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生き甲斐を支える

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「フラメンコって人によっては生き甲斐や、生き様なんです。だからこそ、さまざまな形でそれを支えていきたいと思っています。」

東京・赤坂見附駅の地下鉄をおりて、目の前にあるビルへと向かう。エレベーターに乗り込み、4階のボタンを押す。扉が開くと、世界が鮮やかに一変した。

04 日本でも有数のフラメンコ衣装の専門店『ソニアジョーンズ』。自社のアトリエや工場を持ち、オリジナルで衣装を製作したり、本場スペインから衣装を買い付けて販売している。

今回は、舞台に上がる人たちを輝かせるための衣装を、接客販売する人と、それをサポートする接客アシスタントを募集します。

フラメンコと聞くと、自分とは少し遠い世界だと感じる人もいるかもしれません。けれど、フラメンコや踊りなどの経験はなくて大丈夫とのこと。自分が主役になるというよりは、人が喜ぶものを提案したり、つくり出すことが好きな人に合う環境だと思います。

普段なかなか出会うことのない世界を、少し覗いてみませんか?

4 フラメンコとは、スペインの南部、アンダルシア地方が中心となっている芸術。

その成立には諸説あるけれど、17世紀頃からアンダルシア地方に定住したジプシーたちによって、生み出されていったものだと言われています。

日本では、黒いドレスに赤いバラをくわえて踊る人をイメージしたり、踊りの種類のひとつ、と思う人が多いかもしれません。けれど、フラメンコとは歌と踊りとギターが融合されて生み出されるもの。そして、詩と音楽と踊りを通して生きる喜び、苦しみなどを表現している。

日本におけるフラメンコ教室や生徒の数は、世界でも群を抜いて多いそうだ。

フラメンコのみの衣装を扱う専門店は日本でも数が少なく、『ソニアジョーンズ』のように、自分たちで工場を持ち、衣装をつくっている会社はほとんどないそう。

10 どういう経緯でフラメンコ専門店をはじめることになったのだろう。代表の村松さんに話を伺う。

「もともとはずっと広告代理店をやっていました。僕の妻がフラメンコを習っていたことがきっかけとなり、事業のひとつとして12年前から、フラメンコ衣装の専門店『ソニアジョーンズ』をはじめました。その当時はサイズも日本人には合わないものが多く、日本人の踊りのニーズにマッチする衣装が少ないように感じていました。」

01 そもそもフラメンコの衣装は、日本とスペインでは用途が異なるもの。日本では舞台のために着ることがほとんどだけれど、スペインでは、三大祭りのひとつでもある『フェリア』というお祭りのに向けてつくられる衣装のことだそう。

「はじめた頃は、スペインで買い付けたものを販売していました。けれど、やはりそれは、スペイン人に向けたもので、日本人の体形や肌の色、容姿などにマッチしていませんでした。また、スペインでは伝統あるお祭りで衣装として着るためのもですが、日本では、舞台の上で激しく踊ることもあります。機能的にも求められる形が違ったんです。」

そして、縫製も日本人の求める品質に合わないところがあった。スペインのアトリエには日本の裁縫道具を導入するなどして、少しずつ縫製技術を高めた。7年前からはベトナムに自社の工場を構えるようになる。現在はベトナムでの製造が7割ほど。

「縫製技術が高いことから、ベトナムに工場を設けました。フラメンコの衣装は上半身と体のラインをぴたりと合わせなといけません。ベトナムの民族衣装アオザイも、体のラインがでる衣装です。腕だけで5カ所ほど採寸してつくったりするんです。採寸や縫製に細やかさがあり、衣装制作に適応できると感じました。」

1 それまでは、仕入れたものを販売することがメインだったけれど、自分たちで製造機能を持つことで、オリジナルの衣装をつくり、お客さんからのオーダーを受けて、きめ細かな要望に対応した衣装をつくれるようになった。衣装のデザインの幅も、品質も高まっていった。

「プロの踊り手でもない限り、舞台に上がるのって、年に一度か二度です。フラメンコって1曲踊れるようになるのに、1年かかったりします。みなさんそれなりの時間と熱意をかけて取り組んでいる。その舞台をいいものにするために、僕たちは衣装という形から支えていこうと思っています。」

ソニアジョーンズは、本場スペインの伝統性も押さえつつ、現代の美意識やトレンドも大切にしながら衣装づくりをしている。日本人女性ならではの感性に届くような衣装を生み出し、フラメンコの中にモードをつくりだしている。

実際にわたしも試着させてもらったのだけど、色の組み合わせも日本の感覚ではなかなか思いつかないようなものや、独特な生地や素材の組み合わせが印象的だった。けれど、袖のフリルの裏の部分にはしっかり当て布が施されていたり、とても着心地が良かった。

