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いなかのエジソン

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

日々当たり前のように使われている電気。

世界ではじめて、発電から送電に至る電力システムを事業化したのは、アメリカの発明王エジソン。いまから約100年前のことです。

日本の制度は、電力10社が地域ごとに販売を独占して行うというもの。1930年代、戦争時の統制下にはじまりました。

そして、電力自由化へと向かういま。

鹿児島で新たに“超”小水力発電の仕組みを開発しようとする計画があります。

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世界的に見ても水資源の豊かな日本。小水力発電は注目されつつも、実現できるのは比較的大規模な場所に限られています。

暮らしの中で目にする用水路や小川で水車を回し、発電ができたら。メンテナンスをきっかけに地域コミュニティも育むそうです。

そこで、発電と売電の仕組みを新たにつくる人を募集します。

エネルギーに関心のある方は文系理系を問わず、まずは読んでみてください。

鹿児島のメインステーションである鹿児島中央駅。そこから約30分で電車は伊集院駅に着いた。

約5万人が暮らす日置(ひおき)市の中心市街地に、今回募集を行う企業があります。

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太陽ガス株式会社は、鹿児島県内7つの市でLPガス小売り業のトップシェアを持ち、約20,000世帯に供給している会社です。

扉を開けると、代表の小平(こびら)竜平さんが迎えてくださった。

気さくに受け答えしてくれる方でした。

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太陽ガスが電力事業をはじめる経緯をうかがいました。

「2000年頃から、地域の人口が減りはじめたんですね。次の30年を描くなかで、エネルギーの総合供給会社を目指したいと思ったんです。」

どうしてでしょうか。

「エネルギーには大きく分けて、ガス・電力・石油があります。資源の埋蔵量や市場を考えると、今後中心を担っていくのがガスと電力でしょう。両方の選択肢を持つことで、お客さんにより最適な供給の提案ができると思いました。」

地域密着型が太陽ガスの特徴。お客さんも、地域内でエネルギーを自給したいと考えていることがわかった。

「自分たちが暮らし働く日置で、お金を循環させたいと思う方が多いですね。食べものに限らず、エネルギーも地産地消をしたい。特に若い人ほどその傾向があると思います。」

そして、2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故。

これを機に、電力業界を取り巻く環境は大きく動きます。

電力自由化へ向かう流れを感じた竜平さんは、環境保護先進国であるドイツを視察します。

「電力自由化が早期になされたドイツでは、どんなプロセスを経たのか。自由化後のエネルギー業界はどうなっていくのか。自分の目で確かめたかったんです。」

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そして2014年の2月。電力小売事業の自由化が閣議決定されます。

2016年以降は、消費者が電力購入先を自ら選べるという内容でした。

そこで太陽ガスが注目したのが、小水力発電でした。

小水力発電とは用水路、小川、道路脇の側溝など、身近な水流を利用して発電を行うもの。

水車が回ることで粉をひいたり、あるいは野菜を洗ったり。日本では、水の力が暮らしにうまく取り入れられてきた歴史もあります。

「僕らが扱うエネルギーは、どこから買っても品質に差はありません。太陽ガスを選んでもらうには、姿勢に共感して、買うことを誇りに感じてもらうことが大切なんです。地域のシンボルとしての意味も込め、小水力を採用しました。」

現在は日置市、鹿児島高専、そして地域企業とともに、産官学連携による活動がはじまったばかりです。

「発電技術から売電の仕組みまで、これから取り組むところです。2016年の事業開始を目指して、ビジネスモデルをつくっていく仲間を探しています。」

現在中心となって電力事業に取り組むのが、及川さん。

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愛知県岡崎市に生まれた及川さんは、これまで国内外を渡り歩いてきました。

「北海道大学の理学部在学中に、7ヶ月間アジアを旅したんですね。帰国すると就職活動に出遅れていました(笑)。その後は環境保護団体でのボランティア活動を経て、ドイツへ留学しました。環境都市のフライブルグで森林環境学を専攻していたんです。」

福島の原発事故を機に、自然エネルギーに取り組もうと帰国。人の紹介により太陽ガスと出会う。

「自然エネルギーの構想を聞いて、一緒にやっていきたいと思ったんです。」

今後小水力発電の事業化にあたって、大きく2つの課題があると言います。

「一つは河川や湖の水を利用するための水利権です。慣習的に農家さんが所有することが多いので、発電に使えるよう調整を進めます。地元の方との関係づくりが僕の主な仕事になります。」

「これから入ってくる人には、もう一つの課題に取り組んでほしいんです。」

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それは100kw未満の小水力発電を、事業として成り立たせる技術の確立。

「100kw以上の発電技術はあります。けれど、国内で100kw以上のポテンシャルを持つ地域は、急斜面を抱えるごく一部の山間地域に限られています。小水力発電に取り組みたくても、現行の技術では実行に移せない市町村が圧倒的に多いんですよ。」

日置市のポテンシャルも、40〜50kw程度に留まるという。

「これまでも太陽ガスの従業員が仕事の合間に実験を進めてきましたが、どうしてもスピード感が足りません。そこでぜひ、技術開発に専念する人に来てほしいんです。」

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水の流れで水車を回転させ、その力を発電機に伝える。構造自体は、シンプルなものだという。

