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地域の楽しいイベントやお祭り。そこには、うまい仕掛けや整った環境があるのに加え、想いを持って働きかける人たちの存在があるように思います。

施設外へ飛び出し、地域コミュニティづくりにも取り組んでいます。
今回はここで働く、地域コーディネーターを募集します。
「やりたい」という地域住民の活動をサポートし、人と人をつなげ、それがコミュニティとして広がっていく。
地域のハブとなって、さまざまな人と関わっていく仕事です。
中央区・勝ちどき。
このまちに立ち並ぶ高層マンションのひとつに、ガラス張りの施設が特徴的なマンションがある。

フローレンスは、子育て問題をはじめとしたさまざまな社会問題に取り組み、病児保育事業やおうち保育園事業を展開している、認定NPO法人。
「グロースリンクかちどき」は、このマンションの1階共用部にある。
入居者以外の人でも利用できる子育て支援施設として、プレイホールや習い事教室、多目的室やコミュニティガーデンなどをフローレンスが運営している。

中では6ヶ月の赤ちゃんから小学校2年生までの子どもまで、お母さんたちに見守られながら、みんな一生懸命になって遊んでいる。
「めずらしい施設なので、たくさんの人が集まってくれて。大きな網のジャングルジムで、子どもたちが楽しく遊んでくれるんですよ。」
施設の扉を開けると、フローレンスの今給黎(いまきゅうれい)さんが迎えてくれた。

勝ちどき周辺は、地方から集まった核家族が多く、地縁や血縁の少ない地域。
子育てをしている親には、いろんな不安や心配がつきものだけど、ここでは気軽に話したり相談できる人がなかなか見つからない。やがて孤立し、子育てのストレスが溜まっていってしまう人が少なくないという。
「その解決策として、地方にあるような地縁や血縁に基づいたコミュニティをつくればいいかというと、それは不可能。都会に合った新しい地域コミュニティをつくっていく必要があります。」
施設を活かして、子どもを核に人と人のつながりを生んでいく。
その方針は、開設した2011年の2月からあったものの、実際にどうなっていくのか分からなかったという。
そして3月、震災が起きた。
「入居がはじまったばかりで、住民はお互いをまったく知らない状況。多くの人から不安の声が聞こえてきました。そのときに“隣人祭り”というのを催したんです。フランス発祥の一品持ちよりのお祭りで。『パーティーしませんか?』とお誘いして。」
すると、予想を超えてたくさんの人が参加してくれた。
コミュニティづくりの第一歩として、今給黎さんたちの自信につながったという。

それは、今給黎さんが被災地支援事業に就いたときの経験に基づく考えだ。
「福島ではまだまだ復興が進んでいないけど、住民の人たちがなんとかしなきゃと団結していました。そのなかに僕は参入して。」
一人ひとりの話を聞き取っていくと、放射能の影響で外遊びができない子どもたちのために、安全に遊べる場がほしいというお母さんたちが大勢いたという。
今給黎さんたちは屋内公園を計画し、「ふくしまインドアパーク」を完成させた。
「屋内公園ができてから、まちが変わったんですよ。打ち捨てられたような公園を住民たちが除染して、企業から募った寄付で高齢者用の運動器具と子供用の遊具を設置して。みんなが集まれる公園を、ほとんど住民の力でつくっていました。」
「そんな動きを見たら、ぼくたちにはまだまだやれることがたくさんあるなと思って。まずは聞き取ることからはじめて、住民の活動を後押ししていこうと。」

「うちは場所があるので、企画などもお手伝いして。まだまだ試行錯誤しながらですが、私たちが関与せずとも自立的に運営されていくような仕組みになっていくといいですね。」
住民が主役なんですね。
「私たちが関与できる人の数には限りがあります。自立して活動できる人を増やしていけば、より多くの人たちに体験や機会を届けられる。仲間づくりの輪を広げることが大切です。」
それは施設内だけに留まらない。今給黎さんは地域での活動にも積極的に取り組んでいる。
勝ちどきの夏祭りに参加したり、イベントのゲストスピーカーとして登壇したり、中央区のFMラジオに出演したり。
「中央区で活動している人たちがどんどん集まってくるようになりました。最近、ギヤがひとつ上がった感じがあって。ここを飛び出して活動を広げていくことで、中央区全体を盛り上げていけると思っています。」

