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相手を引き立てる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「建築的スキルは建築以外の場でも役に立つと思うんです。」

STAR(エスティエイアール)の代表の佐竹さんは、取材でこんなことを話してくれました。

「自分のスタイルがどうとかじゃなくて、額縁職人みたいに相手の絵を引き立てる額縁をつくるのが、建築のもっている機能だと考えています。」

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「うちの名刺を見てください」と佐竹さん。

文字が紙の端に書かれ、真ん中の空白を囲うようなデザインになっている。どんな意味があるのだろう。

「中央に来るのは“あなた”の名前です。建築やデザインは、“あなた”という絵を引き立てる額縁のようなものだと考えています。だから額縁のように、中央を空けているんです。」

「相手を引き立てる最高の額縁をつくる。僕らは自分たちを、額縁職人だと考えています。」

佐竹さんは著名な建築家のもとで働いた後に独立。東京都北区で百貨店やホテル、水族館などを手掛け、建築とインテリアそしてブランディングの分野まで活動を展開している。

ここで、自らも活動できるくらいの能力とデザインセンスの高い、即戦力のデザイナーを募集します。

インターンも募集するので、学生の方も続けて読んでみてください。

 

京浜東北線の東十条駅を降り、すぐにSTARのオフィスが見えてくる。蔵戸の入口に驚きつつ、小扉を開いて中へ入る。

オフィスはよくある設計事務所の雑多な感じがなく、明るく広々としていた。

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代表の佐竹さんは東京生まれ。古民家を移築した家で過ごしたことや、通学中に毎日目にしていた、代々木体育館に惹かれるものを感じたことから、建築の道へ進む。

大学院で建築を学んだ後は「とにかくものがつくりたくて」、北川原温建築都市研究所に入社。

6年間の経験を積み、2002年、30歳を機に独立をすることにした。

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「建築でなにができるのか。」

それを追い求めて、上海でレストランのデザインや、中国の設計事務所と共同で9ha規模の複合商業施設のコンペに参加した。

2005年からは百貨店・ホテル・橋・プロダクトなど様々な規模のデザインに挑戦。そこでビジネスとも正面に向き合う。

「ビジネスにおいて、空間だけでは結果が出ません。小売業であれば商品・サービス・空間の3つ全てそろう必要があります。僕らのできることは、たった2割程度なんです。」

「だから、僕らは商品にもサービスにも、そしてそのブランドのビジョンにも迫っていく必要があります。僕らが提案するのは単なる形ではありません。クライアントとビジョンを語り合い、ゴールを設定し、具体策として空間化する。そうやってクライアントと共にプロジェクトをすすめていくのが、僕らのいうブランドアーキテクトのスタイルなんです。」

クライアントと共にブランドを育み、額縁のように引き立てるデザインをするブランドアーキテクト。

STARが6年ほど前から手掛けている、和歌山県の串本海中公園という水族館もそうした事例のひとつである。

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はじまりは、研究所体質の古くて地味な水族館から、来場者がもっと楽しめるような場所に変えてほしいというクライアントからの相談だった 。

串本にはおおらかな土地柄や、ラムサール条約で指定されるほどの質の高い海中景観がある。また開園当時からの理念で、水族館には海を楽しめる施設や研究所が併設されている。

どんな水族館なのかをわかりやすく伝えること、そしてウミガメをはじめとする海の生き物たちと一生懸命に取り組んでいる人たちをもっと前にだし、訪れる人と触れ合う機会を増やすことが必要だとわかった。

時間をかけてすすめていく中で、都市的な雰囲気や、わざとらしく魅せるようなものではなくて、海の生き物にとってもお客さんにとっても気持ちいいような施設にしようと考える。まずは動線を整理し、ウミガメが産卵しやすい砂場をつくっていく。

ときにはインテリアにお金をかけるよりも、人手不足の運営体制にお金をまわしたほうがいいのではと提案し、仕事が1年後になったこともあるという。

「適切な額縁をつくるには、正しく問題を定義できること、つまり要件定義が重要です。正しく問題を認識できなければ、どんなに努力しても、よい解決、よいデザインにはたどり着けません。」

なにが本質でなにが理想か。共に考えながら少しずつ手を加え、6年が過ぎた。

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クライアントがどうあるべきか。こちらからただ解を示すのではなくて、当事者である従業員たちや専門家たちとコミュニケーションしながら、丁寧に目標を定めている。

「ただ、誰かの意見を吸い出すワークショップではないんですよ。相手を観察し、共感し、試案を提示し、それをフィードバックし、正しい回答を模索する。つまりクリエイティビティです。相手が納得し、自ら動き出すようにしていかなければなりません。」

いろんな立場の人を交えながら、なんとなくの仮説として持ちつつも、柔軟にどういうものをつくっていくか考える。

そのためには相手のことを深く理解することが大切なんだと思う。

「根本にあるのは、好きになることです。以前、ジャックダニエルのバーを手がけ、バーに飲みに来られた人たちに説明をした際、隣にいた担当の方に『佐竹さん、ジャックの人よりジャックのこと詳しいね』って笑われましたね。」

