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おはよう。そしてまたね。

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

東京・田無の共同保育所にんじん。

玄関のドアを開けると、たちまち子どもたちが周りに集まってきた。

「ぼくはみっつ。」「わたしはふたつ。」「きょうはどのこうえんであそぶの?」「おひるごはんは?」「あのね、あのね… 」

1 ここで真剣に子どもたちと遊ぶ保育士さんを募集します。

設備は恵まれていないけれど、子どもと関わるうえで一番大切なことがあると思いました。

保育士の資格は働きながら取得できます。子どもに関わる仕事を考えている方。働いてはみたいけれど、ためらいのあった方。一度離れたけれど、再びはじめたい方。

まずは記事で、にんじんの一日を体験してください。

保育園の朝は早い。7時半には子どもたちがやってきます。

新宿から西武線に乗って約15分の田無には、自然豊かな景色が広がります。

にんじんには園庭がないけれど、近所にあるたくさんの公園が遊び場。

10時半になると、公園へ出かけます。

2 子どもたちと歩くと、1kmほどの道のりも小さな冒険のよう。

横断歩道はまるでアトラクション。「こないこない」と車を確認して進みます。

あと少しで公園、というところで強い風が吹いてきた。帽子が飛びそうになり、わぁと驚く子どもたち。

大人が見過ごすことも、子どもにとっては新鮮な体験です。

公園に着くと、砂場、すべり台にターザン。

保育士さんが見守るなか、泥んこになってかけまわります。

3 まだまだ遊び足りないけれど、そろそろ昼ご飯の時間。

帰り道では保育士さんが「あ、ちょうちょがいるよ」「秋にはぶどうがなるんですよ」と教えてくれた。

同じ道も、目をこらせば季節によって景色が変わっていく。

にんじんの台所からはおいしそうなにおいがしてきた。

この日は海老フライに、トマトのチーズ焼きにおひたし。

「いただきます。」

保育士も一緒にテーブルを囲みます。

5 おかわりする子もいるほど、とにかくみんなよく食べる。

お腹いっぱいになった子どもたち。

絵本を読んで寝かしつけると、保育士さんもほっと一息。食事を終えると、時計は13時を回っていた。

普段は一息つくこの時間。

コーヒーを飲みながら、保育士のよしのさん、おおちゃん、かわちゃん、そしていずみちゃんに話をうかがいました。

6 右からよしのさん、おおちゃん(大山さん)、かわちゃん(川島さん)、いずみちゃん(泉美さん)
共同保育所にんじんがはじまったのは1976年のこと。

施設長のよしのさんはこう話す。

「にんじんは一つの大きな輪のような関係かな。中心にいるのは子どもたち。その周りにわたしたちがいて、一番外側に子どもたちの親や、近所のおじいちゃんおばあちゃんがいる。みんなで協力して、関わりあって、一緒に子どもを育てている感じです。」

共同保育では、親も運営に関わっていきます。

夏と秋には全員参加の大掃除。年に一度は、親たちとイベントを企画する。

いまでこそ入所希望も増えたけれど、なかなか子どもが集まらなかった時期もありました。

「どうすれば園児が増えるのか。一緒に話し合って生まれたのがいまの料金プランです。どうしても家賃が支払えず、出稼ぎに行ったこともありました。当時はボロボロの長屋にいてね。知らない人からは、子だくさんの大家族だと思われていたみたいです(笑)。」

7 僕も東京住まい。日ごろ目にする保育には、子どもを“お客さま”として扱うような印象があった。特に「〜いたしましょう」といった敬語を子どもに使う姿には、違和感も感じていた。

「でも、そういう風潮だと思います。企業参入が増えるなかで、保育はサービス業になりつつあります。保育に対する考え方は違うと思います。」

にんじんにおける子どもと保育士の関係は、大家族かもしれない。

「わたしたちは“先生”じゃないんですよ。保育士も親御さんも子どもも。みんなお互いに名前で呼び合います。」

保育士さんは、にんじんのお母さんのような存在。

「一日の大半をにんじんで過ごす子どもも少なくありません。わたしたちが教えるのは、箸の上げ下げやあいさつ、言葉遣い。それから好き嫌いしないで食べなさい、とか。昔は家で言われたことを代わりにやっているのかな。」

また、子ども同士の関係はきょうだいのよう。

にんじんでは0歳から5歳児までが一緒に過ごす異年齢保育を行っている。障がい児も一緒に生活をする。

今日は公園へ向かう途中、転んだ2歳の子を、5歳の子が手助けをする場面があった。

「上の子が下の子の面倒を見る。小さい子は大きい子を真似したくて頑張る。そういう姿がごく自然になっています。もちろんケンカもしますよ。一人っ子が多いなか、にんじんではお兄ちゃんにも弟にもなれるんですね。」

一方で運営の面から見れば、異年齢保育は手のかかるもの。

「一人の給与はどうしても低くなってしまうんですけどね。もう少し子どもに手をかけてあげたくて。」

そうした思いから保育士さんを募集しています。

ここで話を聞いたのは、いずみちゃん。

長く勤める方が多いなか、2010年からにんじんに仲間入りしました。

10 保育系の大学に進み教育実習に参加する中で、不安に感じたことがあったという。

「実習先の保育士さんが… こわかったんです。行事や事務、壁の飾りつけと やることが多すぎて、余裕を失っているように見えたんです。子どもたちと接するときも作り笑いをしているように感じられて。」

