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誰に、なにを、どう届けるのか。生産者や消費者のことを考え、一つひとつに理由をもってものづくりをしていく。
『途上国から世界に通用するブランドをつくる。』ことをミッションに掲げ、バッグや服飾小物を生み出している、株式会社マザーハウス。
マザーハウスは、代表兼デザイナーの山口絵理子さんが発展途上国を訪れ、途上国の現状を知ったことをきっかけに、2006年に立ち上げた会社。
“かわいそう”だからではなく、“ものとして魅力的”なものを途上国の人や資源の力によって生産し、日本と台湾をあわせ、19店舗の直営店で販売している。

今回は、WEBによるブランドのプロモーションやオンラインストアの運営を担当 するWEBディレクターと、ブランドの販促物をディレクションし て制作してい く、アートディレクター・グラフィックデザイナーを募集します。
たとえばWEBディレクターであれば、ひとつの製品プロモーションの企画から、売り上げ・顧客の分析まで関わったり、アートディレクターであれば生産者が伝えたかったことを直接聞いてデザイン物に取り入れることもある。
生産から販売までおこなうメーカーであるからこそ、全体を見ることができるし、自分の行動がどう結果につながったのか、ダイレクトに実感できる環境です。

責任をもって製品を届けるために、委託での販売などはせず、ほぼすべてを直営店とオンラインショップのみで販売している。会社を立ち上げてから8年、セールなども一切おこなっていないそうだ。
“援助や寄付”ではなく、途上国の資源をつかって、先進国で通用する製品をつくりだす。そして、マザーハウスの製品を通して正当な利益を還元する。代表の山口さんがそう決意してから、さまざまな困難を乗り越えて今のマザーハウスがある。
マザーハウス設立までの道のりは、ぜひこの『マザーハウスストーリー』を読んでみてください。
今回は、本店に隣接している事務所でお話を伺いました。
お店やWEBサイトの印象から、ゆったりとしたオフィスを想像していたのだけど、オフィスの中は15名前後の社員やインターンが近い距離で仕事をしていた。

お話を聞いたのは、WEB・ADチームのWEBディレクター神村さんとアートディレクター竹村さん。
まずはWEBディレクターの神村さんにお話を伺いました。
マザーハウスというと、発展途上国や開発学に興味のある人が多いイメージがあるけれど、神村さんはどういう経緯で働くことになったのでしょうか。
「僕はもともとWEBの企画や制作をする会社で働いていました。前職ではモノをつくって、納品をして、公開という流れがあって、つくること自体は面白い。けど、その後がわからなかったんです。」
その後ですか?
「どういう人に届いていて、どのくらいの人が見ているのか。いつかはちゃんと数字も見て、知ることができる、運用する側になりたいという思いがありました。」

「主に『ブランドメッセージを伝える』ことを担っている仕事です。そのためには2つ方法があって、1つはWEBサイトを通じて、そしてもう1つが製品の販売を通じてメッセージを伝えるというやり方があります。」
たとえば、WEBサイトを通じてメッセージを伝えるというところではどんなことをしているのですか?
「今後の新製品の発売やイベント情報、生産地の物語など、様々な情報を把握していきます。そして、それらの情報をWEBサイトを通じてどのような優先順位と組み合わせでお客さまにお届けするのかを考えていきます。」

そして、メールマガジンやプロモーションページ、記事などを公開する前には、内容をすべて確認する。
「内容をチェックするということは、その施策のことをしっかり理解しないとできないですよね。なので、誰に何を伝えるために、どういうことをやるのか、企画打ち合わせの段階からコミットすることもたくさんあります。」
そのため、とにかく人と話したり、調整することが多くなる。
また、オンラインストアでの販売に関しては、オンラインストアの売上の把握や顧客属性の分析をおこなっている。
「それに、WEBディレクターですが、直接お客さまと会って、製品開発をすることもあるんですよ。」
それが座談会というものだそう。
最近では、働きながら資格取得などスクールに通う働く女性向けに“どんなバッグがあったらいいか”や“こうだったらいいのに”という要望を形にした製品を開発したばかり。

