※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
このサイトは人気があるから、ご存知の方も多いかもしれません。「北欧、暮らしの道具店」
北欧雑貨などを、すてきな文章や写真で紹介しながら販売しているサイト。ぼくも大好きです。でもそれは利用者として好きというよりも、まったく新しい事業をチャレンジしているから。そのスタンスに惹かれるんです。
「新しいパブリッシャーになろうとしているんです。」
代表の青木さんはこんな風に話す。今まで紙で行われてきた「雑誌」の役割を、WEBを通してまったく新しい形にしています。

でも、それは誤解です。
やっていることはデザイン的にも技術的にも新しいこと。そして、あらゆる領域を横断して、継続して育てていくことができる仕事です。
どうなるかはその人次第。ここには機会と自由はあるんです。
中央線に乗って東京の西へ向かう。だんだんと空がひらけて、緑が多くなってくると、もう国立駅。駅前から少し歩いたところにクラシコムの事務所がある。
中は以前よりも広くなっていて、床には無垢のフローリング。それぞれの机も広々としていて、いい環境。
ちょうどランチの時間だったのでご一緒させていただいた。今日は料理家フルタヨウコさんの提供する社食とのこと。メニューはチキンライス。デザートにはドーナツも。自然にみんなから笑みがこぼれる。

食事を終えたところで、代表の青木さんに話を聞くことにした。今まで何回も取材させていただいたけれども、毎回新しい発見のある話が聞ける。
ところで青木さん、最近は何を考えているんですか?
「今まではスタッフを全面に出しながら、いろいろなコラムなども掲載していたのですが、ずいぶん抑えていますよ。人を全面に出すと、とても魅力的なコンテンツをつくりやすいんです。たとえば舞台裏の話とか面白いでしょ。でも量的拡張や事業のサスティナビリティを考えると、個人の色をいかに消すか、ということなんです。」

「コンテンツの質と量だと思います。たとえば、毎日4、5記事ぐらいでるようになってきている。そうすると毎日見れる安心感が生まれるわけです。」
毎日見れる安心感。
「たとえば、テレビをつけてみたり。とりあえず雑誌を買ってみるような。いつ行っても何かがある、という期待感を持たれるかどうか、なんです。」
「ずっと僕らは『遊びに来るだけで楽しめる場所』、要は『カートボタンの付いた雑誌』っていう売り方をよくしてましたけど。テレビ局だったり、出版社だったり、広い意味でのパブリッシャーに会社がならなければいけない。」

たとえばこんな話がある。
商品を買っていただいたお客さまに、自分たちでつくったリトルプレスのプレゼントをはじめたそうだ。
するとコンバージョン率(訪れたお客さんの中で購入する人の割合)がものすごく高くなった。すべてなくなって配布を終了すると、今度は「お金出すのでリトルプレスが欲しい」というニーズが殺到する。そこでバックナンバーを売るようにしたら、一冊350円のものが月に1000冊売れるようになった。

たしかにこれならすべてを自分たちでやったほうがいい。
「でもびっくりだったんですよ。まさかこんなことが起きるなんて想像していなかった。今までもポイントあげたり、カップをプレゼントしたりしたけれど、そんなことは起きなかった。」
やってみないとわからないことって多いですね。
「振り返ってみれば、ぼくらのサイトにあるコンテンツに魅力を感じているお客さんにとっては、コンテンツがほしいのでしょうね。」
「今までは、一冊の雑誌のようなサイトをつくろうとおもっていた。だけど今のイメージとしては、オンライン上にある代官山の蔦屋書店みたいなもの。要するにメディア性のあるマーケットプレイスをつくる。サイトのコンテンツも、InstagramもFacebookもある。紙のものもやるし、ジャムもある。これからはコーヒーや焼き菓子、それに洋服もやろうかと。」