そのため、理系の基礎的な知識こそ持っていれば、専門分野は問わないとのこと。

鹿児島高専をはじめとするパートナーとの協働や、研修によるサポートも考えられる。

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民間主導による小水力発電の事業化は、日本全国でも初の事例だという。

「行政主導で取り組むケースでは、どうしても事業化の面が弱いんですね。日置で発電技術から売電までの仕組みを確立できれば、全国のモデルとしても転用できると思います。」

とにかく“技術を開発したい人”に来てほしいという。

「人格は問いません(笑)。技術が好きで、話はじめると止まらなくなってしまうような… 我が道を行くぐらいでちょうどいいかもしれません。将来的には独立して、全国で小水力発電を普及させる道も考えられるのではないでしょうか。」

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電力小売自由化により市場が開かれるのは、国内電力量の約40%。市場としてのポテンシャルも高いです。

また、売電の仕組みをつくる人も募集します。

一緒に事業を進めるのは、総務を担当する小平昇平さん。

おっとりとした鹿児島弁を話しつつも、きびきびと仕事をされる方。会話の節々からは、一緒に働く人を大切にする姿勢が伝わってきました。

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代表の竜平さんとは親戚関係にあたるけれど、家業を継ぐつもりはなかったそう。

食べることが好きな昇平さんは、カリフォルニア州立大学でワイン醸造学を専攻。帰国後は東京芝浦の食品輸入会社で働きます。

昇平さんの人となりが垣間見える話があります。

「ロジスティクスも見ていました。トラックの運転手さんには色々な人がいます。野心を持っている若いお兄ちゃんに、職を転々としてきたおっちゃん… 物流の見直しに業務最適化をすることで、どうしたら一人ひとりがいきいき働けるのか。適材適所でやっていきましたね。」

仕事の経験を見込まれ、太陽ガスにやってきたのは4年前のこと。

売電の仕組みづくりについては、こう話す。

「お客さんをとるには信頼が大切です。営業は、地域密着でガスを供給してきたネットワークを活かしていきたいです。すでに予約をいただいているところもあります。数千世帯への供給が見込めると思いますよ。」

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関連する法律も整備中であれば、これから入る人の仕事も流動的。

そのため、総務の仕事と兼任しつつ売電の仕組みづくりにも取り組んでほしいと話す。

「現在は月に一度のワーキンググループに参加し、事例研究も進めていますが、まだ情報も不十分。行きたいところは見えているけれど、道のりはこれから一緒に調べて、描いていきたいです。」

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ここで昇平さんは「せっかくだから周辺を回ってみましょうか。」と車を出してくれた。

実は鹿児島に戻るつもりはなかったんです、と昇平さん。

「人によっては、鹿児島への移住はハードルが高く感じるかな。僕自身そうでしたから(笑)。でも、来てみたらよいところかもしれませんね。全国的に見ても新しい仕事に取り組みつつ、暮らしも楽しんでほしいです。」

町中を走りながら「ここの郵便局もうちのお客さんです。」「焼酎“薩摩宝山”をつくる西酒造さんは、小水力発電の出資者でもあります。」と案内していただく。

そして着いたのは、ガスを納めている江口蓬莱館(ほうらいかん)。

水揚げされた魚介類や、地元で生産された農産物、及びその加工品を販売することで、地域の農林水産業を盛り上げようとする施設です。

「鹿児島ではおいしいものが安く手に入ります。食べものに困ることはありませんね。野菜はもちろん、黒豚、黒牛、実は鶏もあるんですよ。」

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魚は、自分たちで釣りに行くことあるそうだ。

「4月はキビナゴにカツオの王様とされる星カツオ、これからは水イカがおいしいですね。みんなで地引き網をやったこともありますよ(笑)。」

ここで、らっきょうを販売するおばあちゃんと話がはじまった。

どうやら思うように売れなかったようだ。「一つもらっていくよ。」と昇平さん。

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施設を後にして、再び車を走らせる。

「母方の実家は昔、洋服屋を営んでいたんです。おばあちゃんはよく買いに来てくれたそうで。『ちっちゃい子どもがいたでしょう?あれ僕ですよ。』そんなところから会話がはじまり、らっきょを買って、ガスを購入してもらって。まぁ、今日おばあちゃんと話していたのが全部ですよ。」

「技術や学歴もまぁ大事ですけど、基礎があれば。重視したいのは人柄かな。人のつながりを大事にできる人は、頼られます。仕事も暮らしも、そこからはじまると思います。」

これから入ってくる人も、まずは素直に関わっていけば大丈夫。

昇平さんだけでなく、移住してきた及川さんの姿を見てそう思いました。

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太陽ガスは、エネルギーの総合供給会社を目指す過渡期にあります。社名の変更もあるかもしれません。

最後に及川さんは、エネルギー事業がコミュニティ形成へとつながる可能性を示してくれました。

ドイツに留学して、環境政策が進んでいる背景には、住民一人ひとりの意識が大切だと感じたそうです。

「地域でのエネルギー自給は、僕らだけが頑張ってもムリです。住民と一緒に進めていき、最終的にはみんなが『自分のもの』という意識になってもらえたらうまくいくと思います。新しい仕事だから時間もかかれば、失敗もたくさんすると思います。一緒に、楽しんでやっていきましょう。」

(2014/6/16 大越はじめ)