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「目指しているのは困りごとがない社会ではなくて、困りごとがあっても困らない社会です。困っていても人がつながっているから困らない社会をつくりたいんです。」これは仙台にある一般社団法人ワカツクの代表渡辺さんの言葉です。ぼくも共感します。
今回募集するのは、インターンシップのコーディネーターです。企業と学生をつなげることで、課題が解決されて社会に新しい価値を生んでいます。
大雪の降った仙台。新幹線を降り、歩いてワカツクの事務所へ向かう。歩道の除雪は済んでいないところも多くて、慎重に歩いていてもヒヤッとすることがあった。

雪の話をしてみると、渡辺さんからこんな話が。
「今日うれしかったのが、うちの元インターン生がスコップ借りにきて、街中の圧雪を勝手に剥がしてるんですよ。『何で剥がすの?』って聞いたら、『女の子はハイヒールが好きです、ハイヒールでは街中がすべります、ハイヒールで歩けるまちを取り戻すんです!』って。」

今回募集するのは、インターンシップのコーディネーター。
この雪かきと同じ役割を担っているように思います。単に企業と学生をつなぐだけではなく、目の前にある課題を一つひとつ解決していく。すると少しずつ社会全体に広がっていくようなもの。
コーディネーターの仕事について、もっと具体的に聞いていく。
まずはワカツクのインターンシップの特色について。
企業がワカツクを選ぶのは、いい学生を紹介できたり、その後のフォローもしっかりしてくれるから、と思っていたら、渡辺さんはこう答えてくれた。
「以前はそういう期待感も大きかったのでしょうけど、簡単に言うと中小企業のテストマーケティングを学生にやってもらう、というのがひとつの特徴になっています。」

そこで学生に新規事業の可能性をマーケティングしてもらう。
「ぼくらコーディネーターの仕事はテストマーケティングの段取りを考えること。段取りさえできれば、未経験の学生でも足で稼ぐ仕事はできる。それに学生は試行錯誤して一定の結論が出すことが得意なんですよ。」
「それが事業として成立するかはわからないけれども、マーケティングの結果、うまくいきそうなら事業化すればいい。うまくいかなかったら『やらない』ということが分かるわけです。」
なるほど。ぼくたちもインターンシップの学生を受け入れているのでわかるけれども、いきなり経験のない学生に任せられる仕事は限られる。ただオフィスにいて何もしなければ学生にとっては意味がない。
それならば今はまだ動けていない、潜在的なニーズや困りごとを洗い出して、それが事業として成立するのか検証することなら学生でもできるかもしれない。

この形に行き着いたのは、渡辺さんが経験してきたことによるのが大きいかもしれない。
なぜこの仕事をはじめたのが聞いてみると、きっかけとなった3人を教えてくれた。
「僕が入った大学がへんてこな大学だったんです。とにかく『課題解決をしなさい』と言われたり、『卒業したヤツは就職とか恥ずかしいことをするなよ』って言うような学長だったので。」
就職してはダメなんですか。
「当時の学長がドラッカーを日本に紹介した経営学者の野田先生でした。『イノベータ―たれ。大卒なら仕事は自分でつくるのだ』と言われて。なおかつ、大学の1期生だったので学祭とかすべて自分たちでつくっていったんです。」

3人を通して、「自分で仕事をつくる」「社会の課題を解決する」そして「インターンシップ」を知り、進むべき道がはっきりしていく。
そして、目指すところは「困りごとがあっても人がつながることで解決できる社会」を実現することだった。
どんなに世界が進化していっても、困りごとがなくなることはない。すぐに新しい課題は生まれていく。
それならば、課題に向き合ったときに、それに対応できる人を増やせばいい。
「一人ひとりの力が発揮される社会ですね。発揮しなくても生きられる社会はつくろうと思ってないです。完璧を目指しても、きっとぼろぼろと崩れてしまうでしょ。だから高度にお互いが依存しあえる関係をつくりたいです。仕事は他の人とコミュニケーションする方法だから大事なことなんです。」
コーディネーターは、まさに人と人を編んで、解決に導いていく仕事。