13 次に、4年前に入社し、現在、東京店の店長を勤めている中條さんにもお話を伺った。中條さんは入社をきっかけにフラメンコをはじめたそう。どういう経緯でこの会社に入ったのだろうか。

「もともと長くできる趣味がなにか欲しいなと思っていました。家の近くで、偶然フラメンコをみる機会があったんです。そのとき、ご年配の女性が舞台の上でスカートを思いっきり振って踊っている姿をみて、すごく迫力があってかっこよかったんです。それからずっとフラメンコをやってみたいと思っていました。」

けれど、なかなかフラメンコをはじめるきっかけがなかった。

「それまではブライダル関係の商品企画などをしていました。転職を考えているタイミングで、この仕事をみつけて、これはフラメンコをはじめるチャンスかもしれないと思い、飛び込みました。」

入社して半年後、教室を紹介してもらいフラメンコをはじめたそう。こんな変化があったそうだ。

2 「部屋のインテリアがかなり変わりました。昔は白を基調としたインテリアだったんです。けれど、お店がすごく華やかなので、家に帰ると物足りないんですね。それと、フラメンコをはじめてから、気の合う友人が増えました。仕事もちゃんとしている上で、趣味として楽しんでいる人が多いので、面白い人がたくさんいます。」

その後、2年ほど販売職を経験し、現在は東京店の店長として店舗のマネジメントや、ベトナムの工場とのやりとりをしている。

15 日本でも数少ないフラメンコ衣装専門店。だからこそ教室の先生やプロダンサーの方たちも通ってくるそうだ。最初はフラメンコの知識も十分ではないのに不安ではなかったのでしょうか。

「わからないことだらけでした。フラメンコって、どんな曲目で踊るかによっても、衣装が変わってくるんです。悲しい歌のときはこの衣装が向いている、明るい曲にはこういうもの、というものがあります。そういうことも全くわからなかったので、はじめは提案することが大変でした。けれど、舞台を観にいったり、動画で曲と衣装をみたり、自分なりに覚えていきましたね。」

接客販売職の仕事は、お店に来た方の衣装選びのお手伝いやオーダーを受けることがメイン。オーダーって例えばどんなことがあるんだろう。

「例えば、この衣装がいいんだけど、どうしても肩のデザインを変えたい。というお客さまがいらっしゃいます。そういうときには、いくつかのパターンの中から好みの形を選んでもらい、納期を確認して、仕上がりの日をお伝えします。」

14 「舞台上で大人数で踊るための衣装もあります。そういうときは、踊るメンバーにあわせてサイズなどの調整をおこなったり、大きな舞台でソリストとして踊るアーティストにたいしては、舞台上での世界観を伺って、そのイメージを衣装に反映していきます。ご試着いただいて採寸したり、衣装以外の話も聞きながらオーダーをお受けしています。一人のお客さまと関わる時間は普通の洋服屋さんよりも長いですね。」

やっぱり、衣装って一度にたくさん買うものではないからこそ、お客さんもじっくり選ぶのだろうな。

どういう人が向いていると思いますか?

「知識よりも、人柄が大事になってくると思います。プロからセミプロ、初心者の方まで、フラメンコの踊り手といってもさまざまな方がいます。一人ひとりといろんな話をしながら、似合う色を提案したり、好みを引き出せる方が大切になってきますね。」

「オーダーを受けるときは、工場の生産状況をふまえながら、納期を決めていきます。時間配分を考えながら、万が一のことがあっても対応できる余裕を考えてオーダーを受けられるような、マネージメント能力がある人がいいですね。」

接客販売以外にも、お店のヴィジュアルを一緒に考えたり、店舗のコーディネートにも興味がある人も歓迎だそうです。

アシスタント職は、生地確認、工場へのデザイン発注、検品、電話やメールでの受注の再確認、お直し、コーディネート提案、次シーズンへの新しいイメージ創出など、接客販売職をサポートする役割となる。

接客販売職、接客アシスタント職、どちらの職種にしても、チームワークが大切になってくるそう。頼まれたものをただつくる、というよりは、お客さまに届いて来てもらうまでを自分で考えながらつくっていくことになるんだと思う。

17 はじめはわからないことも多いと思う。まずは中條さんなどの先輩方の仕事につきながら、業務を覚えていき、ある程度仕事がわかるようになってきたら、自分からいろいろ提案することができる環境だと思います。

最後に、ソニアジョーンズらしいなと感じた、代表の村松さんの印象的な言葉を紹介します。

「スペインは光と影の国と言われています。スペインってものすごく日差しが強いんです。だからこそ影がすごく濃くなる。自分たちのことを『影』とはいいませんが、舞台に上がる人たちが『光』だとしたら、その光をしっかり支えていく存在でありたいと思っています。」

華やかさを支える衣装の仕事。フラメンコをまったく知らなかった方こそ、飛び込むチャンスだと思います。

(2014/08/8 吉尾萌実)