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「海の魅力ってなんでしょうね… 海に出会って、人生観が変わることもあります。小笠原や沖縄に移住した人も見てきました。それから、海の中では素が出るんですよ。みんなすっぴんになります。長い遊びになると思います。」ダイビングをしたことはありますか?

海のなかには、知らない世界があるようです。
今年で40年を迎えるダイビングショップ「ブルーサブ」では、海と人をつなぐひとを募集しています。
東京・高田馬場。
2つある出口のうち、ひっそりとした戸山口を降りて3分ほど歩くと、ブルーサブが見えてきた。
店先では、店長の小関さんが洗濯したウエットスーツや機材を干しているところ。

小関さんは東京の出身。ブルーサブで働いて13年になるという。
「はじめて海に入ったのは小6のときです。沖縄の石垣島に行って、たまたまスノーケリングをしたんです。ダイビングの人たちも一緒でした。泳いでいたら、ダイバーたちが海底から現れたんです。衝撃でした… 言い表せない感動があって。自分もやろうと思いました。」
ダイビングには、認定機関の講習を受けて発行されるライセンスが必要。
小関さんは、15歳になるとすぐにライセンスを取得した。
「自分はこれを仕事にしていこう、と決めたんです。」
専門学校へ進み、最初に働きはじめたのは石垣島。そこでブルーサブの引率するグループがやってきた。
印象的だったことがあると言う。
「一緒にダイビングすると、参加者がインストラクターをよく信頼していることがやりとりから伝わってきました。」

働いてわかったことがある。
「人にお客さんがつく仕事なんですね。どうしてもオーナーの個人商店となりがちで、スタッフが自立しずらい。その点、ブルーサブは任せてくれたんです。自分の目で見て、考えていまの形をつくっていきました。」
ダイビングショップは数多くあるけれど、ブルーサブの特徴はどういったところにあるのだろう。
「まずは入り口の正直さを心がけています。料金を明示することにしたんです。ダイビングは、ショップで最低2日間の講習を受けると、スクーバダイバーという最初のライセンスが発行されます。けれど、料金体系がショップによって大きく異なる。機材購入を巡る料金トラブルも耳にします。それじゃあ続かないし、ダイビングを好きになれませんよね。」
その姿勢は、ツアーの内容にも見られる。
コースは大きく2つに分かれる。ライセンス取得のための講習と、遊泳をするもの。
ライセンスは、スクーバダイバーからオープンウォーターダイバー、そしてインストラクターまで幅広い。潜る深さなどで、ステップアップしていく。
今年で40年を迎えるブルーサブは、スクーバダイバーライセンスの発行枚数で日本一になったこともあるそうだ。けれど、数よりもダイビングの楽しさを伝えることを心がけるようにした。
「ライセンスを取る人は増えても、その後の姿が見えなかったんですよ。」
「あるとき考えたんです。そもそもどうしてこの仕事に就いたんだっけ?って。海が好きだからなんですよ。ダイビングに興味を持ってもらい、より楽しんでもらえるようになってほしい。『一緒に潜れてよかった』と言ってもらいたかったんです。」

「お客さまが主役だと思っています。僕がどんどん前に出るのではなく、どれだけ後ろから見守れるか。よくこんな話を聞きます。『あそこまで行くとめずらしい魚が見れますよ』とガイドさんについて泳ぎ続ける。かえって疲れてしまい楽しめなかったというんです。」
「それってプログラムありきですよね。お客さまの気になる魚がいたら、劇的に面白く、そしてていねいに答えていく。写真撮影に熱中しだしたら、気の済むまで撮影してもらう。海を楽しんでもらいたいんですよ。」
するとスクーバからオープンウォーターへ、ダイビングを続ける人が増えていった。
また、個人でも潜れるだけの腕がついた後も、ブルーサブのツアーに申し込む人が少なくないという。
「個人で行くのも全然構わないんですよ。沖縄に行くお客さんがいれば、僕らの持っている情報を全部お伝えします。ただ、『僕らと一緒に行ったらもっと楽しいよね』とは冗談まじりに言います。気心の知れたスタッフや仲間と、日中は心ゆくまで潜って、国際通りをみんなで歩いて、夜は楽しく飲んで。」

