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おしゃれを売る仕事

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このお店のスタッフの方が、この仕事を「おしゃれを売る仕事です。」と答えてくれました。

相手のかわいさを100%引き出す仕事と同時に、自らもおしゃれを思いっきり楽しむ仕事。

関西を中心に、6店舗を展開する呉服店、みさ和が手掛ける『大塚呉服店』。

現代の暮らしの中では着る機会の少なくなってしまった着物を、ふたたび身近なものにしたい。そして若い人に、もっときものを楽しんでもらいたい。大塚呉服店は、呉服店の新しいかたちを提案しています。

000127190036 2012年にオープンした京都店、神戸店に加え、今秋にはルミネ新宿店が新たにオープンする。今回は、京都・神戸の2店舗の販売スタッフに加え、新宿店の店長候補、販売スタッフを募集します。

きものを着たことがない人でも、ファッションに興味がある人であれば、挑戦してみてほしいとのことです。着物のみならず、おしゃれが好きな人はぜひ読んでみてください。

きものを好きで興味のある人はたくさんいると思う。けれど、どうしてこんなにまちで着ている人を見ないのだろう。

わたし自身きものは大好きだけど、普段着ることはほとんどない。

一人では着られなかったり、高いというイメージがどうしてもあったり、そもそもお店に入りにくいこともあるかもしれない。

そんなことを考えながら、京都店へ伺った。

京都駅からバスにゆられ20分ほど。八坂の塔に向かうゆるやかな坂を修学旅行生とすれ違いながら進んでいくと、坂の途中でお店にたどり着く。観光客の多い、にぎやかな通りだ。

30 大塚呉服店は、「きものが着たくなる呉服店」をコンセプトに掲げている。

お店に入りにくいというイメージを払うために、店構えは、呉服店と一目ではわからないような洗練された佇まい。そして、きもののことをよく知らない人でも、わかりやすく買い物ができるように、価格帯を1・3・5万円というスリープライスに分けて販売している。洋服屋と変わらない感覚で買い物ができる。

店内には、店長が自ら買い付けているという、チェック柄の着物や、印象に残る花柄の着物が並ぶ。かと思いきや、洋服のときでも楽しめるような、ロンドンのブランド、日本人作家のアクセサリーやスカーフなどが並んでいる。

おしゃれを楽しむための、ファッションのひとつとしてきものを捉えている様子が伝わってくる。

この日は、大塚呉服店のブランドマネージャー、店長、販売スタッフの方にお話を伺った。

3人集まると、新しい商品の話や、どんなものと合わせたらかわいいか、話が止まることがない。自分たちの扱っているものが、本当に好きなんだなと思った。

09 (写真左より、ブランドマネージャー藤井さん、店長の森村さん、販売スタッフの槙本さん)

大塚呉服店って、どういうお店なのでしょうか。ブランドマネージャーの藤井さんに伺った。

「普通の呉服店にいたら、入ってこないような方たちが入ってくるお店ですね。普段きものと触れ合う機会のない人でも、「あ、かわいいな」という感覚でいらしてくれます。お客さまの中には、お店に入ってはじめてきもの屋だと気づく方もいらっしゃいますよ。」

藤井さんがこの会社に入ったのはどうしてなのですか?

「大塚呉服店であれば、自分もそうだったみたいに、きものにちょっと憧れを持っていた人が、きものをはじめるきっかけになれる可能性を感じました。他の呉服店では、きものを普段から着る人や、よほど興味がある人しか相手にできないだろうと感じたんです。」

大塚呉服店をつくった一番の目的は、きものを着るまでのハードルをなるべくなくしていくこと。

03 「おしゃれのレパートリーとして、今日はワンピースを着るのか、きものなのかというレベルまでいけたらすごく嬉しいなと思っています。呉服業界は振袖や、お稽古、礼装など、特別な日のきものが大きな売り上げをしめています。ですが、わたしたちは日常の中のきものを提案していきたいんです。」

商品も、それぞれの店の店長が、いまの20〜30代の方が直感的にかわいいと思える商品をセレクトしている。

京都店の店長が森村さん。京都生まれ、京都育ち。小さいころから着物を着る機会が多かったそうだ。

「従来の呉服屋さんの着物ってファッションからかけ離れているんですよね。うちはきものは本来はファッションなんですよって言いたいんです。」

D7A_3611 お店の商品はどんなものをセレクトしているのだろう。

「うちは観光地にあるので、新規のお客さまが多いです。なので、一目惚れしてしまうような、はっきりしたテイストのものが多いですね。神戸店は大人っぽい雰囲気のモノが多かったり、大塚呉服店らしい部分を共有しながら、お客さまの層に合わせて買い付けをしています。」

大塚呉服店らしさ。きものの伝統を大切にしながらも、自分たちがおしゃれで楽しいと思えるものを柔軟にとりいれること。

店長の森村さん、呉服業界のことをこんな風に。

「いまの着物業界って本当に滅びの一歩手前なんです。」

滅ぶ?

