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コーヒーを一杯一杯、ていねいに抽出する。食事も店内のキッチンでつくる。コーヒー豆も世界中を飛び回って、とことんいいものを探す。
まずは清澄庭園の近くに焙煎所を併設したお店をはじめるところから。
日本のブルーボトルコーヒーを一緒につくっていくスタッフを募集します。
虎ノ門リトルトーキョー。
日本仕事百貨の本拠地にブルーボトルコーヒーのジェームス・フリーマンさんにお越しいただきました。ちょうど日本にお店をつくるために来日しているところ。
もともとお寿司屋さんをリノベーションした和の空間に、どういうわけかジェームスさんがしっくりくる。話を聞いてみると、日本のことがとても好きで、大きな影響を受けているとのことだった。
「日本は大好きだよ。だから今ここにこうしています。はじめて日本を訪れたのは19歳のとき。クラリネット奏者をしていて、楽団のメンバーと一緒でした。だいぶ昔の話だけれど、すごい印象的だったな。日本のことをもっと知りたいと思うようになって。」

サンフランシスコのミントプラザにあるお店には、”Thank you for the UCC”というプレートがあるそうだ。

もともとはクラリネット奏者だったジェームスさん。音楽のほかに愛することができたのがコーヒーだった。
とにかくコーヒーが好き。自分で淹れることも、飲むことも。
いろいろなお店をまわってコーヒーを飲んだり、豆を探しにでかけていたら、ある新聞記事が目にとまった。
「業務用の豆を売っている問屋さんがあってね、そこでは少量から販売しているとのことだった。生豆を1ポンドずつ袋詰めにしてくれるって。家から車で20分ぐらいのところだったから行ってみた。それで『自分でも焙煎しなきゃ!』って思ったんだ。」
休みのときには生豆を買ってきて、家のオーブンでコーヒー豆を焙煎する。キッチンはその煙でいっぱいになる。

「そうだね。趣味で何かをつくるのが好きで。たとえばワインビネガーをつくったり。ワインの樽を買って、熟成させてつくる。あとはカクテルを何ヶ月も熟成させたり、クラリネットのリード部分って竹でできているんだけど、自分で手づくりしたり。買うより好きだった。サイフォンコーヒー用の竹べらも手づくりだよ。」

「手仕事。覚えておこう。手仕事。いい言葉だね。名刺も自分でスタンプを押してつくるんだ。ちょっと手間はかかるんだけど。」
自分で、自分のものをつくる。
ジェームスさんにはそれが当たり前のことだったけれども、90年代後半、サンフランシスコでコーヒーを焙煎しているお店などなかったそうだ。あるのはどこで焙煎されたかわからないようなコーヒーばかり。
「コーヒーが生の果物ということに魅了されちゃって。2日目、3日目、4日目、5日目と日を追うごとに全然違うものになる。その変化が自分にはすごく驚きで、心を奪われてしまって。」
「コーヒーをつくることはミュージシャンとも同じなんだ。正確性が問われるし、何度も何度も同じことを繰り返して、最善を保つ。ほかのことを忘れてひとつのことに集中するっていうことも似ていたから、自分に合っていたのかもしれない。」
ジェームスさんは180平米ぐらいの小さな工場を借りて、コーヒーの焙煎をはじめる。そしてファーマーズマーケットで販売し、一杯一杯自分の納得するコーヒーを淹れつづけた。

コーヒー以外に、選択肢はなったんですね。
「ほかの選択肢なんて、ほんと頭になかったよ(笑)」
「10歳~11歳ぐらいのときは、ほんとにミュージシャンになりたくて。それでミュージシャンが嫌になったときに思いついたのはコーヒーだけだった。ちょっと興味があったジャーナリズムの学校に行くのもありかななんて思ったり、料理もいいなって考えたりもしたけど、結局今まで本当になりたいと思ったものは2つだけで。小さいときはミュージシャン、そして今はコーヒーに携わること。ほかのことなんて考えられなかった。」