企画からディレクションまで、マザーハウスとしてどう情報を伝えていくか。そして、製品をお客さまに届けるために、どう販売していくかというところを、他のスタッフと調整したり、WEBサイトをつくることで実現していく。
どういう人が向いていると思いますか?
「バッグにはシーズンがあるので、常に先を見越してプロモーションを考えていきます。なので、制作会社でディレクターをやっていた人だったり、オンラインストアでプロデューサーのような、全体を考えながら仕事を進めてきた経験や、役割だった人に向いている仕事だと思います。業務が多岐に渡るので、自分はこれしかやりませんという人や、頭しか使わない・手しか動かさないという人は難しいですね。」
日本、バングラデシュ、ネパールなどのスタッフが一丸となってつくった製品や、それまでのストーリーなどの情報をお客さまに自然と伝わるように考えたり、マザーハウスの製品をお客さまに届けるまでの骨組みをしっかりつくっていく役割なんだと思う。
つぎに、アートディレクターの竹村さんの話を聞いてみる。
竹村さんは広告業界からマザーハウスに転職してきたそう。
普段はどんな仕事をしているんですか?

「WEBサイトのデザインもするのですが、WEBは店舗に来られない人が見てくださることが多いですよね。なので、製品のよさがしっかり伝わるように紹介する方法を、写真の撮り方だったりデザインから考えていきます。」
企画から関わってカタログづくりや、販促物、オンラインストアの製品撮影まで、ブランドの魅力を伝えるためにさまざまな制作物をつくっていく。
「カタログづくりも、わたしがただデザインするだけではなくて、店長たちと一緒につくるんです。」
週に一度、店長さんたちが集まる会議があるそう。そのときに制作中のカタログを見てもらい、どこにこの製品写真を配置したら効果的かなど、直接お客さまに説明したり、渡すときのことをイメージしてもらいながら意見をもらうそうだ。
「カタログ全体にしても、写真の配置ひとつにしても、どうしてそこなのか、それをつくるのか、しっかりわかった状態で進めていけます。つくっている意味がわかるんです。」

以前の広告業界と、いまと、つくるものや考え方は変わりましたか?
「前職ではいろんなクライアントと仕事をしていたので、テイストも案件によって異なったし、サイクルも早かったんです。マザーハウスでは、マザーハウスらしい表現ってなんだろうというところを考えながら毎回作れるので、次につながる仕事ができます。メーカーだからといって表現の幅が狭くなるわけではなく、目的に合っていてブランドらしさがあれば、むしろ新しい表現を試してみることができます。」
「なのでチャレンジして広げようと思えば、いくらでもできるし、メーカーだからこそ、自分から『こんなテイストはどうだろう?』と提案することができるんです。なので、より深めながら広げていきたい、そういう視点がある方と一緒に働きたいなと思います。」
製品のもっている力や、生産地のストーリー、お店の個性などをしっかりと引き出すことでブランドの魅力を伝えるのがアートディレクターの役割。

ものづくりに関わってきた2人だからこそ、マザーハウスの一つひとつに理由をもってものをつくり出していくところに惹かれたんだろうな。
社内では、途上国を訪れて何かしたいと感じた人や、開発学を学んできた人も多いそうだ。
さまざまなバックグラウンドをもった人が多く、バングラデシュなどで現地の人と働く駐在スタッフなども日本に帰ってきている期間は、このオフィスで肩を並べて働いている。
「だからですかね、本当に人が面白いし、いい意味で変な人が多いんです。」と笑って教えてくれた。
日本での新店舗も下北沢、舞浜とオープンしたばかりのマザーハウス。
これからどうなっていくんでしょう。
アートディレクターの竹村さんがこう話してくれました。
「会社の新しい取り組みとして、その土地にしかない、伝統的な手工芸をこれからどうやって将来に残していこうかということを考えています。そういうものって、生産効率を考えるととても時間と手間がかかるんです。けれど、そういう手法を取り入れても、ちゃんと製品がつくれるようになってきました。うちの会社や理念があるからこそできることだと思っています。企業としての体力もついてきたので、これからもっと面白くなりますよ。」

マザーハウスでは、誰が、どうして、誰のためにつくるのかをしっかりと感じることができる製品が生み出されている。さらに、製品だけではなく、働き方を通してもそれを感じることができる職場だと感じました。
(2014/08/01 吉尾萌実)