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異文化への好奇心

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マーケティングリサーチ会社のTNCは、海外で生活する日本人女性によるネットワークをもつ企業。ライフスタイル・リサーチャーと呼ばれる約500人の知見を武器に、日本企業の海外進出や、新しい商品・サービスの開発をサポートしています。

大江戸線「牛込神楽坂」駅を出ると、目の前に袖摺坂(そですりざか)という名の階段がある。かつては料亭街だった名残りをあちこちに感じる街だ。

00 階段を上るとあるのが、TNCのオフィス。駅から1分という便利な立地には、多くの人が訪れやすくする理由もあるのだろう。

社長は小祝誉士夫さん、41歳。東京の大学卒業後、故郷の茨城県に就職したが、1年後にはインドネシアに移住して、5年ほどスパを経営した。帰国後に広告マーケティング、ウェブサイトの制作に携わった経歴を持つ。

01 最初は地方に戻って、海外にわたってから、東京に就職というのはユニークな流れですね。

「海外で仕事をしてわかったことなんですが、海外で誇れる日本のモノや場所って、地方にあることのほうが多い気がします。これからは会社としてそこに注力したいと思っています。ただ、現在のビジネスパートナーは東京の企業がメインなので、東京を中心にして海外と仕事をしています。それも少しずつ変わってはきていますが。」

会社の創業が2004年だから、今年で10年目。現在のスタッフは7名だ。

「初期のメンバーは、私と会長の村上という女性です。彼女との出会いで就職したのが業界に入ったきっかけですね。創業5年くらいで私が社長になって、ここまでずっときました。」

事業について教えてください。

「ライフスタイルリサーチャーという海外日本人ネットワークが私たちの資産です。その海外からの情報を、いろんな手口や方向性で出していきます。」

2007年のブランド立ち上げ当初から関わっているのが、その土地の風土や素材の活かしかたといった、世界各国のお母さんの知恵から開発される人気飲料シリーズ。

013 この仕事では、何をしているんですか?

「このブランドは、海外のお母さんの知恵をヒントに商品開発しているのですが、僕らは海外のお母さんたちとメーカーさんをつなぐ仕事をしています。開発段階で必ず現地を旅して、きちんと取材をしています。そのコーディネート全般をお手伝いさせていただいています。」

これは、海外の伝統的な食文化や地元の知恵を持ってくる例。ほかの業種だと、欧米の最新トレンドをヒントにするケースも多い。

「昨年はパンケーキが一気にブレイクしました。よく聞かれるのが『パンケーキの次は何か』という質問。そのためにニューヨークの流行とか、日本はどのような状況か、といった情報を集めます。場合によっては中東など、独自の文化圏から探すときもありますね。家電とか食でもコスメでもそうです。」

TNCのサイト「ライフスタイルリサーチャー」では「ポップコーンの香りを楽しめる新感覚ゲームが人気を集めている」といった海外のトレンド情報を、ニュース記事として紹介している。

こうした話題がきっかけで、クライアントから連絡がくることもありそうだ。最近は、自治体が海外に進出するための相談や、インバウンド(外国人観光客)を日本に呼ぶための相談も増えている。

「海外の情報を単純に紹介したり、コーディネートとか、翻訳とか、通訳とかするのはいろんな会社でもできると思うんです。それだけでない、海外情報をディレクションしたりプロデュースしたりできるのが僕らの強みです。」

この仕事のポイントは、海外の「生の情報」にどう価値をつけていくか。

「僕らが海外に行くときは必ず現地の方々に会います。リサーチャーを単なる情報源として付きあってはいないです。結局、僕らの仕事は人のつながりが基本。だからみんな人が好きですし。」

12 この日の午後には、一時帰国中のインドネシアとエジプトに住んでいるリサーチャーがオフィスに来る予定が入っていた。

「先日も神楽坂の居酒屋で『アジア交流会』がありました。在東京のアジア人と、アジアでビジネスをやっている人、それから僕は多摩大学で『アジア若者マーケティング論』を教えているのでそこの学生が集まりました。」

プロデューサーの木下 朋さんは34歳。創業まもなく参加した古参メンバーで取締役だ。

11 前職のデザイン事務所を辞めたあと、木下さんが「この機会に日本をしっかり見よう」と原付を買って、日本中をテント持参で旅したときのこと。温泉地で片言で話しかけて来たのが小祝さんだった。

「僕がすごい長髪だったので、日本人じゃないんじゃないかと思ったらしい(笑)。それで『やっていた仕事が近いね』といった話をして、『東京戻ってきたら遊びにおいでよ』と連絡先を交換したんです。」