「コーヒーが生の果物だって考えはかわっていないよ。大切に、慎重に扱わなきゃいけないもの。人の手でつくられていて、大切なものだっていうことを伝えていかなきゃいけない。はじめから缶に入ってるものじゃないんだ。コーヒーチェリーっていう果物なんだ。」
「ブラジル産のコーヒー豆の一部を除けば、ほかはすべて人の手で収穫されている。コーヒー豆はどれも一粒一粒、誰かの手によって摘まれたもの。それで誰かの手によって加工されて、誰かの手によって袋詰めされる。僕らが焙煎するときも、同じように大切に扱う。収穫から焙煎するまで、全部誰かの手によって行われている。エチオピアやブラジル、エルサルバドルみたいな国から、僕らの手に届くまで、ずっと大切に扱われて。だから店でも慎重に、慎重に、扱わなきゃいけない。」
ブルーボトルコーヒーというと「サードウェーブ」とか「コーヒー界のアップル」だとか言われているけど、ジェームスさんはどう思っているんだろう。
話を聞いていると、ただただ、おいしいコーヒーをつくりたいだけのように感じる。
サードウェーブだとかアップルとか言われていますが、どう思いますか。
「うーん、アップルって言われているのはうれしいよ。アップルの製品は好きだから。たぶん、ただちょっと似てるからってだけで言われていると思う。『スモール』『ミディアム』『ラージ』『エクストララージ』っていうように、たくさん選択肢はないから。僕たちは1つのサイズしか提供しない。」

サードウェーブのほうはどうですか。
「サードウェーブって言われているのは面白いな。だって、銀座のランブルって喫茶店があるけれど、あそこは1948年に創業したんだ。コーヒーを一杯一杯淹れて提供している。じゃあランブルのコーヒーは何番目のウェーブだ!?って。」
「ランブルのコーヒーはとても洗練されていて、先進的。それが1948年からずっと続いているんだよ。それから昔何かで読んだんだけど、1533年のカイロには、3000軒ものカフェがあったそうだよ。たぶんイエメン産のコーヒー豆が使われてただろうね。これは何番目のウェーブ!?って思うんだ。」

それよりも、おいしいコーヒーをつくりたい、飲んでもらいたい、という思いが伝わってくる。
「ぼくらは、ただハンドメイドのコーヒーが好きなだけなんだ。だからって、うちのがおいしくて、ほかが美味しくないという意味ではないよ。ブルーボトルコーヒーは香りが広がるし、飲み口も軽い。ほかにもみんなが好きなものを出せたらないいなと思っている。でもだからって、ほかのコーヒー店がそうすべきって意味じゃない。」
「それに機械ドリップのほうが美味しかったら、ハンドメイドにはこだわらない。この前テストしたんだけれどね。まだ見極めている段階だよ。」

「そうだね。ブルーボトルコーヒーには3つの言葉がある。経営理念はないけれど、この3つの言葉はあるんだ。Deliciousness, Sustainability, and Hospitality.(美味しさ、持続可能性、おもてなし)ブルーボトルコーヒーで働く人間は、みんなこの言葉が頭の中にある。仕事を通してこの3つを体現しようとしていて、3つを叶えるために働いているんだ。そこがギャップかな。」
どんな人と一緒に働きたいですか?
「僕が一緒に働きたいと思う人に必要な言葉をあと3つ思いついたんだけど、一つはJoy。幸せだって体現できる人。今していることが出来て幸せだって。二つ目はDiligence。仕事に飽きずに、勤勉であること。毎日コーヒーを焙煎するんだ。飽きてたらやってられないよ。毎日本当に完璧にコーヒーを淹れなきゃいけない。三つ目はLatitude。自分のいる環境や同僚、お客様に対しての敬意を払い、配慮をする。」
「この3つの言葉はとても大切だと思う。こういう人と一緒に働きたいな。それ以外は何もいらないよ。来てほしい人に必要なのはこの6つの言葉で表せる。Sustainability、Hospitality、Deliciousness、Joy、Diligence、Latitude。」

「いまちょうど話してたんだけど、数日前カフェで並んでいたら、列にいた人がこんなことを言ってたんだよ。月曜だったからね。『ああ、月曜日か…』って。それで僕はそんなふうに感じなくて幸せだと思った。僕は『早く週末にならないかな』なんて思わないからよかった。これからもそんなこと思いたくない。わくわくする感じが好きなんだ。」
最後にこんな質問をしてみた。もしぼくがブルーボトルコーヒーで働くことを迷っているとしたら、どんなことを話しますか?
「そうだな。入るべきだと思う。日本での最初の立ち上げに携われるっていうのは素晴らしい機会。立ち上げは最初に一度しかない。人々が持つブルーボトルのイメージに絶大な影響を与えるだろうし、ブルーボトルの成功も最初のメンバーで決まってくる。あとから入ってきたメンバーがどうでもいい、って言っているわけじゃない。でもわくわくすることだよ。」
(2014/10/15 ナカムラケンタ)