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やわらかい場所

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「今やっていることを続けたら、自分がどうなるか想像してみるんです。それがよかったらもちろんそのままでいい。嫌だったらどういう風にしていったらいいのかなっていうのを、3年とか5年単位で考える。その実現のために、こういうことやっていこう、っていうのを積み重ねていったら、今こうなりました。」

だれでも、ふと今の生活に不安を感じることがあったりするんじゃないかな。けれど、ただ漠然とそう思うだけではなくて何をするのか。ちゃんと今置かれている状況を見るから、前に進むことができる。

007 スモールトーキョーは南青山にある、クリエイティブワークプレイス「FARO(ファロ)」を運営している会社。

新築のこの建物は、まだオープンしてから1年。14室のシェアオフィスをメインにした施設で、ギャラリーやルーフテラスでイベントを開催したり、併設するレストランの運営もしています。

ここで運営業務や企画、ブランディングを行っていく人をメインで募集します。企画が得意な人はそちらを、事務作業が得意な人だったらそこを任せたい。やることや働き方も、相談しながら決めていくそうです。

gaikan 「スモールトーキョー」という会社名を聞いた時に、少しびっくりした。私たち日本仕事百貨が運営している「リトルトーキョー」と名前が似ているし、同じようにイベントを開催したり、カフェを併設している場所と聞き、親近感を感じながら取材にむかう。

南青山の路地裏を進むと、FAROが出現する。

011 「ワークライフバランスがとれる、働く空間ってつくれないかな、と思って。
しっかり働いて、美味しい食事を食べて、アートにふれ、イベントにも参加できて。そういう建物があったらいいな、って考えてたらこういう形になりました。」

とても清潔感のある部屋で、代表の堀さんにお話を伺う。

「最初に就職したのは大阪の商社でした。少し働いて、ちょっと人生を考える機会があって。あてはなかったんですけど、とりあえず辞めて東京にきました。いろいろな人に会う時間をつくったんです。」

自分にはなにができるだろう。なにがしたいんだろう。そんなことを考える1年だったそうだ。

「自分の能力を棚卸ししたときに、人に接したりとか、全体をオーガナイズすることのほうが、自分の中で興味が残った感覚がありました。」

そうこうしている内に、資金が底をつく。とにかく「働かなくては」と思い、ITベンチャーに就職。その後は誘われた外資系の会社に転職し、10年以上の時間が過ぎた。

「シリコンバレーが本社の会社で働いてました。みんなエネルギッシュに仕事をしていて。一方でライフバランスもしっかり考えている。今後の自分を考えたときに、一日のなかでもっとも長い『働く時間』をどう充実させるかをまた真剣に考えるようになりました。」

思い立ったらすぐ行動。独学で不動産の勉強をした。その後、物件を購入。リノベーションして、建物の価値を変えていくことに挑戦した。

はじめた事業は、少しずつうまくいくようになっていった。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「そんなことをしているうちに、この場所が見つかって。事業計画をたてていくうちに、自分のやりたいことを詰め込んだ空間がとうとうできるんじゃないかな、と思ったのがFAROのはじまりです。」

今は独立をして、ここの運営業務を行っている。

不安はなかったんだろうか。

「期待のほうが大きかったです。レストランの経営もやったことないですけど、この空間のコンセプトにはレストランが必要だった。じゃあ、料理つくれる人を探し始めたり。できないなりにどうすればいいか考えて行動すれば、みえてくるかなって。」

場所を持つことは、とても大きな決断に感じます。

「今のやっている内容と、半年前、3ヶ月前ってどんどん変わってるんですよね。立ち上げのときは僕もやりながら考えて。間違えたってことはなにもないんですけど。勉強しながら今もやってる感じですかね。」

「飽きたり、好きなことなのに苦しくなってきたら、それはそれで。止まれる選択肢を持てばいいというか。やりながら考えて、だめだったら休めばいいと思うんです。」

004 ここは働くことが中心の場所。けれど毎日食堂のようにレストランを使う人がいたり、屋上でヨガがおこなわれたり、ギャラリーで作家の展示がはじまったり。小さな街で暮らす、というのが入居者の感覚に近い気がする。無理やりコミュニティをつくろうとしてはいないというか。

