※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
あらたにはじまる場所に、コミュニティはどうやって生まれていくのだろう。著名な建築家による建物、名の知れたコンサルタントによる都市計画なども一つの役割は担うでしょう。
最後に大切になるのは、暮らす人の手によって日々育まれていくことだと思います。

京王線で新宿・渋谷からは約20分に位置しながら、昔ながらの商店街がにぎわいを見せるエリアです。
このまちに昭和30年代に建てられた団地「烏山住宅」。
老朽化による建て替えを経て、約600戸からなる「コーシャハイム千歳烏山」に生まれ変わりました。

ここで働くスタッフを募集します。
コミュニティに関心のある人から烏山に住んでいる人まで、幅広い人に働いてほしいと考えています。
取材で訪れたのは、ななつのこの運営を行う有限会社エヌアンドエスコミュニティアソシエイツ(N&S)のオフィス。東京・神田にあります。
自分たちの暮らす地域を楽しくしたい。そんな思いから20年前に多摩・南大沢ではじまった会社です。
はじめに話をうかがったのは、会長の鎌田さん。

「いまから20年以上前のことです。首都圏の人口が増加するなか、郊外のニュータウン開発が盛んに行われていた時代だったんですね。1万人規模の人たちがそれまで縁もゆかりもなかった多摩・南大沢の団地に移り住みました。わたしもその一人。どこの幼稚園に行けばいいの?病院はどこにあるの?最初はそんな状態でした。」
新住民の中には、結婚後もフリーランスとして、編集者やコンサルタントとして仕事を続けてきた主婦たちがいた。
そこで集い、ワークシェアをはじめて貯めたお金をもとに、会社を立ち上げたのがN&Sの原型。
自分たちの暮らす南大沢のまちづくりに事業として取り組んだ。
「それまでも広告代理店がイベントを開いてきたけれど、コミュニティは一向に育たなかったんです。わたしたちは地に足をつけて、草の根のようにまちづくりをやっていこうと思いました。住民が集まり『こういうものがあったらいいね』と言い合いながら、暮らし手の目線でまちをつくっていきました。」

代表的なものが、2000年の三井アウトレットパーク多摩南大沢誘致に向けた地元からの支援。
「バブル崩壊後、活用されていない空き地にどうすれば商業施設を呼び込めるだろう。そんなこともみんなで考えて声をまとめ、行政にも協力する形で実現していったんです。」
南大沢での実績を聞きつけ、首都圏各地から仕事の依頼が増えていく。
これまでに、新しいマンションにおけるコミュニティづくり、リノベーションをする際の地域住民とのコミュニケーション促進などを手がけてきた。
また、若い世代にノウハウを受け継ぐことで活用してほしい。そうした思いもあり、2011年には神田にオフィスを構えた。

ここは東京都住宅供給公社(JKK東京)が昭和31年に建設した賃貸住宅。老朽化を受けての建て替えを行うにあたり、時代に合わせた工夫を細部に凝らしている。
戸数は全12棟約600戸。
ファミリー層を対象とした一般賃貸住宅。地域の介護拠点を担う在宅介護サービス所も併設した高齢者向け住宅。既存物件をリノベーションした棟からなる。
そして住民同士や、地域と団地をつなぐ役割を担う“施設”棟に誕生するのが、コミュニティカフェななつのこ。
約36万戸の住宅を扱っているJKK東京でもはじめての試み。

プロジェクトの担当者である橋本さん。
おっとりした雰囲気を持ちつつも、テキパキとした仕事ぶりが印象的な女性。

「カフェスタッフとして働きつつ、店内のスペースでのイベント企画も行っていました。ただ待っていても企画ははじまらないので、こちらからNPOや手仕事作家さんに声をかけていきましたね。」
橋本さんは、一度は畑違いの業界に。
カフェには趣味として関わっていこうと思っていた矢先、N&Sに出会う。
「面接の場で『カフェの案件があるんだけどやらない?』と声をかけてもらい、いまに至ります。」
N&Sとしてもコミュニティカフェ運営はあたらしい事業。
不動産会社からの委託を受けつつも、カフェとしての収入も増やしていきたいと考えている。