「志で一隅を照らすようなものです。若い人たちが照らしていく一隅をつくりたいんです。それをしたことが若者はないから。」
そうですね。足下を照らすところからはじめるのって大切だと思います。
「いきなり全体を照らそうとする子たちがいっぱいいるからね。それに強い光を当てても、ものすごい暗い闇をつくってしまうかもしれない。」

たとえば、今まで下請けしかしてこなかった企業が、自分たちで考えて新規事業を立ち上げることも。コーディネーターにとっても、新しい課題を発見して、一緒に解決する道筋を考えていくことになる。
学生も、企業も、そしてコーディネーターも。
自分たちで考えて行動する人が増えれば、一人ひとりの力が発揮される社会に近づいていく。課題は解決されて、助かる人も増える。困りごとがあっても人がつながることで解決できる社会になっていく。
今度はコーディネーターである高橋さんに話を聞いてみた。実は高橋さん、この春からワカツクを離れて、地元福島に戻るそうだ。
なぜワカツクで働きはじめたのか聞いてみる。
「学生時代に福島県の企業と学生をつなぐような、場づくりをやっていて。大人も学生も一緒にやることで、お互いに変わって新しいことが生まれていく、その瞬間に立ち会ったんです。」

そんなときに渡辺さんに出会い、インターンシップを知ることになる。
「インターンシップを分解していくと、大人も若者も本気になっていく一つの仕組みなんだということがわかったんです。でもはじめは疑問もあったんですよ。なんでインターンシップってこんなにも広がったんだろうって?」

人材業界や旅行会社などの説明会にも参加したが、なんだか違和感を感じたそうだ。
それが何なのか聞いてみると、しばらく考えてから、こんな話をしてくれた。
「私、上から受けた恩は下に返すっていう言葉が好きなんです。私が先輩からいただいたものを後輩に届けたり。その循環というか、自分のところにとどめないで、それが巡っていくのがいいんです。」
高橋さんが学生のときに感じたものってなんだろう。少し考えてみると、高橋さんが目指しているものが見えてくる。
きっと、単にお金をもらった相手にサービスを提供する仕事だと、そのやり取り以上に広がりは生まれないと感じたのかもしれない。また困りごとがあって必要になったら、あらためてお金のやり取りが必要になってくる。
一方で高橋さんが学生のときに担当したファシリテーション講座やワカツクのインターンシップにも共通することは、関わる一人ひとりが課題を解決できる力を手に入れていくこと。そうやってつながることで巡っていき、社会は少しずつよくなっていく。
そして、就活をしているときに震災が起きた。
「震災のあとに会津の仮設住宅を回ってヒアリングをしたんです。課題を聞いているうちに、目の前に困っている人がいるのにスーツを着て就活することに、ただ単純に違和感を感じたんです。目の前の困っている人の役に立ちたいってところが強かったですね。」
そんな思いから、ワカツクでコーディネーターとして働くことになる。
とてもやりがいのある仕事のように感じるけれど、大変なことはないのだろうか。
「そうですね。うーん… まず関係者が多いですね。みんなが幸せになるためにどうしたらいいのか、最適解を探すことが仕事なんですけど、それは大変なことでもある。」

友だち?
「もちろん、礼儀は大切なんですけど、包み隠さず話すんです。自分の過去のことも、今考えていることも。」
腹を割って話す。
「そうなんです。だから仕事だからといってオン・オフという感覚はないんですよ。日々生きている中で、仕事をしているんです。」

経営者としてはとても残念だろうけど、高橋さんが福島に行くことで、より多くの困りごとが解決されていく。渡辺さんも応援しているそうだ。
取材を終えて渡辺さんと話をしていると、さっきの「圧雪バスターズ」の話になった。どうやら近くのお寿司屋さんでお寿司をごちそうになったとのこと。
まずは小さな一歩から。そうして社会は確実によくなっていくのだと思います。
(2014/3/20 ナカムラケンタ)