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引っ越しをしたとき、隣近所に住んでいる方に挨拶に回る人はどれぐらいいるんだろう。マンションのお隣さんがどんな方か、知らない人も多いんじゃないかな。シー・ブラッドはマンションなど、住まいを中心とした場所でコミュニティをつくっています。

新大阪で新幹線を降り、地下鉄で淀屋橋駅へ。オフィス街を歩いていくと、シー・ブラッドが入っているビルが見えてきた。
最初にお話をうかがったのは、シー・ブラッドとN&Sの社長を勤める中澤博司さんと、N&Sの専務・田代和恵さん。

「シー・ブラッドは2000年に、分譲マンションにインターネットLAN環境がようやく入るような時代にはじまりました。住宅の商品企画をしていたのですが、付加価値として住む人同士が交流するマンションのホームページをつくり、運営していく会社として事業部を独立させたんです。」
そのころ「コミュニティデザイン」という言葉はまだなかったけれど、ホームページの価値は評価されて、たくさんのマンションで導入されていった。
「けれどホームページをつくるだけでは、まったく機能しないんですね。ウェブサイトは所詮ツールなので。いいコンテンツをつくっていくためにも、自分たちでコミュニティ運営もやりはじめたんです。スタッフを置いて、相談窓口をつくったりして。自分たちの手で展開していったんです。」
N&Sとの出会いは2008年。千葉にある物件で、コミュニティサイトをシー・ブラッドが担当、リアルなコミュニティづくりをずっとやってきたN&Sは入居後の運営を任された。お互いにやっていることも近いから、それぞれ学ぶことも多かった。
「N&Sも大きくなっていく時期で、いいタイミングで知り合いました。」と田代さん。
資本関係をもち、今では一緒に仕事をしている。

どんな風にコミュニティをつくっているんですか。
「ベタベタに距離の近いコミュニティをつくっていくとか、我々主導でやっていくとかではなくて。住人がなんとなく知り合いになっていくために場を提供して、和ませて。あとはしゃべらないんです。私たちはきっかけをつくるんですよ。」
きっかけをつくる。
具体的にはコミュニティクラブという組織をつくって運営したり、子育て交流会やバーベキューなどの交流会を開催したり。講師を呼んできて、コーディネーターとして運営することもある。
あくまできっかけをつくり、ゆくゆくは住民主導で運営してくためにも契約期間があるそうだ。
持続可能な「コミュニティデザイン」をちゃんとビジネスとして取り組んでいる会社と言えるかもしれない。
「僕らがちょっと仕掛けると、住民の方々にもなんとなく仲間意識が湧いてくるんです。『◯◯さん、お願いします』って言うと『僕ですか?うーん。やります』って。だんだんその気になってきて、いろいろなことが起こるんです。」
最近は戸建てを対象にした地域づくりや都市にあるタワーマンションがフィールドになったり、海外も視野に入れているそうだ。今まで携わってきた郊外型マンションにも、老朽化しているものには共用施設の形態変更や、コミュニティカフェの導入などを提案している。
以前、仕事百貨でスタッフを募集した「ななつのこ」も、N&Sが手がけているコミュニティカフェ。みんなでつくる本棚を設置したり、住民主催のイベントがはじまったり。いろいろ試しながら、幅広い年齢層の人が集う場として、少しずつ温まってきている。

今その役割なのが、新出さん。早速、話を聞いてみる。
「うまくしゃべれてますかね。言葉足らずが多々あるので心配しています。」

前職はディベロッパーとしてハードの面でまちづくりに関わっていたが、ハードだけでは関わりがつづかない仕事が多かった。あるとき「つくったら終わりではなく、購入者に関わりつづけるとなにが起きるんだろう」と考え、大学院でまちづくりの研究をした後、シー・ブラッドに入社する。
「暮らしや生活にとても興味があります。人としゃべるのが好きなんですよ。」

