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保育 × ◯◯

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

もし実現したい夢があったり、いつか自分で仕事をつくりたいと思っている人がいたら、ぜひ読んでほしいです。

今回は、保育園で働く人を募集します。

そういうと、専門的な知識や経験が必要なんじゃないかとか、自分には関係ないと思う人もいるかもしれない。

でも、取材を通して分かったのは、限られた人だけの選択肢ではないということでした。

むしろ、違うバックグラウンドを持っているからこそ活躍できる環境かもかもしれません。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 今回は、NPO法人ケンパ・ラーニング・コミュニティ協会が運営する保育所で働く保育士と、事務局という立場から現場をサポートしたり新しい企画をしていく事務職スタッフを募集します。

資格や経験は問いません。保育士は、入ってから保育士の資格を取得する意思があれば大丈夫。

国際協力機構JICAで働いていた人、一般企業から転職した人、そして旅人だった人まで、さまざまな経歴の保育士が働いている保育園です。

どんな保育園なのか、実際に訪ねて話を聞いてきました。

この日は、快晴だけど午後から雹が降るという予報の、不思議な天気の日。

井の頭線の三鷹台駅に降り立つ。ここから歩いて井の頭公園まで行ける距離の、のどかな場所。

線路沿いのゆるやかな坂を登っていくと、黄色い壁の建物が見えてきた。

SONY DSC 昼下がり、「ケンパ井の頭」はちょうどお昼寝の時間で静まりかえっていた。

まずは、天井が高く開放的なエントランスで、理事長の和久津さんに話を伺う。

「僕がケンパをはじめたきっかけは、長男が生まれたことでした。」と和久津さん。

SONY DSC それまでの人生は、とくに深い挫折もなく”のほほん”と生きてきた。大学は商学部を卒業し、その後就職した損保系の一般企業で働く。

長男が生まれた24年前は、ちょうどバブルの入口だった。

「僕の子どもの頃は、近所に色々な年齢の子が集まってケンケンパをして遊ぶような光景が、いたるところで見られたんです。ところが、そんな光景がなかなか見られなくなっていた。子どもを預けようと思ったら、保育所か幼稚園しかない。ところが、親として行かせたいと思える場所が見つからなかったんです。」

今でこそ、制度が増えて選択肢も広がった。でも、当時はまったく状況が違った。

本当に自分のやりたいことを突き詰めたとき、子どもに関わる仕事をしていきたいと思った。

そして、自分でケンパをはじめることにする。だけど、保育に関してはなんの知識も経験もなかった。

友人のつてでアメリカを視察したり、じっさいに自分で保育の場を開きながら、どんな保育をしていくかを考えつづけた。

SONY DSC そんなとき、阪神・淡路大震災がおこる。それは和久津さんにとって大きな衝撃だった。

「それまで、みんな社会課題とか社会的義務とか、そういうことをあまり考えずに、自分の目の前のことに一生懸命だったと思うんです。でもそのとき、日本中が不安になり、困っている人を助けよう、という気持ちになった。そこで広く、みんなが社会的な視点を持つようになったのではないか、と思います。」

震災から3年後の1998年に、特定非営利活動促進法が制定される。そのタイミングで、和久津さんたちもNPOの法人格を取得した。

その後も、発達障害者支援法、障害者自立支援法の成立など、さまざまな転機がある。

世の中には色々な教育のメソッドがあることも知った。けれど和久津さんは、どれかひとつを選ぼうとは思わなかった。

人がメソッドに合わせるのではなく、まずは人がいて、その人にとって役に立つものをその都度考えていけばいい、と思った。

そうして、ひとりひとりの”ありのまま”を受け入れる、というケンパの教育の基盤ができてきた。

kenpa12「ケンパ井の頭保育日誌」より転載

「はじめからこうしようと思ったわけではないんです。色々な人の出会いから学ばせていただいて、今の方向に向いてきた。幸か不幸か、僕には保育の専門職としての基盤がないんですね。だから、そもそも概念がなかった。出会う方、出会う方が抱える課題に、どうコミットするか、という発想しかなかったんです。」

その結果、今のケンパがある。これからの課題を聞いてみた。

「保育所という閉ざされた環境を、地域に開かれた場所にしていくことです。今は制度の壁にぶつかっているけれど、最初に思い描いていたケンケンパ、の路地裏のイメージに、近づけていきたいと思います。」

そのために、一緒に活動できる人を探している。

和久津さんにはない発想があれば参考にしたいし、保育だけに囚われない自由な視点を求めている。

たとえば、という例を挙げてもらった。

「JICA出身の恭子先生は、食を通じて世界の文化を知る『Lunch Trip』の創立メンバーです。今年、ケンパの中で子ども向け、保護者向けのLunch Tripをやりたいね、という話をしています。」
恭子先生のように、自分の活動を生かしてイベントをしたり、講座を開いたりするスタッフも多いそうだ。

なかには、自分の活動を発展させて独立する人もいる。

「手入れする人がいなくなって荒れた多摩地域の山を再生するため、間伐材を流通させる活動をしていた子がいたのですが、今は社団法人を自分で設立して活動しています。今、一緒に連携して、うちの園でも間伐材の家具を使っていこうという話が進んでいるんです。」

なにか個人の活動をしていて、それだけでは飯が食えないのでここで働く。そういうワークライフバランスがあってもいいと思っている。

だからケンパは副業も可能だし、独立志望のスタッフのための勉強会が企画されることもある。

kenpa16「ケンパ井の頭保育日誌」より転載

「僕らの資源を彼らが、彼らの資源を僕らが使う。そうやって生かし合えればいいなって。使えるものは使いあおうという、ケチな考え方でございます(笑)」

ここまで聞くと、ここは自分の活動をするための理想的な環境なんじゃないか、と感じるかもしれない。

でも、実際には仕事は仕事、と割り切れることばかりではないのだろうな。

実際に保育士として働く綾子先生と彌生先生にも話を聞いてみる。

SONY DSC左が綾子先生、右が彌生先生

働いて2年目の綾子先生は、それまで一般企業に勤めていて、キャリアチェンジして保育の仕事をはじめた。

インターネットでケンパを知り、興味を持って話を聞きにいったのが、ここで働くきっかけだった。

働いてみて、どうですか?

