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どこでも、安く、簡単に手に入れられる商品。便利で利用することがあるけれど、どこか味気ない。そんな中、相手を想って丁寧につくられたものに触れると、自然と嬉しさがこみ上げてくるような感覚があります。
今回訪ねたのは、住まい手と向き合い、手間をかけて家づくりをしている会社です。素材にこだわった新築住宅をつくっています。

取材をして驚いたのが、親子に渡って依頼されることが多かったり、施主がこの会社に就職したりしていること。
お客さんから信頼され、本当の意味で地域に根付いた会社なんだと思います。
お客さんと真っ直ぐに向き合うからこそ、正直に仕事ができる環境がありました。
熊本県熊本市。
「森の都」または「水の都」とも呼ばれ、阿蘇山から恩恵を受ける自然豊かな街。水道水は全て地下水だという。
一方で、人口は約74万人と、九州では3番目に人口の多い街でもある。
中心地には百貨店やショップが建ち並び、買い物に困ることはなさそうだった。
車さえあれば、とても住みよいところだと思う。

この日は、事務所近くのモデルハウス「すまいの森」を訪ねた。
すまいの森に到着すると、敷地内にある畑で親子連れがミニトマトを採っていた。
打ち合わせに来ているお客さんのようだ。

その考えのもと、家づくりだけでなく、お客さんとの関わり方についても日々向き合う。
モデルルームの敷地内の畑は、訪れたお客さんに耕した畑で収穫をして楽しんでもらおうと、スタッフが考えたもの。
この他にも、お客さんの子どもの誕生日に打ち合わせが重なれば、みんなでハッピーバースデイを歌って花を渡し、一緒にお祝いすることがあるという。
こうした取り組みは、社員それぞれが考えて実行している。
「『おめでとう!』と言うことって、なかなかないと思うんです。お子さまの誕生日でも、お家のお引き渡しでも、祝う機会に自分も立ち会えるのが嬉しいですね。」
そう話すのは、入社2年目の山口さん。コーディネーターとして内装デザインを担当している。

もともとは全くの未経験。はじめの半年はコーディネーターの勉強をしながら総務を担当していた。
「これまで何棟かお引き渡しもさせていただいて、仕事の流れが大体わかるようになってきたかなっていうところです。いまでも毎日勉強をしないといけないですね。」
どんな雰囲気の職場ですか。
「来る前は、ピシっとしてパソコンを目の前にするイメージでしたけど、アットホームな感じです。うちは女性が多くて、全スタッフ20人のうち14人が女性なんです。じめっと空気はなくて、ワイワイしていますね。」
「明るい人がいいかも。お客さんと接する機会も多いですからね。それとまだ人数の少ない会社なので、みんながワンフロアで一緒に仕事をしている中でひとりだけ落ち込んでいたりすると、他の人にも影響するんです。笑顔で仕事を楽める方がいいですね。」

「この前は山でキャンプをして、今度は浜で地引き網をします。1年を通して、いろんなイベントを開催しているんです。」
一見楽しそうだけど、企画から準備、当日の運営まで全て自分たちでやらなきゃいけない、ということ。
すまい工房では主体性のある動きが、いろんな場面で求められる。
「けっこう大変ですね。普段の自分の仕事以外にイベントの企画運営をしたり、お客さまのための取り組みを考えたり。いつでも新しいことが降りかかってくる会社なので、それに追いついていくのが大変でもあります。」

そんなお客さんたちは、みんなすまい工房に共感している人たち。
分別なく営業をかけることはせず、会社の考えに共感してくれた人たちと話をしている。
はじめから合わない人とのミスマッチで困る状況はなくなるし、クレームは少なくなるだろうと思う。
一方で、家の「よさ」を分かっているお客さんだから、要望のハードルは自然と上がってくる。
「お客さまが求めていることって高いんです。そこについていかなきゃいけないので、前向きでなきゃ。」
それに応えることで更なる信頼を得ている。
「親子に渡ってお付き合いいただけるお客さまが多いです。10年以上も前に家づくりをした方の、当時小学生だったお子さまが成人されてから新居をご依頼いただいたり。今年に入ってわたしが担当した案件だけでも、3件あります。」