プレイホールには、平日でも1日約50組の子ども連れが遊びに来る。お母さんだけでなく、お父さんやおじいちゃんも。さまざまな国籍の人もいる。
「仲良くなって友達関係を築いて。イベントにお誘いしたり、『こんなことしたい』というお母さんに場所を提供したり、専門的な人を紹介したり。地域のハブになるんです。」
目指すのは、中央区で何かしたいと思った住民が真っ先にここを思い出して、はじめに声をかけてもらうような存在だ。
話しかけやすい雰囲気を持っていたり、どんな人にも笑顔で応えられるような人には合っているのだと思う。
たとえば齋藤さんは、そんな人。

主な仕事はプレイホールの管理・運営。そして、人をつなげること。
「プレイホールでどう遊べばいいのか分からないお子さんがいたら、ほかのひとりで来ているお子さんと一緒に遊べるように僕らが介入して。そこからお母さん同士も仲良くなるんですよ。」
「ほかにも、引っ越してきたばかりで、どう地域に溶け込んだたらいいかわからないというお母さんに、同じような子育ての境遇にある人と話す機会をつくったりして。」

いまでこそ子どもたちから親しまれるようになったけど、はじめは子どもとの接し方に苦労したという。
「グイグイいってみようとか、引いてみようとか。いろんなことを試しました。無理して振る舞うんじゃなくて、自然体でいることが大切なんだと。子どもは敏感なので、気負いがあると分かっちゃうんですよ。」
ここには6ヶ月から小学校2年生までの子どもが遊びに来る。両親や祖父母までも一緒に。
そういった一人ひとりに応じて関わり方を多様に変えていくことは、なかなか大変だという。
「ただ、僕らはサービス業ではないので、何でも合わせるわけじゃない。一緒に協力して、よい場所をつくっていく。そのためにはマナーを守っていただくし、厳しいことを言わなきゃいけないこともあります。」
掃除したり、椅子を運んだり。同じような毎日が続くこともある。
日々の仕事は地味に見えるかもしれない。でも一つひとつの仕事が、コミュニティづくりや子育て問題解決に結びついている。
続けているとどんどん人が集まり、人の層も変わって、交流が増えたという。
毎日の積み重ねが、数ヶ月・数年後に結果として表れるような仕事なんだと思う。
最近では、こんな嬉しい出来事もあった。
「ブドウをお裾分けしてもらって、すごく嬉しかったんですよ。コンクリートジャングルで冷たく見えるようなところでも、中に人がいれば、お互いに貢献し合えるようなコミュニティが育めるんだなって。」
そう話すのは、昨年6月からここで働いている藤吉さん。

「僕は5人兄弟なんです。子どもの成長を間近でみてきた経験があって、そういったことに関わる仕事がしたいと思ったのがきっかけで、フローレンスに興味を持って転職しました。」
この仕事の大変なことを聞いてみた。
「地域やそこに住む人と関わるというのは、すごく生活にも近いこと。だから、一人ひとりの私的な気持ちに向き合わなきゃいけないこともあります。」
人によって境遇がまったく異なる。子育てやそれ以外のことでも、深く悩んでいる人がいる。
「絶対的な正解はないと思うんです。上から目線で『こうしたほうがいい』と言うんじゃなくて、むしろ一緒に悩むくらい。僕も分からないけど、こんな話を聞いたことありますよって。」
答えを出すんじゃなくて。
「そう、まず話を聞く。謙虚な姿勢が大事です。悩みって、自分の中だけで考えちゃうから悩みになる。誰かに話した瞬間に解決することもあると思うんです。」
「孤独な子育てというのはすごく見えにくいこと。当事者たちの気持ちに寄り添って、子育て問題に取り組んでいくことを忘れちゃいけないと思っています。」

どのようにコミュニティが形成され、盛り上がっていくのか。都会にいながら、コミュニティづくりの現場に携わることのできる仕事。
住民が主役とは言え、ゆくゆくは自分自身も地域に欠かせない存在になっていくのだと思います。
藤吉さんはこの仕事の可能性について、こう話してくれた。
「ここで培った経験を活かして、まちづくりやコミュニティづくりの仕事においてハブとなる人材になれると思うんです。」
「入ってきた人には、ノウハウや経験を蓄積していただいて、ここを軸に活動を広げたり、あるいは他のところへ移って立ち上げに参加したり。そんな次のステップが見えてくる仕事だと思いますよ。」
(2014/10/29 森田曜光)