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食で故郷おこし

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地域おこし協力隊が全国各地で活動しているように、日本中で地域活性化が取り組まれるようになりました。

東京・神田のちよだプラットフォームスクウェア1階にある飲食店「フネ」では、東京から全国の地域を応援しようと地域食材を使った料理を提供し、全国から集まる人々の交流を生んでいます。

今回はここで働くホールスタッフを募集します。

newplanet01 ニュープラネットは2007年に創業した会社。“東京から故郷おこし”をコンセプトに、「なみへい」と「フネ」、2つの飲食店を経営している。スタッフは9名ほどで、ほとんどが女性だ。

社長は川野真理子さん。飲食店をはじめる前は、起業家支援を目的にしたNPO法人「キープラネット」を運営していた。

「飲食店というよりも、地域おこしをやりたかったんです。東京で便利な生活をして美味しいものを食べられるのも、地方があるから。みんなで自分の故郷や地域を大事にしよう、応援しようって。」

newplanet02 なぜ地域おこしに着目したのですか?

「地元の津軽へ帰省した際に、農業をやっている方のお話を聞いたんです。田畑を売って、千葉にいる長男のところへ引っ越す予定だけど、おばあさまだけが『おらだけはいかねえ』って泣いて困らせるんだって。他の方も口々に農業じゃもうやっていけないんだという話をしていて。」

「私はお米やリンゴが実った頃にいつも帰省していたので、農業がそんな状況だって知らなくて、すごく驚きました。そのとき私の中でスイッチが入ったんです。」

なんとか故郷を応援できないか。その一心で、NPOを運営しながらも、津軽のお母さんたちを呼んで郷土料理をつくってもらうイベントなどを開催した。

またNPOにおいても、こんな気づきがあった。

「地方から東京に来られた際に、うちの事務所に寄ってくれる起業家の方がたくさんいました。けど忙しいだろうからまた今度にするって気遣ってくれる方もいて。アポがなくてもふらっと立ち寄れて、そのときに津軽のホタテとビールを出して、人も紹介できるような場所があればいいのに。そう思ったら、『もしかしたらいけるかも!』って電球がついたようにひらめいたんです。」

newplanet03 NPOの活動を終え、地域おこしと交流ができるサロンをはじめようと、起業家の方々の協力を得て2008年に「なみへい」をオープンした。

だけど、これまでアルバイトの飲食店経験すらなかった川野さん。はじめはお客さんに教えられながら、ときには説教をされながらも、店を形づくっていった。

「『年寄りには脂っこすぎる』とか『焼酎のお湯割りはお湯から入れるんだ』とか。とにかくいろんな人にいろんなダメ出しをいただいて(笑)。はじめから産直のネットワークをもっているわけもなかったですから。まったく0からのはじまりで、手探りで必死にやっていました。」

「そんな私を見て、お客さんが応援してくれるんですよね。どのお客さんも、お店のコンセプトを理解してくれるんです。立って歩いて名刺を交換しているのがごく当たり前の飲食店なんですよね。」

経営は4年目にしてだんだんと黒字化した。お客さんからは、以前にも増して嬉しい言葉が聞こえるようになった。

「私たちのやっていることに理解あるお客さんが『美味しいね』『いい店だね』『頑張ってね』って言ってくださる。それが毎晩なんですよ。また来てくれるってことが、こんなに嬉しいものなんだと思いましたね。」

なみへいでは月ごとに地域を特集している。ときには地元の方も駆けつけて、一生懸命に地域や産品をPRするそうだ。その姿に、川野さんも勇気づけられるという。

newplanet04 さらに今年に入り、ちよだプラットフォームスクウェアの運営会社と連携して地域活性化に取り組んでいこうと、「フネ」を5月にオープンした。

「フネ」のオープンに当たって新たにスタッフを募集したのだが、なかなか合う人に出会えなかったという。なぜだろう?

「コンセプトに共感して来てくださるのですが、そればっかりになってしまって。飲食店で働くということをイメージされていない人も多いんですね。」

お皿を洗ったり、テーブルを拭いたり、重いビール樽を運んだり。毎日繰り返す地道な作業が地域おこしに結びつく仕事だ。

だからコンセプトに共感している人よりも、どちらかと言えば、接客が好きな人や飲食業で働きたいと思っている人が向いているのかもしれない。

newplanet05 もし自分で飲食店をはじめるための経験を積みたいと考える人がいれば「しっかりと面倒を見て育てますよ」と川野さん。

「私はこれまでたくさん起業家を見てきました。自分の目標を持っている人には、どんどん教えられる。我流ながらもお店を6年やってきましたから、もしここを辞めて独立した後に古巣の人脈やノウハウが必要なら力になります。だからここで練習したらいいですよ。」