青木さんに聞いてみる。普通のエンジニアやデザイナーとは違いますか?
「そうですね。たぶんどっちかっていうと、今まで経験してきたようにそのままやれることが意外に少ないのかなっていう気もしていて。」
「もちろん経験も必要なんですよ。なんていうのかな… もう決まった仕事があるから、人が足りないから来てよ、という感じではないんです。脚本で言えば、当て書きするようなもんですよ。」
当て書き?
「つまり俳優や女優は決まっていて、その上でどういう脚本をつくるか、ということに近いかもしれない。」
なるほど。働く人によって、クラシコムの脚本が生まれる。
「たとえば、WEBのデザインもすれば、ジャムのパッケージもつくるし。でも頭の使い方は一緒で、結局はどう使われるのか、その形の必然性ってなんなのか、ってことの積み重ねだったりする。」

「小さいころからデザイナーに興味があったんです。でも学校を卒業してからは、はじめは金属加工の会社にいたんです。そのあと学校にもう一度はいって、デザイン事務所に入ったんですけど、ずっと徹夜続きで。」
この世界は大変だ、と思ってバイクの材料を研究開発する仕事に転職したけれども、やはり自分でもつくりたい、という思いが生まれる。家具の見本市に自分で出展しつつ、それだけで仕事にしたいと思って独立する。けれどもフリーランスは難しかった。
そんなタイミングで以前からクラシコムで働いていた奥さんの話を聞いて、入社することになる。
入社してどうでしたか?
「話には聞いていましたけど、思ったよりもしっかりした会社だなと感じました。見た目以上に効率を意識しているし。」

「企画から全部携われることじゃないですか。そして継続して関わることができること。そうすると、自分たちが何をしたいのかすごく大事になってくるし、それが反映されるんです。」
なるほどクライアントがいると成果物だけのコミュニケーションになるし、プロジェクトは継続しても担当を外れてしまうことも。
けれどもここで働いているかぎり、すべてのデザインに関わっていくことになる。
しかも、その領域はとても広い。ウェブやグラフィックデザインはもちろん、ジャムやリトルプレスのデザインもある。これからはプロダクトデザインも増えていくかもしれない。
次に紹介するのが、エンジニアのオリバーさん。
卓越した購入体験をつくるには、エンジニアリングはコンテンツ以上に大切なこと。
まずはオリバーさんに、なぜこの会社で働くことになったのか聞いてみる。
「ぼくは一般的なエンジニアとは違うバックグラウンドを持っていて。大学は言語学を勉強していて、日本に留学するんです。」

「面白かったのでエンジニアになろうと思っていたんです。」
クラシコムはどうやって知ったんですか?
「奥さんが」
あ、オリバーさんも奥さんがもともと働いていて。
「そうなんです。ここならエンジニアとして働けたし、スウェーデン育ちなんですけど、スウェーデンでは6時には仕事が終わる。日本にはそういう会社ないかな、って探していたんです。だから社風とか雰囲気も含めて、あこがれていたんですよ。」
実際に入ってみてどうでしたか?
「思ったよりもみんないい人で。ほんとに家族みたいだし、いい仲間。」
今まで6時に終わらなかったことってありますか?
「わたしはないね。締切はあるけれども、自分たちの仕事なので、スケジュールは柔軟に変えることができるから。」
たしかに。クライアントのプレッシャーもない。
「自分に対するプレッシャーはありますよ。ある程度、緊張感を持って仕事しないとだめですね。仕事していないときも、頭では仕事のことを考えたり、整理している。そうじゃないと6時に帰れないかもしれない。」

「わたしはインターネット開発がほとんどなので、全部インターネットにのっているから。必ずウォッチしているんです。日本語よりも英語サイトのほうが多いかな。」
どういう技術を使っているんですか。
「いまJavaScripの時代なんですね。もうサーバーからデータベースまで、全部Java scriptなんですよ。GitHubでも一番アップされている。node.jsという技術が出てからすごいスピードで。この会社でも今まではJava scriptはフロントエンドだけだったんですけど、バックエンドもJava scriptにしようとしています。リサーチにも時間をかけながらじっくりとやっています。」
話を聞いていると、みなさん生き生きと自由に仕事をしている。トライできるから、思わぬところからリトルプレスのようなものも生まれるし、自分の頭で考えて仕事しないといけないから、それぞれの知識や経験も深まっているように感じる。
それにベンチャーにありがちな、毎日がサバイバルな感じはない。みんな6時に帰っているのだから。

でも、こんな生き方・働き方もあるんですよ。気になったら連絡してみてくださいね。
(2014/7/14 ナカムラケンタ)