取締役工事部長の碇さんに話を伺う。
碇さんはすまい工房立ち上げ当初からのスタッフ。この会社の小山社長とは20年以上の付き合いだという。

数年前、碇さんが担当した住宅での話。
工事は順調に進み、外壁を塗り終えたときのこと。施主が希望した通りの色だけど、実際にできあがったものを見ると違和感があったという。隣で一緒に見ていた施主さんも、同じことを感じている様子。
そこで無視したり、契約したからと突っぱねることもできるけど、碇さんは会社負担で全部の外壁を塗装し直した。
「会社負担なので、当然怒られますよ。でも、お客さまがその後一生後悔して家で暮らすようになってしまうのであれば、会社の費用をかけてでも満足していただけるような家づくりをしていきたいんです。」
でも、実際に現場にいたら正直に話すことって難しいかもしれない。
工期が遅れれば、お金のことだけでなく、家づくりに関わる様々な職人さんたちに迷惑がかかることなど、いろんなことを考えてしまうと思う。
「職人さんたちも分かってくれる人たちです。お客さまと向き合うことって大変ですけど、あとになって良かったと思えます。」

熊本では昔から良木の産地として知られていた人吉・球磨の木材。母体会社の自社工場で生産されている。
含水率の最適な時期に木を伐採して、枝葉を付けたまま天然乾燥。時間をかけることで、香りや色つやのいい木材に仕上がる。
すまい工房ではこんな木材で家づくりをしている。
「地域で育った木材を使って地域の家をつくることに、非常に大きな価値がある。それは経済的なこともあるし、お客様の安心感にもつながっている部分でもあるんです。」
モデルハウスもこの木材を使ってつくられている。
壁は珪藻土で天井は和紙クロス。他にも自然素材のものが使われている。
「木材、構造部材、施工に関しても、いろんなものに手間ひまかけています。素材のよさといったところも、会社のひとつの魅力だと思っています。」

現場監督と積算担当者は、ここでどんな仕事をするのだろう。
「工事で現場監督が管理するのは、お客様とのお付き合い、品質、工程、安全の4つです。現場職人さんには、工程や材質とか、そういったものづくりを指導していきますし、上棟式や基礎の説明の際には、お客さまとお会いします。」
「積算担当は、いわゆる積算見積もりに関する全般の業務です。お客様の予算に合わせた図面プランが設計から出てきますので、わたしが最終チェックをする前の建物全体の原価計算をしてもらったりします。」
どんな人が向いていますか。
「特に現場監督は前向きでないと務まらないですね。建築業界は法律も商品も新しいものがどんどん出ますし、常に前向きに勉強できないと続かないです。」
「お預かりしているものは、お客さまが一生大事にされるもの。大きなコストもかかるし、お客さまの夢も詰まっている。単純に図面通りにつくるのも大切だけど、よい提案をしていかないとお客さまとは上手く付き合っていけない。経験がなくても頑張っているスタッフもいっぱいいるし、一緒に勉強していければと思います。」
碇さんは、自分自身も「一生勉強なんだ」と話す。
途方もなく聞こえるかもしれないけど、それってどんな仕事であっても言えることだと思う。
仕事を日々更新していかないと、気づいた時にはその時代に合わないものになっている可能性がある。

その取り組みのひとつとして、今年6月にはドイツの高級家電「ミーレ」の代理店を熊本にオープンした。
「今から切り替えが必要です。社員のレベルもそれに合わせていかなきゃいけない。接客マナーのセミナーに参加したり、お茶を習ったり、スタッフの知識を上げていくために少しずつやってます。そういうことも楽しんでもらえたらいいですね。」

それらが全てそろって、すまい工房の家はつくられる。
お客さんと真正面に向き合うことは大変だけれど、今後生き残っていくのはこうした家づくりができる会社なんだと思う。
まずは、すまい工房の家が好きになれそうか見てください。実際に熊本を訪ね、肌で感じるのもいいと思います。
最後に、碇さん。
「この業界はキツい仕事だと思うし、一生に一度のすまいづくりにお付き合いするのも大変なことです。でもそこでの楽しさがあります。やっぱり楽しく仕事をしたいなって思います。わたしも努力している最中です。ぜひ楽しく前向きに仕事をできる人に来ていただきたいですね。」
(2014/8/11 森田曜光)