味があるんだよ。」と、山下さん。
山下さんは、もともと自分の桃を農協に卸していた。だけど、つくるだけでその「先」が見えないのはつまらないと思った。
お客さんが喜んでくれるところまで見えるような仕組みをつくりたい。市場や郵便局などに営業に回り、自分で売り先を開拓していった。
インターネットもない時代。今でこそ個人の直販は当たり前だけど、当時はそんなことをする農家は他にいなかった。
そうして、だんだんと山下さんの桃のブランドは確立されてきた。

山下さんが言うには、この仕事には、想像することがたくさんある。
たとえば、冬の今頃は、桃の花が咲く春のことを想像する。春になれば、実がたわわになる夏を想像する。その実を受け取ったお客さんの笑顔を想像する。
カフェをつくったのも、桃狩りで桃を丸かぶりするという他に、桃の美味しさを味わってもらえるような場所ってないよな、と思ったことがきっかけだった。
もともと休憩所として使われていたプレハブを改装し、5年前にイタリア語で「桃の家」という意味の「ラ・ペスカ」をオープンした。

大ぶりな桃を丸ごと1個使ったパフェ「ピーチジュエル」や、企業秘密の”桃バター”を載せてカリッと焼き上げた「ピーチトースト」など、他では味わえないさまざまな桃スイーツが楽しめる。

これまでは、農園でとれた桃やぶどうを使って外注先で製造してもらっていたけど、今年からジェラートの製造機を導入することになった。
自分たちで商品開発から製造までして、新しい「ラ・ペスカ」の名物メニューになるようなジェラートをつくりたいと思っている。
もともとソフトクリームなどの冷たいスイーツが大好きだという山下さん。ジェラートの話になると目がキラキラ光る。

とはいえ、山下さんの本業は、桃を育てること。
今までは、みんなで協力し合いながら農作業と平行してカフェを運営してきたけれど、本格的にジェラートをはじめるにあたって、責任を持ってカフェの運営を担ってくれるような専任スタッフが必要になってきた。
山下さんに聞いてみた。どんな人にきてほしいと思いますか?
「夏の最盛期は、とくに土日なんてものすごい数のお客さんがくる。期間限定の忙しさではあるけれど、それを乗り越えられるような、肝っ玉が座った人がいいかな。」
過去にケーキ屋さんやカフェなどで働いた経験があって、自分でお店をやりたいと思っている人もいいかもしれない。
食べ物を扱う重要性が分かり、調理加工から接客まで、一部分だけではなく全体を見渡して仕事がしたい人。

その人次第で、仕事はカフェのことだけにとどまらないかもしれない。
たとえば、デパートの催事などで商品をPRすること。そして、カフェのオフシーズンには、農作業を手伝うこともあるかもしれない。
0からつくるものだから、新しい意見や提案を期待している。「ラ・ペスカ」を自分のお店と思って、新しい名物になるような桃スイーツをつくるぞ!という気持ちで来てもらえたら、きっと力を発揮できると思う。

武川さんと、内田さん。
ふたりは、主に桃やぶどうなどの果樹を育てる仕事をしながら、それぞれ得意なことを生かして催事やカフェを手伝っている。
武川さんは、山梨県出身で、実家はぶどう農園を営んでいる。

「農業、面白いです。満員電車で通勤する生活から一変、鳥のさえずりが聞こえてくるような自然のなかの仕事。時間の流れ方が全然違いますね。桃は喋らないから大変だけど。『ここに虫がいるからとってくれ』とか言ってくれたらもっと楽なんですけど(笑)」
一方、内田さんは東京出身。2年前まで、小学校で講師をしていた。

「でも、農業のイベントに参加したときに、若い人でも起業したり商品開発したりバリバリやっているのを見て、べつに定年してからじゃなくても、今からやりたいことをやってしまったらいいんじゃないかと思って。」
実際に、農業を仕事にしてみると、前とはまったく違うやりがいがあった。
「ずっと1年かけて育ててきて、最後に桃がぽんっと実ってそれを食べたとき、これが頑張った成果なんだな、というすごい感動があって。前の仕事も、子どもが成長すると良かったと思うんですけど、なかなか自分がしたことに対して跳ね返ってくるものが見えにくくて。でも、桃の場合は、それがでかい。全然違う達成感があります。」

「7月の中頃からお盆過ぎにかけては、超繁忙期ですね。朝、桃を収穫して、そのあとはお中元などの注文にあわせて出荷作業です。」
「そのときは、アルバイトやパートさんなども働く人の人数も増えるので、お祭りだ!と思って楽しむようにしていますね。」と武川さん。
単純作業も多いので、仕事が「日々の労働」になってしまうと続かない。だから、目標やモチベーションをどこに持つかが大事だと思う。
武川さんも、内田さんも、農業を通して地域を盛り上げたい、自分で農業をはじめたい、というそれぞれの目標がある。

就農者へ向けた勉強会や講習会などもあり、そこに参加すると、この地域に移住し農業をはじめた同世代の人たちと出会うこともできる。
「会社の社風も、みんなでこうしたらどうだろうとか考えて、色々なことをやらせてもらえる環境なので。自分で目標を持って、言われたことだけやるのではなく、積極的にできる人にきてほしいですね。」と内田さん。
「とりあえず、やってみたらいいんじゃないって言いたいです。失敗したらやりなおせばいいし。ちょっとした勇気をもって一度なかに入れば、受け入れてくれるので。」と武川さん。

賑やかで和気あいあい、というわざとらしい感じではないのだけど、この会社には、肩の力が抜けたなごやかな空気があると感じた。
はじめのうちは遠慮してしまうかもしれないけれど、意見に耳を傾けてくれる人たちばかりだと思う。
場所も、都心から離れていないし山奥というわけではないから、生活で困ることはそんなにないそうだ。家が見つかるまで、会社のなかのアルバイトの方が寝泊まりする部屋も貸してもらえる。

もし、自分の想像の先にあるものが、ここで新しくはじまろうとしていることと重なりそうだと思った人は、ぜひ応募してください。一度、会社を訪ねてみるのもいいかもしれません。
(2014/3/13 笠原ナナコ)