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水辺のまちの六角堂

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

富山県射水(いみず)市の新湊地区は、日本海に面しておだやかで風光明媚な地域です。

一帯を流れる内川(うちかわ)のほとりに1年半前、古い木造建築を改装した1軒のカフェができました。週末には大勢のお客さんでにぎわう、人気店のスタッフを募集します。

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初めて訪れたそのまちは、神社や寺、曳山(ひきやま)の蔵など、歴史あるものが日常の暮らしに寄りそってたくさん残っていた。格式ばった空気ではなく、ただようのは潮の香りとのんびりした空気。

やさしい雰囲気の源が、まちをゆったり流れる内川だ。起源は奈良時代。千年も昔からこの流れを保っているというから驚く。

迷路のような町家の並びを進むと、気さくに話しかけてくる人が多い。

ほどなく、内川に抜ける路地の正面に「カフェuchikawa 六角堂」(以下、六角堂)が現れた。

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印象的な外観を持つ、元畳屋の建物だ。オーナーの明石博之さんは、広島県尾道市出身の43歳。

妻の故郷である富山市に4年前、Iターンでやって来た。

「それまでの16年は、東京でまちおこしのプロデュースを手がけていました。まちづくりに足りない情報、場所、モノ、人は、すでにその土地に用意されていることが多いです。僕の仕事はそれを見つけ、足りない隙間にあてはめることです。」

カフェをはじめたのも、まちに賑わいを生む拠点をつくろう、との発想からだ。

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六角堂には、いくつかルールがある。まず「13歳未満は入れない」という年齢制限。まちに人を呼ぶ目的なのに、お客さんの層を狭めるのでは?

「店のコンセプトを考えるとき、かなりイメージを絞ったんです。郊外型のレストランやカフェは、多くのママさんたちがお子さんを連れてくる場になっている。たまには、子ども抜きで大人だけでゆっくりすごしたい需要もあるだろうと、この空間を提案したんです。」

女性客が9割以上。それなのに、女性の店員はいないんですね。

「多くのカフェは圧倒的に店員が女性だし、特に地方はそう。でも、女性どうしがくつろいで時をすごすとき、男性にサーブしてもらうほうが、かえって気を使わない場合もあるかもしれないと気づきました。」

R13、ペット不可、完全禁煙(店内に喫煙ブースがある)。その制約が、目の前を流れる内川のように落ち着いた空間を生んでいる。

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「店内のBGMは、知人の選曲家に選んでもらっています。春、夏の前半と後半、秋と冬、5つの季節を昼と夜にわけて、10パターンでつくってもらうんです。彼になぜそうしたかきいてみたら、窓からすごく季節の変化がわかりやすいからだと。」

メニューのコンセプトは「オーガニックコーヒーとサンドイッチの美味しい店」だ。おしながきは、こちらのページ

「私自身が過度の化学物質過敏症で、外食がつらいんです。同じ人も少なからずいらっしゃると思って、可能な限り有機の食材を選び、無添加で出すように心がけています。」

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人手が足りず、土日にひたすら皿洗いすることもある明石さん。オーナー業以外に、東京と富山に拠点を置く「地域交流センター企画」代表の顔がある。

「僕は二代目ですが、前の代表がやってたこととまるで違うことをやっています。」

この六角堂の運営も、古い建物の魅力をまちづくりにいかす「マチザイノオト」という事業の一環だ。

1995年から「水辺のまちづくり」という活動にも取り組んでいる。

「10人乗りのゴム製ボートのインストラクターを、僕たちが全国いろんな川で指導して育てるんです。水面からあらためて自分たちのまちを見てみると、たのしいですよ。そのうち、川に季節を感じたり、川が汚ないと気づいたり、いろんな発見があるんですね。」

六角堂では「夜寄るカフェ」と名づけた活動も催している。

夜寄るカフェ_六角堂での勉強会s

「コーヒーのカッピング教室のようなイベントのほかに、地域で活動している人を呼ぶんです。瓦職人であれば、そもそも瓦をどうやって屋根に載せるのかとか、地域によって瓦が違うんだ、といった話がおもしろくて。身近な人が考えと仕事をみんなで学ぶ機会です。」

この日は夕方から『itona(いとな)』というコミュニティ誌の編集会議が行われていた。

編集長は明石あおいさん。博之さんの奥さんだ。デザインやまちづくり関係の仕事をするかたわら、雑誌を発行している。メンバーはIターンやUターンで富山に在住する、18人の女性たち。

地域の情報をカフェで共有する博之さんに対して、あおいさんは地域の情報を県外に発信していくことを考える。

なんとなく、男性グループと女性グループにわかれた活動も、夫婦で刺激しあうおもしろいバランスだ。

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「私も日本の地方へ行く仕事をしていたので、いろんな地域でおもしろさを実感しました。『あれ、私の故郷である富山って。嫌で出たけどどうなのかな?』と戻ってきたら、あまりにも宝の山で。それを伝えようと、帰ってきてから出あった人、昔から知っている人たちを集めて、仲間になってもらったんです。」