「着物を買う人も少ないですし、そうするとメーカーが食べていけなくなって、つくる人もいなくなってしまいます。去年までつくれていた下駄が今年はもうつくれない、そういうことが月単位で起きているんです。」

きものを着る文化を絶やさないためには、きものを着る人を増やすしかない。

34 「わたしはそれが大塚呉服店のやり方であればできると思っています。言ってしまえば、うちが潰れたらきものを着る文化は滅んで、将来的にただ博物館でみるものになってしまうくらいに感じています。」

いまの女の子の感覚で再定義したきものたちが大塚呉服店には並んでいる。

販売スタッフの槙本さんにもお話を伺った。

今日の服装は洋服。展示中の傘作家である、Coci la elleさんのスカーフに、ロンドンのdesignsixというブランドのネックレス。

D7A_3545 スタッフは、きものを着てくる日と、洋服で出勤する日があるそうだ。

ファッションが大好きだという槙本さん。どうしてこのお店で働こうと思ったのだろう。

「着物は祖母がすごく好きで、身近にはありました。自分で着ることを意識したのは、「おせん」という蒼井優さんが主演のドラマをみてからです。大学を卒業するときに、仕事をはじめるんやったら、人と話をすることが好きだったので、販売の仕事がいいなと思って。たまたま京都に来たときに大塚呉服店の前身のお店をみつけて、『あ、ご縁』と思い応募しました。」

入社は3年目。取材の前に商品をみていたら、着物と浴衣の違いなど、槙本さんがいろいろ教えてくれた。麻の着物はいつから着ていいの?と聞いてみたら、「今日暑いなと感じたら着ていいんですよ、長袖ロングTシャツ感覚で着てください。」と。洋服感覚で接客してくれてとてもわかりやすかった。

大塚呉服店の販売員として、毎日意識していることがあるそうだ。

「一人でも多くの人にかわいく着物を着てほしいんです。わたし、毎朝の携帯のアラームが鳴ると、『おしゃれを売る仕事』というフレーズが出るようにしています。販売スタッフとしてまだまだなところもありますけれど、お客さまにはおしゃれにきものを着てほしい。うちに来たからには絶対おしゃれにして帰ってもらおうと心がけています。」

働きはじめて、なにか大変だったことはありましたか?

「喋るのが好きでも、接客するときは全然関係ないと思いました。お客さまありきのことなので、自分が喋るのがすきでもおすすめしたり、提案したりっていうのは全然違うところだなって痛感しました。」

18 お客さまが一番欲しいものを提案することが大切。話すより、まずは聞くことの方が大切だそうだ。

販売員はどんな人が向いているでしょうか。店長の森村さんに伺った。

「販売員としてだったら、人を喜ばせるのが好きとか、おしゃれになってほしいとか、人のためになにかしてあげたいって感覚をもってる人。いまいるスタッフは、向上心をもってひたむきに努力できる人が多いですね。」

経験などは必要になってきますか?

「着物の接客、販売経験者である必要はまったくありません。変な先入観はなくていいです。店長候補に関しては、アパレルの店長さんをやっていたような人だと、より仕事への理解は高いと思います。」

33 店長候補に関しては、まずは社員の方が店長業務をやるそうなので、入社後徐々に引き継いでいく。店頭での接客に加え、店舗運営、売り上げ管理、買い付けなど。

「ノルマなどはありません。ですが、店舗目標はあります。なので、接客をみていて『こうした方がいいな』と思ったところや、お客さんの好みを引き出しきれてなかったときなどは、アドバイスをして、いい接客ができるよう全力でサポートしていきます。」

着物ならではの接客のスキルは、店頭でスタッフの方が少しずつ教えていってくれるそう。

ブランドマネージャーの藤井さんはこう話してくれた。

「うちは、会社としてまだ小規模です。なので、一人ひとりにかかる責任は大きいですし、期待もあります。一流の販売員になってもらうために、雇用して育てたいと思っています。そこだけは念頭に置いてほしですね。」

すると再び、店長の森村さん。

「打たれ弱い人は向いてないと思います。面接のときに、いつも根性ありますかって聞くんです。」

いまは問屋さんをまわって商品を探しているけれど、これからはオリジナルの商品をつくっていく予定があるそう。

「以前オリジナルの帯をつくったときには、スタッフが描いたイラストから帯をつくったこともありました。色も、どの色がいいかスタッフみんなで投票したり。イラストやデザインが好きな人はより楽しめるんじゃないかな。」

入ってきて一ヶ月くらいのスタッフにも、店頭ディスプレーをお願いしたり、やる気次第で、店舗運営などにどんどん関わることができる環境だと思う。

17 「きものってやっぱり日本人のアイデンティティだと思っています。うちが店頭で一人の人にきものを売ることをきっかけに、もしかしたら義務教育の中に着付けを取り入れるきっかけになったり、きものブームが起きるかもしれない。世界を変えていきたいなってけっこう本気で思っています。そこにプライドを持ってやっています。」

どこよりもきものをはじめるきっかけをつくるお店になっている自信がある。

でも彼女たちから伝わってくるのは、そういう使命というよりか、楽しさや、軽やさだ。

店長の森村さんの「楽しくなくなったら終わりですよね。」という言葉が印象に残っている。

05 呉服店をもっと気軽に、きものをもっと身近に。

誰よりもきものを楽しんでいる彼女たちがいるから、ついつい自分まで楽しくなってしまう。そんなお店であるし、これからできる新宿店も、そんなお店になってほしい。

まずはあなたからきもののイメージ、変えてみませんか?

(2014/05/19 吉尾萌実)