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「スキー場という枠を取っ払って、新しい可能性を探っていきたいです。山の楽しみ方はまだまだあると思うんです。」たとえば、夏のゲレンデ。冬の雪景色がうそのように、鮮やかな緑が広がっている。
芝生の上でバーベキューするのも気持ちよさそうだし、近くを流れる川で釣りを楽しむのもいいかもしれない。
群馬県片品村にある、関東唯一のスキーヤー専用のスキー場「かたしな高原」。
ここでまだ活用されていない資源を探し出し、年間を通して自然と触れ合う体験を企画して、訪ねるお客さんに提供していく人を募集します。
まずは自分が楽しむからこそ、人に伝えられる仕事です。自然に囲われた環境での楽しみ方を知ってたり、そもそも自然が好きな人に合う仕事だと思います。
上越新幹線・上毛高原駅から車で40分ほど。
大都開発株式会社の澤さんに迎えていただき、かたしな高原に到着した。
大都開発株式会社は、47年前に澤さんのお爺さんが立ち上げた会社。昔から家族層へのサービスに力を入れ、かたしな高原スキー場と、ホテルとロッヂ2つの宿泊施設を運営してきた。
「吹雪きにくいし、雪面が固くならない。子どもに優しい山なんですね。自然と、子連れのお客さんが集まるようになったみたいです。」
澤さんが星野リゾートを経て、大都開発に加わったのは3年前のこと。このころから、春から秋にかけてのスキーシーズン以外の営業に力を入れ、新たな取り組みをはじめている。
そのひとつが、体験農園。スタッフに農家出身者が多いことを活かし、本格的な農園をつくった。
お客さんは、野菜の採り方をガイドに教わりながら、収穫した野菜をそのまま持ち帰ることができる。収穫した野菜を使って石釜でピザをつくる体験プログラムは大人気だという。
ほかにも、敷地内に手づくりの釣り堀をつくってフィッシング教室をはじめたり、ロッヂの夕食として芝生の上でバーベキューを用意したり。
「子供だましは嫌なので、どのプログラムも大人が真剣に考えてつくりました。自分で毛針をつくって、魚を釣る。そういう体験が、人と自然のつながりのきっかけになると思うんです。大人になってから、ふとした瞬間に思い出して、『自然にまた行きたい』と思ってくれたらいいなと。」
「手が込んで大変だけど、一生懸命やったらお客さんが喜んでくれたんですよね。その小さな成功体験から、スタッフみんながイキイキしてきた気がします。」
そもそもグリーンシーズンはスキー場にとってネックな部分。そこを長所に変えられると、スキー場経営が一変するという。
「まずスタッフの年間雇用が可能になるし、設備投資がしやすくなる。それが結果として、通年の集客や顧客満足につながってくる。そんなプラスの循環が生まれてくると思うんです。」
3年前からの積み重ねが、徐々に形になってきた。グリーンシーズンの売上は着実に伸びていて、今後も事業を拡大していく予定だ。
前回の仕事百貨の募集では3名の方が戦力として加わり、チーム一丸となってかたしな高原の新たな可能性を模索している。
そのうちのひとりである、平山さんに話を聞いてみた。
以前は家具チェーン店で働いていたという平山さん。今年2月から片品村に引っ越し、ここで働いている。
「ただ稼ぐだけじゃなくて、自分で何かをつくりあげて、働くこと自体が喜びに通じるような仕事がしたいと思っていました。写真や山が好きだから、田舎暮らしもしたかった。」
「仕事百貨の記事を読んで、それが実現できそうだと思って。あとは、ここにはじめて来たときの直感で、働こうと心に決めました。」
直感で?
「家族向けだからか、スキー場の雰囲気がすごく優しかったんです。スタッフの人と話しても波長が合っていて。面接を終えた後、もう働くつもりでスキー場を歩いて回ったりしていました。」
実際にどんな仕事をしているんですか?