ななつのこは、どんな場になっていくのでしょう?
「団地に限らず、地域に開かれたものにしていきたいです。色々な人が訪れて、つながりの生まれる場所になればと思っています。」
「そこでスタッフのみなさんには、まちのコンシェルジュとして住民の話し相手になったり、飲食を提供したり、イベントを企画運営してもらいたいんです。」
まちのコンシェルジュってどんなイメージでしょう。
「困ったことがあったときに、ここに来るといつも人がいて、答えてくれる。場の顔のような存在ですね。月曜日はこの人、火曜日はこの人… いずれは人にお客さんがついてもらえたらと思います。」
相談内容もさまざまだろう。
「引っ越したばかりの若いご夫婦はきっと『幼稚園や小学校はどこがいいんでしょう?』と不安に思いますよね。そこで幼稚園のガイドブックをつくるようなことも考えられます。それから、オートロックに不慣れなおじいちゃんおばあちゃんからは、設備の使い方を聞かれるかもしれません。」
また、疑問に答えるだけではなく、住民同士をつなげることも必要。
ここで、コミュニティづくりを手がける中嶋さんにも少し登場いただく。

「住民同士がお互いを知ることのできる場は大事ですね。たとえばお子さんのいるご夫婦が集まって、保育所や小学校に病院といった情報を共有する機会を設けることもあります。それから、高齢者の方の不安を周りの住民がわかっていたら、お互いに助け合うこともできますよね。」
あらためてコミュニティってどういうものなんだろう。
「人と話して、お互いの顔が見えること。困ったことが起きても頼れる人が近くにいること。それだけで人は安心できると思うんです。」

これから入る人には、一緒にイベントに関わってほしいという。
「わたしたちとも相談しつつ、色々と企画に取り組んでもらえたら。まずは住民の方同士が知り合うきっかけをつくっていきたいですね。」
「一方で、主役は暮らしている住民のみなさんです。ゆくゆくは、住民の方が自分たちで企画をするようになってほしいんです。まちの人たちがやりたいことを受け止めて、一緒に形にしていけたらと思います。」
イベントをきっかけに、小商いをはじめる人も出てくれば、と話す。
ものづくりをしているお母さんたちには、カフェ内のスペースに出店をしてもらったり。
あるいは素敵な木工家具をつくるおじいちゃんがいるけれど、人には知られていない。そこで、webデザインのできる若いママさんがHPを作成して広報に協力したり。
「せっかくよいものを持っているけれど、活かす場のなかった人。はじめるきっかけを探していた人。そういう人たちが、ここで小さく展開してもらえたらうれしいです。」
またイベント企画は、地域とのつながりを生むきっかけにもなりそうです。
烏山の商店街には、肉屋に八百屋、魚屋などが立ち並び、夕方になると自転車に乗った買い物客を見かける。そんなにぎわいのある場所。
マルシェを開くことも考えられるかもしれない。

価格帯もコーヒーが200円程度とリーズナブルな設定を考えている。
「ハンドドリップのこだわりコーヒーを揃えることも考えたんです。でもね、コーヒー好きのおじいちゃんが地域にいたら、店頭に立ってもらうこともあるかなと思っているんです。商店街にはおいしいケーキ屋さんがいくつもあるので、コラボも考えられるかもしれません。色々な人に関わってもらえる余地を残して、はじめようと思いました。」
カフェの運営は、基本的にスタッフ2名体制で行う予定。
橋本さんは神田に籍を置きつつ、立ち上げ時の際には駆けつけるという。
ななつのこには、どんなスタッフがいてほしいのだろう。
「コミュニティという言葉に少し構えるかもしれませんが、ちっとも特別なことじゃないと思うんです。人が好きで、ちょっとやってあげたら喜ぶかな、嬉しそうな顔が見られたらいいな。そんな風に思える人がいたらいいな。失敗することだってあると思います。それも含めて、住民と一緒にコミュニケーションをとりながら歩いていってほしいです。」

「まちには多様な人がいるように、スタッフにも多様な色んな人がいてほしいんです。コミュニティ運営に関心のある人。子育てが一段落して、仕事をはじめてみようかなと思う人。長年烏山に暮らし、この場所で何かしたいと思っていた人。」
まずはじめてみるにはよい機会だと思います。興味のある人には、自分の幅が広がっていく仕事ではないでしょうか。
最後に橋本さんは、自身のカフェ経験を踏まえてこう話してくれた。
「飲食店ってオープンしても最初の数ヶ月は、お客さんがなかなか来ないと思うんです。いま売上げを試算してるんですよ、1日5人来るかな、10人来たらいいな… はじめのうちは閑古鳥が鳴く日もあると思います。でも、1年経ったときに、人が集いにぎわっていて。ななつのこがあってよかったね。そう思ってもらえたら。」
「はじめは大変だと思うんですが、レイアウトを変えたり、広報をしたり。一緒に試行錯誤していきたいです。まずは連絡をください。」
(2014/4/30 大越はじめ)