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まちのファンをつくる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

まちの魅力は、関わる人によってつくられると思う。

住む人が生活を楽しんだり、外から友人を誘って遊びに行く人がいたり。

「いいまちだな。」

そう思う人が集うことで、コトがはじまり、循環していく。

1 そんな「まち」と「まちに暮らす人々」をフィールドに事業を行うのが、大阪の株式会社インプリージョンです。

ツアーを通して「まちのファンを増やす」人を募集します。

大阪市阿倍野区。

最近では、日本一高いビル「あべのハルカス」が注目を浴びつつ、下町情緒も溢れるまちです。

ここにインプリージョンのオフィスはあります。

赤いめがねが印象的な、代表のオダギリさんが迎えてくれました。

2 はじめに、インプリージョンという社名の由来を聞いてみました。

「リージョンをインプルーブする。つまり地域の価値を高めることが社名であり、ミッションなんです。」

地域の価値を高めることにも、色々な意味がある。

たとえば、賃料を上げたり、来街数を増やすなど、定量的なことだってそう。

「私が目指しているのは『このまちに住みたいな』『あそこに遊びに行きたいな』『あのまちってええで』という具合に定性的に思ってくれる人、つまりまちのファンをつくることだと思うんです。まずは定性的なところを目指した結果、定量的なところがついてくればいいと思います。」

その切り口は大きく2つある。

一つは全国の人に大阪を知ってもらうこと。

そして、大阪の人に地元を知ってもらうこと。

「ファンづくりは、ぜったいに地元からはじまると思っています。地元の人が『大阪ええやん』と話すことから、外の人も興味を持つようになるんですね。」

インプリージョンが取り組むのは、ツアー事業とコンサルタント事業。

今回はツアー事業での募集となるが、相互に関係しあうこともある。

まずはコンサルタント事業について見ていきます。

舞台は、大阪・富田林(とんだばやし)市。

3 はじまりは、地元の人の「古い街並みを活かして人を招きたい。」「知ってもらうことで、まちに誇りを持ちたい。」という思いから。サポート5年目を迎える。

江戸情緒の残るまちにあって、初年度はいくつかの地元商店と連携して1週間のイベントが行われた。

プログラムは、登録文化財となる旧家で歴史ある献立を再現した食事会に、茶事体験など。

すると他の商店から「こういうことなら私もやりたい」と声がかかり、翌年以降は地域の多くの人が関わるようになった。

4年目を迎えた昨年は、まちの至るところで企画が開催された。期間も1ヶ月間にわたった。

続けるなかで、イベントに留まらない人の流れも生まれた。

「イベント中、町家でイタリアンをふるまったシェフがいます。翌年移住してお店を開いたんです。ほかにも雑貨店やカフェ、工房がいくつも立ち上がっています。まちのファンが生まれたんですね。」

インプリージョンはどのように関わっていったのだろう?

「地元の人は『こういうことがやりたい』という思いはあるけれど、企画へ落とし込むことに慣れていません。まずは話し合いの場を設けます。大きな方向性の舵取りをしつつ、会議を進めていきます。」

4 「毎回議事録をとりまとめ、自分でも仮説の検証にフィールドワークを進めていきます。私の考えも伝えつつ、グランドデザインを描いていくんですね。」

地域には、色々な考えを持つ人が暮らしている。トントン拍子に話が進むとは限らない。

「多数決で進めればよい、というものでもありません。話の折り合わなかった人には後で電話をかけたり、訪ねてひとしきり話を聞いたところで、するっと提案をすることもあります。」

こちらが主導で企画を組み、指示を出したほうが楽かもしれない。

どうしてそこまで手間ひまかけて関わるのでしょう?

「主役は地元の人たちです。裏方の私たちが目指すのは、地元が自立して動き出せる姿。だからこそ、とことんコミュニケーションをとり、ノウハウも伝えていきたいです。」

続いてツアー事業の話を聞いてみる。

5 インプリージョンが手がけるのは着地型観光と呼ばれるもの。

物見遊山的に旧所名跡を訪れるツアーでは満たされず、より地域に食い込んだ深みのあるものが求められるようになっているという。

そのようなニーズに応えるべく、まち歩きをして現地の人と触れ合ったり、普段から家庭で親しまれている料理を食べてみたり。より深く地域と出会う観光のスタイルを提供している。

従来の旅行会社が、人を全国や世界に「送り出す」のに対して、着地型観光は人を「呼び込む」仕事ともいえる。

話をうかがったのは、森さん。

海外旅行パンフレット制作などの分野でフリーランスカメラマン、ライターとして活躍したのち、インプリージョンへ。

6 はじめに、こう話してくれた。

「わたしね、まちづくりって言葉がニガテなんです(笑)。どこかおこがましい印象があって。」

「まちの魅力は、新たにつくらなくても、これまでの営みのなかに、すでにあると思うんです。だからこそ、魅力の伝え方を大事にしていきたいんです。」

7 インプリージョンが実施するガイドプログラムには、年間10万人以上の方が参加している。テーマや規模もさまざま。

大手旅行会社からの依頼で「道頓堀ツアー」を数百人規模で行うこともあれば、大阪商工会議所と連携して少人数制でよりディープな大阪へいざなうことも。

「大阪って粉もんやお笑いのイメージが強いですよね。もちろん、それも大切なわかりやすいコンテンツなんです。でもそれだけじゃない、もっとふつうの大阪も知ってもらいたいです。まちには、人の営みがあり、歴史がある。それを感じることこそ、旅の醍醐味なんじゃないかって。」