「僕は繁忙期にここへ来たので、客室清掃とかスキースクールの補佐とか、はじめは任されたことをとにかく一生懸命やっていました。ところが冬が終わり4月になると、何も言われなくなったんです。今度はかたしな高原の魅力づくりをする期間なんですね。」
「このスキー場にはこれが必要だとか、ここをもっと強化しようとか。何も考えてないと、やることが本当になくなります。逆を言えば、主体的に動くと結構自由にやらせてもらえるんです。」
かたしな高原では、宿泊営業があるゴールデンウィーク、夏休み、スキーシーズンになるとスタッフ総出でお客さんを迎える。
その時期が過ぎると、スタッフ全員、試作や視察を繰り返したりして、新たな企画を考える期間を迎える。
体を動かす仕事と、頭で考える仕事。時期によってオンとオフがきっぱり分かれるような働き方だ。
平山さんが企画しているという尾瀬ツアーについて聞いてみた。
尾瀬は新潟・福島・群馬にまたがる高原。ここで春と秋にツアーを開催したそうだ。
「昼食で他のツアーと差別化できると思って、お客さんと一緒に尾瀬でスープをつくって食べてもらうツアーを企画しました。手間ひまかける手作り感に喜んでいただいて、好評だったんですよ。」
この尾瀬ツアーは平山さんが発案したもの。尾瀬の活用はグリーンシーズンに必須だという会社の考えと合致して動きだしたプロジェクトだ。
さらに既存の施設を利用した、冬の計画も進んでいる。
「混雑していて、値段も高く美味しくない。一般のスキーヤーが持つゲレンデの食事処のイメージを一新して、都内にあるような落ち着けるカフェにしようと。年間を通してうちの魅力を知ってほしいので、夏の写真やパンフレットを置いたりしてみて。」
「スキー場でまったりホットワインが飲めたらいいよね」。そんな何気ない会話から計画がスタートした。
「こういう仕事って、楽しむ感覚がすごく大切だと思うんです。レジャーなので、お客さんに楽しんでもらう前に、まず自分たちが楽しまないと。」
とはいえ、もちろん好き勝手にプロジェクトを進められるわけではない。
そもそもツアーを組んだり、カフェの内装を考えることは、平山さんにとってはじめてのこと。
身近にできることでは、書店に売っている本を見て調べたり、インターネットで調べたり。やることのデメリットを考えたり、ビジネス的に情報を整理したり、大前提を固めることが重要だ。
澤さんも、こう話す。
「プロジェクトをちゃんと動かすには、物事を順序だてて実行し、目標達成思考も高くないと難しいです。スキー場だから無理って投げるんじゃなくて、常にちょっと調べてみよう、試してみようという感覚も大事だと思います。主体的に動けるのは、ある意味、そのスタッフが勝ち取った自由だと考えています。」
「うちの会社の人には、さまざまなことにチャレンジしてトライ&エラーしてほしい。だけどそのためには、当然ですが、一定の意識やスキルも必要だということを認識していただきたいです。」
また、ひとりだけで完結する仕事ではない。
大きな会社のようにメール1本で物事が進む職場ではないから、関わる人たちに理解してもらいながら、準備を進める必要がある。
「自然の中の会社なので、仕事上のドライなコミュニケーションが苦手です。会話の中で、さり気なく『こんどの尾瀬ツアーは秋だから、栗とかキノコいいですよね』って言うんです。すると調理人さんが『栗ごはんやるか?』って乗ってくれる。人と人の関わりあいが大切ですね。」
それは、お客さんとの接し方でも同じこと。
「今夏に遊びに来てくれたお客さんが、昨冬にスキースクールで補佐役をやっていた僕のことを覚えていてくれたんです。お客さんとして対応するんじゃなくて、一個人として対応する。いろんなサービスをこれからも展開していきますけど、最終的には人についてくれているんじゃないかなって思うんです。」
新しいアイディアでかたしな高原を発展させていくことは創造的な仕事である一方、抽象的な仕事ともいえる。
いくら考えても答えが出ないときがあるだろうし、時間を費やして考えたことがまた白紙に戻ることだってある。
「いつまでも結果が出なければ、遊んでいるのかと思われてしまう。調べごとの合間に草刈りに参加してみるとか、ほかの人が嫌がる仕事をあえてやるとか。そういった姿勢もここでは大事です。」
どんな人に来てほしいのだろう。平山さんと澤さんに聞いてみた。
まずは平山さん。
「こだわりを持っている人。きちんと自分を持って意見発言できたりする人だと一緒に成長できそうな気がします。」
「あとは会社を好きになってくれる人ですね。僕を含め、ここで働いている人たちはみんな、かたしな高原が大好きなんです。スタッフの人と飲むと、かたしな高原がよくなるためにこうすべきだと熱く語るんです。一緒に働いて楽しんじゃないかなって思います。」
続けて、澤さん。
「組織が多様化してくれると嬉しいです。国籍を超えるくらい、さまざまな人に来てもらいたいですね。主体的になれる環境なので、思う存分やっていただきたいと思います。」
職能的には、かたしな高原のデザインを統括できる人や、簡単なシステムを構築できるPCスキルを持つ人、広報業務の経験がある人だと、いますぐ任せたい仕事があるそうだ。
取材終わりに、平山さんがこんな話をしてくれた。
「以前は週末後の出勤が憂鬱だったんです。でも、ここに来てからは楽しい。趣味と同じなんですよ。あの山を登りたい、じゃあ何を準備して、どう登っていこうって。きっと楽しいだろうと企画して、実現することが僕の喜びです。」
1年の半分を費やして、かたしな高原の新たな可能性を見つけ、育んでいく。
考える期間を得て働ける一方、よくも悪くもその人自身の能力がダイレクトに反映される仕事だと思います。
自分にもこんなことができるんじゃないかな。何かワクワクするようなことを思いついたら、まずはかたしな高原を訪ねてみるといいかもしれない。
現地に立つことで、かたしな高原の魅力をより体感できると思います。
(2014/10/23 森田曜光)