「適度な距離感で、立ち入りすぎず。みなさんここには仕事しにきていて、いろいろなモチベーションがあります。顔を合わせる機会は提供しますが、それに対してみんなが集って議論するとか。そういうのはあんまり僕のスタイルじゃないかなって。」

日々すごす空間を提供する。そこに集う人たちの関わり方は、その人たちに任せる。

「まだはじめて1年ですけど、場に人が集まるというか。場をまた人がつくるというか。会う人会うひと、一緒に仕事をさせてもらう機会がどんどんできてきて。」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 今は堀さんの知り合いを中心に声をかけて、イベントをすることが多い。レストランと協力しながら行うこともある。この日も、夜にコーヒーのワークショップが開催予定。

「外からも人がこないと、やっぱり場が硬直しちゃうので。外と中との新しい出会いの潤滑油のような意味でもイベントをしています。僕自身も知らないことがいっぱいあるので、人と交わりながらこの場所をつくっていきたいんです。」

出会った人たちと、つくっていく。今後もいろいろなことが起こる場所なんだと思う。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 今は企画・ブランディングの部分を堀さんが、日々の運営業務を行っているのは横山さん。

もともとマスコミ関係の仕事をしてきたが、結婚を機に生活とのバランスをとるために事務職に就いた。けれど淡々と事務をこなす仕事が向かず、生活のバランスをとりながらも企画やイベントにも関われると思い、ここで働くことになった。

今後はこれまで個人でやってきたワークショップにより力を入れるために、ここを離れることになっている。

日々どんなことをしているんですか。

「日によって違うんですけど、午前中は建物全体の掃除をします。スケジュールを確認して、今日あるイベントの設営をしたり、明日ある撮影の準備をしたり。」

入ったときのとても気持ちのいい空気は、横山さんが毎日つくっているものだと知る。

「運営事務としては問い合わせや入居者さんの会議室の予約とか。申込がきていたら、契約までの事務手続きをしたり。経理・管理・総務、すべてやっている感じです。その都度いろんなことが起きるので、対応をしています。」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 場所を運営していると、小さなハプニングがたくさん起こる。扉が壊れかけているとか、突然の来訪者が来たり。撮影やイベントでは、当初の進行予定が変わることもある。

「問題になりそうなことを予測して、事前に対応するようにしています。入居者さんやイベント利用者、撮影利用者とのバランスをとるのも大事な仕事です。」

視野を広く、自然な気づかいをする。居心地のいい場所をつくるには、大切なことだと思う。

「入居者さんはみんないい人で、好きなんです。だからちゃんとサポートしたいと思うんです。」

堀さんはどんどん先を見て進む。横山さんは、しっかりと後ろから支えている、という印象。

「堀はとても柔軟な人です。だから、やりたいことはなんでも任せてもらえるかもしれない。その分自分がなにをしたいのか、ちゃんと意見を言えたほうがいいと思います。やることは山ほどあるので。できることを明確にすることが、関わる人たちへの信頼関係にもつながります。」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 運営業務はこれから数名で曜日をわけて取り組めればと考えている。イベントや業務にあわせてみんなで分担しながらもできるかもしれない。

「みんなの空間を、わたしがつくっているってくらいに考えて欲しいです」と堀さん。人数も少ないから、責任のあることも任される。

企画やPRもできる人に出会えれば、堀さんの今の業務を任せて、もっとあたらしいことに挑戦していきたいそうだ。

今回はあわせてカフェレストラン「Torattoria Larus (トラットリアラルス)」でホールスタッフとして働く人も新たに募集をする。たくさんの仲間と、協力しながらこの場所をつくっていくことになると思う。

最後に施設の中を案内してもらう。ギャラリーでは絵の展示が行われていて、レストランではスタッフがまかないを食べている。1階の奥では今度、お花屋さんをはじめるという方が準備をしていた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA まだどんどん変わっていく場所だから、たくさんの人に出会うことができる。

けれど、その変化についていくには柔軟さが必要です。それに加えて日々の業務にもしっかり取り組む。それがこの場所をつくる基礎になります。

これからスモールトーキョーで働く方と、リトルトーキョーを運営する私と。いつか一緒に、場所を運営することについて話しながら、お酒でも飲めたらうれしいな、と思っています。

(2014/9/19 中嶋希実)