「4歳以上の子どもの場合、法律上は一人の保育士が30人まで保育できるんです。けれど、あれもこれも仕事を抱えた上で、30人の子どもたちを見て。自分が楽しんで仕事できる自信が持てなかったんです。」

そんなときにんじんと出会う。

アットホームな雰囲気に「ここで絶対に働きたい!」と思った。

働きはじめた頃には、こんな出来事があった。

「2歳の子が、わたしの頭をガッと掴んで引っ張ったんです。嫌だな、と思ったけれど、何もできなくて。そこで、先輩保育士のおおちゃんが『ダメ!!』2歳の子を相手に(笑)。すんごい剣幕で叱ってくれたんです。とても嬉しくて。まず大人が優しいから、子どもたちも優しくなれるんだと思います。」

12 担当する子どもの人数は少ないけれど、一人ひとりとの関わりは真剣そのもの。体力的にはハードだという。

「いまは慣れましたが、最初の一年は毎日くたくたで。でも、大変さの質は違うかもしれないです。目の前の子どもと真剣に遊ぶと、もう少しあれもできるんじゃないか、これもできそう… ついついやりたくなるんです。」

これから働く人は、現時点での経験や資格は問いません。

「真剣に子供と遊べる人」がいいという。

保育士のおおちゃんはこう話してくれました。

「遊ぶときに、まあ大人が眼をギラギラさせてるんです。負けない!みたいな(笑)。一番白熱するのがいす取りゲームです。大人がおしりでボーン!って。子どもたちが本当に吹っ飛ぶんです。はじめて見たときは衝撃でした。」

「でもね、子どもたちも負けじと大人を押してくるの。あからさまに力を抜かれるよりも、本気の大人に勝つと嬉しいみたい。大人げないよ!って言われるんですけど(笑)。」

真剣に遊ぶ上では、まず自分が楽しめることが大切。

「気乗りしないときはわたしたちもガマンしません。『鬼ごっこしようよ。』と言われても『今日はちょっとな~、どうかな~』と言うと『わかった、いいよ。』別の保育士のところに行きます。」

「子どもに遊びを提供するんじゃなくて、一緒に遊ぶ感じ。自分が楽しんでいたら、子どもたちも自然についてくるでしょう?」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 真剣に遊びつつも、怪我には気をつけている。

「公園で怪我が発生すると、すぐに遊具が撤去されます。でもね、大事なのは安全な遊び方を知った上で楽しめることじゃないかな。」

今日も公園で木登りをする場面があった。おおちゃんは「危険だから登っちゃダメ」と止めることはなかった。お腹を擦らないようにTシャツをズボンの中にしまい、靴をきちんとはいたことを確認してから一人ずつ登っていった。

「まぁ、内心 ハラハラですけどね(笑)。」

にんじんの保育士さんにはもう一つ、大切な仕事がある。

一日の出来事を親に伝えたい、という思いからはじまった“お便りノート”。

14 おすわりができるようになった。歩けるようになった。しゃべった。なんでも食べる子に好き嫌いが出てきた。

保育士はその子の“はじめて”に立ち会うことも珍しくない。

親からは「子どもの成長記録です。一生の宝物が出来ました!」という言葉をいただいたこともある。

読んでみると良いことはもちろん、叱られたことも書かれている。

「そうそう、うちはちゃんと叱りますね。にんじんの子に限りませんよ。月に一度の遠足では、たいてい外の子も叱ってる(笑)。『こら!そんなことしちゃダメでしょ!』って。」

そんなにんじんは、保育のちょっと先を見ていると思う。

子どもたちは卒業後も、にんじんを訪ねてくるという。

「この間は、高3の子がやってきたんです。『保育者になりたい』って。ふつうは高校の先生を頼ると思うんですけど、にんじんに来てくれたのは感慨深かったな。」

最後にみなさんはこう話してくれた。

「にんじんで過ごすのは、何もないところに楽しみを見つける時間だと思います。たくましいですよ、みんな。遊びをつくる強さがあれば、行き詰まることがあってもきっと大丈夫。わたしたちはそう思っています。」

15 話が終わる頃、子どもたちはむくりと起きてきました。

毎週月曜日の夕方は、近所のおじいちゃんが紙芝居を読みにきてくれます。

「子どもたちに楽しんでほしい」そんな思いからはじまったそうです。

公園に行く道でも、近所の人が声をかけてくれました。月に一度、近所の介護施設「おとなりさん」を訪ねての交流会では、実の孫のように喜ばれるのだとか。

16 にんじんには、立派な園庭や自分たちの畑でつくった野菜、そうした目をひくものはないけれど。

保育に限らず、子どもとの関わりにおいて一番大切なことを思い出させてくれたような気がします。

子どもの行く先々で、大人には笑顔が生まれていました。

紙芝居が終わりしばらくすると、ぽつぽつと親が迎えにきました。

「またね。」と今日の一日は終わり。 そして「おはよう。」新たな一日がはじまります。

(2014/7/1 大越はじめ)