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一緒に寄り添うプロセスを重ねることで、クライアントと同じくらい深く考える。だから信頼を得られるのだろうし、自ずと付き合いも長くなる。

信頼できるから、とりあえず相談しよう。そんな感じでまた依頼が来るんでしょうね。

「この人に任せておけば安心だと思ってもらえることはすごく重要です。クライアントの生活や事業に直結するのですから。いつも一生涯付き合う気持ちで取り組んでいます。」

 

今度は、もうひとりの役員である菊地さんに話を伺う。

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菊地さんも、かつて北川原温建築都市研究所に在籍していた方。佐竹さんとはひとつ違いで、当時は同じプロジェクトを担当していたそうだ。

「もともとはスーパースターの建築家を目指していました。けれど働きはじめてから、作家性みたいなものを追求していくことに疑問を持ちはじめて。事業を組み立てるところから建築の能力を活かしていけば、もっと良いものができるだろうという想いがありました。」

「一生に一度できるかどうかのビックプロジェクトをやり遂げた後に、一つ夢が叶ったなと気持ちが一区切りして。中堅デベロッパーに転職しました。」

都市デザインシステムで働きはじめたあとに、NAP建築設計事務所で3年働き、その後STARに加わる。

「僕と佐竹君は、得意なことをフォローし合いながらやっています。そんなパートナーシップを持ちながら、人が集まってやっていけるようなフィールドがつくれたら面白いんじゃないかと。で、その可能性がここにはあるんじゃないかと。」

どうしてそう感じられたんでしょう?

「額縁職人のような建築設計者の役割っていうのが、世の中では求められていて、力が発揮できるフィールドがあると思うんです。それをきちっと発信していってやっていきたい。」

「そのために同じような志とスキルを持っている人に来てくれると嬉しいですね。スーパースターを目指す方向じゃないと感じている人ってたくさんいると思うんです。」

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どんな人を募集するのだろう。続けて菊地さんに伺う。

「すぐに来てほしいのは、この仕事をお願いって任せられるチーフクラスの人です。」

「例えば、都市型のホテルとか、納骨堂とセットになった葬儀場の案件がはじまっています。目標を定めるディスカッションから加わってもらうことで、価値観を共有してもらって、初期の段階からどんどん入ってほしいです。」

図面を引けるのはもちろんのこと、クライアントとコミュニケーションを取りつつプロジェクトを進行できることが前提となる。

佐竹さんにも聞いてみる。

「インテリアを中心に、自らも活動できるぐらいのデザインセンスの高い方にも来てもらいたいです。スキルを持ってプロジェクトに加わってくれる経験者ですね。」

未経験者はどうですか?

「その人はまずアシスタントですね。素直で、やる気があって、共感してくれて。それとセンスが必要。」

どんなセンスですか?

「作家性が必要じゃないからといって、システマチックにデザインが決まるものでもないです。柔らかく頭の中で一緒に考えていくセンスですね。」

柔らかく一緒に考えるセンス。それは磨けますか?

「デザインのオリジナリティーとかクリエイションって、どれだけ深く考えて、どれだけ多く体験しているかによると思うんです。何歳になっても、価値のある本物を直に見るトレーニングは必要ですね。」

「ただ、根っこにある価値観が一緒であることがいちばん重要です。僕のことではなくて、STARを好きでいてほしい。イメージは、サッカーチームのように優勝という目標を共有しながら、個性あるプレイヤーそれぞれが活動していくような集団。主語がIじゃなくてWe。そんなマインドを期待しています。」

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設計アシスタントの田中さんにも話を伺う。

田中さんは大学で建築を学び、新卒でSTARに就職。今年で4年目になる。

はじめの職場の印象はどうでしたか?

「設計の業務はキツイだろうと思っていたので、それは案の定です。だから気持ちが強い人、明るい人に来てほしいです。」

大変なことはありましたか?

「トップの佐竹さんがクライアントとお話をして、わたしが作業するという感じだと思っていたんですけど、そうじゃないことが多くて。思ったより自分でやらなきゃいけなかったです。」

「うちは逆ピラミッドだからね。」と佐竹さん。

「極力、担当メンバーとお客さんが直接やりとりするようにしています。顔の見えることは重要ですからね。ですから、担当者は自分ごととしてプロジェクトに関わることが求められます。もちろん僕らがサポートするし、最終的な責任は会社が取ります。そのへんもわかってくれる人と一緒にやりたいですね。」

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これから大きな案件も控え、ますます忙しくなってくるというSTAR。

建築家に求められる職能もまた、デザインだけではなく広がっていくと思います。その中で、とことんクライアントに寄り添いながら、本当に求められている額縁をデザインしていくことがSTARでは求められている。

その額縁に制限はありません。建築を飛び出してもいいかもしれない。相手が本当に求めているものを形にする力がつく職場だと思います。

(2014/7/28 森田曜光)