日々の仕事はホール作業だけではない。地域絡みのイベントのチラシ作成や地方の特産品探し、特産品を取り寄せる際の担当者とのやりとりも任せたいという。

だから、ワードやエクセルを操作してJPGやPDFなどのデータを扱えたり、インターネットのことを理解できている人に来てほしい。

まずはこうした作業から、本人が望めばだんだんと経営や管理を任せてもらえるようになる。ゆくゆくは店長になるような人も採用したいと話す。

 
はじまったばかりの「フネ」はどんな様子なのだろう。

お昼の料理長を務める鈴木さんに話を伺う。

newplanet06 客入りは平均して1日80人ほど。建物の上の階にはオフィスがあるため、ランチは社食のような雰囲気だという。

「お昼にお客さんがどっと来るときは、ホールスタッフにお皿の盛りつけを手伝ってもらったりします。自分はホールだから厨房が何やってるか分からない、っていうのじゃ困る。店全体を見て、動いてくれる人だと助かります。」

「フネ」では、地域をテーマにすべてのメニューを毎週変えている。そのメニューを覚えたり、イベントの準備をしたり、毎日があっという間に過ぎていくのかもしれない。

ただ「フネ」ならではの学びがある。全国から集まる珍しい食材を知れたり、その食材固有の背景が見えてきたり。

「どの地域がどんな気候で何が採れるか分かってくる。たとえ料理人でなくても、食の楽しみがすごく広がるんじゃないかなと思います。」

newplanet07 鈴木さんが埼玉県ときがわ町のブルーベリーを見せて、こう話してくれた。

「ときがわ町は天文台があるほど標高の高いまちで、あまりにも高いがために鳥が実をついばみに来ないんですって。それでたくさん実り過ぎて、うちの社長に相談に来られたそうで。今週はこのブルーベリーを使ってデザートをつくっています。」

他の一般的な飲食店だと、こういった話はなかなか聞けないものだと思う。

「本でいくらでも勉強することができますけど、ここでは実際に手に取ることができる。飲食業をやりたいと思ってる人には、新しいものをいっぱい見れる環境だと思いますね。」

newplanet08 鈴木さんはこれまで様々なジャンルの店で包丁を握ってきた。

今後独立した際に店づくりからできるようになろうと、いまは建築設計を学べる学校に通っている。

そんな鈴木さんが「フネ」で働こうと思ったのは、コンセプトに惹かれたというよりも、川野さんのことが気になったからだという。

「働いてみて、社長の人柄に興味が沸いて。何かを頼まれたときに、本来だったら『面倒くさいな』とか『大変だな』って思うことも、この人と一緒にやらせてもらえるんだったらやろうかなと思える。」

「いろんな店を渡り歩いてきたなかで、一番楽しく働いているかもしれないですね。大変だとか休憩が取れないとかをあまり感じないというか、逆に休んでって川野さんに言われるくらい働いちゃう。」

newplanet09 川野さんって、どんな人なんでしょう。

「すごく働く人なんですよ。それをみんなが見て、助けなきゃって意識が出てくる。みんなで支えてあげようと思うなかで、自分が頑張っているのかな。」

応援してくれているのはお客さんだけでなく、一緒に働くスタッフの人も。コンセプトとは別に、「みんなでいい店にしよう」という共通の想いが店に流れているのを感じる。

アルバイトで働いている学生の鶴海さんも、川野さんについてこう話す。

「本当に川野さんが好きなんです。社長と部下ではなくて、人として向き合ってくれる。お客さんも、川野さんに会いに来たっていう方ばかり。人のつながりでこのお店はできているんだなと思います。」

newplanet10 鶴海さんは「なみへい」の常連客の娘さん。ちょうどスタッフを探していたときに、「川野さんのお店なら」と紹介してくれたのだという。

いまは「なみへい」と「フネ」の両方でホールスタッフとして働いている。

「いろんな人と顔を見て反応を感じながら仕事をする好きなので、これまでもずっと飲食店でバイトをしてきました。フネもそんな楽しみがあります。あとは、川野さんがいろんな仕事を頼んでくれるのが割と嬉しくて。」

頼んでくれる、っていう感覚なんですね。

「そういうのって人によっては面倒かもしれないですけど、わたしは大したことができないので、力になれるならなんでもやりますよと。」

「だから柔軟性は大事だと思います。事務作業とかいろんなことを頼まれることがあるので、仕事を選ばず何でもやってみる人がいいのではないかなと思います。」

会社の雰囲気を聞くと、体育会系のノリはあるという。けどそれは上下関係に厳しいとかではなく、一緒に頑張っていこうという前向きさだ。

newplanet11 日々の仕事は、飲食業の地道な作業。だけど、それ以上のことを求めれば応じてくれる環境がある。経験やスキルがなくても、気持ちさえあれば川野さんがサポートしてくれるはず。

たとえ地域おこしに興味がなくても、ここで川野さんや全国から集まる方の想いに触れていくうちに、自分の中にも想いが芽生えていくように思えます。

最後に、新たに加わる人に向けて川野さんがこう話してくれました。

「ここでその人の能力を活かして伸ばしてあげたいっていう気持ちはすごくあります。自分に自信がないけど、元気いっぱいだっていう人。あなたのいいところを探してあげるから、信じてついてらっしゃいって伝えたいですね。口はキツいと言われますけど、人柄は悪くないですよ(笑)。」

(2014/9/22 森田曜光)