インプリージョンでは、企画から運営、そしてツアー案内までを一貫して手がけている。

「まずは、ツアー事務局の仕事を覚えつつ、ガイドも行っていきます。その後は、ツアー企画に、訪問店舗の開発… することはどこまでもありますね(笑)。まずは、旅行業の基本をしっかり身につけてください。」

これまでに生まれたツアーもさまざま。

「道頓堀クルーズ&つまみぐいツアー」「鶴橋キムチ作り体験ツアー」「大阪ワイナリー見学ツアー」…

ツアーガイドでは、どんなことを心がけているのだろう。

「決められた時間の中で、人やお店を紹介しながら楽しんでいただくことですね。盛り上がっているからといって、時間、安全管理を怠ってはいけません。楽しさは安全の上に成り立つものなんです。」

8 どんな人がいいんだろう?

「人と接することが好きで好奇心のある方。それとコツコツと積み上げてゆくことが嫌いじゃない人ですね。この仕事って楽しそうで、派手に見えるんですけど、結構地味なんで(笑)。大阪に明るいことは、二の次でもいいと思います。地域のいろんな人と会うなかで、自ずとまちに詳しくなり、大阪を好きになっていきますから。」

経験を重ねた後は、自分でツアー企画も行う。

そこで大切になるのが、地域との信頼関係だという。

大阪のだし文化を体感するツアーを企画したときのこと。

「うどんすきの老舗で、職人さんの話を聞きながら、だしの味比べ。その後老舗の味噌屋さんで話を聞き、最後にはだしと味噌を使ったこだわりの料理をいただく企画をつくりました。まさに大阪の食のいいとこどり。かなり期待していましたが、当日思った以上に盛り上がらず…」

なにが足りなかったのだろう。

「事前に打ち合わせを十分にしなかったんです。『老舗だから大丈夫』という思い込みがあり、机上の空論で進めてしまいました。」

その後訪問先とは、マメに電話をしたり、休日に訪れることも。自分の足で歩き、食べ、人と出会い、関係を築くことを心がけているという。

きちんと積み重ねた関係は、うれしいサプライズとしてかえってくる。

ワイナリーツアーをつくろうと、ぶどう農家を訪ねたときのこと。

「農家さんははじめ、乗り気じゃなかったんです。何度かうかがううちに、少しならいい、ということになりました。畑を見せることは農家さんにとって自分の家を見せるのと同じなんです。」

そしてツアー当日。

ふいに農家さんは、ぶどうの房を指さして参加者に話しかけた。

「どこがおいしいと思う?茎に一番近いところなんやで。」

そしてこんな告白も。

「内緒やけど、こういう種類を来年は試そうと苗を植えてん。」

還暦を過ぎても新たなぶどうづくりをするんだ… ツアー参加者も一気にファンになったという。また、翌年以降も訪れるリピーターにもつながってくる。

インプリージョンのツアーは、スタッフが地域の人々と築いた関係を見せることによって「地域の本質」に触れてもらう。そうすることで「地域のファンになる」きっかけを与えるツアーなんだろう。

9 参加者が楽しむのはもちろんのこと、地元に喜んでもらうことも大切にしている。

「農家さんは、参加者の『すごい』『おいしい』という声が自信につながります。商店街を練り歩くツアーでは、地域のお店の人に話しかけられるんですよ。『このまちのどういうところが面白いの?』『こんなに来てくれて嬉しいわぁ』って。地域の人も、遠方から来てくれた参加者の生の反応を見ることで、自信に繋がるんですよ。」

人が訪れることで、自分の仕事、そして自分のまちに誇りを持つようになるんだな。地元の人たちも、自分から動き出したくなってくるのだと思う。

最後に2人から一言ずつ言葉をもらいました。

はじめにオダギリさん。

「まちのファンづくりって時間のかかることですよ。でも、地道に続けた結果、5年、10年後に変わればいいと思っています。即効性のあることやってすぐ効果がなくなるより、じっくり変わって定着する方がいいでしょ。そんなお手伝いがしたいですね。」

続けて森さん。

「みんなが気づいていない魅力や、人より先に未来を形にするのが、観光プランナーだと思っています。まずはわたし自身が、そのまちのファンになること。なによりもその気持ちです。一体感から人気ツアーが生まれるんですね。その後、わたしたちの手を離れて、お店が自らイベントしていたりするんですよ。もうそこには、わたしの想像を超えた世界があるんです。それを見たときには、にやりとしちゃいますね。」

住む人にとっても、訪れる人にとっても。インプリージョンの掲げる“まちのファンづくり”は、まちを「自分ごと」にしていくプロセスなのだと思います。

(2014/4/8 大越はじめ)