こんな話もある。
小関さんが、長い付き合いのお客さまと海に行ったときのこと。
「ダイビングスポットのコースどりを組んでもらえたら、『海に入ったら自分で楽しみますから』と言われたんですよ。自由に泳いで陸に上がると、『今日は小関くん、仕事しなかったねー(笑)遊んだね。でも楽しかった!』と言われて。もちろんケアはします。けれど、ダイバーとして自立したら、水中では対等な立場をとる。それが本来のダイバー同士の付き合いだと思うんです。」
お客さんには満足してもらうことを心がける。無事にダイビングを終えて、帰り道でお客さんが「次はいつ行こう?」と思ってもらうところまでが仕事だと話す。
そしてブルーサブにはもう一つ大事な場がある。今回募集する、会員制のショップだ。
いわゆるアウトドアショップとは少し位置づけが違うよう。
「お客さまは、30歳前後の勤めに出ている人が中心です。仕事終わりや休みの日にふらっと立ち寄り、棚に並べたマイタンブラーでお茶を飲み、仕事や海の話をする。そんな生活の一部でありたいんです。」

「もちろん売りたいし、営業しますよ(笑)。でも、ガツガツはしないように心がけています。『何か買わなきゃ』という雰囲気では行きづらいし、くつろげませんよね。」
ブルーサブでは、お客さまが悩みを持っていたら、応えることを心がけているそうだ。
たとえばダイビングの一つの楽しみである、水中の写真撮影。
スクールを開くこともできそうだけれど、お茶を飲みながら教えることもあるとか。
ついつい商売ベタだなぁ、なんて思ったのだけれど。
「ゆるやかにきちんと関わると、こちらから言わなくても『今度海に行くね』と考えてくれるお客さまが多いんです。『こういうものもあった方がいいんじゃない?』とアドバイスをもらい、参考にすることもあります。みんなでこの場を育てているんですね。」
ブルーサブは、スタッフだけのものじゃないんですね。
「ブルーサブとして、トータルで回っていけばいいと思っています。これから一緒に働く人は、まずはお客さまが求めるものをくみ取って、楽しく話をしてほしい。店の顔になってもらえたら、と思っています。」
常連さんにはフランクに接していくことも大事。色々と試し、失敗もしながらでよいとのこと。
とは言えすでにあるブルーサブの輪に入るのは、多少緊張もあることでは?
「不安には思わないでほしいです。お客さまにも色々な人がいます。わいわいするのが好きな人に、人見知りの方。みんな受け入れてもらったり、受け入れたり。そうした経験をしているんですね。まずはその場にいることで、自然と話すようになって。あなたがいるから楽しい、という人が出てくると思います。」

すぐ利益に結びつかないことにも手を惜しまない。思わず「えっ、大丈夫なのかな?」と聞きたくなるけれど、場を一緒に育んでいく人たちが周りにいる。

「一番大事なのは、お客さまにとってこのお店が居心地のいい空間であること。そのためには、掃除にレイアウトをもっときちんとしていきたいんです。僕らはダイビングはできても、デザイン面まで行き届かなくて。掃除一つも『片づけなさい!』と指示してもらえたら、手は動かします(笑)。」
また、イベントも定期的に開催している。
夏には海に行き、お客さんとダイビングをした後BBQパーティを開く。年末年始には水中でカウントダウンをする年越しナイト。年に一度は研修と称して海外でダイビング。これまでフィリピンにパラオ、マレーシアに潜った。
イベントではスタッフとして動きつつも、お客さんと一緒にわーっと楽しんでほしいと言う。
「具体的にこれとこれがあなたの仕事です、というよりも、目の前の人に興味を持って動いてもらえたら。たとえばBBQだと、焼き場に立つことが仕事だと思いがち。でも、自分で焼きたいお客さまもいるんですね(笑)。そんなときはテーブルを回り『今日のダイビングはどうでした?』と聞いてみたり。」
ゆくゆくはインストラクターとして、お客さんと海に出られるようになってもらえたら、と考えている。

ブルーサブは、海のツアーと高田馬場のショップが両輪となって、コミュニティをつくっているんだな。
最後に、一言話してくれたのが、社長の中田(なかだ)さん。
小関さんの横でうなずきながら話を聞いていた中田さんは、好きが高じてアウトドアの仕事に。

(2014/8/7 大越はじめ)