「もともと子どもが好きなので、保育の仕事自体は楽しいです。運動も好きなので、体力も大丈夫。ずっと動いていられます。でも、やっぱりそれだけが仕事ではないので大変です。たとえば、保護者の方とのやりとりは、経験がなかったので最初は戸惑いました。」

不安なことも聞いてみる。未経験でも資格がなくても、大丈夫でしょうか。

「資格や経験はあるに越したことはないけれど、なくてもできる手伝いからはじめればいいんじゃないかな。」

「関わりながら子どもの様子を学ぶことはできると思います。」と彌生先生も。

kenpa15「ケンパ井の頭保育日誌」より転載

実際には、日々どんな保育をしているのだろう。わたし自身、保育園出身だけれど、泥だらけで走り回っていた記憶しかない。

「大きな違いは、外国の先生が日常的にいるということかな。」

「子どもたちからしたら、普通に自由に遊んでいると感じていると思います。お散歩とか室内遊びとか、音楽で遊ぶとか、そうしたメインの活動をわたしたちが考えて、そのなかでどう遊ぶかは、それぞれ子どもたちが広げている感じです。」

あくまでケンパが大切にしているのは、子ども主体の教育。だから、カチッと決まった時間割やプログラムがあるわけじゃない。

ただ、そのなかでスタッフがこうしたらいいんじゃないかな、というアイデアがあれば組み込んでいく。

kenpa10「ケンパの仲間~ケンパの保育園ではたらく先生のリアル~」より転載

「音楽が得意な子が、園歌を作詞作曲してみんなで歌ったりしたよね。」

「ここは多彩な人多いし、刺激になる。比較的自由にさせてもらえるので、何か自分の力が発揮できれば、楽しいと思います。」

とはいえ、朝から日が暮れるまで子どもにつきっきり。やっぱり大変なこともある。

自分の活動と半々で、割り切ってできるような仕事ではないのかもしれない。

「体力がいるから、最初はあー、疲れたってなっちゃうと思います。やっぱり大変なことも多いけれど、それでも続けられるのは、やっぱり子どもの笑顔かな。子どもからエネルギーを貰えるので、それが力になっています。」と彌生先生。

子どもが好きという前提はあった上で、この仕事と向き合ってほしいです。

話を聞いたあと、保育園から歩いて5分ほどのケンパの事務所に移動した。

和久津さんの実家の2階をオフィスにした、アットホームな雰囲気の空間。

ここでは、事務スタッフが、保育の現場を支えるさまざまな仕事をしている。

SONY DSC ここで、事務職スタッフの松延さんに話を伺う。

松延さんは、大学ではインドのヒンディー語を専攻していた。就職活動をしていたとき、たまたまインターネットでケンパを見つけ、新卒で働きはじめた。

実は来月、自分で事業を立ち上げるために退職することが決まっている。

新しく働く事務職スタッフは、一部の仕事は松延さんから引き継ぐことになると思う。

SONY DSC 「人数が少ない職場なので、自分の仕事はこれとこれ、という感じではないんですね。全体として向かいたい方向はこういう感じで、というのを共有して、そこに向かうためにどう動けばいいか、というのは自分で考えていかなければいけません。」

松延さんは今まで、会員向けの会報誌をつくったり、今年できたばかりのケンパ専用のSNSの管理をしたり、研修会の企画や立ち会い、補助金の申請など、さまざまな仕事をしてきた。

新しく入る人には、そうした日々の仕事と並行して、ケンパをより「地域に開かれた場所」にしていくための企画もしてほしいと思っている。

たとえば、イベントを開くとか、カフェをはじめるとか、保育所と地域が触れ合える場を考えてほしい。

そして、実現するにはどうしたらいいか?というところまで考えてほしい。

まずは財源をどうするのか。助成金プログラムを探して申請したり、メーカーや団体にスポンサーになってもらったり。

「今はクラウドファンディングなど、インターネットを使った新しい人、物、お金の集め方がありますよね。そういうアイデアのある方に来ていただけたらな。」

それから、「ここは自分の活動を仕事に生かしやすい環境だと思います。」と松延さん。

「自分のやりたいことが、ケンパがやろうとしていることにつながっているのかイメージ出来る人なら、きっと自分の能力を発揮できる可能性があります。」

SONY DSC 仕事は仕事、と完全に割り切りたい人には向いていないかもしれない。

だから、まったくケンパと目指す方向が違うと、お互いに時間をロスすることになってしまうと思う。

まずは、ケンパが向かう先を想像してみてください。そして、その上で一緒にできることがありそうだと思ったら、連絡してみてください。

保育と掛け合わせて、新しい価値を生み出せるかもしれません。

(2014/6/1 笠原ナナコ)