02 当時はソーシャルという言葉はなかっただろうけど、旅先でのいいエピソードだ。木下さんがTNCに入社するのは、その2年後。

「それまで、行く先々で連絡して『台湾にいるんだけど、どこ行ったらいい?』とか、おすすめのポイントを聞いてましたね。」

いまの仕事の流れを少し。

「リサーチにもいろいろ種類があると思いますが、たとえばデジカメ。アジアでも中間層が増えて、写真を撮ることの関心が上がってきました。日本製のカメラにはステータスがあるから、売れるようになってくる。実際にはどういう人たちが買っていて、何を撮っていて、それで何をしているかという部分をメーカーさんは情報として把握したがっています。」

「リサーチをするうちに『こういうキャンペーンを打てばいい』という提案もできるので、そこは企画の仕事です。インドネシアではSNSがとても普及しているので『カメラから直接SNSに投稿できる商品をつくろう』という話にまで持っていくと、商品開発にもなっていきます。」

1つの情報が切り口しだいで、リサーチから企画、商品開発まで、いろんな出口がある。

「海外のリサーチャーとのやり取りをメインにはしますが、自分で文章を書いたりもします。」

もう1人、先輩役にあたる高須宙希さん。37歳のチーフディレクターだ。約6年間ニューヨークに留学していて、帰国後に英語力のあるライターとして数社で仕事をしてきた。

03 「プロジェクト単位で依頼がくるので、まず窓口を担当します。リサーチ業務なら情報収集だったり、コーディネート業務なら現地との連絡までひと通りやってから、社内スタッフに業務を振りわけます。」

「海外のリサーチャーは、何カ国かで同時に動くことが多いので、場合によっては10~20人に振りわけながら仕事を進めるんです。」

500人というリサーチャーは、現地にリーダーがいるような階層型の組織ですか?

「いいえ、1人1人、僕たちはじかにやりとりしています。メールなり電話なりで何度もやりとりをしながら、きちんとした情報をもらって、それを社内で編集していくのがうちのやりかたですから。」

単なる数字ではない、生の情報を集めるのは、ていねいで労力がいる仕事になるのだろう。

「海外のニュースや文献を見ることが多いから英語が話せるとよし、海外在住経験があるのが好ましいですが、必須条件ではありません。海外への興味があったり、それ以前の『興味を持ちたい』というレベルでも十分です。自分のセンスを活かしたいという気持ちがある人がいいですね。」

アシスタントの片岡さん(北海道出身)がまさにそう。今回はディレクターのほか、アルバイトスタッフも募集する。

いま、どんな仕事をしているところですか?

04 「食のセクションのリサーチです。アジアの国のいろいろな食とか生活まわりの文化に関して、現地のサイトを中心に調べて、広くレポートをまとめる内容です。」

仕事の楽しいところ、大変なところをうかがいたいです。

「以前はアパレルの販売をやっていたので、こういった業界は初めてなんです。もともと好奇心旺盛なので、仕事がいろんな種類で多岐にわたるのが忙しいけれど楽しいところですね。会長の村上さんがまかないのご飯をつくってくださるときがあるのも、うれしいです。」

ふたたび、社長の小祝さん。情報のクオリティを上げるぶん、忙しそうですね。

「業務量は多いでしょう。ただ前の日がどんなに遅くても、9時半に来るというのが決まりです。古い考えかもしれませんが、一人前になるまでバリバリ仕事をするべきだと思ってますから。自分も社長だからって椅子に座っているのは嫌なので、誰よりも動いてると思いますし。」

06 オフィスでの取材終了後、小祝さんが「見せたいものがある」という。

「牛込神楽坂の反対側出口を出たあたりに、戦後すぐつくられた古民家を改装中なんです。」

9月にオープン予定の「メゾン・ド・ツユキ」。元は芸者の置屋だった日本家屋だ。海外リサーチャーが東京に来たとき、お客さんを案内するとよろこばれそうだ。

014 この会社にいるのは、海外居住の経験者か、旅人、もしくは地方出身者。小祝さんは、地方と海外を循環させようと考えているようだ。

「地方と海外がダイレクトにつながる、その敷居を下げたいんです。東京の会社だけが情報を得て、商品開発をして商品をつくるだけじゃなくて、もっと地方の魅力を海外の人に伝えると、そこでビジネスが生まれる気がしていて。」

そのための「港」のような場所をつくろうとしているのか。

08 「たとえば海外のシェフと、地域の食材がこの場で出あう。イタリアのシェフが、イタリアの市場に向けた高菜漬けをつくっていくとかね、思いつきですけど。」

「地方のほうが、誇れるものがいっぱいある気がするんです。自分が出身者だから思うんですけど、田舎の人だとどうしても視野が狭くなったり、井の中の蛙みたいなこともある。外の文化を刺激を取り入れて、新しいものを地域でつくっていくのは、すごく良いと思うんですよね。」

続きは8月25日、虎ノ門「リトルトーキョー」で開催するしごとバー「海外マーケティングナイト」で聞いてください。

(2014/8/12 カンキ)