内川のことは、隣りの富山市に住んでいても知らなかった。

「こんな素敵なところがあったのかと衝撃を受けて。夫婦で歩きはじめたら、とてもおもしろい。そのうちこの建物に出あったんですね。いろんなご縁のおかげでカフェをオープンできましたが、ガクちゃんとの出会いがなかったら、このカフェはなかったと思います。」

ガクちゃんとは、店長の吉田 岳(たけし)さん。

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編集会議の席に食事が運ばれる。六角堂の町名から名前をとった「荒屋(あらや)カレー」だ。

吉田さんに解説してもらう。

「スパイスを使ってどの世代にも受け入れられるカレーをつくるのは難しいです。試作段階でカレー通にいろいろ試食してもらったあげく、10代、20代の子と50代の人に食べてもらったら、マズいと(笑)。あんときはキツかった。改良していまは美味しいと言ってもらえます。」

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最初はさほどスパイスを感じないのに、あとから味わいが広がってじんわり身体があったかくなってくる。とっても美味しいですよ。

「射水はカレー屋がとにかく多いんですよ。『射水カレー戦争』って言われるくらい。隣りの高岡に『ザイカ・カレーハウス』という店があるんですが、そこのシェフはパキスタンで星三つ持ってるらしいです。」

こんな感じで、地域の情報がどんどんシェアされていくんだな。

翌朝、開店準備をしている吉田さんをたずねた。

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「僕の住まいは、隣りの高岡市にある伏木というまちです。」

「1回外へ出て、地元の魅力を再発見して地元に戻ってがんばる人はいますけど、僕はずーっと地元。それでいて地元好きみたいな人は、逆に少ないです。」

学生時代はバスケに打ちこんだ吉田さん。社会経験豊富な35歳。見た目から、もう少し若いと思ってました。

「やってきた仕事はかなり多いです。美容師からはじまって、そのあと現金輸送をやりながらバイトを3つかけもちして。二十歳くらいから飲食に携わりだして、気づいたら本業になっていました。」

六角堂の話がきたとき、周りに反対されたという。

「立地も悪いし、駐車場の台数もそんなにない。しかも、こんな町家の並びの中にあって流行らないだろうと。」

それでも引き受けたのは?

「この建物が『この地域のカギになる』というのは、なんとなくわかりましたから。1年前と比べたら集客が2倍になってます。富山市や県外からのお客さんも多いですね。」

昨夜のカレー、美味しかったです。新しく採用された人も一緒にメニューを開発できますか?

「もちろん。みんなが自分のつくりたいものをつくればいいです。この店でいちばん誇れるのは、素材の良さです。料理人として調理したものを『美味しいね』と言われることはありましたが、その垣根を越えた『素材がよくて美味しいね、どの農家がつくってるの?』というところに近づきたいです。」

六角堂のメニューには、生産者の説明、食材へのこだわりが書き添えられている。

「ほとんどの生産者、つくり手に会いに行きます。体験できるなら一緒に仕事したりとか、収穫したり。そういうことがおもしろいと感じられる人に来てほしいですね。生産者の考えていることや想い、苦労とかも一本の線でつなげて伝えられる人がいいです。」

前職での経験は必要ですか?

「ぜんぜん、必要ないですね。」

高校卒業したてというケースでも大丈夫?

「僕はまったく構わないです。それよりもこのカフェで大事なのは、人に興味を持つこと。遠慮がちじゃなくて、ちょっとお節介なくらいが土地柄的にもちょうどいいです(笑)」

内川の魅力をどこに感じますか?

「商店街がちゃんと生きてるところかな。まだ八百屋さんとかお肉屋さんとかあったでしょう。安いものを買おうと思ったらクルマでスーパーに行けるのに、そこでみんな買い物するんですよね。」

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最後に明石さん。なりたい理想には近づいていますか。

「まちに賑わいをつくるという理想には、かなり近づけました。川のそばにこんなカフェもあるというきっかけで内川が注目されはじめて、ここを歩く人も増えたね、となりたかったんです。」

富山は新幹線の開業も来年に控えているし、盛り上がりそうですね。

「近くにお店を出したい人はいます。ところが、内川沿いはちょっと人気が出てきて空き家がないんですよ。完全な空き家ではなく、普段は住民が近くの大きな都市に住んでいて人がいない家も増えています。」

物件の斡旋をする人がいたらいいのに。

「いまからまさに、そういうことがやりたいです。」

お、言ってみれば “内川R不動産” 的な。

「古民家に特化したマーケットをつくりたいなと思っているんですね。六角堂は、古民家活用のモデルハウスでもあるんです。」

今回はカフェスタッフの募集だけど、こうした明石さんの動きに関心を持つような人が求められているようだ。

「たとえば、カフェの2階でなにかやっているでしょう。『自分に関係ないや』というスタッフよりも、楽しそうだからと、思わず水を何回も注ぎに来たりする人がいいな(笑)。そういう好奇心を持っていて、いろんなことを学びたい人がいいです。」

前職は問われないですか。

「まったく問わないし、学歴も問いません。とにかく、伝えよう、なにか知ろう、という気持ちがにじみでてる人を待ってます。フォームにネットで検索したフレーズがそのまま載ってるような文章は嫌ですから、じっくりと思いをつづった応募をたのしみにしています。」

(2014/8/6 神吉弘邦)