新出さんの仕事について聞いてみる。
「企画と運営のマネジメントが仕事です。マネジメントって言うと偉そうですが、1人ではできないのでチームワークが大切です。若手に担当物件を4、5つ持ってもらって、それを束ねています。企画書をつくる指導をしたり、運営を一緒にやるとか。クライアントや居住者からの相談窓口になることも仕事ですね。」
今の立場で、意識していることはありますか。
「部下には自由な発想で企画を練るように伝えています。また企画と現場でのオペレーションは違ってくるので、ちゃんと意見を聞いて柔軟に企画にフィードバックさせること。あとは社内でも垣根のない関係をつくれるように。僕はいろいろなマネジメントがあっていいと思っています。お互い意見をだし合って、切磋琢磨していきたいです。」

「なくはないです。けれど今の立場でも現場に行くし、いろいろな人と話ができるから、おもしろいですよ。生の声を聞かないと、企画には反映できないと思っているんです。現場で得たことをヒントに、客観視しつつアイディアを出して、組み立てて。それを実に落としていくことを繰り返す。関わり続けていくことは重要だと思っています。」
現場の担当者になれば、入居者に関わり続けることが大切な仕事。サポートを開始してから、入居者との関係は5年以上になることもある。生まれたての子どもが5歳になるくらいの時間。長い年月をすごすので、入居者から直接相談がくることも多い。
「イベントをどうやればいいかっていう相談があったりします。我々は入居者交流のきっかけをつくって、その後はプロとしての距離感を考えつつ、サポーターとして関わっていきます。大切なのは、イベントをやったあとにどうなっていくか。何年かして入居者が自然と交流している姿をみたら、やっててよかったなーって思いますよね。」
次に話を聞いたのは、実際に3つの現場を担当しているシアラー暁代さん。イベントの企画や運営から、ホームページの管理などの事務作業までをすべて担当している。

「事務局の人、ですかね。管理員さんでも、マンションに常駐しているコンシェルジュさんでもない。毎日現場に行っているというわけではないです。」
毎日現場を飛び回っている姿をイメージしていたが、少し違うらしい。もちろんマンションに顔を出すことはよくあるけれど、いくつものイベントの企画、準備、募集の事務作業など、机に座ってする仕事が多い。
「管理員さんやコンシェルジュさんに状況を聞いたりしながら、お互いに協力できる関係をつくることは心がけています。」

「転職するまで、実はこういうコミュニティデザインの仕事をよく知らなかったんです。やりながら、わかってきた感じです。」
そんなはじまりだったからなのか、シアラーさんはけっして頭でっかちにならずに仕事をしているように感じる。
「私自身もプライベートでは、積極的に参加するタイプじゃなかったんです。マンションには積極的に参加してくださる方から、もともと興味のない方までいらっしゃいます。そんな中で意識しているのは『行きたいけど行きづらいな』と迷っている人が来やすくなるようなこと。イベントのつくり方とか、チラシの文言1つでも違ってくると思うんです。」
そもそも、どうして「コミュニティ」が必要なのか。それも自分の実生活で感じるようになった。
「母親も年をとってきて。例えば自分と離れて暮らさないといけなくなったときに、周りの人とすごく仲良くお付き合いができていれば、1人でも安心ができます。年々そんなことを考えるようになりました。」
今までは企画を自分でおこない、イベントを提供するかたちで関わる物件を担当していた。この夏からは、マンションの住民と一緒に企画や運営をする物件を任されている。
「いろいろな世代の方が集る大きなイベントも必要ですが、同じ世代の方同士でゆっくりとお話する機会。交流会のようなものを定期的に開催できればと思っています。新しい経験ができるので、たのしみにしています。」
企画を考えるとき、忘れてはいけないことがある。
「本当はイベントが目的ではないんですよ。地域だったり、マンションだったり、住んでいる人たちの関わりがつづいていくためにやってるんです。」
「だから方向性を間違えていないか、ただイベントするだけで終わってしまっていないか、チームに相談できる相手が入ってくれたら心強いですね。」

(2014/9/14 中嶋希実)